いた<て普通のラブコメ 作:君の心を因数分解
「この世界のエクスクラメーションマークとクエスチョンマークは、この俺が頂いたぁぁぁぁあああああああああああああッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」
開幕から前話コピペ+大文字だが、これは決して安易に文字数と行数を稼いでいるわけではない。完璧で幸福な導入のために必要なだけなのだ。
と、下らない現実逃避をかましていると、剣さんがいた<てシリアスな声で言った。
「あれが……敵よ」
その声は心なしか若干、弱気に聞こえた。何だか声量が足りないような、気合いが足りないような。とりあえず棒立ちを貫いている自分の視界の端で、最早存在意義が分からないモブのおかっぱさんがあわあわしている。マジで存在意義が分からないのだが、存在意義のない人物なんて三流小説にはよくあることだろう。
グラウンドにランドオンした"敵"さんは、のっしのっしと剣さんの元へ向かっていた。
"敵"さんは見るからにパワータイプの筋骨隆々のマッチョメンだった。ハリウッド味の溢れる顔立ちに加えてスキンヘッド。明らかにバトル向きの容貌をしていた。しかも下半身に着けたズボン以外は何も着ていない。ようするに半裸。もう"敵"さんが中ボスポジションであるのは確定だろう。もしくは四天王ポジションか。
剣さんを持ったまま動かない佐藤君に剣さんは言った。
「早く……早く逃げて。あなた達を巻き込むつもりはなかったの」
じゃあ何でこれ見よがしにグラウンドに突き刺さりに来たのか。もしかして、もう少し待てば主人公ポジションの人でも来る予定だったのだろうか。もしそうだったならば、とんだ余計な事をしでかしたことになる。勿論、自分は悪くない。責任は全て佐藤君にある。
"敵"さんと剣さんの間はとうとう3mぐらいの間隔になった。完全にバトルレンジだ。"敵"さんは大きな右手で剣さんを指差した。
「さぁ、そいつを渡して貰おうか」
ベタ。あまりにも、ベタ。テンプレートの絶好球だ。
「んーと。こいつ、おっさんのか」
佐藤君は筋骨隆々のマッチョメン相手にも通常運転。良い意味でも、悪い意味でも、彼は基本的におバカさんなのだ。
「そうではないが」
「じゃあ渡す理由ないじゃん」
佐藤君の返答が気に障ったのか、"敵"さんは急に叫びだした。
「なにゆえだぁああああああ!!!!!!!!!!」
「今言ったじゃん」
それはそう。
"敵"さんはいちいちうるさかった。文字数稼ぎ判定されないか心配なところだった。
「ええい!!! さっさとわたさんかぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
"敵"さんはこれまた急に佐藤君に殴りかかった。
展開が早い。そして、短気。短気は損気。気に病む兄貴(谷川俊太郎)
しかし、佐藤君はマッチョな一撃をひょいっと躱した。
「あのさぁ、おっさん。俺は今、名前を考えるのに必死なんだよね。ちょっと黙っててくんないかな」
こっちも急にメインキャラクターみたいな台詞を言い出す佐藤君。君はモブ枠だろうに。佐藤君の台詞の後にボソッと剣さんが呟いた。
「まだ名前考えてたのね……」
佐藤君は剣さんを片手で担ぎ上げ肩に乗せた。
「なぁ、どうやったらあのうるさい奴を黙らせられるんだ」
「……私でアイツを『斬って』。トリガーを押せば、この刃にそのための『力』が宿るから」
強調の鉤括弧が果てしなくダサかったが、それは今更だろう。
とりがー、とは何だろうか。自分は首を捻った。しかし、佐藤君はそうではなかったらしい。「こいつのことだな」と言いながら、持ち手に付いているプラスチック製のボタンを触る。それを見て初めて剣さんの持ち手にボタンが付いていることに気が付いた。
そのチープさに自分は思わず呟いいてしまう。
「さながら財団BのDXみたいな───」
「このスーパー戦隊のおもちゃに付いてそうなボタンのことだよな」
自分の配慮を一瞬で砕く佐藤君だった。いや、誰に配慮するんだよって話だけどね。
そうこうしている内に痺れを切らしたのか"敵"さんが雄叫びを上げる。佐藤君はぐっと半身になって身構えた。
一瞬、お互いの間に静寂が訪れる。しかし、それは本当に一瞬。二人はほとんど同時に攻撃を仕掛けた。
「うぉおおおお! 喰らえ! 【!パンチ】ッ!!」
先手を取ったのは腕のリーチで勝る"敵"さん。佐藤君は右上段のパンチを避け、懐に潜り込んだ。
カチッとDX版みたいな安っぽいトリガーを引き、剣さんを振り抜く。
しかし、剣は振り切れなかった。"敵"さんの前で止まったのだ。
「……刃が……通らない…………」
剣さんは"敵"さんの腹筋で止まっていたようだった。ここからでは見えにくいけど多分そう。剣さんからはCGエフェクトのような白銀の焔が燃え盛っていた。完全に必殺技のそれだった。これはここからでも分かる。
しかし、そんな必殺技エフェクトに反して刃は届かない。"敵"さんが振り上げた左腕を見て佐藤君は慌ててカカッとバックステッポ。
余裕綽々といった感じで"敵"さんは笑った。
「はーはっはっは! 貴様らの力はこの程度か! 今度はこちらからいくぞ!! 我が【!ナイフ】は無敵よッ!!!!!!」
聞き慣れない……というより見慣れないワードだった。というかどうやって読むんだ。
「【 ナイフ】……だと」
「そうだ! これを見ろぉおお!!!」
そうして"敵"さんは腹とズボンの間から何かを抜き出した。それはまさしく と形容せざるを得ない形をしていた。
ん。やっぱり変だ。さっきからずっと感じていた違和感がようやく具体的に掴めてきた。
自分は最早、存在をほとんど失念していたおかっぱさんに話し掛けた。
「あのー、自分に好きなものについて質問してくれませんか」
「えっ……あぁ、はい……」
急に話し掛けられたおかっぱさんは困惑していた。そりゃそうだろう。なにせ内容が意味不明を極めている。
「えぇと……好きなものは何ですか」
「それは勿論っ、好きなものですっ」
出来る限り大声で返事をしてみた。
いやしかし、予想通りというか、文字通りというか。
自分が状況をようやっと理解している内に、向こうの話は進んでいるようだった。
「はぁッ! 無駄だッ! この【!ナイフ】と【?ガン】の連携の前にはどんな小細工も通じん!!」
「そんな……トリガーを引いてるのに、力が乗らない……」
「クソっ、こっちの攻撃がまったく効かねぇ……」
苦戦しているようだった。
原因は不明だが、どうやら必殺技のエフェクトの見た目に準ずる火力が出ないらしい。自分の方の発見と関連性は見えないが、メタ的に無関係ということはないだろう。自分は佐藤君に叫んだ。
「おーい」
「歩夢か。どうした」
やっぱり叫んでるようにはならない。
そう。自分の発見とはこれのことだ。いや、発見も何も開幕宣言されてたことだけどね。
「佐藤君、ビックリマークとハテナマークが奪われてる」
「なにっ……そうか。だから、力が乗らなかったのか……」
開始1行で出ていた真実。今、自分達からビックリマークとハテナマークは失われているのだ。しかしこれが必殺技が繰り出せない事と何の関係があるのだろうか。佐藤君は繋がったみたいだが、自分はサッパリだ。
「な、何か分かったの……」
「分かったつうか、さ。ちょっと考えれば当たり前のことだったんだ」
本気で分からない。佐藤君に分かって自分に分からないということは、かなりおバカな結論というのは推測できるが。なにせ、彼は阿呆な発想にかけては自分に負けず劣らずの才能を持っている。
「必殺技なんだ。叫ばなきゃダメだろ……」
一瞬の静寂。
期待したのが間違いだったかもしれない。多分、剣さんはガッカリしていると思う。
「え、えぇ……そうね……」
明らかに剣さんはガッカリしていた。
まぁ、言わんとすることは分かる。必殺技だ。そりゃあ、叫ぶのが普通だろう。大体の少年漫画でも必殺技にはビックリマークが付いている。じゃあ、仮にだ。仮に叫んだら必殺技がちゃんと発動するとして、だ。
どうやってビックリマークを持って来れば良いのだろうか。"敵"さんの宣言通り、ビックリマークとハテナマークは全て奪われてしまっている。無理矢理使おうとしても空白になるだけだ。それは先程までの違和感満載の表現で証明されている。
その辺は佐藤君も解決できていないようだった。再会した"敵"さんの猛攻をくぐり抜けながらも、攻撃に転じれていないのが証拠だろう。
佐藤君の出したアンサーを聞く限り、マトモタイプの思考は通用しないと見た。つまり自分には無理だ。自分はいた<て普通の人間だからイカれた発想は専門外なのだ。最早、存在すらも完全に虚空に忘れかけていたおかっぱさんにも考えてもらおうか。そうだ。それが良い。彼女は一切、仕事という仕事をしていない。というかここまで無駄な人物がいただろうか。それこそ、本作4話あたりの田中さんぐらいしか思い付かない。「いや、田中って誰だよ」という人のために注釈を付けるべきだろうか。
ふと、天佑神助。
なるほど。この無駄に助長なモノローグにも少しだけだが意味はあったようだ。
自分はもう一度、佐藤君に叫んだ。
「佐藤くーん」
「何だぁ、歩夢っ」
ビックリマークを多用するweb小説はとても読みづらいと思っていたが、逆にないとそれはそれで読みづらかった。これじゃあ緑バーは避けられないだろう。いや、何が緑とは言わないけど。
「注釈の中なら、ビックリマークは奪われていない」
これが自分の思い付いた突破方法だった。
"敵"さんはこの世界の全てのビックリマークとハテナマーク*2を奪ったと言った。*3しかし、注釈の中だけは奪えていなかったのだ。*4恐らく、タップorクリックしなければ見えないからだろう。
と、注釈を急に使い出した地の文はさておき。自分の叫び声(迫力0)を聞いた佐藤君は早速、注釈を使い始めた。
「よし。シャバドゥビタッチで頑張るぞ……って出て来たな。流石、歩夢だぜ。こういう意味不明の考えで右に出る奴はいねぇな」
心外だった。
注釈を無理矢理作り出すことに成功して佐藤君は若干、嬉しそうだった。対して剣さんは冷ややかな態度を取っていた。
「……本当にビックリマークなんかで変わるのかしら」
ビックリマークを注釈から取り出した佐藤君は"敵"さんに向かって走った。
「さっきはよくもやってくれたな!」
「えぇいいいいい!!!!!!!! 今更、からくりに気付いても遅いわぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!! 貴様のなよなよした攻撃なんぞ、我が鍛え抜かれた腹筋で耐えてくれようぅぅぅぅぅううううううううううううううッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
最高にやかましくなった"敵"さんが放った拳を身体を半回転させて抜け、右手に握った剣を"敵"さんの腹に叩きつけた。
インパクトの瞬間、指と口が動いた。
「これで……終わりだ!」
一閃。
剣さんから放たれるいかにも必殺技然とした白い焔が辺りに散った。"敵"さんを切り結んだ格好で佐藤君は静止している。あんなにうるさかった"敵"さんはひとことも発せずに、地面に倒れ伏した。
砂埃が風に舞い上がった。今回は視界を塞いだりはしない。
白い焔が消え、佐藤君がニカッと笑った。
「よし。決まったぜ、お前の名前」
くるりと一回転させた剣さんを天にかざすように見上げて告げた。
「お前の名前は『テカリン』だ!」
「却下よ却下! ド却下よ!」
その大きな声での抗議がひとまずの勝利を示していた。自分と存在意義が結局なかったおかっぱさんは、顔を見合わせて笑う。
やっぱり、日常は騒がしい方が良いなって。
どうせメタネタを扱うなら色々やってみたい(レシピに乗ってない工程を追加する料理初心者並感)