いた<て普通のラブコメ   作:君の心を因数分解

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これが本当の斜方投射 落ち


いきなりは変われないのは力学的エネルギー保存の法則によるものだって誰かが言ったけど、これ物理の話じゃねぇわ

 日曜日ならスーパーニチアサタイムぐらいの時間に教室に着くと、自分は鞄を下ろして席に座った。隣の席には既に、当真さんが座っていた。ブックカバーの付いた本を読んでいる。その本の大きさと時々覗くページの端っこからして、週刊少年ジャンプである事は容易に分かった。朝のSHRが始まるまで、まだ少し時間がある。自分も本を取り出す。ブックカバーは付いていない。ちなみにだが、自分は基本的にミステリィとか、面白い事が先人達によって保証されているラノベとかしか読まない。恥じらう必要も隠す必要もない。当真さんにアピールでもするかの様に、これみよがしに目次前のカラー絵を開いた。

 「爽やかな朝なんだし、隣の席の人に挨拶ぐらいしろよ」と誰かが脳内で言った。誰だ。しかし、そんな誰かさんに言い返したい。お前らはどうなんだ、と。

 お前らだって隣の席の女子に学生時代、挨拶なんてした事ないだろう?

 それがリアルだ。現実は小説よりも平らなり。

 第一、自分らが高校に入学して、まだ3日だ。そういうイベントがこんな早くに起きたら不自然極まりない。

 と、暇潰し的思春期学生特有の痛々しいモノローグをしていると後ろから声が聞こえた。少し横目で声の主を確認する。当然と言っては何だが神崎さんだった。ここで、安易に返事をすると妖怪不祥事案件で言う所のいわゆる……「女子に手を振られたと思って反射的に手を振り返したら、自分じゃなくて後ろの人に向かって振ってただけだった」になってしまう可能性がある。まぁ、本作には数える程しか登場人物はいないので、そんな心配はいらなかったかもしれない。

 

「あぁ、神崎さんですか。おはようございます」

「はい、神崎です。おはようございます。何、読んでるんですか? あ、最近流行りの超怒涛級ラブコメですか」

「最近……?」

 

 そんな00年代みたいな。

 神崎さんはくるりと体を回して当真さんの方を向いた。そして、手をブンブン振りながら言った。

 

「やっはろー!」

 

 当真さんはそれとなく後ろをチェックした。どうやら、自分と当真さんは思考回路の基盤が似ているらしい。

 しかし、どれだけチェックしても後ろには誰もいない。

 当真さんは週刊少年ジャンプを閉じると、恐る恐る返答をした。

 

「お、おはよう……?」

「あれ? おかしいですね。最近流行りの挨拶で挑んでみた所存なんですけど」

「最近……?」

 

 最近かと言われると微妙な所だ。やはり神崎さんの時間感覚は間違っている。

 神崎さんは自分と当真さんの席の間に立つと、自分と当真さんをチラチラ交互に見た。

 当真さんは困惑していた。自分も困惑した。

 

「あの……何か用ですか?」

 

 当真さんがいたたまれず神崎さんに訊いた。神崎さんは首を左右に振るのを止めて答えた。

 

「いや、特に何も。初対面のクラスメートに用事なんて事務的なもの以外ほとんどないものですし」

 

 初対面だったのか。初対面で「やっはろー!」はハードル高いて、神崎さん。

 

「そうですね。無理して用事を絞り出すなら……」

「無理すな! あっ、ご、ごめんなさい……」

 

 やはり当真さんは真性のツッコミだ。何ともベタなボケにも即レスでツッコむのが何よりの証拠だろう。

 

「最近の流行りの挨拶ってどんな感じなんでしょうか? 教えて下さい」

「えぇっと……?」

「丁度、隣も私の知り合いなので、隣のこれに実践してみてくれませんか?」

 

 これ呼ばわりされる自分。そして、この流れはマズい。

 普通に考えれば分かると思うが、ここで自分も参戦すれば二人以上の人間が入り交じった会話になる。そして、自分と神崎さんの口調は大体同じだ。ようするに、凄い面倒くさく、分かりにくい。

 

「やっても良いですけど、その前に一つ良いですか、神崎さん?」

「はい。何でしょう」

「自分と当真さんが喋ってる間は黙っておいて下さいね」

「はい!」

 

 元気な返答だった。うん、怪しい。

 

「じゃあ、やりましょうか」

「何で、あんたが主導権持ってるのよ。あたしが訊かれたのに」

「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ、絵馬さん」

「誰が木板だ」

「そうですね。板はどちらかと言えば神崎さんですもんね、隠岐さん」

「そうそう。あたしはおっきい方…………なんて言うと思ったか! バカじゃないの?」

「そんな会殺みたいな事言わないで下さいよ」

「殺してないわ!」

「そんな事言われたら、女の子は惚れちゃうんだからねっ///」

「頬を染めるな! あと、あんたは女の子じゃないから関係ないでしょうが」

「でも、この時代に他人を見た目で判断するのはあまりよろしくないと思いますよ、夏目さん」

「誰がC級隊員だ!!」

「でもおっぱいはC級ですよね」

「うっさいわ!」

 

 会話が一段落したところで自分と当真さんは同時に神崎さんを見た。神崎さんはふふんと頷くと、おもむろに携帯を取り出して開いた。

 

「ちなみに、『携帯を開いた』って表現が最近の子供には伝わらないんだとか」

「2回目ですけど字の文に反応しないでもらえます?」

「あー……ごめんなさい。つい」

 

 神崎さんが携帯から顔を上げたのと同じタイミングで、自分の携帯がバイブレーション機能を発動した。ようするに通知が来た。ようさなくても通知が来ただけ。

 しかし、携帯よりも目の前の人間を優先するのが常識でありマナーである。

 これは後で見よう。

 暫しの間、沈黙が降り立った。当真さんが言った。

 

「見なさいよ」

「でも、目の前の人を優先するのが常識ですよね」

「いや、だからどう考えても目の前の人からでしょうが」

「生憎ですけど自分はシュレディンガーの猫ならコペンハーゲン解釈を採用しているので」

「あんた、論点もブレブレなんだけど」

「上手いこと言いますね。でも生憎ですけど、ブルブルしているのは携帯の方です」

「じゃあコペンハーゲン解釈じゃなくない?」

「解釈の仕方もフィフティフィフティなんです」

「……量子力学ってよりは文化人類学を修めてそうな言い種ね」

 

 はぁー、っと大きな溜め息を吐く当真さん。いやしかし、その言い種はないだろう。文化人類学に一体何の偏見と恨みがあるんだ。

 このままでは話が進まないのは流石に分かっている。

 自分は「失礼」と言いながら携帯を取り出した。ちなみに、ガラケーではないので開けない。

 そこには顔文字も絵文字も一切使っていない淡白な文章が合った。

 

 

展開が思い付かないので終わります

 

 

 メールのタイトルは『でうすえくすまきな』だった。

 


 

 

『The wolf knows what the ill beast thinks, but I'm not wolf(蛇の道は蛇って言うけど、人間だし)』

 

ども! HERO & MORRY のキャンディーはすぐに噛んじゃう方、森部です!

 

お、まぁた出てきたか、このネタ!

 

お前は一体何者だ?

 

……って聞いても教えてくれなさそうだな!

 

次回 HERO & MORRY

 

ざ……う、うるふ……のーず、わっとざ…………?

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