俺様がカイドウだ!!!!   作:ヘルスパイダー

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随分と遅くなって申し訳ない。
こちらにも事情があったことをここに記す。

ところで最近カイドウが父親になった作品を目にしたのだが、やっぱりカイドウ=親バカなイメージがあるのかな?


トンパの最悪の1日

 よぉ、俺の名はトンパってんだ。よろしくな。

 

 まあ、新人つぶしのトンパなんて2つ名もあるぐらいハンター試験じゃちょっとした有名人だってのは自覚していた。

 だがまさか、それがあんな野郎に目をつけられるなんて思いもよらなかった。

 

「……どうしてこうなった?」

 

 

 ♦

 

 

 それはカイドウがハンター試験の応募を終えた日の翌日のことだった。

 

「ボス。お客人がご到着です」

 

「おう、こっちへ通せ」

 

 自身の部屋に設置されている特別な電話から依頼した相手が到着したとの連絡が入り、即座に自分の部屋まで案内させる。

 

「お久しぶりですカイドウさん」

 

「おう、元気そうでよかったぜツェズゲラ。相変わらず仕事が早えな。ウォロロロォォ!」

 

 やって来たのはシングルの称号を持つマネーハンターのツェズゲラだった。

 彼とカイドウの関係はシンプルに金の付き合いと言った方がいいだろう。

 

 今や世界中のあらゆる裏の分野に手を出しているカイドウの組織とマネーハンターであるツェズゲラが衝突するのは必然の成り行きだった。

 カイドウとしてはツェズゲラは原作キャラという立ち位置以上に基礎トレーニングの大切さを勝手に反面教師として学ばせてもらったということもあり、一時期商売敵として立ち塞がったがカイドウの鶴の一声でビジネスパートナーとしての関係を繋ぐこととなった。

 

「それでカイドウさん。これが例の依頼されていたあんたの要望に沿う人物についての書類だ」

 

「ほぉう、……成程な。流石はツェズゲラだ。俺様の期待通りの成果だぜ!」

 

 書類をチェックするとトンパという人物の詳細が書かれている。

 

 ハンター試験への挑戦回数は35回、そのうちの本試験連続出場は30回の大ベテランで、試験での序盤の振るい落としという面倒な事を抜けるには最適な人物といえよう。

 

「そいつは俺がライセンスを取得する前からいる男でしてね。当時はまだ新人潰しなんて異名を持ち合わせちゃいませんでしたが、その頃から奴の行動は目にしてましたからね。コイツならほぼ間違いなくカイドウさんを試験会場まで案内してくれるでしょう」

 

「ウォロロロォォ! お前がそこまで言うなら安心だな」

 

 自信ありげに言うツェズゲラにカイドウは握手でもって返事を返す。

 

「それじゃ、試験当日のトンパの動きもこちらで動向を探って連絡しますんで……」

 

「おう! 既に部下に言って入金の方は完了している筈だ。後で確認してみろ」

 

「ええ、如何なる相手だろうと依頼完了後の金の受け渡しはシビアにチェックするのが私の心情ですからね」

 

 清々しい程に金にがめついその姿勢にはいっそ好感すら抱く。一時期は本気で仲間に迎え入れるつもりだったが、生憎悪党の傘下に入るのは勘弁だと笑いながらふられっちまった。

 

 

 そして迎えたハンター試験当日の日の事、ツェズゲラからの連絡でトンパの居場所を把握したカイドウはドーレ港で目的の人物を発見する。

 ダンゴ鼻の小太りの男は船から降りると迷うことなく目的地に向かって歩き出す。

 

「ん? なんか急に暗くなったな? 雲でも出てきた……か……」

 

「ウォロロロォォ……、テメェがトンパだな?」

 

 急に自分の周りに影が差してきたから雲でも出てきたと勘違いしたが、後ろを振り返ると見上げるほどのデカイ巨体が立っていた。

 っというか、立っていたのは誰でも知っている超有名人だった。

 

「あ、あの、あなたは……、っじゃなくて、貴方様はあの天空闘技場のフロアマスターのカイドウさんでよろしいでしょうか?」

 

「あぁん? それ以外の誰に見えるってんだ?」

 

 ああ、やっぱり……。なんでそんな超大物が俺なんかに話しかけてきたんだよ(涙)

 っは!? まさか、俺がハンター試験で潰して来た新人共が復讐で雇った殺し屋か!? 

 嘘だろおい!? いくらなんでもこんな化け物を俺なんかの為に雇うとか割に合わなさすぎだろ!! 

 

 逃げるか? いやいや、無理だ!! 俺も何度かコイツが天空闘技場で戦う映像を見たことがあるが、ありゃ人間じゃなくて本物の化け物の戦いだった。

 あの巨体に加えて常識外れのスピードを併せ持つ異常さ、更に裏の世界のトップの非常さと残酷さは見聞だけ知っているとはいえ、それがいつ己に牙を剝けて襲ってくるか内心ヒヤヒヤであった。

 

「まあ、そう怯えるな」

 

 ポンっと軽い感じで肩を触られたが、傍から見れば借金を抱えた中年とビックボスの呼び名でも持ってそうなヤ○ザのやり取りにしか見えなかった。

 

「単刀直入に言おう。俺はハンター試験の会場までの案内人を求めている。そこでお前が選ばれたというわけだ!」

 

「そ、そうっすか……」

 

 あっぶねぇ!! 新人共が送り込んできた殺し屋じゃなくてハンター試験への会場までの道案内係が欲しかっただけか。

 まあ、確かに俺は自慢じゃないがハンター試験を受験して本試験まで進んだ回数じゃ俺の右に出る者はいないと断言できる。

 

 とはいえ……

 

「あの、それって俺じゃなくても──―ぴえっ!」

 

 人間誰しも好き好んで魔獣や猛獣の傍にいたいとは考えないものだ。

 当然、トンパもそういった人間だ。恐る恐るといった様子で自分は言外には役に立たないので別の人をと言いかけたところでカイドウから人を殺せそうな視線をぶつけられ、つい情けない声を出して口を閉ざす。

 

「いいか、お前は光栄にも俺様に選ばれた人間だ。自分を卑下するな」

 

 一見すると優しい言葉を投げかけられたように思えるが、言われた当人であるトンパからすれば『逃げれば殺す!』と脅されているように聞こえる。

 というか、あの顔と声は絶対にそうだ! もしここで自分が背を見せて逃げようものなら後ろから何らかの手段で殺しにかかる。

 

「はい、分かりました」

 

「ウォロロロォォ……、そうか。なら道案内を頼むぜ!」

 

 バン! と強く背中を叩かれ(カイドウからしたら99.7%手加減した)スッ転んだトンパが笑いながら(目尻になにやら汗が?)本試験会場に案内を始める。

 

 やがて辿り着いたのは少々ボロさが目立つが、中々に立派な作りをした酒場のような店だった。

 

「ウィ~ヒック、ここが試験会場か?」

 

「い、いえ、ここは俺がよく使ってる情報屋がいる場所です」

 

 ここに来るまでにカイドウは持っていた瓢箪に入っていた酒をずっと飲んでおり、もう既に出来上がっているのだ。

 

 何故か、明らかに容量以上に飲んでいるというのに一切酒が途切れずに出ていることに疑問を抱いたが、それを興味本位で聞いてしまったために、散々娘の自慢話を飽きる程聞かされるという羽目になった為、もう瓢箪のことなどどうでもよくなってしまった。

 

「邪魔するぜ!」

 

「……なんだお前かトンパ。まあ、もうハンター試験の時期だしな。ほれ、情報が欲しけりゃ例の物を出しな」

 

 中に居たのはそこそこの年配の男性で、トンパの顔を見るなり興味を失い磨いてあったコップを棚に戻してカウンター席に移動する。

 それと同時にトンパもカウンター席へと移動する。

 

「なんだとは失礼だな。こうして通い詰めてる常連客だぜ俺は?」

 

「アホ抜かせ。ここは酒場であって情報屋なんかじゃねぇんだよ」

 

「おっとそれは悪かった。……っにしては客が全然いなさそうですがねぇ?」

 

 周りを見れば客はいるものの、数でいえば2人というあまりにも寂しい状況だ。それに飲んでいる酒も決して上等と呼ぶには程遠く、水にアルコールを入れた程度の安酒のようでもあった。

 

「うるせぇ! ほれ、情報が欲しいだろ? さっさと例のブツを出さねぇんだったらすぐに帰れ!」

 

「へいへい、ほれ超合金合体ロボガンダック3号の20分の1サイズの等身大フィギュアだ」

 

 トンパは自身の用意していた鞄から非常に細かい仕上がりのデカイフィギュアをカウンター席にゆっくりと置いた。

 

「おおぉぉ!! こ、これはまさしく幻と言われたガンダック3号!! それに当然と言ったら悪いが、一切の傷がついてない完璧な代物だな!!」

 

 カウンター席に置かれたフィギュアに、先程まで見せていた余裕の一切をかなぐり捨てて、食い入るように様々な視点からフィギュアを観察……っというより鑑定してみせる。

 

「はは! 流石はトンパだな。俺もこれの入手には随分と力を入れたと思ったんだが、こうもあっさりと手に入れっちまうとはな……。お前さんも趣味の悪いことは辞めて、こっちの稼業に専念すりゃ今頃はハンターライセンスを売り払って手に入る分の金くらい手に入ってるっつーのに」

 

「やめろやめろ。俺はもう自分でも手遅れだって分かってんのさ。いくら金を手に入れても満たされないものを知っちまったからな」

 

 2人が笑いながら会話をし続けているとカランと氷が崩れる音がすぐ隣から聞こえる。

 

「…………っ!?」

 

「ウォロロロォォ、ここの酒も悪くねぇな。おっと、悪いが店主、勝手に飲ませて貰ってるぜ」

 

 気がつかなかった。見れば天井ギリギリまである巨体でありながら一切の存在感が無かった。

 だが、驚いたのはただいつの間にか隣に大男がいたことじゃない。その大男がよく知る超有名人であり、現在ハンター試験の難易度を大幅に上げた張本人様だからだ。

 

「一体いつの間に……?」

 

「俺がこの店に入ってカウンター席に腰かけた時からさ」

 

 トンパの言葉に店主は目を見開く。まさか、気づいていたのか? 

 自身もトンパとはそこそこの長い付き合いではあるが、お世辞にもトンパはハンターとしての才能は平凡よりも少し上といった評価でしかない。

 そんな彼があれ程までに完璧に気配を消したカイドウの存在に最初から気がついていたということことに驚愕した。

 

「んでトンパよ、欲しい情報はまだか?」

 

 欲しい情報? そうか、驚かしやがってトンパの野郎!最初から気づいていたんじゃなくて、初めから知っていやがったな。

 カイドウがハンター試験を受けることは知っていたことだ。トンパの奴を案内人として採用することも視野に入れてもおかしくなかっただろうに。

 

「はは、そんなことにも気がつかなかったとは、俺も老いたかな?」

 

「なにカッコつけてんだよバカ! 早くハンター試験の本試験の場所を教えなきゃカイドウ様が店をぶっ壊しちまうかもしれねぇんだぞ!」

 

 カウンター席から身を乗り出して胸ぐらを掴む勢いで興奮しているトンパが早く話せと急かしてくる。

 別に大丈夫だろう。チラリと横を見れば上機嫌に酒を飲むカイドウの姿が見える。

 あれなら別に数時間待たしたとしても問題なさそうに見えるが、声を掛けられた本人であるトンパは顔から汗を吹き出させて焦っている。

 

「分かったから少し落ち着け。お前も酒飲むか?」

 

「いらっ―――……いる。多少キツめのでもいいからくれ!」

 

「了解。ウイスキーのロックでいいだろ」

 

 いらないと答えようとしたトンパだが、こんなおかしな状況に酒でも飲まなきゃやってらんねぇ! と開き直ってアルコール度数の高い酒を注文する。

 

 そうして出されたのがウイスキーと氷の入ったグラスだった。

 それを乱暴に手に取ると、ドボドボとグラスにウイスキーをたっぷりと入れて一息に飲み干していく。

 

「っぷは~、……どうしてこうなった?」

 

 心からの言葉だった。自分はいつも通りにハンター試験に挑む新人共を潰してそれを楽しもうとしただけだというのに。

 何故に俺がカイドウなんてトンデモない化け物に目をつけられなければならないんだ。

 

「ほれ、酔いつぶれる前にこれを受け取りな」

 

 カウンターに置かれた紙を手に取って読んでみると、そこにはハンター試験の会場の場所を記したメモだった。

 

「へっ、流石だな。ハンター協会副会長様の部下だけあってこういうのはお得意だね」

 

「茶化すな。俺だってあの人の元で動いてんのにも事情があるんだよ」

 

 そう言って店主も棚からグラスを1つ取り出してカウンターに置いてあった俺のウイスキーを勝手に注ぎやがった。

 

「あっ! テメェ俺の酒を!!」

 

「はっはっは、そうケチ臭いことを言うな。ほれ、今年もお前さんが無事に試験を不合格になるのを祈ってるよ。まあ、今年はいつも以上に荒れるだろうがな」

 

「ああ……、まったくだ」

 

 隣で1人黙って黙々と酒を飲むカイドウを横目に、カンパイとグラスをぶつけて今年のハンター試験を無事に不合格になるのを祈るというおかしな祈願をする。

 

 

 




誠に勝手ながら、カイドウさんはチキチキクイズと魔獣のシーンをショートカットしました。
トンパも本試験に何度も参加できていることから裏ルートくらい確保してるだろうな~という妄想から酒場の店主(副会長の部下)というオリキャラを参戦させました。

いつかトンパと店主の出合いとか書きたいな~(願望)

あと、ツェズゲラさんを今回の話に入れたのは後のG・I編の伏線です。
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