GATE 近未来日本国国防軍 彼の地にて斯く戦えり 作:国防アレキサンダー
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一ヶ月後
帝国 首都帝都
「此度の戰。大失態でしたな、皇帝陛下」
帝都元老院議事堂。門の向こう、帝国と言う国の行く末を決めるその議事堂にて数百人ほどの偉い男達がひしめき合っていた。
彼らは帝国を支配する貴族や元老院達であり、向かい側には帝国の長たる皇帝陛下の姿もある。この会議も、この国の行く末を決めるものだった。
「保有する総戦力の5割を損失し、敗走するという大損害。あえて厳しく追及したいが、皇帝陛下は今後どの様な策を講じてこの国をお導きになるつもりか?異界の脅威に対して、どうするおつもりであるか?」
王座に腰掛け頬杖を付く荘厳な男性。彼の名はモルト・ソル・アウグスタス、帝国の長たる皇帝陛下その人である。
一方で、彼に対して議事堂の中心に立ち厳しい追及を行うのは、元老院議員カーゼル侯爵である。彼もまた元老院議員の中では偉い地位に立っており、皇帝に対する厳しい追及を咎める者はいない。
「遠征軍のほとんどは壊滅、飛龍に至っては遠征に参加した500騎全てを損失、さらには捕虜も多く門の向こうに取り残された貴族も多数。さらには逆侵攻によりアルヌスの丘は異界の敵に占拠される始末。彼奴等の軍勢は精強で、いまにもこの帝都にまで進軍してくるやもしれぬのですぞ?」
彼が言っているのは門の向こうに対する遠征の決定、その早計さである。その命令は皇帝陛下とその周辺により考え出された政策であったが、事前の調査のやり方からして、あまりに相手を見下し過ぎていた。
「門に攻め込む以前、数人ばかりの住人を攫って向こう側の内情を聞き出した。しかし、そんな程度のやり方で相手を脆弱だと決めつけるのは早計すぎたのではないだろうか?
実際、彼らの所持していた金品や服などの精巧さたるや、ドワーフの職人すら目を輝かせる代物。さらには、攫った住民の中には人とも違う血を流さぬ『鉄の女』も居ました。門の向こうには、我々の知らぬ技術や種族がいるのではないか?再考する余地は何度もあった!」
実際、ハト派からは「さらなる調査と外交を行うべきだ」と言う意見も多かったが、その意見はあまり響かなかった様だ。
第一、今回の遠征は帝国の孕む焦りから決定された。この国は問題だらけなのだ。
そんな帝国の皇帝たるモルトは彼の話を黙って聞いていたが、話がひと段落する前に手を上げカーゼルを制した。
「カーゼル侯爵、貴卿の心中は察する。此度の遠征の敗北により、我が国が保有する軍事的優位が失われたのは事実だ。そして其方は帝国に服していた外国や諸侯が一斉に反旗を翻し、槍先を揃えてこの程度まで進軍してくる懸念。……夜も眠れぬのだろう?痛ましいことだ」
皇帝はあくまでカーゼルに同情するように語りかけるが、当の本人は嘲笑われていることをひしひしと感じていた。
「何を、おっしゃる?」
「なに、戦に百戦百勝はないと言う話だ。帝国は危機に瀕する度に皇帝、元老院、そして老若男女の国民全てが団結してその危機を乗り越えてきた。その度に帝国は成長し、更なる発展を遂げたではないか?」
皇帝が言っているのは帝国の歴史である。かつて小国だった帝国が、大陸を飲み込む巨大大国になれたのは、決して困難がなかったわけではない。カーゼルとてそれは分かっているので、反論することはできなかった。
「常勝の軍勢など有りはしない。ゆえに、今回の遠征は帝国に対する困難である。遠征に参加した将の責任は不問とし、共に困難を乗り越えようではないか」
「自らの責任を不問に……?」
帝国の法において、現場の将の責任を取らないとなれば皇帝の責任も取ることができない。つまり、皇帝は上手く責任逃れに成功した形となる。
「……まさか、この帝都が包囲されるその時まで裁判ごっこに明け暮れる輩はおらぬな?」
その言葉はカーゼルに向けられた言葉だと知ると、カーゼルは内心舌打ちをしつつも、その場を下がるしかなかった。
「しかし陛下、たった2日で門は奪い取られたのですぞ?」
しかし、次に発言したのは遠征軍の生き残りである老将ゴダセンである。彼は決して無能ではなく信頼されているため、彼らが2日で奪い返されたと言う事に驚嘆を隠せない。
「無論我らも取り返さんと騎兵を率いて進軍した!しかし、遠くにいる敵からパパパパッ!と言う音がしたかと思えば、味方の兵達が次々と倒れ死んでいく!あんなすごい魔法は見たことない!」
その体験談に議事堂はさらに大きくどよめく。敵がそんな無茶苦茶な魔法を使ってくるなど、自然の調査では全く分からなかった。とんでもない情報である。
「それだけではない!奴らは見たことの無い怪異まで従えていた!城砦もかくやという大きさの巨人!四足の鋼鉄の像!蠍の如き蟲獣!それらが火を吹けば、馬も兵も飛龍も肉片となり散っていく!」
ゴダセンが報告を荒げれば荒げるほど、議事堂の議員達は恐怖に慄いた。帝国にとって怪異とは、使役する兵器であると同時に恐れの対象だ。
相手はオークやゴブリン、それどころか飛龍すらも比較にならない怪異を使役しているのかもしれない。その恐怖は計り知れない。
「戦えばいいのだ!兵が足りぬのなら属国から徴収し、物資が足りぬなら村々から奪って来ればいい!」
「そうだ!負けてばかりでは帝国人の恥!破竹の勢いで再び門へ攻め入るのだ!!」
「そうだそうだ!」
無茶苦茶な意見であるが、彼も歴戦の戦士として戦う意志を見せたまでである。実際に何人かの議員も賛成し、同じく声を上げる。
「そんな横暴が通用するものか!」
「各地の防衛はどうする!?」
「奴等が従うものか!」
「引っ込め戦争馬鹿!」
「ならば貴様ら、妙案はあるのか!?」
「なんだと!?」
しかし同時に非難する意見も多数が上がり、議事堂は混沌を極めた。議論が乱闘へと変わり、誰かが拳を振り上げた時、皇帝が手を挙げた。
「事態を座視するのを余は望まぬ。それならば、戦うしかあるまい」
その言葉に多くの議員がどよめいた。しかし、ただ戦うのでは無いと皇帝は言葉を続ける。
「大陸全土へ使節を派遣せよ。"異界から大陸侵略を目論む族徒を撃退するべく、援軍を求める"と」
そこまで言ってから皇帝は立ち上がり、高らかに宣言した。
「我らは、
「おお!」
「皇帝陛下に忠誠を!」
「帝国軍に栄光あれ!」
帝国にとって、フォルマート大陸にとって、連合諸王国軍とは重大な意味を持つ。かつての異民族との戦いで、この言葉が使われ団結して戦ったのだ。
「皇帝陛下、アルヌスの丘は人馬の骸で埋まりましょうぞ」
しかしカーゼル侯は皇帝の意図を見抜き、皇帝に対して強くそう言った。しかし、当の皇帝モルトは不敵に笑うだけであった。
暗闇の中、多くの人馬が身を潜め、アルヌスの丘へ進軍する。誰もが緊張に包まれ、ある者は復讐心すらも抑えて静かに進んでいた。
しかし、夜間戦闘ならまだしも夜間奇襲などは、現代では容易に看破される。地面に設置された振動センサー、対人レーダーに多くの反応が探知される。
国防陸軍の反応は早かった。事前に部隊の半分以上が昼間から仮眠をとっており、眠らなくていい戦術人形は24時間体制で監視していた。
『こちら警戒班、対人レーダーが丘の裏側から潜む敵軍を発見したわ。数は地面が3分に敵が7分。観測限界超』
『了解、全軍戦闘配置』
斥候の戦術人形からのデータを元に、国防陸軍は戦闘配置を整えた。身構えるのは多脚戦車や装甲戦闘車、そして重機関銃や高出力対地レーザーなどを構える戦術人形達である。
「まだ構えて」
そのうちの一人、対地機関砲を構える戦術人形達はタイミングを待っていた。今の段階では、まだ敵を待ち構えている。勝手に撃てば敵を刺激してしまうのだ。
「まだよ……」
そのうちに、敵の頭上に今まで無かった明るい火の玉が登った。照明弾、旧世紀から変わっていない夜戦の味方である。
そして、明るくなったタイミングで多数の対人レーダー、小型ドローンが
『戦術マーカー、マーキング完了』
『全部隊へ、撃て』
夜襲が見破られた事に気づいた敵が、一斉に駆け出した。しかし、その領域はすでにこちらのキルゾーン。途端に戦車砲、機関砲、小銃弾、そしてレーザー光線の洗礼が降り注いだ。
それでも敵の数は多く、今まで温存していた戦力も全て投入してきている。砲兵部隊が砲撃を開始し、さらには後方から多連装対人ミサイルまでもが降り注ぎ、爆発が敵軍を制圧していく。全滅するまで時間はかからなかった。
アルヌスの丘に、連合諸王国軍8万人の骸が埋まる。
数日後、敵軍は何処かへ消えていった。後に丘に残ったのは莫大な量の生き物の死体と、それを啄む鳥達であった。
伊丹耀司は戦場跡の偵察任務に就いていた。まだ敵の生き残りがいるかどうか、死体がどれだけいるのか、情報を把握するためである。
「……自衛のためとはいえ、嫌なもん思い出させるな」
伊丹はボソリと、過去のことを思い出していた。
彼らの頭上を巨大な肉食鳥類が飛び交っている。馬、人間、そしてオークやゴブリンなどの怪物などの死体を啄んで去っていく。
死体は山のように積み重なり、盾や鎧が重くずっしりと、持ち主の無念を表していた。伊丹も兵士であるがゆえ、複雑な感情を抱いてしまう。
「銀座で4万人、だっけ?ツェナープロトコルで他の人形達ともやりとりしているけど、丘全体で10万人の死体があるってさー」
伊丹と共に偵察任務に出ていた42式が、憐れむようにそう報告した。彼女は軍用タブレットを使い、死体の写真を収めて詳細を報告している。
「……突入の時も4万人くらい殺しちゃったし、合計で18万人か。一個の小都市がまるまる滅んだような数だな」
「第三次大戦に比べれば、そりゃ犠牲者の数は少ないけどねー。でも、中世の価値観で言ったら相当な犠牲者だよ」
現代と中世では人口の数が大きく違う。当然、軍隊の規模も犠牲の数も、時代と共に増えていってしまった。
その価値観で言えば、中世の価値観で18万人と言う数は大きな損害だ。地球の価値観に照らし合わせれば、だが。
「それでも夜戦も含めて3回は攻めてきた。着実に学習しているけど、犠牲の方が大きい。ここまでして取り返そうなんて、本当の末期症状じゃねえの?」
「そうだねー。もしかしたらここ、重要な土地なのかも。片付けた死体の中には子供っぽい人もいたしー」
「……悪いな、死体の片付け全部押し付けて」
「いいよ別に、伊丹のせいじゃ無いからねー」
現在、死体の片付けは主に戦術人形が行っている。人間が行うと感染症やPTSDのリスクが発生するので、それらの心配がない戦術人形に任せているのだ。
伊丹としては、嫌な事を戦術人形に押し付けている様にしか感じない。だが、実際PTSDに関してはすでに何人かの隊員が発症している。感染症などから人間の保護するのも大事なので、致し方ないのかもしれない。
伊丹達はその後も歩き続け、丘の向かい側へとたどり着いた。ここには破棄されたテントが散らばっており、敵の本陣だったと予想される。中には偉そうな人の兜が、破壊された状態で残っていた。
「ここにも生体反応は無し。敵さんは本当に全滅したみたいだな」
夜襲の翌朝、連合諸王国軍の本陣に対しても砲撃が行われていた。3回目の夜襲で痺れを切らし、もう攻めてこれない様に完全に吹き飛ばしたのだ。
その爪痕か、この本陣は穴ぼこだらけだった。いまだに硝煙の匂いが立ち込め、死体の数も多い。
「にしても、容赦ないね。本陣にまで砲撃を加えるなんて」
「噂じゃ、短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルまで投入するって話らしい。もしかしたら、敵さんの首都まで狙うのかもな」
実際、世論は異世界の敵を滅ぼさんとする様な過激な意見が多く見られる。陸軍の装備が次々と入ってきているのは、彼ら世論の後押しが大きい。
日本はこの数十年間で大きく意識が変わった。今までは良くも悪くも善良な部分があった国民であったが、ユリシーズ災害や第三次世界大戦などを経験し人口が1億人を下回る様な被害を被ってからは、その意識は大きく変わっている。
多くの国民が犠牲となってから日本人は甘い部分を捨て去り、現実的で時には過激な意見を言う様になった。
銀座事件での4万人の犠牲者が出た事は、そんな国民感情に火をつけてしまったのだ。
それでもなお、伊丹は怒りを抑え理性を保とうと努力している。他の国防軍人もそうであろう。銀座事件で痛ましい記憶があろうと、自分達は軍人なのだから。
「はぁ……そろそろ戻ろう」
「うん、そうだねー」
二人は取り敢えずここら辺で基地に戻る事にした。現在アルヌスの丘には星形の陣地を備えた要塞が建設されており、万全の構えを築こうとしていた。
・高出力対地レーザー
対地掃射に用いられるレーザー兵器、ほとんどは対空用途の流用品。人一人を焼き殺すレベルの出力から、戦車一台を破壊する高威力まで様々な最新兵器。
特地には弾代が安いのと電力確保が簡単であることから、最新であるにも関わらず持ち込まれた。
問題は射程の短さ。大小問わず有効射程はわずか1キロほどしかない。
本作オリジナルの兵器。
・対人ミサイル
人間サイズの兵士や戦術人形などを狙う小型のミサイル。40mm擲弾ほどの威力があるが弾代がものすごく高いので、特地では指揮官などの重要目標に対してのみ使われた。
元ネタはCoD:AWのミッションに一回だけ出てくる兵器の武装から。
・ツェナープロトコル
戦術人形が用いる特殊な広域通信手段。ホスト衛星や基地局などを中継せず、独自のコミニュケーション通信を構築して情報をやり取りする。特地ではかなり有効な通信手段である為、人間兵士も使えないかと模索中。
元ネタはドールズフロントライン。
オリ戦術人形達の挿絵は欲しい?
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欲しい
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無くても問題ない