FGO世界に転生した一般オリ主くんが生き残るためにリアルガチチャートを組んでRTAを走るお話 作:ペットボトル羊
転生者か、転移者か、憑依者か、それとも前世の記憶持ちか。
俺は、自身が何者なのか正確に把握していない。
でも、一つだけ確実なことがある。
「は、はっ、はぁ───!」
俺は、一度、間違いなく、死んだ。
「はぁ、は、は、はっ……!」
だが、左腕は折れるように曲がり、その肘を冷たい床に押し付け、右腕は離れ、その掌は胸の中心を強く掴み、亀のように丸まった総身は荒い呼吸を繰り返す。
──“それ”は、拭いきれぬ
深海よりも、奈落よりも、深淵よりも深い“其処”に堕ちていく。
暗い。
昏い。
闇い。
辺りは暗然たるセカイで、俺を中心にどろりと這い寄ってくる。
そして、どす黒い混沌が俺の
いたい。
いたみしか、
それは、たぶん、おそらく、きっと──圧死縊死怨死斃死饐死横死思死餓死窮死斬死絞死獄死焼死凍死溺死爆死病死落死老死よりも────いたかった。
いっそ狂乱できたらどんなに楽だったか。
余りにいたいから、狂うことすら能わなくて。
汚泥は、ぐちゃりとまるで玩具を見つけた赤子のように俺の“中”を蝕みながら衷心を覆い──
「はぁ、はぁ、……………は、はは」
その経験によって得た、死の気配を察知する能力。
疑似的な直感。
「はは、はは…は………」
俺が、カルデアに赴く最も大きな要因────いや、全ての原因が、
もう、二度と死にたくない。
終わりたくない。
こわい。
せめて、
「なん、で……こん、なに……」
苦しいんだろうか。
俺は、よわい。
だから、せめてもの抵抗で──いたくても、つらくても、くるしくても、
身につけてしまった
「…………俺、……は」
たぶん、
明確に自覚したのは、おそらく
“◼️◼️ガ◼️リー、貴女は、正しく学び、正しく理解してきた。”
ああ、知っているとも。
だって実際に見たんだぜ。
優秀だったけど、ふつうに失敗もしていて、でもそれを高圧的な態度で誤魔化していて、職員の不興を買っていて、だけど言及されることはなくて。
アレ、けっこう
全く、人の気も知らないで誰彼構わず拒絶しちゃってさ。ほんと、ある程度心を開いてくれるまでキツかった。
少しだけ信頼してくれるようになったら、厳しかったけど教授もしてくれたし、食事に誘ったら狼狽えながらも乗ってくれた。
「ああ…………」
“貴女は十分に頑張っている。”
何で、あんなことを言ったんだろう。
でもそれ以上に、
だから、どうせ死ぬのなら、一時の慈悲でも与えて、それが救いになればいいと思った。
「う、ぐ………あ、あ」
頭が割れそうで、いたくて、余りにつらくて我慢できないから──熱を感じられない床に、思い切り叩きつけた。
それでも、止まらない。
まるで、それは俺の罪を咎めているみたいで。
──
死ぬと分かっていながら助けず、それどころか曖昧にしていた立場を、明確に味方だと猿でも分かるように演じて──それが、救いだと?
「救い………救世、主」
俺が、“それ”だって?
ほんと、嗤い話にも限度ってもんがある。
「はは、……宗教、なんて、興せ、るわけが」
栓でも切れたのか、今まで見ないようにしてきたモノがとめどなく◼️から零れていく。
零れたソレは、末端まで容易く行き届き──脳の中枢まで到達して、刺激した。
今まで、予定通り、想定通り、思い通りに起こった出来事が反芻される。
“少しは、納得してもらえますか”
納得してもらえますか、だと?
納得できるようにように精一杯説明したんじゃなくて、納得せざるを得ない状況へ誘導したんだろ。
──アーキマンさんと俺は、一方的だったが──愚痴を聞く関係だった。
いきなり、ソロモン王ですよねとか、何でそんなに足掻いているんですかとか、なんて直ぐに言える訳なかったから。
コツコツと表面的な信頼関係を築き、彼にだけ分かるように──己の足掻いている姿を見せ続けた。
それによって、俺のことを理解し、
その上で俺が、彼と俺が似ていると指摘することで、彼の心に触れることができる関係まで進展させた。
たぶん、自惚れでなければ、いや、確実に自惚れだったが──カルデアで、一番信頼されていた。
それを◼️用して、彼の
彼は、カルデアを背負う者になってしまっていて、だから、俺を早々に信用するなんてできるはずがなくて、それでも。
彼から見たら俺は、カルデアの損害状況を見てもいないのに正確に把握していて、極めてカルデアを壊滅させた人物である可能性が高くて、そんな奴が最強の兵器を欲していて、それでも。
「は、はは、ははは…………!」
──何故、こんなにも苦しいのか。
それは、間違いなく。
「
俺は、
“オレたちは即席とはいえ、“チーム”だ”
チームって何だよ。見捨てるのが“チーム”?
“命の重さをよく理解している”
命の重さって何だ。命の価値って何だよ?
他ならぬ、あんな戯言を吐いた俺が、命をあっさり見捨てて比べているのに。
「………………、……ああ」
両腕が重力に従ってだらりと下がる。でも
「──何で、
────それは、俺が、俺だけはどれだけ苛まれても言っては考えては想ってはいけない言葉だったが──それでも、そう思わずにはいられなかった。
今までの全てが、走馬灯のように脳から放出され──◼️に向かっていく。
当然全部受け止めきれなくて、欠けていって、抉れていって、砕かれていって。
“無様だな”
ほんと、無様だった。
呆れる返るくらい醜悪で。
嗤い出したくなるくらい低劣で。
この手で握り潰したくなるくらい下衆で。
本当に、パズルの最後の
「何が、足りなかった…………?」
何が。
そんなの、判りきっていた。
それは、
自身が“こう”なることを解っていたのに想定していたのに──その上で更に、全く、これっぽっちも
“肝に銘じろ”
何も、身に染みていない。
“この先は地獄だぞ”
地獄。
「どう、しよっか…………」
途方もない虚脱感と倦怠感が、俺を無駄に優しく包んでいて、何もかも忘れて逃避させようとする。
──逃避。
俺
逃避して逃避して逃避して逃避して逃避して逃避して──結局、そんなの意味がなくて。
向き合うのではなく、走り出して。
莫迦みたいに走り続けて。
ああ。
“これ”、
「──、───っ、……………ッッ!!」
俺は、自身を無感動な床に縫い付けていた虚脱感と倦怠感を、全く気に留めず振り払い飛び上がった。間抜けのようにもたつく脚に意識は向かず、一心不乱に無様にトイレへ駆ける。
漸く辿り着いた俺は、全力で扉を開いた。明らかに嫌な音がなったが、振り返ることはなく便器に抱きつきように飛びついて──溜まっている水面に映っていた滑稽な虚像が網膜を刺激し、視神経を通って大脳に至った────瞬間。
全部、ぶち撒けてしまった。
「ェ、ぇえ……ッッ!! …………ッ!!」
胃に納められていたモノが、食道を通って、吐瀉物となって口から掃き出される。
強烈な鼻にくる異臭を嗅ぎながら、びちゃびちゃと不快な音楽を奏でながらも──
──駄目だこれ以上は考えてはいけないでもまったく全くもって間違いなくだけど明らかに──────◼️り合◼️ていない。
つまり、
み◼️な無駄◼️にということに─────
「ぁ、あああ……、ああ……! 違う違う違う違うッ!」
吐瀉物が周囲に飛び散ることに何の関心も示さず眼球を両手で覆い、救けを乞う乞食のように呻き声を漏らし始め、やがて、何もかも否定しようとする。
──もう無理だ。
もう無理だよ。
耐えられない。
耐えられないんだ。
いたい。
きつい。
くるしい。
ここが、俺のゲンカイなんだ。
もう、全部諦めて、吐き出して、止めて────────
“何故、先輩と呼んではいけないのですか?”
“僕はっ、今まで、誰にも相談できなくて……っ!”
“君は、“何”からそんなに足掻いているんだい?”
“あなたを──信じたい”
“貴方を信じてもいいのよねッ!?”
“やっぱり、お前は信頼に値する人間だよ”
“マスター”
“あまり、無理をしては駄目よ”
───────
「
両手で掻きむしるように胸を覆い、
焦点が合っていなくて。
口元に気色悪く生温かいモノがこびりついていて。
聴覚は正常な筈なのに外界の音を全然聞き取れなくて。
──あらゆる内臓、神経、器官────細胞が、“諦めろ”と囁いていて、それでもっ。
いま、
ぜったいに、
かくじつに、
まちがいなく、
赦されない、
赦さないことは、なんだ。
「
そうだ。
もう、赦すとか赦されるとかそういう段階じゃない。
選んだんだ、俺は。
道は、前にしかない。
止まってはいけない。
後退するなんて選択肢は存在しない。
前を見ろ。
痛くても、辛くても、苦しくても──鈍間でも、前にすすめ。
それしかないんだ。
「は、ははっ、はっ、は…………、──ああ」
荒い呼吸を整えて、ふらつきながらも立ち上がる。
……思えば、愚かだった。「両儀式」の力で、何もかも、一切合切、完膚なきまでに──都合よく収められるわけがない。
現に、彼女には制限があったし──好意的に見えるが=命令に従う訳ではないのだ。
「踏み、抜くしか、ない」
よろよろと老人のように歩きながら、洗面台に向かう。
──踏破しなければならない。
この荒野を、国を、時代を──世界を。
これが、俺の“道”なのだから。
「あ、ぐっ……!」
やっと洗面台に到着した俺は、投げ出すように倒れ──ギリギリ、両手を挟んで台に激突することを防ぐ。おかげで、淡く輝く白い台に反射されている己の阿呆面を、至近距離で眺めることになった。
だけど、あまりに近すぎて、全体が把握できない。
……仕方なく、鉛のように重たい頭を持ち上げて鏡を見ようとして──
「──ぁ、忘れて、た……鏡、ぶっ壊し、たんだっけ」
次回、ぐだ子視点で日常(たぶん)
ちなみに、オリ主の“道”は始まってすらいません。