GATE 近未来日本国国防軍 彼の地にて斯く戦えり   作:国防アレキサンダー

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前回に引き続き、イタリカ編です。


EP.16 イタリカ防衛戦、戦乙女の騎行

 

 少し時を巻き戻すと、イタリカの空の制空権は飛竜が握っていた。

 調教技術の進歩と練度の高さから可能になった夜間飛行の技能を持ち合わせ、飛竜を一体も持たないイタリカの空を蹂躙していた。

 盗賊が持ち込んだ飛竜は2体、しかしその2体だけでも今のイタリカには重大な脅威だ。

 そもそも飛龍を地上から倒すなど無理な話。バリスタなどを用いても当たることのない機動力と、容易に貫けない鱗の装甲、そして空から一方的に撃ち下ろす火炎弾が、飛竜を()()()()()()()最強の航空戦力にしていたのだ。

 

 そして今回の夜襲にて、二人の竜騎士は面白い獲物を見つけた。

 

 火に照らされ細々と見えるイタリカの情景の中に、一際素早く動く荷車の様な物体が居た。その荷車は真っ直ぐ東門へ向かい、勢いよく町を駆け抜ける。

 盗賊に成り下がりし竜騎士は舌舐めずりをした。

 あの速さの荷車、相当上等な馬で引いているのだろう。だとすると中にいるのは練度の高い増援か、何にしろ戦力であるのは間違いないだろう。

 だが所詮は地を這う荷車、飛龍の攻撃には手も足も出ない。

 竜騎士はもう一人の仲間に合図し、その荷車を狙うべく仕掛ける。

 手綱を引き、一気に降下。風に任せた急降下によりぐんぐん上がる待機速度と、大きくなる的。そして狙いを定め飛竜の口を開けた。

 

 だが、その口目掛けて赤い閃光が解き放たれた。

 

「え?」

 

 狙われたのは、後ろから着いて来ていた仲間の飛竜と竜騎士だった。後ろを見れば、開口部からナニカに尻尾まで貫かれ、ゆっくりと墜落していく仲間が見える。

 一瞬の焦げ臭い匂い。

 脳裏に浮かぶ恐怖。

 あれは、アルヌスの丘で見た閃光だ。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 トラウマが蘇る。

 この盗賊竜騎士は、元々アルヌスの丘へと進軍した連合諸王国軍の中に所属していた。だが、あの時目にしたのは華々しい竜騎士同士の戦いなどではなく、一方的な蹂躙だった。

 光弾が、閃光が、光の矢が、飛竜に向けて百発百中で放たれれば、その一撃で飛竜達が次々と墜とされる。

 まるで竜騎士など必要ないとばかりに、地上からのナニカによって粉々にされる仲間の竜騎士達。

 彼が生き残ったのは、飛竜の方が危機管理能力が高かったからに過ぎない。突然制御を離れ、地上に向かって急降下したのがこの相棒の飛竜だった。

 そして今回も、恐怖で動けなくなった竜騎士を放り出して飛竜は逃げ出そうとする。一気に高度を下げ、東の方向へ逃げ出した。

 

「や、やめろぉ!言うことを聞けぇ!!」

 

 ヒステリックに叫ぶ竜騎士などお構いなしに、飛竜は生存本能のまま降下し速度を稼ぐ。

 だが頭が良いと言われる飛竜も、その閃光は一瞬の事で避けられなかった。

 

 ジジッ、と言う音と共に光に貫かれた。

 

 愚かな竜騎士と運のない飛竜が死に際に聞いたのは、自分の肉が焼け焦げる音であった。

 

 

 

 

 

 

 

 その光を放ったのは、荷車の上に乗せられた重厚な機械である。上部に簡単な固定のみで乗せられたこの鉄の機械こそ、IDL小隊が操るレーザー砲である。

 

「飛竜を一騎撃墜!」

「もいっちょ!」

 

 射手のアイナが再び引き金を絞り、電力のチャージを開始した。

 中距離高出力レーザー砲は二つのレーザー光線を使い分けることが出来る万能兵器である。普段は人間一人を殺傷する程度の低出力レーザーを、持続的に照射し続ける機関銃のようなモードを用いる。

 しかし簡単な操作でモードを切り替え、さらに高出力のレーザー光線を放つことができる。電力を数秒間チャージし、装甲車や戦車などの装甲ですら貫く一撃の光線を浴びせる。

 

「逃げるな!」

 

 その威力は、空の優位位置から降下してきた飛竜に対しても絶大な威力で貫いた。そして今、恐怖から冷静さを失い一目散に逃げようとする飛竜に対しても、威力を振るった。

 

 再びの閃光、見事に飛竜を焼き切り撃墜した。

 

「やったぁ、2騎とも撃墜──ってうげっ!?」

「ちょ、アイナ!?」

 

 侵略者を倒して喜ぶアイナであったが、乗っていたLAVのハンドルが急に右に切られた為、思いっきり左側へ転倒する事になった。

 

「ちょっとぉ!倉田さん!」

「アイナこそ気をつけろ、もうすぐ東門だぞ」

 

 伊丹がアイナに注意しつつ、弾丸の最終確認を済ませた。後ろでは栗林と42式も戦闘準備を整える。

 一方のロウリィは、もう姿が見えなくなっていた。最短ルートで屋根を登って東門まで駆けつけた様だ。

 

「隊長、もうすぐです!」

「人混みの手前で停車!すぐ降りるぞ、ドア開けとけ!」

「了解だよー!」

 

 42式と栗林がそれぞれ飛び出す為のドアを開け放ち、LAVは人混みの手前で急停車した。衝撃体勢を取っていた四人は、停車を確認するなりLAVを飛び出した。

 

「うらぁぁぁぁぁ!!!」

 

 と、飛び降り降車と同時に飛び出して行ったのは栗林だ。伊丹と同じく銃剣を装着し、人混みをかき分けて柵を飛び出していく。

 

「あのバカっ!」

「援護する!42式、前に出るぞ!」

「了解だよー!」

 

 三人も栗林に続き、人混みを掻き分け柵の外へ出た。そこでは既に激しい近接戦闘が始まっていた。

 

「突撃にぃ、前へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 城門の外では、より大きな地獄が巻き起こっていた。

 最初に気づいたのは矢を防いでいた精霊使いの少女、ミューティーだった。彼女はセイレーン種の女性で、元は遠く離れた小島で一族と暮らしていた。

 しかし偶然知り合ったヒト種のロクデなし男と故郷を飛び出した後、傭兵として連合諸王国軍に加わりアルヌス攻略戦に参加。

 しかし、恋人共に大した活躍はできず連合諸王国軍は壊滅。生きながらえる為、そして恋人についていく為にイタリカを襲う盗賊団に加わっていた。

 鳥の亜人特有の危機管理能力の高さは、本能としてミューティーの背筋をピリピリと焼く。隣にいる恋人に危機を知らせるが、彼は素知らぬ顔でイタリカでの勝利ばかり考え、周りなど見ていない。

 これが終わったら縁を切ってやる、と思いつつもミューティーの本能は「この場を離れるべき」だと警告し続けていた。一歩後ずさり、そわそわと周りを見る。何か、変な音が聞こえていた。

 その時、ミューティーの目が何かをとらえる。

 東の方向から、何かの人影が現れた。

 

「え?」

 

 ただの人影ではなく、空を低く飛んでいた。

 その地面には、象のような影が見える。

 何かの音楽も、同時に聞こえる。

 

「あ……!」

 

 その時ミューティーは、その人影の正体を悟った。

 自分の死も、脳裏に思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 最初に攻撃を放ったのは、35式多脚戦車の主砲だった。

 イタリカの穀倉地帯をキャタピラで踏み鳴らしつつ、戦闘状態に入った30式。攻撃開始を命令された18両の多脚戦車中隊は、蹂躙の火ぶたを切る130mm砲の安全装置を解除、AIがトリガーを引いた。

 長い砲身から穿たれた砲弾が、低い放物線を描いてイタリカの城門付近に炸裂した。爆裂とその破片が盗賊たちを吹き飛ばし、粉々に引き裂いていく。

 

『よし、先陣は崩れた。全機散開し、盗賊の左右から包囲せよ』

『了解!』

 

 いきなりの爆発に腰を抜かした盗賊たちを、さらに外側から囲むように戦術機中隊が包囲を始めた。雨宮大佐の迅速な指示『49式戦術歩行戦闘機・疾風』が12機が散開、ヘリコプター中隊から離れて先行する。

 素早くイタリカ城門前に展開し、華麗な着地を見せた鋼鉄の巨人。盗賊の左右を挟み込み逃げ場を塞ぎ、突撃砲での攻撃を開始した。

 36mmの機関砲が吹き荒れ、盗賊たちに対して死の雨が降り注ぐ。投石器などの危険な兵器たちは、突撃砲にマウントされた低圧120mm砲の直撃で吹き飛ばされる。

 

「よぉし、俺たちも負けるな!スズメバチ全機、空から掃討を開始せよ!」

 

 爆撃ヘリのスズメバチが12機、尾部のガトリングガンを展開し戦闘行動を開始。他の部隊に負けじと、盗賊たちを追い詰め始める。

 まるで獲物のミツバチを追い立て殺すかの如く、スズメバチは集団で襲い掛かる。ガトリングガンだけでなくロケット弾や投下爆弾など、持てる火力のすべてを盗賊たちにぶつけ続ける。

 遅れてやってきた強襲ヘリのアオムラサキも攻撃に加わり、中の兵士たちによる対地掃射が始まった。最初に攻撃を行った多脚戦車中隊もジリジリと進撃し、盗賊たちを追い詰めていく。

 盗賊たちは蜘蛛の子を散らす様にその恐怖から逃げ出そうとするも、上からヘリ部隊に攻撃され、左右を戦術機に塞がれ、後方から多脚戦車が迫る。逃げ場などなかった。

 

 

 

 

 

 

 ミューティーは運がよかった。

 彼女は攻撃が始まったとたんに恋人と共に逃げ出そうとしたが、その恋人が爆発によって吹き飛ばされ、さらに隣にいた盗賊仲間まで粉々に粉砕され、ミューティーは戦慄した。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

 その後の彼女に出来たのは、この地獄が過ぎ去るまで惨めに縮こまり、仲間の死体や破片に身を隠し、盗賊に加わって悪事を働いたことに懺悔する事だけだった。

 

「助けてぇ!助けてくれぇ!」

「なんで巨人がここにいるんだよぉ!!」

「死にたくない死にたくない死にたくない!!」

 

 一目散に逃げ出す者、疑問を投げつける者、ミューティーと同じく命乞いをする者。他の盗賊達は完全に統率を失っていた。

 

「ちくしょう!ちくしょう!」

 

 それでも弓を空に放ち、抵抗する者も居る。しかし遥か高くから攻撃をするヘリコプターには一切当たらず、虚しい反撃はガトリングガンの掃射により沈黙した。

 

「逃げろぉ!門の中へ逃げろ!」

 

 追い詰められた盗賊達が、イタリカの東門の中へと殺到する。追い詰められた盗賊達が、家畜の豚の様に一か所に集まる。

 

 

 

 

 

 

 門の内部では近接戦闘が始まった。

 すでに戦闘を始めているのは、ノーマ、Hal-27、そしてロウリィの三人である。

 

「フフッ、フフフフ。アハハハハハハハハハハッ、アハハッ!」

 

 ロウリィは東門に降り立つなり、重たいハルバードを振るって盗賊の一人の首を刎ねた。返り血がロウリィのハルバードと服にこびり付き、彼女の恐ろしさを加速させる。

 

「私も混ぜて頂けないかしらぁ?体が熱くて仕方がないのぉ!」

 

 突然現れたエムロイの神官少女に呆気にとられる盗賊たち。しかしこの世界の常識のサガと言うべきか、盗賊たちはたかが小娘と侮っていた。

 

「へっ、何がエムロイの神官だ!やっちまえ!」

「うらああああ!!!」

 

 ロウリィへ一斉に襲い掛かる盗賊たち。槍や斧を構え、一斉にロウリィを叩きのめそうと突撃する。その集団に対しても臆することなく、ロウリィはハルバードを構えて身を屈め、足を踏み出し目の前の盗賊へ突進した。

 

「アハハッ!」

 

 笑い声と共に引き裂かれる盾と鎧、そして盗賊の肉が真っ二つに吹き飛ばされ、二等分される。盗賊の一団が突破され、無防備な背中に向けてハルバードが振りかざされる。その刃は盗賊の肉と骨を断ち、完全に切り裂いた。

 すかさず更なる一団へと切り込むロウリィ。

 砲弾のごとく突進するロウリィに対し、盾を持つ一団が間から槍を向ける。だが、その刃は身を屈めたロウリィを掠め、躱される。盗賊がありえないものを見たその瞬間、ハルバードは盾の一団を切り裂き、切り裂いた身体を大きく吹き飛ばした。

 

「このぉ!」

 

 オークもかくやという屈強な大男が、斧を持ってロウリィに背後から襲い掛かる。死角からの大ぶりな一撃は、当たればロウリィの頭を勝ち割っていたはずである。だがその一撃は横からの乱入者によって脳天を撃ち抜かれる。

 栗林による援護射撃だった。一撃で大男の兜は粉々に砕け、中の頭蓋骨すらも粉々に粉砕し、身体は力なく地面に倒れ伏す。

 

「お見事ぉ!」

 

 突然の乱入者に臆することなく、盗賊たちは栗林に狙いを定めて襲い掛かる。それに対し栗林は銃剣付きの38式小銃を右手に持ち換え、その刃先を盗賊の首に突き刺した。

 

「まだまだぁ!!」

「チッ……!」

 

 背後から別の盗賊が、銃剣を引き抜く隙を狙って襲い掛かる。拳銃を引き抜く暇もないと思った栗林は小銃から手を放し、エグゾの出力に任せた右手拳を盗賊の腹に思いっきり突き立てた。

 エグゾに搭載されたソニックハンドの衝撃波が、鎧を着こんだ盗賊の腹を粉々に粉砕し、大きく吹き飛ばす。腹を殴られた盗賊は内臓がぐちゃぐちゃに潰れ、民家の壁に叩きつけられる。

 

「よし!」

 

 格闘戦が思いっきり決まった栗林は小銃を再び手に持ち、戦闘を続けるロウリィと背中を合わせる。二人の格闘女は、にやりと笑っていた。

 

「シッ!!」

「でやぁ!!」

 

 Hal-27とノーマのコンビも、城門の内部での戦闘を続けていた。ノーマが長剣で盗賊たちに切りかかり、袈裟懸けにねじ伏せていく。

 

「なんなんだこいつの強さは!?」

「盾だ!盾を構えろ!」

 

 盗賊たちがロウリィの時と同じく盾を構え、一気に突進してきた。右手に雑多な武器を盾の間から構え、ノーマを鎧ごと滅多打ちにしようと集団で襲い掛かった。

 だがその盾の集団は、ノーマの後ろから現れた小柄なHal-27の射撃によって相殺された。弾丸で盾を貫かれ、鎧ごと盗賊たちは崩れ、ノーマに一撃を与える事すら叶わない。

 

「なんだあの攻撃は!魔法か!?」

「弓持ってる奴はあの女を射ち殺せ!」

 

 ノーマの安全と活路を開くべく、Hal-27はダメ押しとばかりに銃にマウントされたグレネード弾を放った。40mmの擲弾がまっすぐ飛んで炸裂し、爆発と破片で弓兵を粉々に吹き飛ばす。

 

「貴様らどうした!正規軍兵士がその程度か!」

 

 開かれた活路にノーマが切り込み、残りの盗賊たちを袈裟懸けに切り伏せていく。その剣裁きは騎士団として戦闘訓練を受けた本物の剣撃であり、散らばった盗賊たちとは技量が違う。鎧の隙間を正確に切り裂き、盾で防ぐなら足で盾を蹴り飛ばしよろけさせた。

 

「立ったまま死になさい!」

 

 Hal-27はノーマの背後を守りつつ、彼女も近接戦闘を仕掛ける。右手の爪先で敵の鎧の隙間を鋭く切り裂き、首筋から雨のような血しぶきを浴びる。

 そんなことも気にせずHal-27は転がるようにステップを踏みしめ、スライディングで盗賊の下に滑り込む。そのどてっ腹に対して小銃弾を撃ち込み、股の間を潜り抜け、すかさず足を踏みしめる。

 片足だけで飛び上がり、盗賊の集団に向けて再びグレネード弾を放った。

 空中で炸裂した擲弾により混乱したその隙を、今度はロウリィが駆け抜けた。

 

「いいわよぉ!いい連携ねぇ!」

 

 彼女もHal-27を祝福するかの如く、彼らと連携した。ハルバードを大きく振りかざし、その一撃で盗賊の首が幾つも刎ねられ、さらなる血しぶきが彼女を汚す。

 

「くそっ!槍持ちは集まれ!やるぞ!」

「足だ、足を狙え!」

 

 盗賊達の槍持ちが集まり、ロウリィに対して一斉に槍先を刺突する。だが足を狙って突き刺さる筈の槍先は、ロウリィが大きく飛び上がった事により全て回避される。

 

「アッ、ハハハハッ!!」

 

 空中から捻られた斬撃が、囲んでいた盗賊達の首を全て刎ね飛ばした。唖然とする他の盗賊達は、恐怖に押し切られてしまう。

 

「に、逃げろぉ!!」

「化け物だぁ!!」

 

 東門から外へと飛び出そうとする盗賊達。

 しかし、覚えているだろうか?城壁の外でも地獄が広がり、外の盗賊達が一斉に東門の中へと殺到していた事を。

 

「押すな!どけぇ!!」

「中に入れてくれぇ!」

「やめろ!中も外も地獄だぞ!」

 

 中に入ろうとする盗賊と、外へ出ようとする盗賊が押し合い圧し合い、おしくらまんじゅうの様にごった返し始めた。

 人と人とが押し合いへし合い、あまりに狭すぎまで剣を振るうことすらままならない。身動きが取れなくなった盗賊達は、完全に逃げ場を無くした。

 

「のわっ!?」

 

 そんな盗賊達に向け、赤い光の刃が轟いた。閃光が盗賊達の盾を赤く切り裂き、人の腕が焼き切られ、溶けた鎧が盗賊達を苦しめた。

 

「な、なんだぁ!?」

「熱い!熱い!」

「俺の腕がぁ!!」

 

 その光の正体は、IDL小隊による盗賊集団に対するレーザー照射である。LAVの上から近接戦闘を援護するべく、門内部の盗賊達を切り裂いている。

 

「照射照射!切り裂けー!」

 

 射手のアイナがとにかく引き金を引き続け、レーザーを乱射する。一か所に集まってしまった盗賊たちはレーザーのカモにされ、真っ二つに切り裂かれていく。

 

「あいつら派手にやるなあ」

 

 そんな様子を陰から援護するのは、伊丹と富田、そして42式の三人である。伊丹の銃剣も血に塗られ、何回か格闘戦を仕掛けた後だった。富田は栗林とロウリィの背中を援護しつつ二人を回収するために前進。42式は格闘戦が苦手なために富田の援護に回ってもらった。

 

「富田、42式、とにかく俺たちは援護に徹する。四人の背後を守れ」

「り、了解です!」

「まかせてよー!」

 

 

 周囲の盗賊を銃撃で撃ち殺し、42式が散弾で集団を蹴散らしていく。だが城門内の盗賊はまだ百人近く残っており、この人数での掃討は難しい。

 

「この野郎!!」

「おっと」

 

 横からまだ蛮勇を失っていない盗賊が迫り来るが、伊丹は最小限の動きのみで剣先を回避し、横に回り込んで銃剣で一刺しに脇腹を貫く。ダメ押しに小銃の引き金を引き、わずか数秒で撃ち殺す。

 人間の臓器の配置上、脇腹を刺されるというのは肺と心臓を同時に損傷するという事。的確に人間の弱点のみを狙った一撃だった。

 

「た、隊長?」

「構うな富田、もうすぐ門内の掃討が始まるぞ!」

 

 栗林とは別のベクトルで格闘戦に慣れている伊丹。どこでその急所の貫き方を学んだのか富田は疑問を持ちつつも、命令通りロウリィと栗林の援護のためにさらに前進を続けた。

 

『こちらアイレフ1、まもなく門内の掃討を開始する。担当戦域から退避されたし」

「やっべ、ホントに来た!ずらかるぞ!」

 

 その通信と共に伊丹達の頭上を疾風がフライバイし、城門の中に留まってホバリング。そして突撃砲を構え、目標のロックオンを開始した。

 予想より早い戦術機の登場に慌てた三人は、未だに暴れ続ける四人の回収に向かう。栗林を富田が米袋のように持ち上げ、伊丹はロウリィを抱え込んでその場から離脱する。Hal-27は戦術機の跳躍ユニットの音が聞こえた時点で、ノーマを持ち上げて一目散に退避した。

 

「全員伏せろ!!」

 

 伊丹の言葉と同時に、疾風の目標ロックが終わった。

 両手の銃口だけでなく、背部の武装保持担架の突撃砲の銃口も向けられる。カウントが0になり、門の中へ36mm砲弾の嵐が吹き荒れた。一つ一つの機関砲弾が炸裂し、盗賊たちが粉々に砕けて血しぶきと化す。

 わずか数十秒で城門に詰まっていた盗賊たちが、全て豚のように消え去った。

 

 

 

 

 

 

「ば……バケモノ……」

 

 集団の後方で指揮を執っていたピニャとハミルトンは、その光景に絶句していた。城塞もかくやという巨人が空を飛び、盗賊たちに魔筒の先を向け、火を噴いた。光弾が盗賊たちを次々と貫き、粉々に吹き飛ばし、家畜のように挽き殺されていく。

 すでに城門の外は死屍累々となり、鉄の怪物たちが死体を取り囲んでいる。

 

「鋼鉄の蜂、鋼鉄の天馬、鋼鉄の巨人……」

 

鋼鉄の巨兵達が盗賊を取り囲み、城門の外側で華麗に着地した。その威容は美しく、オークやジャイアントオーガの様な野蛮さの欠片も存在しない。まるで美しい石像が武器を持ち、規律と統率を持ってして美しく舞うような戦い方。

 その美しさとは裏腹に、舞は絶対的な暴力でもあった。

 その光景は、まるで神話の戦いの如き戦いである。

 

「一体何なんだ、あれは……」

 

 いや、神話の戦いですらもこうはならない。

 神話の戦いにも誇りがあり、名誉があり、戦いの美しさがある。

 だが、このバケモノたちにはその神ですら敵わないのではないか?

 名誉も誇りもすべて、一瞬にして否定する。

 絶対的な力によって敵をねじ伏せる。

 すべてを破壊しつくし、人も馬も亜人も、全て家畜のように殺していく。

 たとえ神の軍勢でも、ねじ伏せるであろう絶対的な悪魔。

 

「ヒッ……」

 

 巨人がピニャに目線を向ける。

 美しい兜と鎧に身を包み、赤く美しい光を放つ目をじっと見つめている。

 ピニャにはその巨人そのものが、神に代わる新たな秩序にすら見えた。

 

「殿下……我々は、夢を見ているのでしょうか……?」

「ハミルトン……これは夢ではない、妾も同じ夢を見ておる……」

 

 この日、ピニャ・コ・ラーダは初めて敗北した。

 盗賊に、ではない。この何もかも破壊し、何もかも殺しつくした日本国国防軍に、その誇りのすべてを打ち砕かれたのだ。

 

 

 

 

 

 

「終わったねー」

「ああ」

 

 イタリカの戦いが終わった後、42式と伊丹は言葉を交わす。

 

「にしても3個中隊全部投入するなんて、上の人たち大盤振る舞いだな」

「それほど今回の鬱憤たまってたんだろうねー。ガス抜きも重要だしー」

 

 周囲には戦術機や多脚戦車などが整列し、上空にはアオムラサキがホバリングし歩兵をラぺリングで下ろしている。さらには、アオムラサキよりも巨大な輸送ヘリコプターがゆっくりと降りてくる。国防軍の大型輸送ヘリ『クロメンガ』だ。

 車両と共に降りてきた歩兵たちは、盗賊の生き残りを捕虜として1か所に集め、彼らに手錠をかけて無力化していく。

 第1戦闘団の多脚戦車部隊も、前腕部を稼働させて瓦礫の撤去を行っている。第6戦闘団の戦術機も同様に作業を開始し、せわしく移動していた。

 

「あ、伊丹隊長!」

「お、ハルか。大丈夫そうだな」

 

 伊丹のもとへ合流したHal-27は、少し血に濡れた格好で敬礼した。

 

「おいおい、かなり汚れてるな……」

「帰ったら、お風呂入りたいです!」

 

 彼女も相当近接戦闘を行ったのか、カーボン製の爪はかなり刃こぼれしており、小銃も銃身が熱く焦げていた。

 

「で、そちらの方がノーマさん?」

「うん、ちょっと助けちゃってさ」

 

 騎士ノーマも、善戦した割にボロボロだった。鎧の一部がへこみ、片手剣は完全に刃こぼれして剣としての役割を終えている。

 

「……イタミ殿、はじめてお目にかかります。騎士ノーマ、ハル殿に命を助けられました」

「生きているならよかったさ。その命、大切にしろよ」

「……はい」

 

 伊丹のその言葉に、ノーマは深くうなずいた。

 

「それよりイタミ殿、あの怪物たちはそなた等の軍勢の物か?」

「ああ。あれらこそ俺たちの戦争における主役達、人間が従える兵器たちだ」

 

 その言葉に、ノーマは絶句した。あの怪物たちが、人間の操る兵器だと言うのか。

 

「兵器……もしやハル殿たちも、あの強さ、兵器なのか?」

 

 ノーマは恐怖を抑えつつ、恐る恐る伊丹にその疑問を投げつける。

 

「いいや、彼女たちは違うさ。確かに体は鉄と機械でできていて、人間が殺すためにわざわざ作り上げた」

 

 

 

 

 

 

「でも、それでも、彼女たちは紛れもない人間なんだ」

 




42式に続き、Hal-27のビジュアルもイラストで描いてみました。
【挿絵表示】
ショートヘアに赤いメッシュが特徴で、42式よりも小柄です。


・49式戦術歩行戦闘機・疾風
日本国国防陸軍が運用する第三世代型戦術機。国産第一世代戦術機である『雷電』の後継機であり、機体の軽量化と高性能な電子制御による高い機動性を発揮する。
欠点としては、極限まで切り詰めた設計から来る汎用性の低さ。
元ネタはオリジナル。

・CTH-47大型輸送ヘリ・クロメンガ
国防陸軍が運用する全長50mにもなる超大型の輸送ヘリ。4発のエンジンと巨大な図体にふさわしい搭載能力を持ち、52名近くの兵員、又は24機の装甲外骨格を搭載できる他、多脚戦車を吊り下げての飛行も可能。
ちなみに巨大な図体からは想像できないほどの機動性を持ち、バレルロールだってできる。ただしデカすぎるため運用可能地域は限られる他、コストと燃費が無茶苦茶に悪い。
本作オリジナルの兵器。
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