いた<て普通のラブコメ   作:君の心を因数分解

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深夜テンション「こんばんは」
創作意欲「こんばんは」
理性「おやすみ」


痛<て普通のラブコメ(黒歴史)
位相幾何学(トポロジー)とは最初と最後が分かってりゃ後はどうでも良いということである


 大きな衝撃がお尻を襲った。

 ガクガクと前後運動を強制させられている。

 多分、自転車のタイヤがパンクした。

 

「(こんな所でのパンクは番狂わせだな……あー、死に際の人間には比類無き思考何たらとか舞い降りるって聞いたけど、別段そんなことはなかったな……)」

 

 そんなことを考えながら世界は回転していく。

 視界が斜めに傾き、アスファルトの色がズームアップ。

 瞬間、今までの思考が全て脳内のシベリアに送られる。高校への通学中であったこと、朝ご飯を食べようと思ったら米を炊くのを忘れていたこと、今日が記念すべき高校デビューの日であること、慣れない通学路に心を踊らせていたこと。

 脳内のシベリアに思考が飛ばされ、生まれた余剰スペースに代わりに入ってきたのは時をも越えるような感覚、記憶、感情、経験。

 

――――気付けば、小学校の前にいた。

 

――――もしかして今、自分は時間遡行とかしている?

 

――――いや、違う……これ走馬灯だ。

 

――――だって、目の前、トラックと過去の記憶が迫って来てるし、し……し?

 

――――死?

 

 多分、今、自分は死んだ。

 

――――――――――

―――――

――

 

 

ぇすかー! 大丈夫ですかー!」

 

――――あれ?

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 目を開けるとそこに女の子がいた。

 多分、同い年ぐらいの女の子。

 何だか見覚えのある制服を着ている女の子。

 女の子の淡い緑色の髪が揺れる。

 ついでにこっちの心も揺れる。

 更についでに魂も震える。

 女の子の瞳が自分を覗き込む。

 こんなに近くで同年代と見つめ合ったのは小学校の時が最後かもしれない。今現在は若干煤けているかもしれないが、10年ぐらい昔なら女子とだって平気に会話を交わせる程のメンタリティ男子だった。

 にしても、人生初アングル。ここは天国か?

 数秒間、呼吸と動悸に感覚を研ぎ澄ませる。荒い呼吸も、激しい動悸も、確かに存在を確認。死後がどんなんかは知らんが、心臓は止まってるだろう。うん。ここは現世だ。

 

「大丈夫ですか?」

「えぇ、あぁ……はい。死んでませんし」

「良かったぁ」

 

 今更ながら自分がずっと地面に転がっていたのに気付いて立ち上がる。しかし、この女の子は……何て言うかその……とても可愛い。端的に言えば、好き。吊り橋効果のテンプレの様な感じかもしれない。絶好球という表現はよろしくないか。ドストライクと言った感じだろうか。

 自分がぼうっとしていると、危うく(自分の)前方不注意で殺人を犯すところだったトラックの運転手がやって来た。

 

「おい、大丈夫か?」

「あ、はい。ヘルメットしてたんで頭は大丈夫でした」

「頭大丈夫なくせに、急に道路に飛び出すって何事や、おい!」

「いや、それはその……」

 

 何事と言われてもタイやが急にパンクしたんだからしょうがない。豚肉もない。

 自分の自転車の整備不足?

 この自転車は生憎、最近買ったばっかりの新品だ。その新品っぷりたるや、ネットで本名を使ってしまう小学生に近しい。しかし、どう答えたものか。そんな反駁は望んでいないだろうし、何より大人に強気になんて出れない。だって、怖いんだもの。もうちょっと格好付けると、脳内レスバでは全戦全勝の自分は無闇やたらに敗北を配って回らない、と言ったところか。

 自分が返答に詰まっていると、後ろから声が飛んで来た。

 女の子が固まっている自分の代わりに話してくれる。

 自転車が壊れたこと、わざとではないこと……えとせとら……えとせとら。干支は虎。

 自分の思考が追いつかぬ間にやり取りは終わっていた。運転手は納得してトラックに戻ろうとしている。自分は慌てて謝罪をした。

 恐らく轢かれていたら異世界に転生したであろうトラックが走り去って行く後ろ姿を見る。あ、ナンバーが平安京だ。

 自分は後ろにいる女の子を見る。やっぱり可愛い。

 天は二物を与えず、と言うがそれは嘘だ。現に目の前の女の子は『声』『見た目』の2つの要素で自分をハートキャッチプリキュアしている。天は結構二物を与える。この世の真実だろう。まぁ、この女の子はその代わりに、イチモツは貰わなかっただろうけど。

 アドレナリンがいつもより少し多めに分泌されているようだった。思考がいつもよりも軽く死んでいる。

 脳味噌が麻痺している内に女の子に話しかけることにした。話題はさっきのやり取りについてが適当だろうか。

 

「あの……」

「はい、何でしょう?」

 

 ヤバい。アドレナリンでも普段の会話癖は誤魔化せていない。初手「あの……」とかコミュ障が露呈し過ぎだぜ。

 

「さっきはありがとうございます」

「いえいえ。情けは人のためならず、ですから。別段、そこまで感謝されることじゃないですよ。自転車は倒れちゃったわけですし」

「……なるほど。ありがとうございます」

 

 彼女は貸し借りなんていらないぜ、と言ってくれているらしかった。あまり対人経験が豊富ではないので、合っているかは定かではないが。

 自分は車道にぶっ倒れたままの自転車を歩道に戻した。照り返しの激しい道路と違って、木影が涼しい。自分が意外に重い自転車を起こすのに四苦八苦している様子はさながら、車道からシャドウへ……そんな感じだろう。やはり木陰は寒かった。

 さて、現実的な思考を取り戻そう。自分で捨てておいて何だが。

 自分は高校への通学中だった。自転車はもう使えない。ここから学校へ行くのと、家に戻るのとではどっちの方が楽だろう。前者だ。だって学校、もうすぐそこだし。そう判断して、自分は歩いて学校へ向かうことにした。

 パンクした自転車に、他に壊れた箇所がないかを素人なりに一応調べていると、女の子が話しかけて来た。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、はい。ヘルメットしてたんで」

「いや……ボディを擦ったりとかは?」

「制服着てるんで大丈夫でしたよ」

「あぇ……? なら良かったです」

 

 身体をボディと呼称するとは、なかなかに面白い感性を彼女は持っているのかもしれない。

 英語習いたての頃を少し思い出す。何でも英語で言おうとしちゃうけど単語力が足りず悲惨な格好付けに終わるやつ。

 アドレナリンという理性の対極を行く存在に支配されている自分は考えたことをそのまま口にしていた。

 

「にしてもボディって面白い言い方ですね」

「えっと……そうですか? じゃあ、普通は何て言うんでしょうか。フレームとか?」

 

 心を包む枠組みが身体、ということだろうか。何だかとても難しそうだ。しかし生憎だが、自分は現代文に出てくる様な哲学チックな話題は苦手だ。勉強も苦手かつ嫌いだ。話をすり替えよう。

 

「自分、コンタクトです」

「あっ、ごめんなさい。籠は曲がってませんか?」

 

 一般的な日本人を地で行く自分は無神論者に一番近いのだろうか。バレンタインもクリスマスも特に人生に影響を及ぼした記憶がないもので。宗教関係は詳しくないからよく分からないが。多分、神は死んでる。あ、でも髪は生き残って欲しいかな。

 

「加護? 悪いんですけど自分は日和見主義の無神論者ですので、形而上学的な話はちょっと良く分からないです」

「ぶ、物質……主義……?」

「いや、物質主義ではないですけどね」

「じゃあ、出家ですか」

「それは修行ですね」

 

 滔々と会話を交わしていると、自転車の点検が終了。

 今から歩こう。わたしはげんき。

 女の子が自分の隣に来る。今気付いたが、女の子も自転車だった。ちゃんとヘルメットが籠に入っている辺り、昨今の高校生にしてはちゃんとヘルメット着用をしている真面目ちゃんらしい。好感! もう多分、何しても好感だと思う。好感!

 βエンドルフィン辺りの方々に働いてもらっている内に、たくさん会話をしておこう。これも何かの縁だ。自転車通学同士だから、その辺から話題を切り出すのがベターかな。

 

「チャリ通ですか」

「はい。さっきも後ろを走っていたら、前の人が急に道路に倒れたので……」

「なるほど。それでか……あ、これから学校ですよね。自分は歩いて行きますので、どうぞお先に」

 

 女の子は自分と同い年ぐらいだろうか。頭に装着したヘルメットが中学校で全員に支給される様なタイプではなく、黒色のちょっとカッコいい感じな所から考えるに高校生だろう。基本的に毎日の登下校に「事故に遭っても間に合う様に」出てくる人はいない。となると、ここで自分に付き合わせたら彼女は学校に遅刻してしまうだろう。それは申し訳ない。

 しかし、女の子は自分の言葉に首を振った。

 

「いえいえ。ここで会ったのも多少の縁ですし、学校もすぐそこなので」

「へぇ、どこの学校です?」

「……え? えーと、同じ学校、ですよね?」

 

 同じ学校?

 なるほど。道理で制服に見覚えがあるわけだ。言われて気付いた。

 女の子は歩いて行くと言う。つまり、ちょっとの間はカップル登校みたいな状況になるわけだ。カップル登校ってなんぞやねん。リンゴもないのに。いや、リンゴはアップルやろがーい。

 ……季節外れの寒気。

 自分はここで『名前を訊くどっとえぐぜ』を実行することにした。この流れなら「後でお礼がしたいので」とか何とか理由が付く。つまり、女の子に質問をしても許される、そう判断した。それに連絡先なら渋るかもしれないが、今回訊くのは名前だ。同じ学校と知っているなら名前を訊いておくのは普通の感覚だから、教えてくれるだろう。

 

「そうだ、お名前教えて貰っても良いですか?」

「え? ダメですけど……」

 

 結論だけ、書く。

 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した自分は失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した自分は失敗

 

「あ、そう、ですか……理由お訊きしてもよろしいですか?」

「理由、ですか。それはこれから先の展開に関わることなので、ネタバレになってしまいますよ?」

「あ、自分はネタバレセーフなんで」

 

 自分は何回でも同じ本を読んで楽しめるタイプなのだ。脳死で読んでいる、とも言う。

 

「そうですか。実はですね、わたしとあなたは同じ学校の同じクラスなんです」

「ええぇっっ!!?」

「その反応がもう少し先のシーンで欲しかったんですよ」

「まぁ、どうせ単語コピペするだけですし」

「それもそうですか。あ、ちなみにわたしはあなたと最終話で晴れて真の両思いの恋人になったりもするんですよ」

「ふーん」

 

 

 

 

 

 

「ええぇっっ!!?」

 

 

 

 

 

 

「そ、そんなこと……言っちゃって良いんですか!?」

「え……でも、ネタバレセーフって……それにどうせタイトルで分かりますよ?」

「そういう問題じゃないです」

 

 なんてことだ。

 なんてことだ。

 自分はなんてことをしてしまったのだろう。

 なぜにあんな軽々しく「ネタバレセーフ」って言ってしまったのだろう。

 これじゃあもうこの小説の存在意義がないじゃないか。結論の分かってる小説なんて……トポロジー的に、もう完結しちゃったじゃないか。

 あぁ……再三だが 結論だけ、書く。

 

 

 

 

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した自分は失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した自分は失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した自分は失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した自分は失敗

 

 

 

 

 

 

 

「いた<て普通のラブコメ、完……かな」

 

「ま、まだ終わりませんよ!?」

 

 


 

 

 じ、次回予告!?

 本作にはそんなものがあるのか!?

 それは地雷だ! 止めるんだ!

 それはオリジナルキャラクター後書き座談会と同じレベルの重罪なんだっ!

 後書きで次回予告なんてやっちゃダメだぁああああッ!!

 

 次回、『ありふれた人名の価値は相対的に低いけど、ありふれた人命の価値は大体おんなじ』

 

 次回も、半端ないブラウザバック率だぜ!

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