「あの力は、どのようなものなんだい?」
しずしずと磨いている途中の森近が話しかけてくる。
「ああ、あの力はな"前後を司る程度の能力"でな。色々出来たりするぞ」
私は得意げに答えるが、司るまで力が強まったのはつい最近の事、それこそ付喪神としての自覚が出てからだ。
「昔話でもしてやりたいものだが、何分意識が芽生える前の記憶がなくての」
「そうか、少し残念だが。 おっとお茶が冷めてしまった、淹れ直してくるかな」
一旦、磨くことをやめようとする森近を私は止めた。
「まてまて、どれ私が淹れ立てまで戻してやろう」
かちり、と音がどこからかなるとカウンターのお盆の上に置いてあったお茶が湯気を出し始めた。
「すごいなぁ。これはやっぱり能力なのかい?」
少し熱いお茶をチビチビのむ森近。
「そうさね。この手の能力はイメージが大事なんだが、私は時計ということもあってか時間を前後させるイメージにすると大抵上手くいくな」
前後させると言っても本当に時間が進んだり、戻ったりしているわけではなく。
そういったように見える、動いているだけなのだ。
と大まかに説明する。
「ということは、意識があったりするものには効かないってことかい?」
「一応効くんだが、位置を移動させるとか大げさなことになると相手の精神力が肝になるな」
ほれ、現に魔理沙が何処かへ行っただろう? そう言いながら詳しい説明に入る。
相手がこちらに敵意とか殺意とか、そういう強い負の意識を向けてくると効果が半減したり、そもそも効かなかったりする。
逆にこちらへ無関心、それか好奇心や好意などの明るい意識であれば効きやすかったりする。
「まぁ、基本は自分か物に使う手の込んだ幻術というわけだ」
「幻術、ねぇ……」
森近はまだほんのりと温かいお茶を啜った。
――――――――――――――――――――――――――――――
「また、か」
人里にある、寺子屋の奥の小屋、その一室にて上白沢慧音はひっそりと呟く。
「今月でもう3人目、今日は何日だったか」
6月15日、もう月の半分を回ったところだ。
「一人は月の初めに他界した60後半の男が突然動き出し」
机の上にある書物をトントンと叩く。
「二人目はおしどり夫婦と評判だった家族の夫が吸血騒動を起こして」
大きいため息をついて、眉間にシワを寄せる。
「つい今日のこと、三人目の甘味処の店主が自分の作った団子を見て、狼男になる、と 」
書物の最後のほうへ目を向ける。
「西洋異変、ねぇ。稗田のが考えそうな名前だ」
そこには達筆で"西洋異変と呼ぶ"と書かれている。