GATE 近未来日本国国防軍 彼の地にて斯く戦えり   作:国防アレキサンダー

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2022/12/11
大規模改稿により、話の内容が変わっています。


EP.03 銀座事件、二重橋

銀座事件1日目

東京 皇居外苑

 

 その頃、帝国軍による皇居への総攻撃が始まった。

 しかし市街地戦の場合、数の威力がそのまま通じるわけではない。街路や区画ごとに部隊が細切れに分散してしまう上、正面の幅は街路の幅に制限されてしまうからだ。

 騎兵の場合はそれがモロに響く。機動力を何より重視する騎兵の場合、道幅が限られるとなると狙った奇襲効果が得られず正面から突っ込む形となり、危険となる。

 また歩兵部隊でもそれは深刻であり、部隊が交代する場合にそれなりの道幅がないと何もできずに立ち往生してしまう。

 一方、2055年の各国軍では市街地戦に関する戦術が数多く生まれており、効率的に制圧する術を持っている。だが古代から中世にかけて、入り組んだ市街地での戦闘を経験したことが少なかった帝国軍にとって、この東京の造りは、まさに『難所』と言えた。

 数の少ない機動隊が効力を発揮したのは、その複雑怪奇な環境が一因にあると言える。機動隊は東京銀座の地形を熟知しており、強化外骨格や催涙ガスランチャーなどを駆使して敵部隊に消耗を図ることができた。

 

「たくっ、倒してもキリがないな!このままじゃ消耗戦だぜ!」

 

 指示を出す伊丹も警察用小銃を持ち、単発で撃ち続けながら応戦に加わっていた。連射してもいいのだが、弾薬に限りがあるかもしれない状況でそのような無駄遣いはしたく無く、遠距離では節約を厳守している。

 しかし依然として敵勢力は数が多く、捌ききれずに突破する勢力もいた。

 

『ヴァァァァァァァァ!!!』

 

 耳障りな雄叫びを出し、オークの様な謎の怪物が迫ってくる。オークは攻城兵器の様な硬い荷車を押しており、その後に人間の兵士たちも続いていた。

 

「チッ、あの怪物に火力を集中!!」

 

 伊丹の指示を受け、機動隊の火力の全てがオークに向けられる。だが機動隊の装備では火力不足なのか、オークは弾丸が被弾しても歩みを止めない。

 

「各隊は現状位置を死守せよ!後方に雪崩れ込ませるな!!」

「機械化小隊を前へ!」

 

 機動隊の隊長である佐伯が指示を出すと、バリゲートとして利用している警備車両の陰から巨大な人形の影が飛び出した。

 デカデカと掲げられた『警視庁』と言うホログラムを肩に照らし、巨大な豪腕と脚部を備え、武器を持って立ち向かう機動兵器。これが、警視庁の保有する装甲強化外骨格だった。

 暴徒の鎮圧や大規模なテロ事件などに備え、重圧な装甲と強力な出力を備え、人間の機動隊員達を援護する役割を持つ。

 本来、警視庁の強化外骨格は暴徒の鎮圧を目的として手加減した武装をしているが、今回ばかりはその腕部に重機関銃を備え付け、オークやトロルなどの甲種害獣を射殺する事に専念していた。

 強化外骨格の制圧射撃により、多数の敵兵士達が倒れ、フィジカルの強いオークなども次々と射殺される。

 

「突破されます!」

「外骨格で止めろ!」

 

 それでも攻城兵器の裏に隠れてやり過ごした兵士に対し、強化外骨格は最後の手段に出た。オーク三人分が動かすその攻城兵器を、強化外骨格が両手で受け止め、その勢いを削ぎ落としていく。

 

『なんだこいつは!?』

『押せ!押せ!!』

 

 脚部のタイヤが唸り、オーク三人分と互角の押し相撲を行う。その機械ならではの馬鹿力には、オークや人間の兵士たちも動揺を隠せない。

 そして強化外骨格は腕部を攻城兵器の下部に引っ掛けると、そのままアクチュエーターを最大出力にし、吹っ飛ばすかのような勢いで腕を振り上げ、攻城兵器を横転させた。

 

『ぐわっ!!』

『なんて馬鹿力だ!!』

 

 帝国軍の兵士たちは、オーク三人分をも防ぎ切る強化外骨格の腕力に驚いていたが、対応する暇はなかった。横転した攻城兵器に足を潰され、多くの兵士たちが身動きが取れなくなる。

 

「よし!このまま現在地を維持!もう少し耐えるぞ!!」

「おう!!」

 

 伊丹がそう鼓舞すると、機動隊員達は士気が上がったのかそれに応えてくれた。

 

 

 

 

 

 

同日午後

東京 日比谷公園

 

 警視庁第四機動隊。

 彼らは2055年現在でも機動隊の中で精鋭を誇り、鬼の四機とも呼ばれた猛者達の集まりである。彼らも今回の事件に際して動員され、守りを固めていた。

 

「敵部隊、突撃してきます!」

「中隊、射撃開始!」

 

 皇居正面にて戦闘が発生する中、警視庁第四機動隊第六中隊の中隊長の志村は、日比谷交差点付近に踏みとどまっていた。志村はここの位置に踏みとどまり、敵部隊が皇居の側面を取ることを防いでいたのだ。

 敵が怪異などを仕向けても、こちらには強化外骨格とフル装備の機動隊員達がいる。彼らの戦意は高く、武装も補給も余裕があった。

 隊員達の小銃や、強化外骨格の重機関銃などが火を吹き、フィジカルの強い怪異達ですらその弾丸により次々と死屍累々を積み重ねており、足止めされていた。

 

「機械化小隊、前へ!」

 

 特に強化外骨格の活躍は素晴らしいの一言に尽きた。

 暴徒やデモ隊の暴行にも耐えられるように作られた強化外骨格は、敵の投げ槍を受け止め、接近戦にも耐えられる。

 警察用のため武装は控えめだが、国防軍の軍用モデルとほぼ同じ出力のアクチュエーターを備えているため、腕力ではオークやトロルなどと相撲をしても十分打ち勝てる性能を有していた。

 

『グギィ!』

「この野郎!!」

 

 小銃でも歯が立たないオークやトロルなどの『甲型害獣』に対して、機動隊員の盾となるべく前進。その大型警棒を振り回し、敵の怪異らの頭を粉砕していた。

 だが一個小隊分しか居ないのが幸いし、強化外骨格にも損傷が目立ち始めていた。後方で緊急整備をしている予備機を除けば、第六中隊が運用可能な強化外骨格は4機のみだった。

 それらもオークやトロルに囲まれ、その強固な外殻に対して斧や棍棒が叩きつけられ、限界が近かった。

 

「警備車、突撃せよ!!」

 

 だが志村とて無策というわけではない。通りを前進する敵の後方隊列に対し、大型の脚部を5対10本持つ特殊警備車両、つまり多脚装甲車を突っ込ませたのだ。

 これらは警視庁において、山岳部などの地域での立て篭もりを想定して配備されていた警察用の多脚装甲車だ。今回の場合は瓦礫や物が散乱した通りを突撃できるのはこれしか無いと、志村が隣の警察署から手配した物である。

 

「おお!」

「やったぞ!!」

 

 彼らの目的は後方からの増援の遮断、そしてオークやトロルが後方に気を取られて隙ができる場面であった。

 その目論見は成功し、多脚装甲車は横転せずにしっかりと地面に踏みとどまり、三台で道を完全に塞いで見せた。

 

「今だ!甲型目標に対して攻撃を集中!!」

 

 そして多脚装甲車に気を取られたオークやに対し、強化外骨格による強烈な右ストレートが突き刺さった。

 いくらフィジカルの強いオークとはいえ、軍用規格で作られた強化外骨格のパンチは強烈であり、オークは左頬の骨を粉砕されのたうち回る。

 さらにもう一体のトロルに対し、強化外骨格は警棒を持ち直し、トロルの頭を打ちのめし、警棒から最大出力の電撃を浴びせた。

 人間では失神するレベルの電撃を浴びたトロルは、しばらくは野太い二本足で立っていたが、二発目を頭に喰らうとそのまま倒れ伏した。

 

「今のうちに体制を立て直せ!」

 

 強化外骨格と多脚装甲車が作り出したその時間を、志村は無駄にしなかった。退却してきた各部隊を纏め、祝田橋交差点に陣形を整え規制線を張り直した。

 彼らのおかげで側面は突破されておらず、皇居周辺の守りは堅かった。

 もちろん消耗の激しい者や、負傷者はどんどん後送している。そして損傷の激しい強化外骨格は後方に送り、緊急整備を行う。

 それでも交代してきた隊員を合わせ、100名前後は健在だった。強化外骨格も整備が終わったのが加わり、5機に増えていた。

 

「志村!もう下がって来い!」

 

 後方から別部隊の中隊長、永倉が後退の許可を出す。それと同時に、後方から第六中隊のための支援攻撃を行う。

 

「催涙ドローン!展開しろ!」

 

 ドローン射出車両から、催涙ガスを搭載した大量のドローンが展開し、敵部隊に襲いかかった。ドローンの下部に搭載された催涙弾により敵部隊は怯み、追撃の行き足が止まった。

 それを合図に、第六中隊は後方への後退を始めた。負傷した仲間の肩を持ち、損傷した強化外骨格が盾になりながらジリジリと後退していく。

 隊員達は疲れ切っており、強化外骨格も消耗が激しかった。だがあと少しで安全なところに辿り着け、休息を挟めるという感覚が、次第に彼らを支配する。

 その油断のタイミングで、側面の日比谷公園から騎兵部隊が現れた。第六中隊は不幸にも現れる直前まで察知できず、対処が遅れることとなった。

 

「しまった、志村!!」

「左方!日比谷公園からも騎兵が来ます!!」

 

 永倉には叫ぶ暇も、救出に向かう暇もなかった。同じく日比谷公園の方向から、大量の騎兵部隊が第四機動隊へ突撃してきたからである。

 騎兵部隊はその数で、そして突破力で、機動隊員達の壁を押し除けた。強力な馬上槍で隊員隊を次々と突き刺し、突破されてしまう。

 部隊は対応が遅れ、2個ほどの騎兵大隊に集合していた場所を突破された。

 だが第四機動隊はすぐさま体制を立て直し、強化外骨格を中心に、騎兵部隊に対して果敢に立ち向かう。

 強化外骨格が拳を振るえば、騎兵が馬ごと吹き飛び勢いが削がれる。馬は撲殺され、騎兵は落馬して怪我を負う。

 さらに第四機動隊員は咄嗟の判断で多脚装甲車などを動かし、敵を堰き止めるバリゲートを作った。これにより、突破されたのは少数に留まった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方の帝国軍からでも、その奇襲の様子は見てとれた。強固で精鋭と見られる敵の百人隊に対し、彼らが後退し戦線を張り直すちょうどそのタイミングで騎兵部隊が側面から突撃を開始したのだ。

 

「よし、見事だ!」

 

 レルヌム将軍は、退却していく敵の側面に襲いかかった騎兵部隊の動きを見て賞賛を送る。

 

「あの騎兵部隊は誰の隊か?」

「えっと……あの旗印はヘルム・フレ・マイオ。騎兵大隊を指揮しておりまして、年齢は……齢二十前後だったかと」

 

 幕僚の一人がその旗印を覚えており、その名前を諳んじるが、さすがに年齢までは把握していなかったようだ。

 

「ほう、若いな。しかし聞いたことのない名だが、なぜ、二年の軍歴で一体どうして騎兵大隊の指揮を任ぜられているのだ?」

「あの者は、薔薇騎士団の出身です」

「ああ!皇女殿下の騎士団ごっこか!」

 

 レルヌム将軍は、ぼんやりと覚えていたその騎士団の名前を『ごっこ』を強調して苦笑いを挟んだ。

 だが幾ら『ごっこ』と言えど、その軍歴はきちんと加算されることとなる。つまりあの騎兵大隊長は、他の若い兵士たちよりも軍歴が長いのだ。

 

「彼の者は閣下自身が大隊長に任ぜられた筈ですが、覚えておりませんか?」

「いや、全く」

 

 レルヌム将軍は全く悪びれる様子もなくそう言った。実際彼の配下にはいくつもの大隊、さらには軍団や群集団が存在しているため、後退の激しい大隊長クラスなどは余程のことがない限り覚えていられないのだ。

 

「しかしながら、実力はあの通りでございます。閣下のご頸眼の賜物かと存じます」

「うむ、良いタイミングでの突撃を見せてもらった。私も薔薇騎士団出身者に対する偏見を改めるとしよう」

 

 そう言ってレムヌム将軍は、傍にいる個人的奴隷の書記官に名前を覚えさせ、記入させた。

 

「ヘルム騎兵大隊、そのまま城壁側面を食い破る勢いです。我々はこのまま突入しますか?」

「決まっておろう!もちろん突入だ、敵城砦を食い破れ!」

 

 レムヌム将軍はこのタイミングでの突破を好機として捉え、全軍に対して敵城砦への突撃を命じた。それに呼応し、軍楽隊のラッパが鳴り響き兵士達が雄叫びを上げる。

 

 

 

 

 

 

同時刻

東京 皇居外苑

 

 一方の皇居正面での戦闘は、比較的機動隊側の有利に進んでいた。敵は皇居外苑の正面から攻撃を仕掛けているため、敵は小銃や重機関銃の射程内に自ら入り込み、逆に押され始めていた。

 だがその時、騎兵に突破された第四機動隊から緊急の連絡が入る。指揮官の佐伯がそれに応え、通勤機の内容を流した。

 

『こちら第四機動隊!敵騎兵に側面を抜かれた!日比谷公園から皇居に向かってる!』

「なんだって!?」

「くそっ、側面からか!」

 

 佐伯と伊丹は、突破された状況に同時に悪態をついた。現在機動隊員らが陣取る皇居外苑周辺には、正面に多くの人員を貼り付けており、側面は比較的手薄だった。

 今回の突破は、その脆弱性を見事に突かれた形となってしまった。佐伯はすぐさま強化外骨格を有する機械化小隊に通信を繋ぎ、側面への増強を指示する。

 

「第八機械化小隊!外骨格を側面に回せ!」

『敵は目の前です!間に合いませんよ!』

 

 だが敵騎兵は勢いそのまま、

 

「くそっ!ここは一旦後退を……」

 

 突破されると思い、伊丹は佐伯に後退を進言するが、とても間に合わないと伊丹自身も諦めかけてしまった。

 機動隊員達はまだ冷静さを保っていたが、それでも敵の騎兵が迫っている情報を受け、現在地から少しずつ後退してしまう。

 痛みとしても何もしないわけにはいかない。すぐさま側面の方角に回り込み、小銃を構えた。

 

「本当に目の前じゃねぇか……!」

 

 慌てて小銃を射撃するが、比較的薄いで火力が集中できない側面は、すぐに突破されてしまうだろう。

 だがその状況は、新たな火力が駆けつけた事により一変する。

 

『援護するよー!射線に注意してー!!』

 

 その女性の声が聞こえた途端、無数の連続した破裂音が皇居外苑南口に轟いた。

 自動散弾銃からバックショット弾が連続で放たれ、散弾は騎兵大隊を粉々に粉砕していく。勢いは削がれ、

 

『な、なんだこれは!?』

 

 騎兵部隊の大隊長が叫ぶ中、一人の女性が機動隊達の目の前に繰り出した。その女性は、痛みがよく知る人物である。

 

「伊丹、だいじょうぶー?」

「ああ、42式か!」

 

 その弾丸を放ったのは、先ほどの休暇スタイルとは打って変わり、迷彩服に武装を手にした42式だった。

 

──42式自動散弾銃。

 

 それが戦術人形、42式の正式名である。

 まず、現在運用されている第二世代型戦術人形には、ただ銃を持たせただけの第一世代と比べて様々な革新的技術が搭載されている。

 その一つが『烙印技術(スティグマ)』と呼ばれる技術だ。これは戦術人形に自信の専用武器を記憶させ、独立したリンクによって武器と戦術人形を同期。そうする事で、自身の武器の性能を極限まで引き出す高い能力を持った戦術人形を生み出せる、と言う技術である。

 そして、彼女が使うのは日本国国防軍がフルオートショットガンとして開発した42式自動散弾銃。その銃器と烙印技術を用いて同期するのが、戦術人形としての42式だ。

 

「装備は何処から?」

「家からドローンで持ってきた!」

 

 どうやら自宅から装備をドローンで輸送したようであり、その手には半端私物化している同名の自動散弾銃が携えられていた。

 

「よし、側面は頼んだ!」

「任せてー!」

 

 42式の返事と共に、フルオートで散弾銃が放たれる。嵐のように吹き荒れる散弾が、再度突撃してくる騎兵達を粉々にし、更に矢の射程までに迫っていた敵兵達をも粉砕していく。

 

「吹き飛ばせー!!!」

 

 42式が暴れ回っているうちに、騎兵部隊は混乱した。彼らには女一人が不可視の矢を放ち続けている様に見え、訳の分からない化け物と感じていた。

 

『くそっ、耐えられん!一旦引けぇ!』

 

 だが騎兵の大隊長は冷静であり、すぐさま撤退を決意した。そしてそれを見た敵の将軍は、彼らの撤退の援護をするべく策を講じる。

 後方に待機していたローブを纏った集団を前に出し、彼らがが呪文をと唱え始める。すると杖に光が集まり、それが火球と化した。

 

「まずっ!?全員伏せろ!!」

 

 伊丹はそれが攻撃だと判断し、身を隠すように命令した。魔道士が放ったのは、ファンタジー作品などでよく見る火球弾であった。

 伊丹の予想通り、火球は皇居に立て篭もる警察官達に降り注ぎ、芝生や松の木に燃え移り辺りは火の海となる。

 しかし懸念していた爆発などはなく、42式が自ら盾を展開し、火炎弾の大多数を防いでくれたおかげで伊丹達は無事だった。

 

「大丈夫か!?」

「問題ないよー!全然熱くないしー!」

 

 しかし状況は不味いかもしれない。42式が到着したとはいえ、敵集団は未だ大勢居た。このままでは消耗戦に負けるかもしれないと言う不安は、機動隊員の中に一抹だけあった。

 




・烙印技術《スティグマ》
正式名称は「Advance Statistic Session Tool(ASST)」。とある理論をもとに、戦術人形と銃火器などの武器をリンクして繋げるシステム。これにより、人間や従来の戦術人形を遥かに超える戦闘力が付与された。
元ネタはドールズフロントライン。

オリ戦術人形達の挿絵は欲しい?

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