TS転生した俺が天使になって消えると勘違いされているんだが   作:TG

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エリミナ視点です。


彼女は私の為に血を流した

 

〇〇〇

 

 生誕の儀。

 まずは第一段階の忘却、今までの記憶を無くしまっさらな人間となる。

 次に第二段階の鮮血、身体を浄化する為に体外へと血が排出され始める。

 そして第三段階の離脱、意識の消失が繰り返される。

 それらが続き、最終段階では――――

 

○○○

 

 

 

 神父が教えてくれた説明を思い出しながら、私は目を覚ました。眠い目を擦りながら起き上がると、隣に誰かが寝ているのに気づく。すぅすぅと寝息を立てていたのはリアだった。

 

 …そうだ、昨日はリアに抱き着いたまま寝てしまったんだっけ。

 

 我ながら少し恥ずかしい。彼女からしたら急に記憶に無い幼馴染が泣き始めたのだ。困った様に背中をさすられていたのを思い出す。

 

 しかしそんな行動でさえ、彼女の本心を知った今ではとても重たい。

 

 

 

 こんな世界で生まれた自分たちは神様なんて信じない。それが私とリアの思いだった。結局頼れるのは自分たちだけ。神様に祈った所で現状は変わらない。だから神父が「神に認められた」だの「神の祝福」だの、信じていなかった。だけど…

 

「…リア」

 

 横で眠る彼女の髪を撫でる。綺麗な金色の髪。私がいつも弄るとぼさぼさになってしまうから、困った様に笑う彼女を思い出してしまう。

 

 彼女は私の為に祈りを捧げた。それは日記の中に何度も綴られていて解った事だった。

 

 知らなかった。私の事をそこまで考えていたなんて。こんな、神様に見初められる程、献身的な祈りを捧げていたなんて。

 

 今は記憶も失った彼女だが、神様が居ると言った時の彼女は何処となく確信めいた表情をしていた。恐らく、頭の奥底に祈りの心が残っているのだろう。正直、彼女の言葉を聞いた時に涙が出てしまったのはその為だ。

 

「リア、私は」

 

 ぎゅっと、彼女の顔を見ながら拳を握る。

 

『…私は貴女が消えてまで幸せになっても、意味がないんだよ』

 

 記憶が失われる前の彼女に伝えたかった。

 

 しかし、そんな彼女はもう居ないのだ。

 

 

○○○

 

 

 眠ったままのリアを横目に、私は朝の準備に向かう為準備を始めていた。リアの事も心配だが、とにかく生誕の儀について知る為には普段の仕事をしながら調べるほかない。

 

 私が服を着替え始めた時、布団がめくれる様な音が聞こえた。もしかしてリアが目を覚ましたのかもしれない。

 

「リア?起きたの?」

 

 ベッドで寝ているであろう彼女を振り返り見ると、彼女は顔を抑えてうずくまっていた。

 

「リア!?」

 

 その細い身体はぶるぶると震えており、私が身体を揺すっても「大丈夫、大丈夫」としか言わない。どう考えても何かがおかしいのに。彼女の手を見ると、赤い物が見えた。もしかして…血液…?

 

 チラとこちらを見たリアは、ごめん!と言いながら私の横を通り抜けてトイレへと向かっていた。私はそれを止めることができなかった。

 

 

 

 

 数分後何もなかったかの様にトイレから出てきた彼女は「ちょっとお花を摘みに」等あたふたしながら言っていたが、手や服に付いた血に私は気づいてしまった。それに洗面台にも血が付着していたのだ。相当な出血だったと思われた。

 

 生誕の儀、第二段階、鮮血――――

 

 彼女の身体はどんどんと私の知らない物になっていっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○

 

 ―――それらが続き最終段階では、消失。

 周りの人達からその存在した記憶すら消えて、生誕の儀は完了します。

 誰からも覚えられず、存在した事すら無くなる。残るのは記録だけ。だから今まで生誕の儀を受けてきた者の記録はここで途絶えています。

 それを持って、その者達は天使と成りえたと言われているのです。

 

〇〇〇

 

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