FGO世界に転生した一般オリ主くんが生き残るためにリアルガチチャートを組んでRTAを走るお話   作:ペットボトル羊

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 所長、優秀なのに性格が普通すぎる……。
 今回も短め。


いくぞクズ主人公────言い訳の貯蔵は十分か

 

「「「『…………』」」」

 

 妙な沈黙が流れている。

 

 みんな、何を言えばいいか分からないみたいだ。

 もちろん私もだが。

 

 チラリ。

 

 セイバーのサーヴァントを見る。

 

「……あら?」

 

 両儀式と言われていた彼女は、こてん、と小首を傾げて不思議そうにタナカくんを見ている。

 

 チラリ。

 

 タナカくんは、先ほどの発言がよほどショックだったのか、五体投地しているみたいになっていた。

 

「……」

 

……と、とりあえずこの状況を何とかするために、タナカくんに駆け寄る。

 

「──何だ、立香?」

 

 タナカくんは下を向いているのに、私が近づいていたことに気づいた。

 

 あと微妙に口調が弱々しい。

 

「……臭いなら、そうと言ってくれたらよかったのに……」

 

 彼は、自分の今までの行動を思い出しているのか、すごく落ち込んでいた。

……ど、どうしよう。放っておくと、地面に埋まりそうだし、かと言って、普通に慰めるだけで何とかなるのかな。

 

『この前さ、お兄ちゃんに汗くさいって言ったら凄い落ち込んだんだよねぇ』

 

 友人の言葉が蘇る。

 

……男の子にとって、女の子に匂いについて言及されるのはとてもキツイらしい。

 

「だ、大丈夫だよ。今は血の匂いがするけど、それ以前は問題なかったって!」

「……それはそれで、問題だな」

 

 ちょ、ちょっとずつタナカくんが地面にめり込んでいる!

 これは、穴があったら入りたいということを体で表現しているのか!?

 

 な、何とかしなければ……!

 

「ほ、ほら! タナカくん、私をお姫様抱っこしたでしょ! 

 あのとき、すごい優しい匂いがして、すごく安心したよ!」

 

 あれ? これ言わなくていいことを言ってないか?

…………ええい、ままよ!

 

「所長もそう思いましたよね!?」

 

 オルガマリーに向かって全力で頭を動かし、訴える。

 タナカくんに抱きしめられた彼女に矛先を向けることで、有耶無耶にする…………!

 我ながら狡猾だ……!?

 

「うぇ!?」

 

 話が振られると思っていなかったのか、あからさまに動揺している。

 全員の視線が彼女に向いた。

 彼女は、恥ずかしそうにタナカくんを見て、

 

「……ぅ、その、すごく、安心、したわ……」

 

 最後の方には顔が真っ赤になっていた。

 おかしい。

 なんか私も恥ずかしいんだが……?

 

「大丈夫です、所長。タナカさんと一緒だと安心する、というのは分かります」

 

 マシュがフォローになっているのか分からないフォローをした。

 

「ふふ、何だかとても賑やかね?」

 

 両儀式さんがクスクスと笑う。

 笑う所作だけでも上品だ。

 女の私でも見惚れる。

 

「……すまない、取り乱した」

 

 タナカくんが復帰する。

 彼は、膝や肘にこびりついた土を払って両儀式さんを真っ直ぐ見据えた。

 

「貴女は、セイバーのサーヴァント、真名を「両儀式」で間違いないか?」

「ええ、そうよ。マスター」

 

 彼は、彼女の真名を確認した。

 確認したあと、オルガマリーに声をかける。

 

「所長」

「──何かしら」

 

 オルガマリーはとても真剣な目で、要件は何だと言った。

 

「──聞きたいことは、ありませんか?」

 

 彼女の、体が震え始める。

……不安で、たまらないのだろう。縋りたくて、たまらないのだろう。本当は、彼が言った通り、全てを任せたいと思っているはずだ。

 

────それは、

 

 それでも、彼女はタナカくんと目を合わせて、

 

────一般人()でも分かる、

 

 カルデアの全てを背負う所長(責任者)として、

 

「貴方は──何を知っているの?」

 

────彼の違和感だった。

 

 

 

 

 

 

「…………」

「一つは、何故貴方は、私たちを助けたとき、どうして霊脈地点(レイポイント)に盾を置こうとしていたことがわかったの?」

 

 一つ目の違和感。

 

「…………」

「レイシフトしたら、まず霊脈を探すのは定石よ」

 

「でも、あの時貴方の通信は復旧していなかったそうね」

 

「一流の魔術師なら、霊脈が集中している場所を探り当てられるけど、()()()()()

 ()()のように、高位の魔眼も有しているわけでもない」

 

「二つ目は、貴方の魔術師としての実力(能力)

 

 これは、私には分からないが、どうやら他の人からするとかなり不審らしい。

 

「貴方が元Aチーム候補筆頭だったのは知っている。

 でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 実力を隠していた、ということではないのだろうか。

 

「魔術師は、秘密主義よ。己の礼装()()()()()()()()()()()()()()()()

 力を教えるということは、己の、一族の技術、研究成果を売り渡すことと同義だからよ」

 

 能力を隠すことは普通、なら、

 

「それでも、家柄や、魔術回路の量、質でだいたいの実力が予測できるわ」

 

「貴方は三流魔術家の出で、魔術刻印も継承していない。貴方はサーヴァントと接触して逃走を成功させる能力を持っていない」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

……?

 

 確か、マシュが言うには、Aチームはカルデアに所属する上位八名の優秀な魔術師を集めた集団だったはずだ。

 タナカくんは、元とはいえそれの筆頭候補だったんなら、才能がないということがあり得るのか……?

 

「最後に、明らかに、貴方はさまざまなサーヴァントを知っているような言動をしている」

 

 これは、私でも分かる。

 

「貴方に、聖杯戦争に参加した経歴はない。

 カルデアも、召喚成功例は三つしかない。

 この二つ以外で、サーヴァントに出会う方法は事実上存在しないわ」

 

 違和感を言い切ったオルガマリーは、少し息を乱していたが、すぐに整えて、問う。

 

「もう一度言うわ、──貴方は何を知っているの?」

 

 

 

 

「────三つ」

 

 

 

 タナカくんが、指を三本立てる。

 

「一つは、今は、現在の状況くらいしか話せません」

 

 彼は、自分が怪しい、不審ということを肯定した。

 

「二つは、質問は極力答えますが、答えられないものは“言えない”と答えます」

 

 その上で

 

「三つ目は、────オレを信じてください」

 

 自らを信頼してくれ、と言った。

 

「あ、貴方は、」

 

 オルガマリーが、震えを抑えて、口を開いた。

 

「隠し事をしているのを認めるのね……?」

 

「はい」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()…………?」

 

───────あ。

 

 私は勢いよく頭を振って()()を探した。

 いた。

 タナカくんの近くで、興味深そうに彼を見ている。

 

 マシュを見る。

 彼女は盾を()()()はいるが、困惑していた。

 

 ドクターを見る。

 彼は、ただ黙って二人の会話の成り行きを見ていた。

 

────もし、彼が本当に私たちを害する気があったなら。

 

──彼は私を、私たちを助けてくれた。

 確かに、助けた私たちを消そうとするのは効率が悪いだろう。

 だが、それは私たちの主観でしかない。

 彼からしたら、意味がある行為かもしれない。

 

──彼は、大怪我をしていた。

 だが、それは自演(フェイク)かもしれない。

 彼の服には、血が付着していたが、彼が傷を負った姿を誰も見ていないのだ。

 

 つまり。

 

────私たちは、彼にまんまと誘導されて、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────っ」

 

 ぞっとする。

 

 デミ・サーヴァントであるマシュは、“戦う者”にしてはぎこちないと思ったけど、それでも、確かに、オルガマリーより遥かに多くの骸骨を蹴散らしていたのだ。

 

 再び、両儀式さんを見る。

 

 彼女は自然体だった。

 彼女もマシュと同じように女性らしい体つきで、とても“戦う者”には見えない。

 

 でも、

 

 本能(理性)が言っている。

 

 両儀式さんは、マシュを歯牙にもかけないと。

 

 

 

「貴方は私に従うのね……?」

 

 

 

 私は

 

 

 

「はい」

 

 

 

「貴方は、私を助けるのね……?」

 

 

 

 

 彼を

 

 

 

 

「貴方はっ、私を、裏切らないのね……?」

 

 

 

「─────はい」

 

 

 

 

 疑うべきなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ちなみに、オリ主くん(クズ)の要求が通りそうなのは、今までの積み重ねのおかげですね(クズの鑑)。

(追記)

 非常に分かりづらいんですけど、最後の所長は、不安でオリ主くんの返事を聞く前に畳み掛けています。

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