GATE 近未来日本国国防軍 彼の地にて斯く戦えり   作:国防アレキサンダー

12 / 21
ちょっと今回の話、長くなった上に宇宙SFチックなものが出てきます。


EP.11 第三偵察隊、炎の遭遇

 特地には、様々な宗教が()()()()

 錬金や太陽、音楽に戦いなど、程度はどうであれモノや概念に根付いている。

 それらの神々は()()()()()()、実際にこの世界を見定め操っているのだ。

 だからこそ、そんな神々には当然、教団や神官が存在する。さらにはこの世界にはそんな神々の力を借りた使徒、亜神と言う存在もいる。

 彼女──ロウリィ・マキュリー──もまた神官であり亜神の一人であった。巨大なハルバードを手に旅する彼女が見つけたのは、興味深い一団だった。

 蟲のような脚がついた鉄の荷車に、班模様の兵士たち。その中には不思議な雰囲気を持つ女の兵士もいる。彼らは盗賊達を一瞬で蹴散らし、足の速い乗り物に乗り、そして人間とは思えないほどのお人好しだった。

 なぜなら、彼らは避難民を連れていたのである。

 

 話してくれた女兵士の言う通り、彼らを逃すのに手助けをしているそうである。

 帝国の兵士でもそんな事はしない。むしろ、これ見よがしに避難民達から金品を略奪して逃げ去って行くのだ。

 だが、彼らはそうしなかった。それどころか見ず知らずの避難民達を逃すのを手伝い、尽力し、既に多くの人達から感謝されていた。

 

「うふふ♪中々良い乗り心地ねぇ」

 

 彼女は今、その鉄の荷車の中に座らせてもらっている。しかも、伊丹の隣であった。

 ロウリィは班の集団が避難民を逃していると知ると、しばらく付いて行く事にした。彼らが態度を豹変させないか確かめる意味もあったが、単純に興味を引かれたのも事実である。

 

「これ、放っておいていいのー?」

「いやー、付いて行くって聞かないから、しょうがないさ……」

 

 伊丹の直ぐ隣にロウリィが詰めて座っている形なので、ものすごく狭い。だが後部座席は怪我をした避難民達で埋まっている為、ここしか席がないのだ。

 

「にしても暑いな……」

「ええ、それになんか嫌な予感がしますし……」

「おまっ、馬鹿っ、フラグ立てるんじゃない!」

 

 伊丹が不吉な事を言う倉田を宥めていると、確かに後ろからぞわぞわとした感覚が襲った。振り返っても、そこには何もいない。

 強いて言うなら飛龍が居た。人は乗っておらず、どうやら野生のようである。

 だがこっちに来る可能性もあるので、警戒態勢を伝達しようとした瞬間──

 

「っ!?」

 

 その飛龍が、ナニカに食われた。飛龍よりも更に巨大な怪物の口が、飛龍を一口に噛み砕き絶命させた。その赤い鱗を見て、伊丹は叫んだ。

 

「──ッ!!後方に炎龍だ!総員戦闘体制!」

 

 炎の龍が、大地に降り立った。破壊と殺戮の赤い厄災が、人々に襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 炎龍が飛び立ち、風圧が地面の人間達を吹き飛ばしていく。人は飛ばされ、馬車は強風に煽られ横転し、子供はその下敷きとなって死んでしまった。

 逃げ惑う人々。しかし炎龍の恐怖は畏れ多く、馬すらも恐怖で暴れてしまう。暴走した馬達が人を轢いてしまい、馬車と衝突し、さらなる被害を生み出す。

 生き延びようとする人、隠れてやり過ごそうとする人、神に祈る信心深い人。

 その全てに対して、炎龍は無情な炎を噴き出した。岩すら溶かす強烈な炎が、人馬を焼き尽くし、辺り一面を地獄にする。

 それだけでは終わらない。炎龍は逃げ惑う人々に口を広げ、牙で食い殺した。生きたまま食われ、骨や肉を噛み砕かれるのは、地獄の苦しみ。

 

「母ちゃん!こっち来るよ!」

「メリザ!立つんだ!」

 

 先ほど第三偵察隊に助けられたメリザとその一家も、再びの危機を迎えてしまった。しかし、メリザは足を挫いてしまいうまく動けなかった。

 

「アタシの足はもうだめだ、あんた達だけでも……」

「何を言うんだ!一緒に逃げ……っ!」

 

 炎龍がこっちに気づいた。強大な怪物にとって、足を怪我した弱き生き物など餌に等しい。炎龍はメリザ達に向かって大口を開けた。

 

「あ……ああっ……」

 

 炎龍は口の中に炎を蓄え、そしてそれをメリザ達に放った。囂々と燃える火焔放射が、メリザ達を焼いて苦しめようと迫る。

 だが、そうはならなかった。

 目を瞑り、迫り来る死を覚悟していた。しかし、待てども炎の苦しみはやってこない。熱くはあるのだが、何故か体は燃えていない。

 恐る恐る目を開けると、そこには一家三人を守るように、巨大な盾が構えられていた。ただの盾ではない、炎龍の炎すら遮る魔法の大楯であった。

 

「だいじょうぶー?」

 

 盾を構えたのは、茶髪の女だった。手を使わずに四枚の盾を積み重ね、メリザ達を守ってくれたのだ。

 

「あ、あんたは──」

「急いで逃げてよねー、私が引きつけている間に、さあ早く」

 

 飄々とそう言った彼女は、炎龍に対して立ち向かおうと巨大な杖を構えた。

 メリザが立ち上がり、急いで逃げようとすると、後方から彼女の仲間達が鉄と荷車で駆け付けて来た。

 

 桑原を始め、偵察隊の全員が戦闘体制に入った。無論、避難民を助ける為である。最悪の場合は自分達を囮にして逃げる時間を稼ぐ為に。

 

E.L.I.D.(バケモン)との戦闘経験はあるけどよ!こんな所でもおっ始める事になるとはな!走れ倉田ぁ!」

「わかってますから!蹴らないでください!」

 

 見れば、自分たちが駆けつけるまでの間にかなりの避難民達が炎龍によって焼き殺されているようだった。

 だが伊丹は、この状況下でも冷静に部隊の指揮をしていた。手に持った38式自動小銃を構え、ひたすらに撃ちまくる。そしてドラゴンを避難民から引き剥がす。

 

「42式は避難民の保護を!」

「了解だよー!」

コガネムシ(32式多脚装甲車)、ドラゴンを牽制しろ!AGLを叩き込め!」

「了解!」

 

 32式多脚装甲車の上部に取り付けられたAGL、自動擲弾銃がグレネード弾を炎龍へ撃ち込む。

 レーザー誘導でその場所へ真っ直ぐ飛んでいくように進化したグレネード弾が、後部のフィンを展開してレーザの先へ誘導された。

 しかし、炎龍に対してはどこに当たって炸裂してもまるで効いていない。それどころか興奮させるだけである。

 

「全然効いてないっスよ!!」

「構うな!当て続けろ!」

 

 隊員達はとにかく自分達に注意を向けるべく、牽制を続けた。しかし、やはりと言うべきか炎龍に対しては全く銃弾が効いておらず、むしろ反撃して来る。

 口の中が光り、炎龍の高温の炎が繰り出された。直前で倉田がハンドルを切りその攻撃を避けるものの、焼かれた地面は赤く溶かされ、その威力を物語る。

 

「うぉおっ!?あんなの食らったら無事じゃ済まないっスよ!」

「速度を緩めるな!相手の攻撃を予測して回避しろ!」

 

 いくら軍用車両に耐火耐爆構造が加えられていても、岩を溶かすほどの高温に耐えられるとは思えない。

 ましてや火炎放射だけでなく、鉤爪や尻尾による物理攻撃もあるのだ。吹き飛ばされたら車体は横転し、中の避難民達が危なくなる。

 そして、予想通り炎龍がまとわりつく装甲車達を吹き飛ばすべく、尻尾を大きく振りかぶろうとする。

 

「させないよ!」

 

 その一撃を止めたのは、42式の装甲板であった。四枚重ねられた装甲板を用いて尻尾を受け止め、受け身を取る事で軌道を逸らしてやった。

 

「倉田、回り込むぞ!後方から挟み撃ちにして──」

「ono!」

 

 その時、後ろから凛とした声が伊丹の耳に届いた。あの金髪エルフ少女である。

 

「yuniryu!!ono!!」

「目を……?」

 

 彼女は必死に自分の碧眼を指差し、大きく叫んでいた。言葉の意味は分からなかったが、伝えようとしている事は分かった。

 

「全員目だ!目を狙え!!」

 

 隊員達の38式小銃が、自動擲弾銃が、そして42式の散弾の全てがドラゴンの目に向かって放たれる。

 流石にドラゴンでも弱い箇所である目の付近。そこに銃撃が浴びせられるのに対して危機感を覚えたのか、ドラゴンは翼を広げて身を包み、目元を隠した。

 

「ドラゴンが怯んだよー!」

「今だ勝本!スパルタンレーザーを!」

「了解!!」

 

 後続の勝本が取り出したのは、巨大な鉄で覆われた円筒である。それは炎龍相手でも十二分に通用するであろう、光の筒であった。

 

──携行式対物レーザー。

──又は、スパルタンレーザー。

 

 この武器は、高出力の携行式光学兵器である。目標に直接狙いを定めトリガーを引くと、短いチャージの後に強力なレーザー光線を発射し対象を攻撃する。

 そのレーザー光線は非常に強力で、軽装甲車両やUAV程度なら確実に撃破できる。多脚戦車などの重装甲車両に対しても、致命傷とまではいかなくてもかなりのダメージを与えることが可能だ。

 第三偵察隊に配備された装備の中では最も強力な武器であり、もしもの時に期待されていた。それがまさか、ドラゴン相手に撃つ事になろうとは思っていなかったが。

 

「おっと、対閃光防御」

 

 ちなみに、いくつか欠点として上げるとするなら、撃つ際に出る強烈な可視光が挙げられる。射手に障害が残るかもしれないので、サングラスをかけるのを忘れてはいけない。

 だが今回は伊丹や42式を含め、他のメンバー達も思わずツッコんだ。

 

──遅い!さっさと撃て!

 

 ……と。

 そして今度こそ、勝本はトリガーを引きレーザーの発射体制に入る。3秒間のチャージ中、常に照準を向け続けなければならないのだが……

 

「おっと!?」

 

 道の凸凹が酷すぎたのか、勝本の乗るLAVが大きく揺れた。タイミングが悪く再びトリガーを引いてしまい、チャージしたレーザーがあらぬ方向へ真っ直ぐ光る。

 完全に外した。そして炎龍も未知の武器に危機感を感じたのか、一瞬動きが怯む。

 

「外しちゃったー!?」

 

 思わず42式が叫び、彼女に一瞬の隙ができた。

 

「やばっ!?」

 

 炎龍の鉤爪が42式に振りかざされ、彼女は咄嗟に装甲板を重ねて防ごうとする。だが巨大な怪物の怪力は四枚の装甲板を粉々に粉砕し、42式を吹き飛ばしてしまった。

 

「きゃっ!?」

 

 地面を転がる42式。先ほどの衝撃で粉砕された装甲板が体に突き刺さり、彼女の右足は炎龍の鉤爪によって切り裂かれた。

 機械の身体なので簡単に壊れることは無いだろうが、避難民を誘導していた彼女がやられた事は大きな打撃だ。伊丹は彼女を心配して叫ぶ。

 

「42式!くそっ!もう一度目を狙え!」

 

 再び伊丹達は炎龍の顔に集中射撃を浴びせた。

 

「まだまだー!」

 

 42式も意識があるのか、地べたを這いながら牽制射撃に加わる。そのうちに再び翼を広げて身を守り、地面に釘付けになる炎龍。

 スパルタンレーザーの残弾はあと2回分ある。再び撃ってこの地獄にケリを付けなければ、今度こそ炎龍を止められない。

 

「東!今度は揺らすなよ!」

「無茶言わんでください!」

 

 勝本が再びチャージを開始しようとトリガーを引く。レーザーの予備照射を感知した炎龍が照準を避けようとする。また避けられるか、と思ったその時だった。

 

「っ!?」

 

 炎龍の足元が崩れ、紫のスパークと共に地面が割れた。右足から傾いた炎龍はバランスを崩し、レーザーの照準に入る。

 

「今よぉ!」

 

 ロウリィが手に持ったハルバードを投げ、地割れを起こしたのだった。それを合図と受け取った勝本は、スパルタンレーザーのトリガーを引いた。

 閃光、轟く甲高い音。

 レーザーが命中したのは炎龍の左腕だった。光の一直線は鱗を突き破り、中の肉を焼き切り、まるで剣の如く中身を切り裂いていく。

 焼けるような激痛が、一瞬の隙に過ぎ去ったかと思うと、炎龍の腕が大きく切り取られていた。バランスを崩した炎龍が地べたに這いつくばり、伊丹たちを睨む。

 

「よし、このまま止めを……」

 

 だが、伊丹の命令が届く寸前に炎龍は身を守る為に素早く行動した。無事な翼を羽ばたかせ、周囲の土を舞いあげ煙幕の様に目を眩ます。

 風圧に耐えようと、LAVにしがみついていた伊丹は、その後すぐに炎龍が空高く飛び去るのを確認した。どうやら手負いで不利なのを悟って、逃げることを優先したらしい。

 

「終わったか……」

 

 炎龍はそのまま空高く飛び上がり、高い空へと逃げて行った。

 

 

 

 

 

 

 戦闘後、伊丹達は42式の回収と損害の確認、そして避難民達の手助けをしていた。負傷者や遺体の埋葬を行い、それら膨大な仕事が終わる頃には日が暮れてしまった。

 墓の前で黙祷を捧げる伊丹達とロウリィ、そして黒川に肩を支えられる42式。

 身内を亡くした子供や怪我人は、行く当てもなくただただ泣くしかなかった。これが一番の問題である。そんな様子を見た伊丹は、彼らの面倒を見れないかと村長に聞いた。しかし、彼らにもそんな余裕は無く自分達のことで精一杯である。

 薄情なように感じるが、ここは人助けの感覚がまだまだ薄い中世の価値観。無事な人々はそのまま近隣の街などに行くと言うが、行く当てのない子供や怪我人をどうするかが、一番の問題だった。

 

「さてー、イタミはどうするのー?」

 

 42式が伊丹に聞いてくる。足を損傷している為、彼女は黒川に肩を持ってもらっている。

 不安そうに見つめる子供達。本部に通信を入れて指示を仰げば、置いて来いと言われるのが目に見えている。

 

「うーん……ま、いっか」

 

 けれども、彼らを見捨てるのは忍びない。

 

「大丈夫!任せて!」

 

 そう言われた子供達の表情が明るくなり、隊員達も安心した。

 

「全員乗車!アルヌスへ帰投する!」

『はい!』

 

 全員の掛け声を聞き、伊丹は笑ってみせた。42式もいつも通りの伊丹だと思い、安心した。

 

 

 

 

 

 

 

数日後

帝国領 近隣の街

 

 避難民が避難して来た近くの街。

 その酒場では、とある噂話で持ちきりだった。

 

「炎龍が撃退された!?」

 

 その言葉を聞いた客達は物凄い驚き様であり、話を振った女給は楽しくて仕方がない。だが、あまりに荒唐無稽な話であるが故、信じられないとも言われる。

 

「無理だ!魔道士やエルフだって炎龍を撃退するのは不可能だ!」

「でもよ、実際コダ村の被害は4分の1で済んだんだぜ?誰かが守った証拠じゃないか?」

「んなもん、新生龍や翼龍の間違いじゃねぇの?」

「一体誰が……」

 

 酒場が噂話の真相に大盛り上がりする中、その様子を隅の席から見ていた集団がいた。赤毛の髪をしたピニャ・コ・ラーダ、付き添いの茶髪の女騎士、そして男性騎士二人の薔薇騎士団のメンバーである。

 

「あの噂話、どう思われますか?」

 

 茶髪の女騎士が、他の騎士達に聞く。

 

「どうって……汚い酒場に不味い酒と飯としか……」

「ノーマ、我らはアルヌスへの隠密偵察中。単なる噂話でも、重要な情報なのかも知れぬのだぞ?」

 

 若い男騎士ノーマの愚痴を宥めるのは、彼よりも大柄な老人騎士のグレイである。ノーマとて隠密行動中でなければこんな安い酒場に屯したくないのだが、他に食事の場も、情報の場も無いので致し方ない。

 

「二人とも声が大きいぞ。ハミルトン、続けてくれ」

「はっ、流行りの噂話です。緑の服に骸骨の鎧を着た傭兵団が、コダ村の住民を避難させていた時、実際に炎龍を追い払ったそうです」

 

 ハミルトン、と呼ばれた茶髪の女騎士がその噂の詳しい解説を行う。だがその内容はあまりに信じられない。人間の傭兵団が炎龍を追い払うなど、不可能な話なのだ。

 

「龍と言っても翼龍から新生龍まで色々いるし、見間違いじゃないのか?」

「ホントのことだよお客さん」

 

 と、話を聞かれていたのか女給が割り込んできた。酒のお代わりをテーブルの上に置くと、話を続ける。

 

「私はこの目で見たんだ。あれは本当の炎龍だったさ」

「ハハハッ、私は騙されないぞ?」

 

 ノーマは信じない方向であるが、ハミルトンとしては気になる話なので、わざと乗ってみる。

 

「よかったら、龍を倒した連中の話、詳しく聞かせてくれない?」

「うーん、どうしようかねぇ?」

「私は信じますよ?」

 

 ハミルトンはそう言って金貨一枚を差し出すと、女給はサッとそれを取り上げると、大喜びした。

 

「ありがとうよ、若い騎士さん。これはとっておきの話をしないとね」

 

 女給は一旦咳払いをすると、詳しい話を始めた。先程まで信じる気のなかった他の客たちも、どう言う連中なんだと気になり話を聞き入る。

 

「まず、コダ村から逃げるのに助けてくれた緑の連中は14人居た。その内、4人は女だったよ」

 

 酒場の男達が、女の存在に色めき立つ。男ってのは変わらないねぇ、と思いつつも、女給はその話を進める。

 

「一人は背の高い女で、綺麗な黒髪の異国風美人って感じ。もう一人は小柄で可愛い子、牛みたいな胸をしてたけど、ちゃんと腰はくびれていたよ」

「おいおい、もっと詳しく」

「仕方ないさ、その二人とは言葉が通じなかったんだから」

 

 女給は話を続ける。

 

「ただ、残りの二人とは言葉が通じてね。二人とも不思議な雰囲気だったよ。まるで神が細工した木彫り人形みたいな、そんな子達だった」

 

 その言葉に男達が注目して、より詳しく聞き入る。

 

「一人は連中の指揮をとっていた男によく付き添っていた。上等な馬の尻尾みたいに束ねられた茶髪が印象的でねぇ、私も女ながらに惚れちまったよ。喋り方はなんか浮いていたけど、むしろそれが子供達に大ウケで、よく遊んでいたよ」

 

 おお、と男達が鼻の下を伸ばして色めき立つ。酒場が盛り上がるのを見て、女給は面白くて仕方がない。

 

「もう一人は……聞いて驚け、なんと小さな女の子だった。誰よりも年下っぽくてね、短い黒髪だったが一部だけ赤い毛も混じってたよ。ただ、右腕が義手だったね。あれはどうやって動かしていたんだか……」

 

 小さな女の子、と聞いて流石に鼻の下を伸ばす男はいなかったが、それでも傭兵団の中に女の子がいる話には興味が集まる。

 

「さて、その女の子なんだが、私と家族の荷車が泥濘に嵌まった時に助けに来てくれてね。荷車を押すのを手伝ってくれたのさ」

「おいおい、女のガキが荷車を押したのか?」

「一応、初老の男も一緒だった。けどあの時の私は嘘だろ、って思ったねぇ。だって少し押すだけで、荷車が泥濘から抜け出したんだから」

 

 男達がその言葉に、驚きを隠せない。泥濘嵌まった荷車を押して抜け出すなど、並の男でも難しいのだ。

 

「それで……炎龍の話は?」

「そうだねぇ、そろそろその話をしよう。……村から離れて数日、乾いた土地を歩いていた時、私たちは喉も乾いて、腹も減って、限界だった」

 

 いよいよ炎龍の話になると聞いて、酒場の客達は固唾を飲む。

 

「せめて息子だけでも緑の人に……って思っていた時、ヤツが現れたのさ」

「炎龍か?」

「そうだ。あれはまさしく炎龍そのものだったよ」

 

 酒場は静まり返り、彼女の話を黙って聞いていた。

 

「周りの人達が焼かれて、私ももうダメだって思った時……なんと、茶髪の女が人一人を覆うようなでっかい盾で守ってくれたんだ」

 

 炎龍の炎を盾で防いだと聞いても、酒場はもう驚かない。彼女の真剣な話が伝わった様だ。

 

「それから、緑の人らが馬よりも速い鉄の荷車で駆けつけてきてね、私たちから炎龍を引き剥がそうとしてくれた。彼らは魔法の杖で攻撃を始めたんだけど、炎龍には効きやしない。だから隙を作って、アレを出したんだ」

「アレ、とは?」

 

 ハミルトンが聞く。

 

「光の魔筒」

 

 聞いたことのない言葉に、酒場の連中は顔を見合わせた。

 

「特大の魔法の杖で、多分特別な魔法さ。そいつに『タイセンコウボウギョ』って呪文を唱えると、筒に光が集まって、それが刃になって迸った。ありゃ、天の雲すら貫くんじゃないかと思ったねぇ」

「それで、どうなった?」

「一回は外れたけれど、もう一回は炎龍がコケたせいで当たったんだ。するとその光の刃が炎龍の片腕を焼き切って、そのまま切り落としたんだよ!」

 

 酒場の男達はシン、と静まり返っていた。どうやら話が飛躍しすぎて信じられない人もいるらしい。

 

「信じらんねぇ……あの炎龍の鱗を焼き切るって……」

「信じないならそれでいいさ。けど、全部この私がこの身をもって味わった事だからね?嘘偽りは無いさ」

 

 信じるか信じないかはお前ら次第、と言って女給の話はそれで終わった。

 

「立派な者達です。異郷の傭兵団の様ですが、それだけの腕前と心映えなら、味方に引き入れることができれば……」

「そうだな。だが妾はその連中が持っていた『魔法の杖』とやらが気になる。女給、その魔法の杖とはどの様な見た目であったか?」

 

 再び金貨を差し出すと、女給は終わった話をもう一回してくれた。

 

「気前のいい騎士さんだ。……あの杖はいろんな形があったけど、全部黒かった。細長くて先端に筒が付いていて、撃つときにバンッ!って甲高い音が鳴り響いていたよ」

「全員が持っていたのか?」

「ああ、全員形は違えど持っていたね。女でも操れる代物だったよ」

 

 その言葉に、ピニャは思考を照らし合わせる。

 

「おーい!エールもう一丁!」

「こっちはマ・ヌガ肉追加で!」

「はいよ!ちょっと待ってくれ!」

 

 そう言って女給は仕事に戻って行った。

 

「コダ村はアルヌスに至る道のりで1番近かった筈だ。もしや……」

 

 ピニャの思考は、緑の傭兵団とアルヌスとの関連性に絞られていた。




・38式自動小銃
国防軍が採用している自動小銃。ホログラムで残弾やエグゾの状態が表示されるように作られており、20mmレールも多数あるので汎用性が高い。

・スパルタンレーザー
日本国国防軍が採用している携行式の対物レーザー。3秒間のチャージの後、装甲を破壊する威力を持つ高出力のレーザーを発射。アクティブ防御システムなどをすり抜け、対象物を攻撃する事が可能。
欠点としては強力な閃光の他、射程が短かったり、装置が重い事による高機動目標への対処のしづらさや、チャージを逆探知され反撃される恐れがある事等が挙げらる。あくまで軽装甲目標や低空の航空機に対して対処する兵器。
ちなみに開発元はドイツ、日本ではライセンス生産で配備している。
元ネタはHALOシリーズに出てくる武器、スパルタンレーザー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。