GATE 近未来日本国国防軍 彼の地にて斯く戦えり   作:国防アレキサンダー

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2022/12/11
本日、大規模改稿により新しく挿入投稿となりました。


EP.04 銀座事件、反撃

銀座事件1日目

東京 皇居周辺

 

「で、敵の反撃に遭い逃げおおせたと言うわけか」

「申し訳ございません。全ては私の不手際です」

 

 戦闘用馬車に立ち乗るレムヌムは、車輪の傍で片膝をついて深々と頭を下げるヘルム大隊長を見下ろした。

 

「なに、謝る必要はない。お前の躍進のおかげで我らは地歩を一歩進め、敵は一歩後退した。戦果としてはそれで十分だ」

 

 彼の言う通り、ヘルム騎兵大隊の突撃を受け機動隊員達は皇居内部に一歩下がって戦線を立て直していた。素早い対応だったが、一歩前進した事には間違いない。

 

「それはそうですが……」

「兵を無駄にしたことを杞憂しておるのか?それは構わん、任務を達成したであろうに」

「は……はい」

「そんな事より戦場を見るがよい。若いものばかりに手柄を立てさせてなるものかと、ガンブラル将軍が張り切っている」

 

 西の丸大手門に向け、オーガやの巨体が突き進む。オーガはオークなどと違い、強力であるが故に使役することが難しいとされていたが、ガンブラル将軍の下にいる怪異使いがその難関を成功させていた。

 戦場で使うのは初の試みであるが、この強化外骨格とほぼ同じ腕力を誇るオーガは、機動隊達にとっては最大の脅威となっている。

 堀にかけられた橋を渡り、木製の大門に向け破城槌を繰り返し打ち付ける。分厚い門扉も、オーガの体躯が突き出す槌の破壊力には耐えられず、中央から割れ始めていた。

 内部では強化外骨格2体が最大出力で門を押さえつけているが、度重なる攻撃によって門が損傷し、守り切れそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

同日午後

東京 皇居外苑

 

「進め進め!勝利は我らの手の内ぞ!!」

 

 西の丸大手門の分厚い門扉を蹴破ったガンブラル隊は、すぐさま内部にオーガや兵士たちを突入させた。彼らは雄叫びを上げながら突き進み、オーガらはその体躯で強化外骨格を打ち砕き、二重橋付近へと抜けて行った。

 その彼らに立ち塞がるのは、警察の警備車両が作った壁だ。かなり入り組んだ配置で、しかも登る場所もないため、兵士たちは二人がかりで協力して登るしかない。

 その先にあるのは、ホログラムを用いた規制線である。帝国兵達は当初、皇居周辺に張られた実態のないホログラムに戸惑っていたが、それが幻惑魔法の類だと知ると完全に無視している。

 だが今度の場合は、その無視を利用してトラップを仕掛けていた。兵士たちが皇居外苑の端へ突き進もうとすると、その前にホログラムの規制線で囲まれた落とし穴があった。

 

「ぐわっ!!」

「気をつけろ!落とし穴だ!!」

 

 ホログラムを無視するようになった考えを利用し、突撃していた兵士たちは落とし穴に引っかかる。

 しかもこれはかなり巧妙で、入り組んだ地形に多数配置されていた上、落とし穴の中には敵から鹵獲した剣や槍などが縦向きに置かれていた。つまり、落ちたら針山に刺されるのと同じである。

 そして彼らが防衛線を抜けると、そこでは強化外骨格による集中砲火が待っていた。

 

「なんだこの攻撃は!?」

「バリスタだ!身を隠せ!」

 

 数体の強化外骨格による集中砲火と、機動隊員らが待ち構えていた。さらにそこに戦術人形による射撃も加わり、キルゾーンが形成されていた。彼らはわざと内部に引き込み、すぐさま体制を立て直していたのだ。

 

「将軍!敵兵です!」

「オーガを前に出せ!巨躯の怪異を討ち取り、突破を図るのだ!」

 

 ガンブラル将軍はオーガを前に出し、強化外骨格を討ち取ろうとする。しかしオーガは、複数の強化外骨格から放たれる重機関銃により頭部を集中砲火され、すぐさま物言わぬ死骸と化す。

 強力なオーガが討ち取られる様子を見た兵士たちはパニックに陥り、だんだんと統率を失っていく。それを見たガンブラル将軍は、敵にあと一歩届かぬ悔しさを滲ませた。

 

「これはダメだ……退却しろ!」

「退却!退却!!」

 

 オーガですらも通じないと分かると、ガンブラル将軍は統率が保てる内に退却を命じる。

 しかしその時、退却するはずの門の上に置かれていた木材の山が崩れ落ち、破壊された門を完全に塞いでしまった。伊丹が発案した罠は、二重、三重に分かれて配置されていたのである。

 

「将軍!退路が!」

「しまった!!」

 

 敵の罠の巧妙さに気づいたガンブラルは、急いで馬を止めるが、退却の命令が下っていた兵士たちを止めることはできなかった。

 結果、門の付近は退却しようとする兵士と門を開けようとする兵士たちに別れ、おしくらまんじゅうとなった。

 

「退却だろ!なんで詰まってるんだ!?」

「押すな!門が開かないんだよ!」

 

 だが、そんなダマになっている兵士たちに対し、機動隊員達は容赦しなかった。ガソリンが大量に詰められた手製の壺を、その人混みに対して投げつけたのである。

 

「うわっ!?」

「なんだ、水か!?」

 

 そして油が人混みに染み渡ったところで、彼らは火炎瓶を大きく振りかぶって投げた。

 そうなれば、もう想像の通りである。人体を焦がす相当な勢いの炎が爆発的に広がり、人混みは一瞬で火の海に変わった。

 

「うわぁぁぁ!!」

「誰か助けてくれぇ!!」

 

 火炎瓶の猛攻によりパニックにに陥った兵士達は、地面を転がるスペースもない場所で次々と燃え移り、人体が焦げる強烈な臭いと共に焼死、あるいは煙で呼吸困難となり窒息死した。人混みの外側から逃げようとした兵士たちは、全員射殺される。

 

『クリア!作戦は成功だ!』

 

 戦場となった皇居内部にて、機動隊員達は奮戦していた。何度も戦線が下がろうと、機動隊員達は果敢な抵抗を続けて敵を退け続けている。

 戦線が下がるたびに隊員を補充し、弾薬を補充し、防衛線を引き直してかなり長い時間戦い続けていた。

 後方には、民間人のボランティアが負傷した機動隊員達のために残っていた。伊丹に感化され残った彼らの活躍も、機動隊員達を支えていた。

 

 

 

 

 

 

 

銀座事件2日目

東京 上空

 

 事件から2日目、空が異変に染まり始めた。

 最初に気づいたのは、マジーレス率いる尖兵竜騎兵大隊である。広大な敵都市を見下ろしながら、愛竜の手綱を握っていたマジーレスは、その異変を目にしていた。

 

「これは……何か嫌な予感がする」

 

 眼下では激しい戦闘が行われており、戦況はこちらが何度も攻略に失敗しているようだった。

 その熱気は確かにマジーレスに影響を与え、高揚させていたが、この感覚はそれが原因ではないと理解していた。

 その時、彼の神経がピリピリとする中、戦闘経験の多い竜騎士バラッキーノが別の方向を指差す。

 

「大隊長!正面に何か見えます!」

 

 正面を見ると、遠くの空を飛ぶ謎の影が幾つか見えた。まだかなり遠いのでよく見えないが、飛龍並みに大きそうである。それが空を飛んでいて、こちらに向かっている。

 

「俺が見てきます。誰かついて来い!」

「了解!」

 

 マジーレスの声を受けた竜騎士ジャマンスカが、長槍を手繰り寄せて身を構えると、同僚を二騎引き連れ迎え打つとばかりに飛び出した。

 

「待て、アイツらは明らかにおかしい!バラッキーノ、ジャマンスカ達を呼び戻せ!深追いするなと伝えるんだ!」

「は、はっ!」

 

 マジーレスの命令を受けた竜騎士バラッキーノは、ジャマンスカ達を呼び戻すべくその後を追う。

 

 ジャマンスカ達が『それ』に近づくと、敵の異様がはっきりと見てとれた。

 敵は、巨大な人型の怪異だった。

 巨人と表現するべきその威容に加え、手には弩器のような物体を携えている。巨人が空を飛ぶだなんて聞いたことが無いため、ジャマンスカ達は一瞬たじろいだ。

 

「なんだあれは?」

 

 巨人のうちの一人が手を挙げると、巨人の隊は左右に分かれ、高度を急激に下げていく。

 

「野郎、挑発のつもりか!?」

 

 彼らは一方の隊に対して集中し、それを三騎で追いかける。敵の方の巨人は同じく三騎で、数の上で互角となった。

 林立する建物の合間を縫い、彼らは河川の上でチェイスを繰り広げる。巨人が高速で飛び回り、それを飛竜が必死になって追いかけていた。

 

「速い!」

 

 しかし、全力で飛行しているにも関わらず全く追いつけない。このままでは、飛竜が疲れてしまう。その前にケリをつけてやると思ったその瞬間、巨人が飛行しながら後ろを向いた。

 

「え?」

 

 そして弩弓と思わしき武器を構えると、そこから火が噴き出した。隣を飛ぶ竜騎士がその衝撃に吹き飛ばされ、飛竜と竜騎士もろとも血飛沫となって粉々となる。

 

「な、何……?」

 

 飛竜は揚力を失い、そして水面に激突した。水柱が立って飛竜は回転し、そのまま水中へと没した。

 

「っ!!」

 

 ジャマンスカは敵の脅威を悟り、急いで手綱を引いて回避運動に入った。わずかな間で思考を照らし合わせ、こいつはバケモノだと感じたからだ。

 飛竜を貫く威力の弩弓を持ち、空を飛び、あまつさえ後ろを向きながら飛ぶなど、我々の常識の範疇にいる生き物ではない。怪物だと、そう感じたのだ。

 だが回避は間に合わず、ジャマンスカが騎乗する飛竜の翼もズタズタに引き裂かれた。

 

「ぐはっ!!」

 

 バラッキーノの見ているすぐ前で、ジャマンスカと仲間達は36mmチェーンガンによって撃墜されてしまう。

 

 その様子は、少し後方を飛んでいたバッキーノの方角からも見て取れた。ジャマンスカ達がやられたのを見て、バラッキーノは呆然とする。

 

「な、なんてことだ……飛竜の翼をズタズタにするような弩弓が敵にあるだなんて!」

 

 その時、バラッキーノはなすべきことを思い出し、慌てて飛竜の手綱を引いた。

 

「このことを大隊長に報告しなければ!」

 

 だがその時、ビルの間を抜けて巨人が目の前に現れる。バラッキーノの位置を予測し、待ち構えていたのだ。

 

「うわっ!?」

 

 しまった、と思った時には既に遅く、彼も巨人の持つ36mmチェーンガンに引き裂かれ、撃墜された。

 

 

 

 

 

 

 戦術機、という兵器が存在する。

 それはこの混沌とする世界の中、新たに誕生した鋼鉄の巨人の名称であった。

 

『全目標沈黙、撃ち方やめ』

 

 軽快な音と共に36mmチェーンガンが火を吹き、鈍い音と共に飛竜が粉砕された。その様子を網膜投影の視界から見つつ、この兵器を操縦する『衛士』達はすぐさま思考を切り替えた。

 その巨大な武器を持つのは人間ではない。ましてや戦術人形でもなく、それよりももっと巨大な兵器である。その威容は、まさに鋼鉄の巨人であった。

 

──戦術歩行戦闘機。

──又は、戦術機。

 

 これらの兵器は、有人操縦の二足歩行兵器である。こちらも第三次世界大戦の時に生まれた兵器であり、強化外骨格や戦術人形の技術を発展させて作られた。

 『跳躍ユニット』と呼ばれる飛行装置を搭載しており、低空での高速機動が可能な兵器であるが、本来ならばこの制空権の確保は戦闘機が行うべき任務である。

 しかし、第三次世界大戦において大量のEMPが撒き散らされ、通常の戦闘機が高高度を飛行できなくなると戦闘機の役割は消滅。その代替兵器として、第三次世界大戦中に生まれたのがこの戦術機なのであった。

 

「ストライダー06、目標殲滅。意外と呆気ないですね」

 

 戦術機の衛士である女性が、高層マンションの陰からそう呟いた。あまりに呆気ない航空戦力の殲滅に、余計な疑惑が生まれたのだ。

 

『E.L.I.D.の飛行タイプでは無さそうだ。だが油断するな、奴らは建物の影から襲ってくるかもしれん』

「06、了解」

 

 彼女の部隊の隊長である衛士が注意を促し、隊員達を引き締めた。戦術機部隊は一度集合し、そのままビル群を避けて飛行し始めた。

 そしてしばらく飛行してから、推進剤の節約のために途中の地面に着地。二足でのキッチリとした歩行を行いながら、目的地を目指していた。

 

『こちらCP。皇居の機動隊が内部まで押されている。以降は水平噴射にて着地せずに急行せよ』

『ストライダー01了解。全機、推進剤に気をつけろ』

 

 彼らの駆る戦術機、49式戦術歩行戦闘機『疾風』が歩みを早め、そこから足蹴りで再び空へ飛び上がる。

 目的地である皇居周辺まで5分を切っているが、途中の障害を回避を行えば更に遅れる可能性がある。

 そこで衛士達は戦術機の高度を上げ、ビルの屋上を伝って現場へ急行した。途中、空を飛ぶ巨人を見た武装集団の驚愕の表情が網膜投影に表示されるが、彼らは気にも留めなかった。

 

 

 

 

 

 

同時刻

東京 皇居周辺

 

 その頃、帝国軍は策を変えて皇居に攻撃を仕掛けていた。

 今まで邪魔で入り組んでいた道路からの攻撃を止め、堀を瓦礫や死体などで埋め始めたのだ。その策は功を奏し、既に堀の数カ所が渡って歩ける状態になっていた。

 

「将軍閣下、堀の埋め立て作業を終えました!」

「よろしい。大変によろしい!」

 

 レムヌムはそう言うと、腰に巻いていた帯剣を引き抜く。自ら敵陣に切り込むのではなく、味方の士気を鼓舞する為だ。華々しく勝利を演出する為、そのポーズを取る。

 

「全軍、総攻撃を開始せよ!」

「全軍突撃!」

 

 兵士たちが復唱し、総攻撃が始まった。待機していた全ての部隊が前進を開始し、兵士たちは城門へ、そして堀へと殺到する。

 彼らは堀を埋め立てた死体や瓦礫を踏み躙って一気に渡り、石垣をよじ登ろうとする。それによってこれまで戦場となっていた大手門だけでなく、堀に囲まれた城壁の全てが戦場となった。

 すると敵の反撃も熾烈になってくる。大量の水や瓦礫を浴びせ、敵を追い払おうとする。あるいは焚き火の音にも似た破裂音を繰り出し、飛礫を放つ。その飛礫の威力は絶大で、直撃を喰らった兵士たちは鎧を貫かれ倒れていく。

 しかし、戦意に溢れる帝国軍の兵士たちは味方が倒れるのも構わず前進を続け、城壁をよじ登った。

 

「煙幕魔法を炊け!煙を使うのが奴等だではないと教えてやるがよい!」

 

 従軍魔導師総監ゴダセンの号令で、煙幕魔法が立て続けに放たれる。敵の城はたちまち煙に包まれ、敵も味方も視界が真っ白になる。

 

「くそっ!こんなんじゃ前が見えない!」

「そう言うな、前だけを見て進め!」

 

 兵長が味方を励ますと、彼らは前が見えないにもかかわらず一気に走り出した。これにより飛び道具の威力は半減し、一気に進めるだろうと思われた。

 だがそんな時、走っていた兵士の一人が何かにぶつかる。敵かと思って剣を抜いたその時、見上げた彼の視界に見えたのは巨躯の怪異(強化外骨格)だった。

 

「しまった!」

 

 攻撃を避けようとするも、見上げた頃には既に奴は棍棒を振り翳していた。そのまま頭を砕かれ、兵士たちが混乱状態に陥る。

 さらに後方から連続した破裂音が鳴り響き、飛礫が多数飛んでくる。もはや盲撃ちに等しいその攻撃により、多数の兵士たちが煙を突破できずに立ち往生した。

 

 

 

 

 

 

同時刻

東京 皇居内部

 

 戦闘は混戦状態となり、機動隊の隊列が乱れ始めた。こうなると機動隊も強化外骨格も、目の前にいる敵と必死に戦うだけであった。

 幸いにも強化外骨格には暗視装置が搭載されており、相手の煙の中でも敵の隊長などを狙って攻撃し、敵を防ぐとともに暴れ回っていた。

 そして機動隊員達は、小銃が強化外骨格に効かないのを知っている為、盲撃ちで射撃を行い敵の浸透を防いでいた。

 しかしそれらの抵抗にも限度があり、戦意あふれる敵に対して前線が崩壊、混乱の中で乱闘状態となった。

 

「くそっ!味方はどこだ!?」

 

 最高指揮官である原田ですら、右手に拳銃、左手に電撃警棒を握りしめて格闘戦を演じていた。

 盾を構えて迫ってくる敵に対して、原田は警棒で足を払う構えを見せる。すると敵は盾を下げて防ごうとするが、空いた胸あたりの空間に対して拳銃を突きつけ、引き金を絞った。

 破裂音が鳴り響き、倒れ伏す敵兵。だが見送る暇もなく、原田の背後から別の兵士が襲いかかった。すかさずしゃがみ込んで回避しつつ、足蹴りを払った。仰向けに倒れた兵士の顔を蹴り、そこに激しく警棒を打ち付ける。

 

「原田隊長!」

 

 乱戦の中、原田付の伝令がやって来た。

 

「隊列を組み直せそうか!?」

「無理です!混戦状態で敵も多数、強化外骨格も何機かやられました!」

「くそっ!」

 

 伝令は第一機動隊のホロフラッグを目立つように大きく掲げている。部隊の位置を知らせるための機器であるが、それだけに敵に指揮官だと思われ狙われやすい。この伝令は、素早く障害物に逃げ回って敵を避けていたらしい。

 原田は周囲を見渡して同じホロブラッグを探すが、乱戦により旗を建てられる部隊も少ないようだ。改めてホロブラッグの重要性がわかる事態である。

 

『第四機動隊の島田中隊長がやられた!繰り返す、島田中隊長がやられた!』

『原田隊長!第二中隊より至急応援をとの要請です!増援を!』

 

 各部隊から悲鳴のような声が続々と送られているが、原田には増援の送りようなどない。既に全部隊が乱戦に突入する中、体勢を立て直して再編成するの無理だ。

 

「んな無茶を言うな!」

 

 その時、煙の中をすり抜け一人の兵士が原田隊長に切り掛かって来た。慌てて拳銃を引き抜くが、弾切れにより空撃ちの音が鳴る。

 

「しまった、お前は下がれ!」

 

 すぐさま武器を警棒に持ち替えるが、その時大きな破裂音が鳴り響き、兵士が一撃で吹き飛ばされる。

 横を見れば、非番の協力者として戦線に加わっていた伊丹と42式、そして佐伯の姿が見えた。

 

「い、伊丹!?佐伯まで!」

「原田隊長、機動隊員達を纏めてください!もうすぐ戦術機が来ます!」

 

 伊丹が後方の通信機を指差しながら告げる。

 

「地上掃射か!?この状況でどうやって?部隊もバラバラの状態だぞ!」

「この際指揮系統はどうだっていい!とにかく警備車両の周りに皆をかき集めるんだ!あと数分で、早く!」

「お、おう!」

 

 伊丹が腕の時計を指差しながら言う勢いに押され、原田はスピーカーを手に取った。

 

「総員、集まれ!とにかく手近なホロブラッグの元へと集まれ!国防軍の戦術機が来るぞ!!」

 

 原田はそう告げると、再び警備車両の陰から飛び出し、伝令から隊旗を奪って大きく振りかぶった。

 

「密集横列!盾を中段に構えろ!」

 

 すると混乱状態にあった機動隊員達が、続々と集まって来た。そして隊列へと加わり、味方の盾の後ろへと整列する。

 もちろん、敵も戦意を高めてこちらに挑み始める。整い始めたこちらの隊列を見て、敵も隊列を組み直して向かってくる。

 そして、熾烈な乱戦が再び線と線の戦いに移り変わると、それはやって来た。

 

「よし来た!」

 

 それと同時に空を見上げれば、南の方角、日比谷公園上空から跳躍ユニットの音と共に巨人が飛行している。ビルとビルとの隙間から現れた49式戦術歩行戦闘機"疾風"の8機編隊が、低高度で侵入してくる。

 肩を見れば、伊丹が駐屯地で見慣れた『1st』のマークが描かれている。間違いない、練馬駐屯地の戦術機連隊の所属部隊だ。

 ふと見ると、42式が横列の前に仁王立ちしていまだに射撃を続けていた。それを見て伊丹は彼女を連れ戻そうと飛び出す。

 

「おい、42式!下がれ!」

「えー?まだ撃ち足りないよー!」

「馬鹿言ってんじゃない!」

 

 駄々を捏ねる42式を掴み、引きずりながら後方へ下がる。それでも歩みを進めてくる敵に対して、ダメ押しにカラースモークの発煙筒を投げつけてやった。目印のつもりだ。

 そして、上空から強烈な風が吹き付け、戦術機が低空に降りて来た。そして腕と背中にマウントされた突撃砲を武装集団に向ける。

 

「伏せろ!!」

 

 味方に合図を送った瞬間、辺り一面に広がっていた敵に対し、チェーンガンの掃射が吹き荒れた。36mmの機関砲弾は一つ残らず炸裂していき、唖然として立ち尽くす敵兵達を血飛沫に変えていく。

 オークやトロルですら、36mmの前に粉々に粉砕された。投石機も指揮官の陣地も、まるで薙ぎ払うかの如く吹き飛ばされる。

 

『掃討完了、残党の検挙に向かわれたし!』

 

 戦術機の拡声スピーカーから、女性衛士の声が響く。敵が総崩れとなり、戦術機の援護が入ったのを見て伊丹は叫んだ。

 

「敵は怯んだ!残りの検挙へ!」

「よし!全機動隊に連絡!突入用意!!」

 

 原田の号令により、全員がが装備を持ち検挙の体制に入る。さらには強化外骨格まで催涙ランチャーを構え、その時が来た。

 

「催涙弾発射!」

「今だ!検挙ぉぉぉぉぉ!!!」

 

 その後は鮮やかであった。呆然と立ち尽くす、あるいは負傷して歩けなくなった敵兵士たちに手錠を嵌め、次々と検挙していく。

 暴れるオークやトロルに対しては強化外骨格の強烈なパンチが入り、気絶させた後に拘束された。指揮官らしき人物も、一人残らず検挙されていく。

 こうして、皇居周辺の戦いは日本側の勝利で終わった。

 後日、現場を指揮していた伊丹耀司は国防大臣から直々に表彰を受け、あだ名が付けられることになる。

 

──"二重橋の英雄"と。

 

 そう、英雄になっちゃったのである……




・戦術機
正式名称『戦術歩行戦闘機』、有人操縦の二足歩行機動兵器である。第三次世界大戦の撒き散らされたEMPの影響で出撃できなくなった戦闘機の代替兵器として、強化外骨格や戦術人形の技術を発展させる形で誕生した。
現在では市街地戦や山岳戦の要とも呼べる独自地位を獲得しているが、遮蔽物のない平地での戦闘は苦手とする。その運動性能と汎用性から、戦闘以外に工作機械や弾薬運搬など様々な場面で活躍している。
元ネタはマブラヴシリーズの戦術機であるが、原作とは誕生経緯が違うため注意。

オリ戦術人形達の挿絵は欲しい?

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