「うわー!!すげー! なあなあ触っていいか! バラしていいか!!」
「あー、うん触るぐらいならいいけどあまり乱暴にしないでくれ。一応は僕が拾ったわけだし」
ワーワーギャーギャーと魔理沙に弄り回されている私。
どうしてこうなったのだ、店主に磨いてもらい至福の時を過ごしていた筈なのに。
まぁ、私が悪いということはしみじみと噛み締めている。まさか本当に喋れるとは思っても見なかった。
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「おおっ、そこはもうちょっと強く磨いてほしいぞ店主よ」
私は最初、香霖の意地の悪いごっこ遊びかと思った。
しかし、それにしては似てもにつかぬ女声、新年会の一発芸にもなりえそうな腹話術だぜ。
勿論、香霖がそんなことをしたところは1回とて見たことないし聞いたこともない。となれば、さっき香霖が妙に大切にしていたあの時計しかない訳だが。
恐る恐る振り返って香霖と時計を交互に見る。
香霖は口を閉じるのも忘れて時計を見つめてるし、時計は自分の事を棚に上げて「ただの時計が喋るわけあるまい」なんて言っている。
あの棚にあるガラクタの何十倍も面白そうな物を見つけた私は次にこういうのだ。
「うわー!すげー!」
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という事があったのだが、まぁそれは置いておこう。
「おい、魔理沙といったか。そろそろおもちゃ扱いはやめてもらえるか?店主に磨いてもらっていた最中なのだ」
「んー? 磨かれるってそんなに気持ちいいものなのか?」
なおもこねくり回し続ける魔理沙。
「そりゃあ、もう極楽浄土で昼寝を
しているような気分だ。っとこれじゃ埒があかない」
ふっ、付喪神になってただの喋る面白懐中時計で留まる私ではないのだ。
ここは私が留まる事の知らない力で決着をつけよう。
カチリ
その音が聞こえた時には魔理沙の手に私は無く、店主が私を磨こうとする"前"の位置に戻っていた。
「ありゃ、あの面白時計はどこいっちまった?っと、あの棚にあるじゃないか。一体どんな手品なんだ?」
魔理沙はもっと目を輝かせて私に近づく。
ふっ、そのような憧れの目にさらされてもおいおいと捕まる私では無いのだよ。
カチリ
またもやその音が鳴ると、今度は魔理沙が私を見つける"直前"の場所、店のカウンターの上に移動する。
「おお!? 目の前からすっぽりと消えちまったぜ? 喋るわ、どこぞのメイドみたいに消えるわ、ますます興味津々だぜ」
手をワキワキと動かしながら、まだ諦める様子のない魔理沙にヤレヤレと呆れながらも、トドメの一撃を刺す。
カチリ
今度は私”は”少しも動いていない、しかし身の安全と磨かれる時間は確保できた。
「さぁ、店主よ。早う磨いておくれ」
真剣な顔で今までの茶番を見ていた店主が我に帰る。
「おっと、すまないね。しかし店主じゃ無くて名を呼んで欲しいものだよ」
そう言いながら、静かに磨き始める店主。
「僕の名前は森近霖之助だ。好きなように呼んでくれ」
ふむふむ、今は心地よくて気分がいい。ここはひとつコチラも名乗ろうではないか。
「ああ、私の名前は……。はて、なんだったか」
自分の名前を忘れさせるとは、相当なテクニシャンであるな、森近よ。
「所で、あの力の事なんだけど」
相手が名前を忘れている事など気にも止めず、自分の興味があるものだけを聞く森近霖之助はいつもどおりである。
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一方、魔理沙は自分の家の玄関に突っ立っていた。正しくそれは自分が今日家から出ようとする"前"の状況であった。
「な、な。 なんだなんだああああ!?」
真っ紅っかのメイドよりも不可解な動きをする、あの時計に度肝を抜かれながらも。
どのように、あの時計の隅々まで調べられるかをどこかで考えている魔理沙は相当したたかであった。