FGO世界に転生した一般オリ主くんが生き残るためにリアルガチチャートを組んでRTAを走るお話   作:ペットボトル羊

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束の間の平和
いつかどこかの幕間の物語『証明の魔術師の日常』


 

 僕には才能が無かった。

 名門の魔術回路も特別な魔術もない。平凡そのもの。

 それなのに、唯適性が高かっただけで、選ばれた。

 魔術師としての能力なんて、全く関係ない。正真正銘運だった。

 どいつもコイツも選ばれた奴等は特別で、僕は嫉妬心を隠そうとせず、ソイツらに負けないように努力だけは重ねていた。意味があるかどうかは、知らないが。

 正直表面上は諦めていなかったが、心の奥底は諦念しかなかったと思う。

 

 そんな時、出会った。

 そいつは、時計塔で何度も見たことがあった。余りにも有名だったそいつは、あらゆる学科に顔を出していたり、君主(ロード)にも接触しようとしていたと人伝に聞いた事もある。

 

 そいつは、よく嘲笑されていた。

 血筋や家柄のせいもあったが、何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことがより拍車をかけていた。

 僕は、遠巻きに眺めているだけだったが、自分が同じ立場だったら窮屈とかそういうレベルじゃない苦難が待っていただろう。

 だが、そいつは全く屈せず出会う人間に教えを乞いにいっていた。

 

 いったいどうしてそんなに必死に足掻いていたのか理解できなかったが、どうせ僕と関わることはない───そう思っていた。

 

 “長所と短所は表裏一体。自虐的なのも、己の欠点を冷静に客観視できていると言い換えることができるし、悲観的なのは、己のできる範囲(レベル)を正しく把握していると言える”

 

 都合の良い言葉だと思った。

 本当に、物は言いようだ。そんな言葉で“才能”の差が埋まる訳がない。

 率直に言って不快だったから、初めて顔を合わせたときの会話でけっこう嫌味を言った気がする。

 

 それでも、めげなかった。

 出会ったら必ず挨拶してくるし、話題も振ってくる。訓練でも、終わったらいつも反省会をしようと持ちかけてきた。

 最初は拙かったが、それも回数を重ねることで解消していく。

 

 正直、押しに弱いことを自覚していた僕は、案の定断りきれず流されてしまった。

 平和な会話を重ねた第一声は、今でも鮮明に覚えている。

 

 “俺たちは、Aチーム候補()()だけど、対等で友達だ”

 

 何だそれ、と思った。

 後で判明したことだが、()()()は仲がいい相手には誰にでも言っているらしい。

 率直に言ってドン引きしたが、()()()とも思った。

 

 僕は、あいつを頼りにしていたと思う。魔術の才能はなかったが、それ以外は優秀だったから、よく質問したり、指導してもらったりした。もちろん代価も要求されたが、魔術師は等価交換を原則としているからそれは当然だ。

 

 居心地が良かった。

 この関係が永遠に続くと夢想していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリスビリーが死去して、あいつの“Aチーム筆頭候補”という栄光が取り下げられるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

####

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………悪い、もう一度言ってくれ」

 

 カルデアに所属している人間には、マイルームと呼ばれる自室が与えられる。ベッドと棚、トイレとシャワーが併設されているが、全体的に無機質で、白い。要するに、殺風景だった。

 

「何だ、聞いていなかったのか?」

 

 但し、()()はそれに当てはまらなかった。

 けっこう、スペースが限られているというのに、中心近くに設置された全く雰囲気に合っていない年季のある炬燵。その側にある、炬燵に入って見るための透明なガラス扉が付いている棚の上にあるテレビ。その棚の中は、照明の光がどういう理屈か入っておらず、奥を見通せなかった。明らかに、そんなに使わない巨大なゴミ箱。中には、大小様々なゴミがあり、とりわけお菓子の袋が多かった。ベッドの上には、何故か大量の枕が散らばっていて、皺だらけな物や中身が飛び出ている物ばかりである。

 此処の主が愛用しているデスクだけが、綺麗に整頓されていた。 

 はっきり言って無秩序で、汚部屋だった。床に散乱している綿や羽毛などがそれをより強調している。

 これだけでも異彩を放っていたが、一番際立っていたのは──本棚である。

 

「やっぱり、疲れているだろう? 努力家なのは長所だが、何事も過ぎれば──」

 

 本棚は二つある。そこそこ大きく同型のそれは、炬燵に迫る程スペースを圧迫していた。

 

「あー、わかった、わかった! そっちは本題じゃないだろう! ……で、何て言った?」

 

 異質なのは、本棚の大きさではない。

 その、中身だった。

 

「む……まあ、そうだけど」

 

 棚は四段あり、全て()で埋められている。その本が、問題だった。

 

「いいか、もう一度言うぞ?」

 

 有名な神話や伝承からマイナーなソレまで記されている厳選された本たちが()()()にびっしり詰まっている。

 そして──

 

「──実はアーサー王って女性だったんだよ」

 

──二段目に、少年漫画、青年漫画、少女漫画、色々なジャンルの漫画があった。勿論隙間なく詰まっている。

 これらは、此処の部屋の主の趣味ではなかったが、無理矢理押し付けられ、読む習慣がついてしまった。

 

──三段目は、何故か直筆で、『史記』と書かれた本と『漢書』と書かれた本が異常な存在感を放ちながら、収められていた。因みに、『史記』という題名の本と、『漢書』という題名の本が二冊あるのではなく、()()()()()()。本を横にする事で、空いたスペースにも詰め込まれていて、それを実行した()()の“絶対に読め”という執念を感じる。

 

──四段目は、正に選り取り見取りであった。例を挙げると、お菓子作りの本、心理学の本、スポーツ医学の本、武術書などである。全く統一されていなかった。

 

 正直、混沌(カオス)だった。

 類を見ない程()()なので、この部屋の主が整理整頓ができない──のではなく、複数の人間が使っていると言った方がまだ信憑性がある。

 

「……………、………やっぱり、もう一度言ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、信じてくれないのか」

 

 先ほどまでは、止めていた手を動かしてせっせと二人で掃除する。

 

「当たり前だろう。……というか、何で()()()()は掃除しに来ないんだよ……!」

 

 どうやらこの部屋は、主が整理整頓できなくて散らかっている訳ではないようだ。

 二人は散乱しているものをしっかりゴミ袋に詰め込みつつ会話を続ける。

 

「落ち着けって、偶々俺以外のみんな予定が合わなかったんだよ」

「前日の夜に、僕の部屋で枕を投げ合う余裕があるのに次の日は無理、ってどういう事なんだ……?」

 

 血色の良い灰に近い銀髪の青年が、顔を顰めながら疑問を溢す。この部屋の主は銀髪の青年だったようだ。

 それを見て、黒髪の青年が苦笑した。

 

「元々、無理言って()()()に集めたからね。現に、ベリルとデイビットは来れなかったし」

 

 黒髪の青年が、銀髪の青年の疑問に申し訳なさそうに答える。

 銀髪の青年の目が細まり、黒髪の青年に向いた。

 

「わかってるよ。デイビットはともかく、ベリルとはあんまり顔を合わせたくないんだろう? そこら辺は、二人きりにならないように俺が調整するさ」

「お前の腕は疑っていないけどな……というか、また集まるのか」

「楽しかっただろ?」

 

 銀髪の青年が、昨日の夜の出来事を思い浮かべた。

 そして、より顔を顰め思い切り舌打ちする。

 

「ちょ、穏やかじゃないなぁ」

「穏やかでいられる訳ないだろ。だって、アイツら魔術使っていたしな」

 

───“本当に、昨日の夜は酷かった。どいつもこいつも枕を強化して投げてきやがって、しかもしっかり結界を張っていて被害も零だった事がより腹が立つ。”

 

「でも、カドックが一番熱くなっていたじゃないか」

「…………別に、そんなことはない」

 

 黒髪の青年が、銀髪の青年──カドックを、ニヤニヤしながら見た。

 

「……何だよ」

「──いや、なに。……それより、何で俺の言っていることを信じてくれないんだ?」

 

 カドックは、見透かされていることに微妙に羞恥を覚えたが、触れたら負けると分かっているので、これ幸いと最初の話題に乗っかった。

 

「お前の事は尊敬しているし、知識がカルデアで頭一つ抜けているのは認めるが、突拍子がないことを言うことも多い。そもそも、アーサー王が男性なのは周知の事実だろ」

「日頃の行いのせいか……じゃあ、アーサー王が女性だと仮定したら、アーサー王物語はどうなるか話さないか」

「はぁ?」

 

 困惑した表情を浮かべたカドックは、取り敢えず青年の言った仮定の通り、手を動かしながら想像(シミュレート)を実行する。

 

「そもそも、王位につけないだろ。そんな仮定は成立しない」

「男装したらいけるだろ?」

「男装? ……いや、どうやって肉体の成長を誤魔化すんだ」

「石に突き刺さっていた剣に老化と成長を止める効果があってね、ギリギリ美少年に見えなくもない状態で停止(ストップ)したんだ」

「都合が良すぎる……それに、アーサー王は最強の聖剣(エクスカリバー)に鞍替えするだろ」

「実はさ、剣を所持している間だけ効果が持続するんじゃなくてね、永続なんだ」

「本当に都合がいいな!? もう何でもアリじゃないか……」

「そう、好都合すぎるだろ? 真実は、花の魔術師(マーリン)が裏で画策していたから、全部出来レースだったんだよ」

「………何だよそれ」

 

 余りにも滑稽無稽な話だったので、眉間を押さえながらカドックは、想像(シュレート)することを放棄した。

 

「というか、この会話に何の意味があるんだ?」

 

 発端である黒髪の青年の出鱈目な発言を思い返しながら、カドックは投げやりな態度になりつつ青年の意図を問う。

 

「俺が何でも意味のあることを言うと思っていないか? 意味なんてないよ。友達同士だし、いいだろ?」

 

 青年は、困りつつも穏やかに笑った。

 

「……お前の言葉には、考えさせられることが多いからな」

「お、もしかして、褒めてくれているか? でも、それは間違いだよ」

 

 そう、青年はかぶりを振って否定する。

 

「そりゃあ、俺なりにさ。偉い人や凄い人の言葉を解釈して、俺自身の言葉として出力しているつもりだけど──結局は、俺が生み出したものじゃない。大元じゃないんだ」

 

 ただ、虚しそうだった。

 

「この場合、凄いのは俺じゃなくて、俺に影響を与えた人たちが凄いんだよ。……この言い方だと、俺も凄い人間みたいに聞こえないか?」

 

 自分で言っておいて、青年は勝手にダメージを受けていた。

 カドックは、それに呆れ返りながら青年のソレをはっきりと否定する。

 

「そうだとしても、僕が影響を受けたのはお前だ。僕の()()では、生み出したのはお前の言う“凄い人”じゃなくて────お前自身だ」

「────まさか、過去の自分に刺されるとはね。これは、未来の俺が見たら笑われそうだ」

「ふん、いい気味だ」

 

 散乱していたゴミとその他を、全部袋に詰め込み終わった。

 

「じゃあ、ゴミ捨て場に持っていこうぜ」

「ああ」

 

 二人で合計四つのゴミ袋を両手に持ち、扉を開いて廊下に出ようと──

 

「───む、既に終わっていたか」

「げ、ヴォーダイム」

 

 正に貴族然とした、黄金の長髪を優雅に靡かせている中性的な美青年──キリシュタリア・ヴォーダイムが立っていた。

 キリシュタリアの姿を確認したカドックは、露骨に嫌そうにする。彼からすると、ベリル・ガットとは別ベクトルでキリシュタリアは苦手な人物だったからだ。

 

「酷いな、カドック。私とて人間だ、謂れのない言葉で傷ついたりするんだが」

 

 キリシュタリアは、納得いかないと僅かに眉間にしわを寄せた。

 

「アンタのその尊大な態度が気に入らないんだよ。というか、自覚しているだろ。相変わらず面の皮が厚いな」

 

 カドックが中々に強烈な嫌味を放つが、キリシュタリアは気にもせず、寧ろニヤリと愉しげに口角を上げる。

 

「はいはい、いつものやり取りはもういいだろ? それで、キリシュタリアは手伝いに来たのか?」

 

 青年がうんざりしながらも、間に入ることで話が脱線するのを防ぐ。そして、半ば確信していたが、キリシュタリアが此処に来た目的を聞いた。

 

「もちろん、用件が片付いたから掃除しにきた。昨夜は楽しかったが、少々はしゃぎ過ぎたからね」

 

 キリシュタリアの瞳が、カドックと青年が持っているゴミ袋に向く。

 

「だが、もう遅かったみたいだ。……それにしても、私の気の所為かもしれないが……ゴミが多いと思うのだが」

「アンタらが僕の部屋を溜まり場にしているからな、その分ゴミが溜まりに溜まっていて、ついでに処分する事にしたんだ」

 

 “ああ、成程……“とキリシュタリアが呑気に納得しているのを見たカドックの額に青筋が浮かぶが、抑える。今ここで詰っても、無駄に時間を消費するだけだからだ。

 彼の様子を気づかれないように横目で観察していた青年は、“成長したなぁ……”と感慨深くなりながらも、それを表に出さず平然とある提案をした。

 

「キリシュタリア」

「なんだい?」

「手伝いにきたならさ、この袋をゴミ捨て場に持っていってくれよ」

 

──キリシュタリア・ヴォーダイム。

 魔術協会総本山である時計塔で、頭角を現せば『世界を変える』才能を持つと言われているが、彼は別格だった。

 その才能は留まる事を知らず、衰弱していく『魔術基盤』の立て直しが可能とまで言われる領域だ。

 血筋も家柄も魔術回路も千年続く魔術師の名家であり、その若き当主である彼は本物の上流貴族でもある。

 

 上記以外にも彼は様々な結果を残しており、正真正銘の天才であることがよく分かる。

 そんなキリシュタリアにゴミ袋を押し付けるという低俗な行いは、彼の品位と輝かしい才能を乏しめることと同義であり───そんな事をすれば、彼は烈火の如く怒り狂うと思われた。

 

「ああ、構わないよ。寧ろ当然さ」

 

 普通に了承した。

 

「…と言いたいところだが──」

 

 やっぱり彼にも体裁(プライド)があるらしい。

 

「──流石にこの量を一人で持つのは厳しいからね、援軍を呼んでいいかい?」

 

 違うそうじゃない。

 

「ああ、問題ないよ。カドックも、それで片付けに来れなかった事を帳消しにしてくれないか?」

「……わかったよ」

 

 カドックは、名門であるキリシュタリアが呑気にゴミ袋を持っている姿を連想して、心底呆れ返るがいつもの事だと割り切る事にした。

 

「で、援軍はいつ来るんだ?」

「恐らく、もう直ぐ──来たか」

 

 キリシュタリアが廊下の右手に顔を向ける。

 それに釣られてカドックと青年が、同じ方向に向いた。

 二人の男女が此方に向かってきていた。

 

「あら、もう片付け終わったの?」

 

 長身痩躯で色素の薄い肌を持つ銀髪のイタリア風()()()──スカンジナビア・ペペロンチーノ。通称ペペが、残念そうに三人に声をかける。その横には、栗色の長髪を持つ眼帯が特徴的な女性──オフェリア・ファムルソローネがいる。

 

「ああ、あとは持っていくだけだ」

「残念。みんなで片付け、楽しみにしてたのに。遅れてごめんなさいね、カドック」

「構わない。所用を手早く片付けて来てくれたその気持ちだけで十分だ」

 

 カドックとペペが穏やかに会話する。ぶっちゃけキリシュタリアと雲泥の差だった。

 

「………あの、カドック。その、ごめんなさい。間に合わなくて」

 

 カドックたちの会話の途切れ目を探っていたオフェリアが、申し訳なさそうに謝罪しながら混ざる。

 

「オフェリアも気にしなくていい。ペペに言った通り、気持ちだけで嬉しいよ」

 

 そう言ってカドックは小さく微笑んで、三人で話し始める。傍から見ても、彼らの会話は盛り上がっていた。キリシュタリアとは(ry

 

「俺たち、蚊帳の外だな……」

「珍しくもないだろう? ……だが、本来の目的を忘却するのは良くない───ペペ、オフェリア、頼みたいことがあるんだ」

 

 キリシュタリアが、二人に呼びかけ事情を説明する。

 

「そういうことなら。それに、私たちも遅れてきたから──そうだ。キリシュタリア、アナタって名家の当主よねぇ?」

 

 ペペがキリシュタリアの頼みを了承しようとして──見るからに邪悪な笑顔を浮かべ、キリシュタリアの素性を確認する。

 

「? その通りだが」

 

 キリシュタリアは、ナチュラルに肯定した。

 微妙に気勢を削がれながらも、ペペは好都合だと笑みを深め口を開く。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………まったくもってその通りだ、ペペ」

 

 キリシュタリアは、僅かに気落ちしながらもカドックと青年に向き直った。

 

「そういう訳で、私が全部持って行こう」

「大丈夫か?」

「なに、女性を辱める訳にはいかない。造作もなくこなすとするよ」

 

 そんな風に格好をつけたキリシュタリアは、カドックと青年から四つのゴミ袋を器用に両手で受け取り、ペペとオフェリアを連れて去っていった。才能の無駄遣いである。

 三人が去っていたのを見届けたカドックは、疲れたように嘆息した。

 

「どうした?」

「……キリシュタリアの会話、直接話していなくても、疲れる」

 

 “アイツ、無意識に威圧感を漏らしているからな”とカドックはぼやいた。キリシュタリアは、常に皆の模範であるように自信家で尊大な態度をとっているのでカドックの気が休まることは永遠に来ないと思われる。

 

「別に、慣れたら気にならないと思うけどなぁ」

「普通、キリシュタリアと慣れるまで会話しようとする物好きはいないと思うぞ」

 

 熱い風評被害がキリシュタリアを襲う!

 

「そんなこと言うなよ……、あ、そうそう。最近、みんなでカドックの部屋を共有しすぎたからさ、専用の部屋を作ろうって話になったんだよ」

「お前それ、アーサー王の話より何倍も意味があるだろうが………ッ!!」

 

 怒り狂うカドックを青年は宥めながら、キリシュタリアたちとは反対方向に歩き出す。

 

「お前、僕がどれだけ苦労しているか分かっているだろう………ッ!」

「はは、ごめんごめ──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────カドック?」

 

 凛とした美しい声で、僕は夢から戻ってきた。

 よく見ると、窓ガラスに反射されて映っている僕の虚像の背後に、アナスタシアが怪訝な表情を浮かべ佇んでいる。

 僕は、窓ガラスに添えていた右手を離し、彼女へ振り返った。

 

「どうした? アナスタシア」

「どうした、じゃないでしょう。(わたくし)が何度も呼びかけても、あなたは気にもせず外の雪景色を見ていたわ」

 

 どうやら、それなりの時間“楽しかったあの生活”を思い返すことに夢中になっていたらしい。

 

「懐かしい思い出を振り返っていてね、気づかなかった。すまない、アナスタシア」

「いいわ。………カルデアのこと?」

「ああ」

 

 カルデア。人理継続保障機関フィニス・カルデア。僕が、在籍していた組織。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

「………」

「心配そうに見るなよ」

「……いい加減なことを言わないで。(わたくし)はあなたのことを心配していません」

 

 キッパリと僕のことは気にも留めていないと言うアナスタシアを見て、苦笑してしまう。

 

「手厳しいな」

(わたくし)はあなたのサーヴァントだから、当然ね」

「何だそれ」

 

 互いに小さく笑い合う。僕は、礼儀も作法もなっていなかったが、アナスタシアは上品に笑みを浮かべていて──綺麗だった。

 

 

────そうだ。

 

 

 これは証明だ。

 

 

 僕にも、

 

 

 僕なら、

 

 

 ()()()()、◼️◼️を救えるっていうことを、

 

 

 証明する。

 

 

 

 

 




 次回、オリ主。

 ちなみに、ペペさんとオフェリアネキは、ちゃんとキリ様からゴミ袋を受け取って手伝いました。

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