皆さま大変ご無沙汰いたしまして失礼いたしました。
リアル忙しい+他作品に気持ちが持ってかれてそっちを書いてみたり、こちらを再着手するにあたりウマ娘アニメ見返したりなんだりしてたら時間が空いてしまいました(言い訳)。大変申し訳ございません。
今後とも引き続きよろしくお願いいたします。
男が滑空して見せたのち、コツをゴールドシップに伝えてパイロットを交代してみれば、天才ゴールドシップはあっさりと空を舞って見せた。
その後、牽引なしで、自力での離陸にも成功し、その日が初飛行ながらも飛ぶこと自体には何の問題もないことを証明した。
「あ゜ぁ~…」
「おっちゃん、おっさんくさい声上げんなよ~…」
その日のスケジュールを終えてシャワーを浴びて夕食を摂った後、ゴールドシップは装蹄師の男の部屋にいた。
「もうちょっと強く…」
「あいよー」
男はゴールドシップにより強く責め立てられ、室内には男の唸り声と、ギシギシとベッドの軋む音が響く。
「しかしおっちゃんよー、ちょっと繊細過ぎねえか?」
「…ぅ…ん…?」
男は押し寄せる快楽に意識を呑まれそうになりながらも、かろうじて残った一線の理性で応答する。
「あの機体さぁ…もうちょっとこう、操縦しやすくなんねーかな、と思ってさ」
「ん…あぁ…そうだな…」
その件については昼間のテストフライトの結果から、男も考えてはいた。
「まぁ…手があるっちゃ…あるんだが…な…」
対応策も思いついている。しかしそれが有効かどうかは今のところ判断ができない。
「そうだな…もうちょっと検討させてくれ…うぅ………」
「おーい寝るな―。そろそろ交代の約束だぞ!」
そういうとゴールドシップはさらに強く責め立ててくる。
「う゜っ…わかったわかった…交代しよう。ありがとうよゴルシ」
「よーしおっちゃん、しっかり頼むぜ!今日はたくさん揺すられたからあちこち凝っちまってるからな!」
そういうと部屋着姿のゴールドシップはごろりとうつぶせに寝転がり、マッサージを要求して足をバタバタさせた。
◆
「全く、ゴールドシップ君は油断も隙もないね…」
アグネスタキオンはそう溜息をつきながら、ひと気のなくなった食堂の片隅で紅茶を啜っている。
先ほど、話したいことがあり装蹄師の男の部屋の前まで行ったものの、中からゴールドシップの艶めかしい声が聞こえてきたため引き返してきたのだ。
尤も、様子から言ってマッサージのようであったから、必要以上に気に留めているわけでもなかった。
「…タキオン、今日は話が合うようだな」
タキオンの前に同じく男の部屋の前まで行って引き返してきたエアグルーヴがコーヒーを虚ろに眺めながら呟く。
「フェリーで先生と一夜を共にした君とは立場も見解も異なると思うがねぇ…!」
揶揄うような調子で返すアグネスタキオンの瞳にはいつものように光はないが、その内心は紅く上気した頬にあらわされていた。
「…そう言うな。結局、何もできなかったんだ」
「…それはどういうことかな?朝は甲板上で仲睦まじくしていたじゃないか。私はシリウス君の飛行機からしっかりそれを目撃したんだよ」
エアグルーヴはタキオンの専売特許であるハイライトオフの瞳で、俯いたままだ。
フェリーでの甲板上のことは分かっていたからそれに対する動揺はないが、こうも面と向かってあの一夜のことを突きつけられるのはさすがに恥ずかしい。
「…あの夜、私は緊張から酒を過度に嗜んでしまってな…おまけにフェリーはそれなりに揺れていて…聡明なアグネスタキオンなら、その結末は想像がつくのだろう?」
自嘲気味にそう白状したエアグルーヴの姿は、アグネスタキオンからみても痛々しい。
「oh……言ってくれれば特製の酔い止めくらい用意したものを…」
アグネスタキオンは心底同情したようにそう呟く。
尤も、タキオンの酔い止めなど飲んだ日にはあらぬところが光りだし、それはそれで雰囲気も何もないだろうことは今のエアグルーヴでも予想がつく。
ある意味では酒と船酔いのダブルパンチよりタチがわるいかもしれないな、と思い至ると、少し肩の力が抜けるような気がした。
「まぁ、もとより無謀な試みだったとは思う。全く、手強い相手だよ、先生は」
そうしんみり語るエアグルーヴだったが、アグネスタキオンにしてみれば彼女の自滅であるわけで。
「…百戦錬磨の女帝でも、彼の前では生娘だねぇ…」
アグネスタキオンはにやりとした口元をだらしなく余った白衣の袖で隠しながら、くっくと笑った。
◆
「なぁおっちゃん…」
ゴールドシップはベランダで煙草を吸う装蹄師の男の後姿を、部屋との境のところに座り込んで眺めながら声を掛けた。
「なんだ?」
男は振り向かずに応じた。
「なんでこんなに頑張ってくれるんだ?」
声の調子とは裏腹に、ゴールドシップの質問は抽象的かつ何かをえぐるような深さが感じられた。
「んん…?どうした藪から棒に」
男は振り向いて、ゴールドシップと向き合う。
「…トレーナーにしても、おっちゃんにしてもよ…なんで自分を犠牲にしてまで私たちに付き合ってくれるんだろうなって、ふと思ったんだよ」
月明かりに照らされたゴールドシップは、質問の内容に比べてあっけらかんとしていて、本当にふと思ったのだろうな、と感じさせる。
装蹄師の男は煙草を胸いっぱいに吸い込むと、ゆっくり吐き出しながら答えを探し、そして口にした。
「…別に、自分を犠牲にしてなんかいないぞ?俺も、沖野も」
へ?とゴールドシップは不思議そうな顔をする。
「仕事だからってのもあるけど、それ以上に、好きだからやってる。お前たちに夢をみて、一緒に走ってるだけだよ、俺たちも」
男は何を今さら、というように苦笑いを浮かべてそう告げる。なんだか前にも同じような話を誰かにした気がするが、はて、いつだったか、と頭の片隅で考えていた。
「今回の飛行機づくりも、楽しんでくれてんのか?」
ゴールドシップは少し怪訝な表情を浮かべながら問うてくる。
「そりゃー楽しいよ。お前たちは俺らおっさんは中身も大人だと思ってるんだろうけど、実際のところは中学生くらいからそんな変わってないつもりだからな。こういうものはオトコは楽しいもんよ」
笑いながらそう語る装蹄師の男の表情を見て、ゴールドシップはどこか安堵したような表情を浮かべた。
「ならよかったぜ。なんか無理させてんじゃねーかなって思ってたんだ」
「…歳は取ってきてるからな。適度に労わっては欲しいところだが、そんだけだよ。やりたいからやってるんだ。お前が気にすることじゃない」
そういうと男はゴールドシップの頭をくしゃりと撫でながら部屋に戻る。
「なんだーもっと労わって欲しいのか~正直に言えよな!もっとマッサージしてやるよ!」
「うぉっ…!…ちょっ…」
ゴールドシップは装蹄師の男の背に躍りかかり、ベッドに押し倒した。
「ゴルシちゃんがおっちゃんの経絡秘孔を突いてやるぜ!」
「やめてそれ死んじゃうやつ…せめて…せめて揉み返しが来ない程度で…」
こののち、装蹄師の男は翌朝、揉み返しにより緩まり過ぎた身体に力が入らずに起き上がれなくなり、朝なら話ができるだろうと部屋を訪ねてきたアグネスタキオンに助けられることになる。