いた<て普通のラブコメ 作:君の心を因数分解
自分は『県立 愛米 高等学校』に通っている。
とってつけた様な名前だが、名前がないのは不便だし、名前なんぞ取って付いてりゃ良いんだし、何より実際に取って付けた名前なのだからしょうがない。
開始三行のブラウザバック率に何者かが青ざめている今日この頃いかがお過ごしでしょうか。自分は今、人生で初めて恋人を手に入れる未来を手に入れました。和訳失敗した?
「あ、何組でした?」
上の台詞は前話に登場した、淡い緑色の髪をした女の子である。可愛い。
出会って5分で恋人になった。予定だが。
「A組です。そちらは?」
「9番です。そちらは?」
「37番です」
同じクラスであることは確定しているので、女の子は自分の問いには答えず出席番号を答えた。実に合理的な思考である。そんなところも好き(脳死)
「えぇっと、37,37……あっ、これですか?」
女の子はクラス分けの紙を指差した。先程から状況描写無しだが雰囲気で分かる通り、現在は新学期の最初である。ようするに四月。旧月で言うと卯月。食べ物で例えるなら串カツ。ちなみに、自分達は新一年生。だから自転車が新品だったのだ。
「あ、はい。それです」
「へぇ~。何て読むんですか? もり、べ……さん?」
女の子はくるりと振り返った。その際に緑色の髪の毛からふわっとした粒子のようなものが溢れ出た気がした。
「あぁ、そうです。もりべ、森部です」
「普通ですね」
「そりゃあタイトルにもありますし」
森部歩夢、という取って付けた様な名前が自分の名前だ。親に聞いても曖昧な答えしか帰って来なかったので、大層な意味は詰まっていないだろう。下の名前は『あゆむ』と読む。取って付けた名前だ。
自分はクラス発表の紙の中から、9番を探した。
2回ぐらい視線を上下に揺らす。
「えっと、かんざき……で合ってますか?」
「あ、はい。大丈夫です。神崎って言います。よろしくお願いします」
女の子は『神埼』という名前らしかった。
「本当に神埼なんですか?」
「はい、そうですけど……?」
「あぁ、失礼。もしかしたら、ということもあるので」
「なるほど。"無"を探ったわけですね。あるわけないでしょう」
神埼さんはこちらのボケにノリながらも切り捨ててきた。どうやらボケスキルもツッコミスキルも平凡以下の自分では崩せそうにない牙城だった。
「すみません、神埼さん。ところで、お兄さんはいますか?」
「先月いなくなりましたけど、はい。いますよ」
油断していたらとんでもないワードが出てきた。
掘り下げ回か? 過去回か? シリアス回か?
あまりにも設定のカミングアウトが早過ぎる。なにせ自分達はまだ教室にすら入っていないし、なんなら上履きすら履いていない。自分はただ、しれっと家族構成を聞き出したかっただけなのに……!
「あ、いなくなったって言うのは別に死んだって意味じゃないですよ」
自分のシリアスな雰囲気を察してか、女の子……神崎さんは言う。
「あ、そうですか。これは失礼」
「失礼なこと考えていたんですか?」
「えぇ……まぁ、はい」
「どんなです?」
「お兄さんがいなくなったって言うから、亡くなってしまわれたとばかり……安直で単純ですみません」
「あ、それはこちらこそごめんなさいですね。変な言い方しちゃって。それに全然、失礼じゃないですよ? 死んでくれた方がマシですし」
「あ、ありがとうございま、す……?」
おかしい。
今、ヤバいワードが出た気がする。これはアレだ。
RPGでレベル上げを怠ったまま、とりあえずの様子見でボス戦に突入したら何か勝っちゃったタイプのアレだ。
この話題はとても危険だから聞けん、と自分の勘が告げている。英語で言うとデンジャラス。対セイバー時の謎のヒロインXばりの直感スキルを信じろ!
「ぷはー、今日も良いペンキ☆」
「あら、またサボりですか」
「30分間の求刑中です。ところで、ところでってところてんに似てますけど、英語で言うとバイザウェイなんですよね。ところてんに似てますけど」
「似てるだけなら将来、人斬り抜刀齋にはならないでしょうね。安心、安心、安心太郎です」
「安心院さんって感じですか」
自分の回避能力はそこそこあるようだ。
恐ろしく不自然なイベント回避……環境に悪いね。
「そうだ。神崎さんの下の名前って、何て読むんですか?」
「『ひいろ』です。神崎陽彩。シャナのOPです」
「シャナのOPは『ひしょく』ですよ」
自分も最初は『ひいろ』だと思っていた。ちなみに、シャナのOPで一番好きな曲だったりする。『JOINT』も好きです。
よし、ここで1つ粋な返しでもしよう。粋な返しが分からない。よし、諦めよう。RTA走者かよ。
あんまり良い台詞が思い付かないが、とりあえず名前を褒めておこう。名前を褒められて悪い気はしないハズだ。少なくとも、自分の名前をシャナのOPって言うぐらいだし、嫌いってことはないだろう。
「『ひいろ』ですか……良い名前ですね」
「友達からは『いーちゃん』って呼ばれたりしてます」
「嘘ですか?」
「本当です」
「嘘ですね」
「嘘ですけど」
これは自分と神崎さんの会話の一欠片。
実にケッサクな戯言だった。まぁ、シャナで名前を例えてきた辺り、西尾維新ぐらいは履修しててもおかしくはないだろう。それにしてもノリが良すぎる気もしないでもない。
「森部さんの下の名前は?」
「『あゆむ』です。歩夢。あゆみちゃんのです」
「人権のですか?」
「ま、マイナー過ぎる……逆さまにしないと進化しなそう……」
「それはマーイーカですね」
人権のキャラって。小学校か中学校の時に貰ったプリントに合った奴かな。しかし、神崎さんはネタ範囲が広すぎる。ノーマルタイプ並だ。いや、こんなのがノーマルで堪るか。
と、ここで自分は問題点を見付けた。
「というかどっちも口調がおんなじなんで、どっちが喋ってるかこんカラマネロってますね」
「あ、そうですね。じゃあ、わたしが丁寧な感じの口調で行って良いですか?」
「でもこっちの一人称『自分』なんで、こっちが丁寧な方が良い気がしません?」
「そうですね。じゃあ、わたしはどうしましょう。何か良いキャラ付けあります?」
キャラ付けを他人に委ねるのか。中々に個性的な人だ。
しかし、自分は発想力というものが欠けている人種だ。理学部ってより工学部よりの人間なのだ。日野社長はすごいと思う。ただし、真バスの日ノ神。てめーはダメだ。
「そーですね……やっぱりここは王道を行く『ツンドラ』ですかね……」
「は? 死ね」
神崎さんは対応が早かった。
キャラ付けと分かっていても、面と向かっての暴言は心に来るものがある。それに、作品全体の印象も悪くなるし。
取り下げよう。メインヒロイン(暫定)がこれはダメだ。
「あっ、ごめんなさい。やっぱナシで」
「いぇーい! 分かったナッシー!! ナシ汁ブシャァアア!! フゥゥウウウウウ!!!!」
神崎さんは急にハイテンションの権化と化した。権化というより妖精か。ヘッドバンキングしながら跳び跳ねる。可愛い。
「あ、神崎さん。そんな顔赤らめながらしなくて良いです」
「そ、そうですか……結構、気合い入ってたんですけどね」
「気合いは確かに十分でした。はい」
「やっぱり気合いじゃダメですか。勇気がないと……」
「いや、新学年早々、クラス分けの紙の最前列でフナッシーやるのは勇気あると思いますよ。無謀ですけど」
進学校ならぬ新学校でいきなりフナッシーはヤバい。合格直後のパルキアはまだ分かるが、今フナッシーは流石に常軌を逸しているだろう。
「え!? まだクラス分けの紙のところにいたんですか!? 描写しないで下さいよ、恥ずかしいじゃないですか」
あっと、やってしまった。小説なんだから描写しなければ良かったのだ。自分が『クラス分けの紙の最前列』という余計な情報を追加してしまったせいで、神崎さんが晒し者になってしまった。後で寝ながら深く反省しよう。
神崎さんは気を取り直して続けた。まだ場所移動をする気がないのは凄いと思う。
「ところで、やっぱりそこそこインパクトのあるトラクター性は必要だと思うんですよ」
「キャラですよね? それだと農家です」
「やっぱりキャラ付けってダメなんですか?」
「あ、いえ。ノーではなく農家と言ったんです」
まぁ、こんなことは画面少し上を見れば分かるんだけどね。
しかし、神崎さんのキャラか。確かにメインキャラクターが無個性ではやってけないだろう。
じゃあ、とりあえず簡単な所から行くか。
「はい。じゃあ、今から神崎さんはダメ口。良いですね?」
「それはだめぇっ! らめぇぇええっ!!」
束の間の沈黙。
「あ、タメ口でお願いします。神崎さん」
「嫌です。無理です。できません。初対面の人にタメ口なんて恥ずかしいです」
「今更、何言ってるんですか……それに未来の両思いの恋人なんですよね?」
「はい。将来的には」
「じゃあ、良いじゃないですか。これが出会いです。自分が神崎さんにタメ口で良いですよって言って、ラブストーリーは突然に始まるんです」
そんなので始まって堪るか。
神崎さんもどうやらラブストーリーは突然に始まるのには首を捻っている。
「雑ですねぇ……まぁ、良いですよ。あ、そうだ! 名前の由来とか訊きます……じゃなくて訊く?」
「何のためにです?」
「文字数稼ぎです。地の文がレッドリストのEX指定なので、これを見て浪費する精神力に対して文字数が少ないんですよね……」
EXて。それもう絶滅してるから。くぅ~疲だから。台本形式だから、それ。
あと、台本形式だからって低い評価入れるのはどうかと思うの。台本形式にも面白いやつはある。
しかし、神崎さんはタメ口というキャラ付けを完全に失念している。
「分かりました。それと、口調が」
「あっ、ごめんなさい。じゃあ、やり直しますね。えーこほん!
文字数稼ぎ。地の文がレッドリストのEX指定なんで、読者がこのクソ駄文を読んだ……いや、見た時に消費する精神力が文字数と釣り合わないんだよ」
「はい。全く持ってその通りです。じゃあ、何で陽彩なんです?」
神崎さんはワンテンポ置いてから言った。
「ヒロインだからです」
「あっ……そうですか。神崎の方は?」
「取って付けた名前です」
なるほど。それならしょうがない。いや、何がしょうがないんだよって話なんだけど。まぁ、取って付いた名前でもないよりはマシだ。でも、もしかしたら固有名詞を使わずに『彼女』とかだけでやった方が雰囲気出たかもしれない。
……無理だな。技量が足りないぜ。誰のとは言わないけど。
「ちなみに、森部さんは? あっ、歩夢は?」
「……………………」
「あのー、歩夢?」
ここは、好機だ。1発ぶちこんでやろう。
「……はっ! ごめんなさい。
「んなっ! わざわざそんな描写しないで下さい。えっちですねえっち!」
「えーと『森部歩夢』の由来ですっけ? 『森部』の方は『モブ』から。下の名前は取って付けた名前です。あゆむってそれっぽいでしょう?」
自分の名前の由来も酷いものだ。まぁ、こんなもんだろう。
しかし、いつまで続くのだろうか、これは。
神崎さんはすっかりキャラ付けを忘れているし。
そろそろ終わりにしようか。
「ところでこれ、いつまでクラス発表の紙の前なんでしょうね」
「それは会話が続く限りですじゃなくて、会話が続く限りだよ」
「じゃあ、もう終わりますか」
「そうですね。文字数も稼げたことですし……じゃなくて、文字数も稼げたことだし」
「最後に良いですか?」
「何でしょうじゃなくて……な、何よ?」
「無理しなくて良いですよ、口調」
「そ、そっちが言い出したくせに! せ、責任……取ってよね……///」
スクショターイム。
自分は会話文のクソみたいに見にくい羅列を切り上げた。
そして、呟く。
「これで付き合う理由付けも出来ましたね」
「そうですね。これからの展開が楽です」
オチはないけど、受験生へのエールってことで。
まぁ、今は高校初日で、自分達って受験成功してるからただの嫌味なんだけど。
神崎:おは☆くっきー!
ナビゲーターの神崎陽彩です!
今回が二回目の『くっきー☆ちゃんねる』!
陽彩、張り切ってお届けしちゃいまーす!
さぁて、お隣にいるのは、陽彩のお手伝いをしてくれる
モブのお兄さん、森部歩夢さんでーす!
パフパフドンドン♪
歩夢:お、わ、WAWA、自分が陽彩様のアシスタントの森部歩夢です!
まだまだ駆け出しなんで名前だけでも覚えて帰ってください! はいっ!
神崎:パチパチパチ♪
さあて、始まったばかりのこのコーナーなんですけど
早速みなさんからのメッセージがドッカーン! と来ています!
嘘だけど。
陽彩、チョー幸せだよっ! サンキュッ!
歩夢:えぇ、そうですね。これもひとえに陽彩様の可愛さのおかげですよね……
神崎:あの、さ
歩夢:はい、何でしょう?
神崎:何で、さ。わたしのその『可愛い』容姿についての描写がないの……?
歩夢:いや、それは……まだ本編も2話目ですし
神崎:言い訳なんざ聞きとうないわぁ!
まだ2話じゃなくて、もう2話だろぉおがぁ!!
大体、このパクコーナー、1回目だし!
歩夢:えっと、せめてパロコーナーと言いましょうよ……
神崎:今までのわたしの外見描写、ほぼゼロッ!
イマジネーション任せにも程があるわ!
トッキュウジャー呼んで来い、トッキュウジャー!
歩夢:で、でも淡い緑色の髪って……
神崎:んな奴現実にいねーよぉお!!
どんな色素遺伝子だこらぁあああっ!!
全然、フツーじゃねぇし、ラブコメにしては
それだけじゃ、いくらなんでも無個性過ぎるだろーがぁ!!
歩夢:わ、分かりました! 髪の毛の色については次回あたりに
解説パートを入れる様に作者と直談判しますから!
神崎:作者とかメタいこと言うなんてサイテー!
歩夢:どの口が言ってます? あ、もう文字数が結構、来てます
神崎:……うにゅ?
う~ん! もうお別れの時間ですぅ!
ハッピーなひとときって、ほんっとにあっという間ですよね?
というわけで、みなさんからの陽彩への質問や激励
本作に対する感想や評価など、送ってプリーズ!
……は催促になるからダメなんだっけ……ええっと……
感想ありがとう!
これ書いてる時、まだ1話目も投稿してないけど!
歩夢:あ……また、次回お会い致しましょう
神崎:じゃあね~!
次話に続く……
でさ、どうなのこれ
どう、と言いますと?
この勢いで次回予告ネタ使っちゃって大丈夫かってこと
大丈夫ですよ。どうせすぐリアルが忙しくなって、一発ネタでしかない本作なんてすぐエタるんで