いた<て普通のラブコメ   作:君の心を因数分解

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週刊少年ジャンプ特有の路線変更


いた<て普通のラブコメ痛─脅威の侵略者編 不用意な発言でファイア! ネタがブリザード!
剣とコメディの学園モノ。


 自転車置き場には先客がいた。おかっぱのような黒髪と高校生にしては小さい背中が見える。意味ありげに出会ってしまったが、別にわざわざイベントを発生させるまでもない。自分は無視して自分の自転車の元へ歩いた。

 タイヤの所の鍵をチェック。やっぱり掛け忘れていた。鍵をしっかり掛ける。

 今は昼休み。あと数時間しか授業はないが、それでも鍵は掛けておいた方が良い。わざわざ学校の敷地内に停めてある自転車を盗んでいく輩は少ないが、嫌がらせとばかりに鍵だけ盗んでいく輩はそこそこいる。ソースは自分。おっと、勿論だけど被害者サイドね。

 用を済ませたので昇降口の方に身体を向ける。

 瞬間、爆音。

 耳が破られそうな轟音と、一拍遅れて熱気が背中を撫でた。突然のことで驚いてしまう。その驚きのまま振り返った。

 そんなに広くないグラウンドには砂埃がこれ見よがしに舞い上がって、()()()()を隠していた。

 

「な……な、なんなの……!?」

 

 自転車置き場にいた先客さんが絞り出す様に呟いた。しかし、こういう時のテンプレートなんて決まっている。

 砂埃が晴れると、自分はようやく()()を見ることが出来た。

 

「……剣?」

 

 ()()は銀色に輝く、一太刀の剣だった。

 

 


 

 

 自分とおかっぱさんは恐る恐ると言った様子で、グラウンドに突き刺さっている剣の元に向かった。近付いて分かったが、剣は野球のバットぐらいの長さだった。グリップの上の柄にはキラキラと輝く宝玉の様なものが埋め込まれており、刀身は典型的(と言ってもゲームや漫画でしか見たことないのだけれど)な両刃だった。剣についての知識なんぞ微塵も持ち合わせてはいないが、日本刀ではないことだけは分かる。

 ふと気が付くと、おかっぱさんが右手を剣に伸ばしていた。自分は咄嗟に叫んだ。

 

「ダメだっ!!」

「ひゃい!?」

 

 おかっぱさんはビクッとして固まる。自分は手遅れになる前に、と矢継ぎ早に続けた。

 

「普通に考えて見て下さい。明らかに非日常の始まりです。これを手にしたら夢と冒険の毎日が幕を上げることは確実ですし、その毎日は完全にバトルモノです。考えて見て下さい。自分にそんな毎日を送ることが出来るのかって。命を賭けてまで戦う理由を見出だせる様な人間かって。自分には出来ません。無理です。バトルモノは体験するんじゃなくて読みたい派の人間ですし。あなただってそうなんじゃないですか。良いですか。ここの選択が今後の人生を大きく左右するなんてことは火を見るよりも確定的に明らかです。良いんですか。こんなに適当に意味も分からない内に世界を救う戦いとかに巻き込まれても。良いんですか、本当に。じっくり考えないと明確にヤバい状況ですよ」

 

 おかっぱさんは自分の早口警告に納得したみたいだ。伸ばしかけていた右手をゆっくりと降ろした。

 自分はホッと溜め息を吐いた。

 

「ん? 何だ、それ」

 

 と、後ろから見知った声が。いや、この場合は聞き知ったかな?

 佐藤君だった。自分は佐藤君にひとまずの状況と自分の見解、忠告を伝えようと口を開いた。

 

「佐藤君、これはね───」

 

 ズポッ。

 

「お、意外と軽いじゃん」

 

 佐藤君は剣を引き抜いた。

 引き抜いてしまった。

 自分とおかっぱさんは同時に絶句した。

 

「歩夢、この剣カッケーな。お前のか?」

 

 この場にはやらかした佐藤君の問いに答える声はなかった。

 自分も、おかっぱさんも絶句していた。

 だから、誰も答えない。

 そのハズだった。

 

「いいえ、私はそこの男の子の所有物ではないわ」

 

 なんという、ベタ。

 なんという、お約束。

 なんという、予定調和。

 無機物であるハズの剣が、発声機関なんてないハズの剣が、しゃ、しゃ、喋っ───

 

「ふーん。そうなのか。じゃあ、そっちの女子のか?」

「えぇっ!? 普通に会話しちゃうの!?」

 

 佐藤君は普通に剣と会話しようとしていた。しかも、それに驚いたのは当の剣自身だった。

 

「ん? 何だ。歩夢のでも、そっちの女子のでもないのか。じゃあ、お前は……そう言えば名前は?」

「名前!? そこが一番、気になるの?! それ以前の疑問はないの!?」

「いやだってよ、名前が分かんないと会話すらマトモにできねーだろ?」

 

 だから、マトモに会話出来るのがおかしいのだ。それと今更に気付いたことだが、剣から発せられる声は女の子の声だった。これもベタ。

 

「名前なんてどうでも良いわよ! それよりももっとこう……するべきリアクションってものがあるでしょ?」

「じゃあ、お前の名前は『ムラマサ』だ」

「違う! そういうことじゃない!」

 

 ただひたすらツッコミに回る剣さんが可哀想だった。まぁ、だからといって助けてやるつもりはないが。

 

「そうだよな。俺も合ってないと思ってたんだ」

「合ってないと思ってたなら何で……いや、そうじゃないのよ!」

「じゃあ『ムラサメ』だ」

「何でそんな日本刀っぽい名前にしようとするのよ! どうみても日本刀じゃないでしょ」

「じゃあ『ムラカミ』」

「人名! 最早、それは武器の名前ですらないわ!」

 

 というか佐藤君は『ムラ』縛りでもしているのだろうか。

 と、下らないことを考えながらやり取りをボーっと眺めていたら、隣で固まっていたおかっぱさんが動いた。

 

「な、何で、剣が喋ってるの……!」

「そうそう! それよ、それ! その反応を───」

 

 と、そこまで言ったところで言葉がストップ。一拍空けて、剣さんが続けた。今までのあたふたした声から一転、凛とした声だ。

 

「今は説明している時間はない。この世界に危機が迫っている」

「あ! 『ツルリ』とかどうだ?」

「もぉおおおおおお……!」

 

 シリアスなんかにはならなかった。まぁ、本作品にシリアスという概念が存在するのかどうかすら怪しいのだが。

 しかし、剣さんの発言内容は気になる。

 世界に危機が迫っているだって?

 そんな、ブギーポップじゃあるまいし。

 

「ツルリって何よ! そのワードからはハゲしか連想出来ないのよ!」

「じゃあ『ヒカリ』とか」

「この流れからの『ヒカリ』もハゲにしか結び付かないのよ!」

 

 わーわーと佐藤君のボケに翻弄される剣さんを眺めていたら、ちょいちょいと袖を引っ張られた。デジャヴ。おかっぱさんだった。

 

「どうかしました?」

「あ、あそこ……何か、飛んで来てません?」

 

 おかっぱさんが指さした方を見る。昼の青空に黒い点がひとつ。

 自分は確信した。フラグだったか、と。

 その黒い点は少しずつ大きくなって、こちらに近付いて来る。角度から考えるに、どうやらグラウンドに不時着(?)するみたいだ。わーわーとコントをしていた佐藤君と剣さんも気付いた。

 しかし、刻すでにお寿司。違った。遅し。

 黒いそれは派手な音と砂埃を上げてグラウンドに墜落した。

 

 

 

「らぁぁぁああああああんどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 またしても砂埃もくもく。当然、向こうの姿は見えない。シルエットが辛うじて分かるぐらいか。シルエットから察するに、黒いそれは人間のようだ。

 明らかに地面に着地した際の音ではなかった。学校のグラウンドは自分で「ランドオン」(着地)なんて言わない。

 

「今度は何……?」

 

 おかっぱさんのいた<て普通の反応に同意する。剣さんがその疑問に答えた。

 

「あれが……"敵"よ……!」

 

 世界に危機が迫っている、というやつだろうか。まぁ、グラウンドにあんな風に派手に着地する奴は大体が敵キャラだろう。もしくはウルトラマンか。後者の可能性は限りなく薄いので、多分あれは"敵"と呼称するのに相応しい存在だ。

 まったく。いた<て普通のラブコメはどこに行ったのやら。これじゃあ、週刊少年ジャンプだよ。自分に平穏なラブ&コメディを返して下さい。

 自分はやれやれ系主人公のごとく肩をすくめる。もう少しで完全に砂埃が晴れそう、といった時に砂埃の向こうのシルエットが叫んだ。

 

 

 

「この世界のエクスクラメーションマークとクエスチョンマークは、この俺が頂いたぁぁぁぁあああああああああああああッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 コメディの方は残ってるみたいだね。

 自分はちょっと安心した。

 

 


 

森部「ということで始まりました、2章!」

 

神埼「わーい!」

 

森部「いやー、最初っから作者が台本をなくしちゃってさー」

 

(中略)

 

作者「というわけで、次回はバトル回です! お楽しみに!」

 

全員「「「またねー!!」」」

 

 

 

おかっぱさん「なんというか……その───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───恥ずかしくて、見るに堪えない……よね

 

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