TS転生した俺が天使になって消えると勘違いされているんだが 作:TG
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風が強く吹き、草木が揺れる。洗濯物が並ぶ教会のすぐ側で、女の子二人が花を見つめ合っていた。
「エリミナ!ほらリエットの花が咲いてる!」
「もうそんな季節なのね、リア」
銀髪の少女は、ニコッと笑いながらはしゃぐ金髪の少女を見つめていた。
午後の涼しい風が二人の間を吹き抜ける。日差しも今は気にならないようだ。
「…ねえエリミナ」
「何?」
「今、幸せ?」
「…ふふっ、どうしたの急に改まって」
そういうと金髪の少女は照れたように笑う。もじもじと指を動かしながら、銀髪の少女に近寄って上目遣いで言葉をつなげた。
「うーん…ちょっと気になっちゃって」
「言うまでも無いわよ」
「ちゃんと言ってよぉ」
「はいはい、幸せよ私は」
そっかーと言いながら少女は手を組んで目を瞑る。そして天を仰ぐかのように空を見上げた。
「神様なんて、居ないわよ。祈ったって変わらないわ」
「相変わらず神様嫌いだなぁ、シスターなのに」
「仕方ないじゃない、私を幸せにしてくれるのは神様じゃなくてリアだもの」
「えへへぇ…っていうか、これは神様に祈ってるんじゃないんだよエリミナ」
にっこり笑いながら少女は呟いた。
じゃあ、誰になの?という言葉を聞きながら、金髪の少女は大きく息を吸ってその名前を呼んだ。
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「しかしこれで良かったのかのう」
「あー何だ爺さん、今いい所なんだから邪魔しないでくれ」
俺は元の世界に戻った二人を見つめながら隣にいる神様にしっしっと手を振る。
ワシ神様なんじゃけど、という言葉は聞こえてこない。今女の子達の尊い姿を収めているんだ。
「しかしお主と新米の天使がここまで殴り込みに来た時は驚いて心臓止まったわい」
「神なんだから関係ないだろうが」
「例えじゃよ!そんな事する人間も天使もおらんかったんじゃ!」
ぶつぶつと、神に対する態度がーとかなんとか呟くおじさんをスルーしつつ、俺は二人の女の子を見つめる。うんうんちゃんと話してるじゃないか。まさか唐突に考えた行動が上手く行くとは。
あの時俺が考えた作戦。それは俺がリアの代わりに天使となって、もう一度リアの魂を天使になる前に定着させるという物だ。
天使になる条件は簡単なのは解っていた。神様に祈りを捧げる、それが通じてリアも天使になったわけだしな。
そしてそれを無理やり通じさせる為に、俺とリアは直接神様の居場所まで乗り込んだ訳だ。そのあとは言わずもがな…色々な方法で納得させたまでよ。
「しかし、考えてみれば俺も異世界転生主人公並の動きが出来たんじゃないか?」
「んなわけないじゃろ!普通はあの娘に転生して上手い事やるんじゃよ!」
「いやいや。俺の名前の事だよ、まるでこうなるかの様な名前じゃないか?俺って」
「ああ…お主のキラキラネームか…」
「うっせ、今じゃ誇りだわ」
ぐちぐち言う神様を無視して、俺は再び二人の世界を覗き込んだ。しかし改めて感じる事がある。
「うん、やっぱり女の子二人の間に挟まるもんじゃないな、男は」
そう結論付けるのであった。
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「―――ありがとう!
「…誰?」
少女の声は遠く空に響き渡っていた。