The Bullet of Guilty. 作:@Little
集side
「いのり!! 」
僕はいのり達の居る所に辿り着き、いのりに向かって声を掛ける。
「…………ごめん、なさい…………」
「い、のり…………?」
僕の呼び声に、こっちをゆっくりと振り向くいのり。だが…………その顔は涙に濡れていた。
「…………私…………私……!! 蘭を…………撃ち殺した………………!! 助けられなかったよ…………!」
"撃ち殺した"…………涙ながらのいのりに支えられている蘭ちゃんを、僕は視界に入れる。そこには……"人"として死ねた事に対する安らぎか、"穏やかな顔"で、頭から血を流しながら息を引き取っている蘭ちゃんが居た。
「………………ごめん。ごめんよいのり…………。僕がもっと早くガストレアを全滅させられれば…………!! クソォ!!!!!!」
もしかしたら、祭のヴォイドでこの子を救えたかもしれないんだ…………! そう思うと、自分の不甲斐なさに涙が溢れる。いのりは彼女を安らかに逝かせる為に辛い選択をし、蘭ちゃんは助けられなかった。
…………僕は数多の命を救える様な人間でも、ましてや万能の神なんかではない…………!! けど…………けど、僕には"桜満 集"と言う1人の人間だが、幼き命の1つ救える位の力なら、「王」としての力なら在ったんだ…………。
…………なのに、助けられなかったんだ…………!! あんな小さな子すら、僕と言う人間は、救ってあげられないのかよ…………!!
1人葛藤しながら、僕は覚束無い足取りで蘭ちゃんの元に行き、蘭ちゃんの遺体を強く抱き締める。 …………蘭ちゃんの身体はもう少し冷たく、死後硬直に入ってしまっている。こんな幼い子の身体が、冷たくなって行く事に、僕は彼女を抱き締めながら悔やむ。その光景を、市街地の街灯だけが儚く僕らを照らしている。
「………………ごめん、ごめんよ……? 君を助けられなくて…………!!」
「………………」
僕の隣でいのりも涙を流し、無言で彼女の手を握り締めている。いのりは顔を歪め、口元には唇を噛み締めて切れてしまっている程に、悔やんでいた。
きっと、僕が1人ガストレアと戦っている間に、必死に彼女を励ましていたんだろう。
彼女が意識を失わない様に、声を掛け続けて居たんだ。けれど、助けられなかった…………。
…………今まで聞いた事も、見た事もなかった「ガストレア」に対し、僕達にはどういう状態で彼女が「ガストレア」になるのかが分からなかった。だからこそ、彼女の限界が分からないなりに、いのりはひたすら声を掛けていたんだ。
………………彼女を、死なせないために。
そう思うと、余計に胸が締めつけられる。
何だ、この理不尽な出来事は…………!!
何で、あのタイミングで「ガストレア」の大群が現れる……!!
どうして…………!! このような未来がある子が、自ら人としての死を望み、死ななければならない…………!!
「…………ッ!! ……どうして……!!!! この子が、一体何をしたんだよッ!!!!!!!! この子に…………こんな残酷な"罰"を与えるなよ…………!!!!!!!!」
…………僕は、半狂乱の様に叫ぶ。アポカリプスウイルスの脅威は去ったはずだ。なのに、どうしてこのような生物が生まれ、人々を殺害しているのか…………!!
僕のその言葉に対して、誰も答えてはくれない。市街地に居るのは僕といのり、蘭ちゃんとライセンスを所持していた彼の遺体に、2000を超えるガストレアの叩き切られた死骸。そして、大勢の人間だったものの肉片だけだ………………。
夜の暗闇から街灯が照らす町並みは、正に地獄絵図。だが……例え初対面で、そこが地獄絵図でも…………救えなかった命に対して、来世では幸せになって欲しいと"祈り"を捧げても良いだろうか?
ガストレアとは関係性がないにしろ、"ロストクリスマス"を引き起こす原因を作った僕なんかに、そのような事は許されるのだろうか……?
アポカリプスウイルスのせいではないが、目の前の助けられなかった人達の悔いを、どうしたら晴らして上げられるだろうか……?
"罪を背負いし王"として、これからもガストレアと戦うのならば………… ガストレアに殺された彼女の魂も、ここの人達も……安心して逝けるかも知れない。
「…………ならば…………!!」
「集…………?」
「…………ならば誓う…………!! 亡くなった人達の分も生き、「ガストレア」が居なくなるまで、僕は戦い続ける事をッ…………!!!!」
僕は、「獅童 蘭」ちゃんの小さな遺体を抱き締めながら、理不尽な世界の空に"誓い"を立てて、涙で顔を濡らしたんだ。
……
…………
………………
……………………
火…………いや、いのりの手に持つマッチの弱弱しい炎が、僕達の目の前にと立ち込めるている。
僕らは、市街地にあった壊れていた車から、恐らく"劣化"しているだろうガソリンを抜く。劣化していたとしても、ガソリンはガソリン。ちゃんと火は着くだろうから…………。その抜き取ったガソリンを辺り一帯に撒き散らした。蘭ちゃんと桜井 悠の遺体を隣合わせに寝かせ、その周囲にガソリンを撒く。
後はマッチを、ガソリンの元に落とすだけ。ガソリンによる大規模な火災で、ガストレアの死骸も、人々の遺体も皆、市街地ごと火葬する。
僕らが市街地を回った限り、人間は誰も居ず、動物も住み着いてなどいなかった。だから、供養も兼ねて火災を引き起こし、街ごと燃やし尽くす。
この光景を、決して忘れない様にと…………!
「………………いのり」
「………………うん」
僕の合図に、いのりは火の着いたマッチを投げ込む。孤を描き飛んで行くマッチは、ガソリンに接触した瞬間、"ボウッ"と荒々しく炎を巻き上げる。
小さな火種は炎と化し、後に火災となる。
ガソリンにより、短時間で市街地を火災がゆっくりと包み込む。僕らはこの光景を忘れない。…………いや、忘れてはならない。
これが…………目の前の助けられなかった人達に対する"誓い"なのだから。
やがて…………炎は市街地の全土に回り豪炎となり、町を包み込んだ。それからは5日間もの間。炎で罪を洗い流すかの様に、猛々しく豪炎は燃え盛っていた。
……
…………
………………
……………………
…………"火葬"とも言える火災から、三ヶ月後。
…………未だに、ここが何処なのかが分からない。ツグミと連絡が取れれば楽なんだけど、淡い期待を抱いても始まらない。携帯は、最終決戦時にポケットに持っていた"ホログラム展開型の携帯"があるが、何故か電波が入らないんだ。つまり、連絡手段がない。その上、既に三ヶ月も時が経ってしまったんだ…………。
もう僕らは生きてないと、思っている頃だろう。
何せ、世界に蔓延する全てのアポカリプスウイルスを引き込んだのだから………………。
唯一の救いとしては、24区の様に整備されている土地ではないのに、三ヶ月経った今も「キャンサー」など、ウイルス感染者とは1人も出会していない。
つまり、"完全"にアポカリプスウイルスは消えさったという事だ。いや、正確に言えば、僕が「王の能力」を使える時点で、全て僕の右腕に引き込まれたとも言えるのだろうが…………。
感染者など、世界に影響が出ていないのなら、アポカリプスウイルスの脅威は去ったと言えよう。
…………だが、今はアポカリプスウイルスに感謝している面もある。
真名姉さんに謝り、家族として受け入れ力を貸してくれた事。
最後の時に、涯…………トリトンの本当の想いが聞けた事。
祭の「優しきヴォイド」が、今も共にある事。
颯汰や谷尋に会長、綾瀬にツグミ、アルゴ、研二達、それに加え、敵でもあったユウのヴォイド能力も力になってくれている事。
進化した2つの「王の能力」によって、ガストレアに引けを取らずに戦える事。
それに…………、いのりと出会えた事。
最初の時に、僕が倉庫に行かなかったらいのりとは出会えなかっただろう。
そして、彼女と過ごしていく内に、お互いがお互い…………、無くてはならない存在となって行った。
こんな"罪を背負いし王"の僕なんかと共に居てくれる彼女は、僕の心を癒してくれる"寄り添いし歌姫"だ。三ヶ月も人らしき人と出会えなくとも、彼女が居たからお互いがお互いに、辛いとは思っていない。
そんな彼女も、蘭ちゃんを撃った"黒き弾丸"を、ペンダントとして首から下げている。
彼女は…………いのりは言っていた。
「…………これは、私が犯した"罪"の証。だから、私はこの"罪の銃弾"から、目を背けてはダメなの」
"罪の銃弾"
蘭ちゃんを撃ち殺した事による"罪"なのだろう。この三ヶ月、肌身離さずに持っているんだ。蘭ちゃんは、人として死ねた事に喜び、いのりは自分が人を殺してしまった事に嘆いた。
矛盾しているかも知れないが、その時の想いなんて人それぞれ。だからこそ、それを決して忘れてしまわない為、いのりは"罪の銃弾"と言っている。
僕は、"罪を背負いし王"として、力があるのに助けられなかった人達の分も生き、「ガストレア」と戦う事を誓った。
いのりは、王に"寄り添いし歌姫"として傍に居て、奪ってしまった幼き命の為に、僕と共に戦う事を心に決めた。
…………そんな僕らを、満月の光は優しく照らす。
三ヶ月前のあの日から、僕といのりは「ガストレア」と戦っている。様々な町や森を練り歩き、今は50階建ての廃ビルの屋上に居る。下を見渡せば、ガストレアの大群が蠢いてるのが分かる。
「…………準備はいい? いのり」
白のワイシャツの上に黒のロングコートを羽織り 、赤のロングマフラーを身に付け、灰色のボトムに黒のブーツを着こなしている僕は、いのりに声を掛ける。
「…………私は大丈夫。 行こう、集?」
僕の掛けた声に返事をするいのりは、僕と"同じ格好"で、下のガストレア達を見つめている。
この三ヶ月、僕らはこのようにガストレアを見つけては戦っている。ガストレアを見ても、特に何とも思わなくなっている自分が居る。…………人間、慣れとは恐ろしい物だ。と、最近本気で思ってしまった物だ。
それは、いのりも同じなようで、最近は僕の援護と共に、ガストレアの弱点などを"葬儀社"で鍛え上げた観察眼で見つけ出し、止めを刺すに至るまでだ。
「じゃあ、行こうか?」
「うん」
僕は「王の能力」を発動させ、左手でいのりの胸元から結晶の塊を取り出し、白銀のプリズムによって手元からヴォイド剣に構成させていく。白銀の剣を手にした僕は、右手をいのりに差し出す。
「捕まって、いのり」
コクリと頷いたいのりは、僕の手を取り左手で僕の腰を掴む。それを確認した僕は、廃ビルの屋上からいのりと共にダイヴする。
僕らは、下のガストレア達に向かって急降下していき、思い切り左手の剣を下に向かい振り下ろす。振るわれた、ヴォイド剣に纏わせていた白銀のプリズムによって、着地場所のガストレア達を一掃する。
人間離れした身体能力により、50階の高さからも"ストン"と着地し、残っているガストレア達を見回す。
「…………ひぃ、ふぅ、みぃ…………残り大体35〜40って所だね?」
「なら、このまま倒そう?」
「…………そうだね。じゃあ、しっかり捕まってて…………!!」
いのりからの提案を受け、真名のヴォイド剣を抜かずにいのりを抱えたまま、僕は地面を蹴り、ガストレア達に向かって駆け出して行った。
集sideout
最後の、二刀流ではなくいのりを抱えたまま戦ったのかは、最初の頃の2人の共闘を表したかったからです。
因みに、ヴォイド剣の二刀流でないと、二刀に付与された綾瀬などのヴォイド能力は発動しない設定です。
なので、最後の所は、集が地面を駆けてガストレアに立ち向かったと言う
訳です。
編集しました。集は、ホログラム展開式携帯所持と言う事にしました。いのりは、捕まって居たので勿論持っていません。