TS転生した俺が天使になって消えると勘違いされているんだが 作:TG
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私、いや僕?いや俺が転生してから、早い事ですが1週間経とうとしています。どうして一人称が安定してないかって?当たり前でございます。わたくし生まれた時の性と今の性が違います。
記憶は曖昧だが、普通に暮らしていた俺は気づいたら死んでて、気づいたらこの良く解らない娘の頭の中に入っていた。いや性別ぐらいは流石に覚えてたから、違和感に気づいた訳なのだが。しかも明らかに居る場所も違ったしね。こんな中世みたいな場所じゃなかったぜ?車の代わりに馬車が走ってるんだぜ?
しかし突然の事でびっくりして、隣で寝ていた女の子を起こしてしまったのは既にいい思い出だ…まぁその娘のおかげで自分はリア・アルマーニという孤児の娘だという事がわかったのですが。
因みにその娘の名前はエリミナ・アルマーニ。同じ苗字だけど、姉妹とかでは無いそうな。取り合えずで付けられたそうです、今住んでる教会に。しかし同室のその娘、ひじょーにマブいんですわ。銀髪ロングのシスターさんなんて、物語の中だけだと思ってましたわ。切れ長な目もひじょーに良い。まぁそんな事言ったら自分も相当だが。
ベッドに座ったまま、ちらと鏡を見てみる。うわぁ…改めて女の子が鏡に映るのに驚きを隠せない。そしてそこには金髪ショートの美少女が居た。元の世界で居たらだれもが振り向きそうな容姿。身体は成長途中だからか貧s、慎ましやかだが。いや待てよ、しかしあのエリミナって娘はかなりの身体であった。おかしい三歳差ぐらいでああも変わる物か…?
「……リア」
「っひゃあ!え、エリミナ!?脅かさないでよ…!」
ビビった!もぞもぞ動きながら自分の身体をまさぐる、変な行動を起こしていた俺に後ろから声をかけられたらそんな言葉も出るわ!しかし咄嗟に出る言葉が「うわ!」とか「おわぁ!」とかじゃないのには、やっぱり違和感があるぜ…。
というのも何も、喋ってる言葉が自然と女言葉になっているんだ…。この世界の言葉も文字も解る辺りから、そういう物なんだと割り切るしかないのだが。
とりあえずでシスター服を整えている俺を怪訝そうな目で眺める、幼馴染らしい少女に俺はあたふたしていた。
「リア、落ち着いて」
「大丈夫大丈夫…ちょっと色々考えてただけ」
ニヤニヤと…いや、今の俺の笑い方だとえへへという感じの顔になっているのだろうが、そんな顔でエリミナを見つめ返す。ジト目で見られても可愛いお顔だ…。
「それで!どうだったの?聖都?から来た神父様のお話は」
「っ…いえ、教会の事について少しお話をされただけだったわ」
髪を弄りながら目を反らすエリミナ。朝早くからお呼び出しがかかった様で、ご飯も一緒に食べられなかったが、成程大切なお話だったみたいだな、顔から察するに。
もちろんの事だが、俺は全くと言って良いほどこの世界に対する知識も無い為、記憶喪失という事で話を通しております。上手い事話が通ったおかげで、どうにかなってるが…よく考えたらエリミナからすれば、余り良い事じゃないよな…幼馴染が急にこんな変な奴になってるんだし。
改めて自分の事を説明できないと考えていると、ベッドで座っている横にエリミナが腰かけてきた。うん。とても良い香りがする。なんて考えてちゃダメなのは解ってるんですが、顔がにやけてる。流石にニヤニヤ顔になってるはず。
「どどどどどうしたのエリミナ」
「…ねぇ本当に何も覚えてないの?」
「う、うん…覚えてない」
うおお!記憶の事に関して考えてた直後にそんな話しないで貰えますか!?もしかして顔に出てるのかしら…。
「あ、でもね。コレ!」
とそんな時先ほど見つけた物を思い出す。机から見つけたリアの日記帳である。
「それ…リアの日記よね」
「そ、そうそう!記憶には無いけど、やっぱり見返すと自分の事ダナー…って思ったりして!」
「…そっか」
なんて言ってますが、完全に言い訳めいてますがね…文字は読めたんで、少しは二人の関係性が解ったけど。
「そうなの!丁度忘れちゃった前の日まで日記付けてたからね!思い出す事が出来るかもしれないのです!」
「…そうね、そうなってくれたら私も嬉しい」
そう言って、エリミナはニコリと笑った。そうそう暗い顔じゃなくてそういう顔で居て欲しいんだよね。
やっぱり記憶喪失って事になってるからか、ここ一週間暗い顔が多かったし…少しはこうやって前の日記を見て、元気にはなってほしい。もしかしたら、いずれ俺という存在が消えて、本物のリアが戻るなんて事もあるかもしれないしな。
「うんうん!一週間前の日記にだってこう書いてあるしね!」
折角だし日記の話を続けようと思い、俺は最後に書かれているページを開いてみた。
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×月×日 太陽の日
今日はエリミナと外に出かけた。少し涼しい風が吹いていたからか、日差しも余り気にならなかったみたいで、暑いのが嫌いなエリミナも元気だった。
街を見て回ると子供たちが元気に走り回っていた。よく配給の時に来る子供達も居たので一緒に遊んであげた。
帰る頃には辺りは暗くなっていた。皆の家に明かりが灯る。
そんな時、いつもエリミナは少し家の中を見つめている。気づかないと思ってるかもしれないが、父母子が揃っている家の中をだ。
時々、ベッドから声が聞こえるんだ。寝言なのか解らないけど家族に会いたいっていうエリミナの声が。
私には家族の記憶が余り無い。でもエリミナは私よりも家族の事を覚えてるのだろう。普段は見せないけど、辛い事は容易に想像出来る。
私もエリミナも神様なんて信じてない。だけど、もし居るのであればお願いします神様。
私の事はどうなっても良いです。エリミナを幸せにして下さい。
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…。
おおう、結構しっとりした話が出てきて驚いたが、この日記は大体こんな感じなのだ。それにしてもしっとりしているが。
「あ、あはは…やっぱり私ってばエリミナの事ばっかり書いてたみたいだね!ほら結構な頻度でこの最後の文「リア!」
突然ガッと手を掴まれて、ベッドに押し倒される。持っていた日記は地面に落ちてしまい、唐突な事に驚いてジッとエリミナを見つめてしまう。
「ど、どうしたのエリミナ」
「…」
「何か言ってくれないと…その、何か変な事…言っちゃった…?」
「…リア、神様、居ると思うの…?」
突然聞かれた事に、少し呆気に取られる。自分自身の今の状況も解らないが、エリミナの言葉も解らない。ただ俺の不思議な転生も、そして元の身体のリアも、神様に関しては信じざるを得ない状況にあると思われる。だから俺は何も深く考えずに言葉に出した。
「うん、居ると思うよ」
〇〇〇
気づいたらベッドの上でエリミナに抱きしめられていた。さっきの話をしてからずっとエリミナは泣きながら抱き着いていた。どうして、とか何で、と言いながら強くリアの存在を確かめる様に、抱きしめていた。
俺は何も解らない。ただ、この娘の代わりにもなれない今、少なくとも俺を最初に助けてくれたエリミナだけは笑顔にしたい。そう思って、彼女の背を撫で続けていた。
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