ドカドカドカ
「なぁ、森近。外が何か騒がしいぞ」
全身くまなく磨いてもらって心なしか輝いて見える、そんな私は今店のカウンターから何処を見るでなく何処か見つめていた。
「んー。たぶん魔理沙じゃないかな? なにかうまい言い訳やらなんやら考えた方がいいかもしれない」
なんとも難儀なことだと、人間と同じ格好なら大きなため息をついているだろう。
バン、とついに店の扉が開かれた。
「大変!大変だ! いや、その時計も大変なんだが。 そうじゃなくて異変なんだ!!」
異変? 聞きなれない言葉に元々傾ける気のなかった耳が興味を示す。
「異変、ね。それを僕らに伝えてどうするんだい? いつもの魔理沙なら脇目もふらずに飛んでいくのに」
二人だけで話が進んでいく、私は割り込むことにする。
「なぁ、森近。異変とはなんぞ?」
「異変ってのはな!ここで起こる大きな事件とか、まぁ、色々な事を言うんだぜ。大抵はお祭りみたいに終わっちまうんだけどな」
森近に聞いたのだが、興奮冷めやらん魔理沙が目をギラギラさせながら説明してくれた。
まぁ、やっぱりと言うべきか、少々血の気が多いようだ。
「いや、その、大抵の示しがついていれば私も首を突っ込むんだがな。なんとも犯人も原因もちーっとも分かりゃしないんだ」
頼みの霊夢は動く気もないようだし。
そう言ってまたもやお茶を催促する。
「ふーむ。けど、それだけじゃ僕に伝える理由にはならないんじゃないかい?流石に僕に手掛かりを聞きに来たわけじゃないだろう?」
そう森近が言うと魔理沙はニカっと笑う。
「香霖のそういうとこ嫌いじゃないぜ。実はな今、紫達に疑われてるようでな」
ケラケラと笑いながら魔理沙は、異変の内容と事の成り行きを話してくれた。
西洋異変と呼ぶことにしたそれは、どうも奇天烈で一貫性のない衝動的な異変らしい。
何の脈略もなく、人里の住人が妖怪化するようだが意識はなく操られるようにそそくさと何処かへ行ってしまうし、どんな妖怪になるかもバラバラ。
唯一の共通点である、西洋妖怪に偏って妖怪化するところをとって、西洋異変とつけたそうだ。
ということで手がかりが全くない状態での犯人探しはとりあえず虱潰しに行っているらしい。
そこで煽りを受けたのが魔理沙ということだ、まぁ、西洋に詳しかったりする人物ともなると多少絞られて念入りに調べられるのだろう。
「さっき話を聞きに狐が来たが、最初から決めつけたみたいに威圧的だったからな……もううんざりだぜ」
若干の疲れが見えるその発言に少なからず同情する森近だった。
「つーことで、異変解決のお手伝い、やってみないか?」
その言葉は森近ではなく、私に掛けられた言葉だった。
なんで私が、とも思ったが魔理沙の言い分を聞くことにすると。
「新参者が最初に困ることはな、衣食住とかもそうだが一番はやっぱり自己紹介なんだよ。人間なら別に隠居暮らしでのんびりでもいいけどさ、神様とか妖怪とかは多少なりとも名前を知ってもらわないと存在すら危ういんだ。幸い外の世界よりは"そういうの"楽だと思うぜ」
「言いたいことは分った、要するにこの異変のついでに名前を売れと言っているわけだな?」
それを聞いた魔理沙はニヤリと笑う。
「そういう事だぜ。しかも今なら私の右腕とか二つ名がつくかもな」
「そんな不名誉なものはいらん、というかお前が楽をしたいだけだろうに」
「なんだよ、左腕が良かったのか?」
兎にも角にも、私は異変に巻き込まれていった。