幻想郷食堂   作:storyblade

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嘗て東の国の人里離れた辺境の地にとある場所があった…。


…「幻想郷」


そこは昔より多くの妖怪が住み着き、人々に恐れられていたが、人間世界が発展すると妖怪は次第に迷信扱いされ、妖怪もそれが存在する幻想郷も徐々に危険視されなくなっていった。これを憂いた幻想郷の管理者にして大妖怪である八雲紫は、自分達の居場所を守るために「博麗大結界」という結界で幻想郷を覆い隠し、人間界と分離。これによって通常人に触れる事も見る事も出来なくなった幻想郷は、年月の流れと共に次第に人々の記憶から忘れられていった。一方の幻想郷もそれからは妖怪や一部の人間、更に人に忘れられて居場所を無くした神仏等も住み着き、それらが独自の文化を築き上げていた。長い歴史のさなか、「異変」という大小様々な事件はあったものの幻想郷の守護者である博麗の巫女や、幻想郷の住人達がそれを解決し、色々ありつつも幻想郷は今日も平和なのだった。
……そんな幻想郷でまた小さな異変が起こる。突如現れた「扉」が巻き起こす、騒がしつつも悪くはない、そんな異変が…。


メニュー1「ビフテキ・エビフライ・メンチカツ」

香霖堂

 

 

そんな異変の物語はとある店から始まる…。

ここは幻想郷にある「香霖堂」という看板が掲げられたとある店。…の様に思えるが、何やら異質なものや一見何の役に立つのかわからないものが並んでいるその店内は店というよりも物置に思える。

 

眼鏡をかけた青年

「……」

 

そんなものに埋め尽くされる中で店主らしい眼鏡をかけた青年が湯呑をすすりながら本を手にしている。どうやら読書中らしい。客はひとりもおらず閑古鳥なのに至って気にせず、ゆっくりとひとりの時間を楽しんでいる様だ。

 

 

バーンッ!

 

 

白黒の恰好をした少女

「おーす香霖~!遊びに来たぜ~!」

大きなリボンを付けた少女

「こんにちは霖之助さん。お茶もらうわね」

 

と、その時ドアが激しく音を立てて開き、ふたりの少女が入ってきた。ひとりは白黒の魔女の様な姿格好にエプロンをし、髪を片方だけ小さく三編みした少女。もうひとりは頭に大きなリボン、お腹と肩の部分を開けた変わった服を着た少女。

 

「…来て早々唐突にお茶を入れる霊夢の方はもう無駄だからやめておくとして魔理沙、店のドアは蹴破らないでくれと前から言っているだろう?」

 

「気にすんな気にすんな♪そんな細かい事気にしてたら白髪が増えるぜ?ああ元々か、まぁとにかく気にすんな」

 

「相変わらず安いお茶ね~。あ、お煎餅ももらうわね」

 

青年の名前は霖之助、白黒の少女は魔理沙、そして赤の少女は霊夢と言った。

 

「そんな事よりも香霖!今日は確か無縁塚行った日だろう?また何か珍しいもんパクってきたか?」

 

無縁塚というのは幻想郷のはずれにある無縁仏達の共同墓地の事で、結界の力が弱いため博麗大結界の外、人界から流れ込んでくるものが漂着する場所でもある。香霖堂に並んでいるのは霖之助がそこから拾ってきた物が多い。

 

「パクったとは心外な。さっき戻ってきたところだよ。少ないけど裏に置いてあるから気になるなら見てみるといい。言っとくけど取らないでくれよ?」

 

「ひどいな~香霖、取ったりしないぜ!借りるだけだ!死ぬまでな♪」

 

そういって魔理沙は裏の方に行ってしまった。再びため息をはく霖之助だが彼は元々彼女の実家で働いていた身。魔理沙の事は彼女が幼い頃から知っているのでこういう事についても半場諦めている。

 

「…はぁ~~」

 

すると今度は霊夢が大きく長いため息をはいた。

 

「関わり合いになったら面倒だから本当なら聞きたくないけど…どうしたんだい霊夢?」

 

「な~んか最近面白い事がないのよね~」

 

「平和でいいじゃないか」

 

「そうなんだけど宴会やっても特に真新しい話題も無いしなんとなくつまらないのよね~。…いっそのこと何か異変でも起こってくれないかしら?」

 

「…博麗の巫女としては相当まずい事言ってるってわかってるかい?」

 

呆れた様にそう言う霖之助。彼女こそ幻想郷の守護者のひとりにして博麗大結界の管理を任されている博麗神社の巫女、博麗霊夢である。

 

「それに異変があったらあったらで君も忙しいだろう?今みたいにのんびりお茶を飲んでる暇もない位に」

 

「それはそうなんだけど博麗の巫女の出番があったらあったでうちの神社の宣伝にもなるし~。そうなったらお賽銭も入るし~」

 

「…今までいろんな異変あったけどそんなに流行った事あったかな?」

 

「霖之助さんも意地悪な事言うわね…。あ~あ、異変とまではいかなくても何か吃驚するような事でも起きないかしらね~」

 

悪態をつきながらうつ伏せる霊夢とそれを苦笑いしながら見守る霖之助。

 

「まぁそんな事はさておいてもう昼食前ね。ここで食べてっていい霖之助さん?」

 

「残念だが材料は僕の分しかないよ。ふたりが来るのは知らなかったからね。人里にでも行ったらどうだい?」

 

「え~めんどくさい…。う~んご飯どうしようかな~」

 

空腹を紛らわす方法を考えている霊夢。すると、

 

「おーい香霖、ちょっと来てくれ~!ついでに霊夢も~!」

 

何やら裏の方からふたりを呼ぶ魔理沙の声。ついで呼ばわりで悪態つきながら霊夢も霖之助も立ち上がり、魔理沙の所に向かってみると、

 

「どうしたのよ魔理沙」

 

「なにか特段気になるものでもあったかい?」

 

「あれを見てくれよ!」

 

魔理沙が「あれ」というものに向って指を指した。そしてその先には…、

 

「……扉?」

 

霊夢が言うとおり、そこには扉があった。霖之助が集めてきたガラクタ?からポツンと少しだけ離れたそれはなんの支えもないのにまるで見えない家に付いているかの様に堂々と立っている。木造りの、一枚板などでなく幾つもの複雑に作られた部品が組み合わさってできたそれは金メッキのノブ、更に猫を象った看板がかけられていた。取り敢えず三人は扉に近づく。

 

「まるで紅魔館にありそうな扉だな。こーりんドアまで運んできたのかよお前?」

 

「…いや、僕はこんなものは知らないよ。そもそもこんな重そうな扉僕ひとりで運べるわけ無いだろ」

 

「……少なからず妖気、いえ魔力みたいなものを感じるわ。でも…危険なものではなさそうね…」

 

「何か書いてあるね。………「洋食の…ねこや」?」

 

猫を象った看板には現代の日本語でそう書かれていた。

 

「もしかしたらこれも外の世界から来たのかもしれないわ…。でもなんで扉だけなのかしら?」

 

「まさか扉開けたらどっかに繋がってるとかねぇよな…?転移魔法なんてパチュリーやアリスはおろか、この魔理沙様でも中々だぜ」

 

「まぁ似たような力が使える奴には覚えないことないけど…でもこの扉に関してはあいつらは違うと思うわ」

 

「…で、どうする?開けてみるかい?」

 

霖之助の言葉に霊夢は軽くため息をはいた後、

 

「…仕方ないわね。もし物騒なものならこのまま放ってはおけないし。ほら魔理沙」

 

「おう!」

 

そう言いながら霊夢が先頭に、そのすぐ後ろに魔理沙、更に後ろに霖之助がつく。そして霊夢はドアノブに手をかけ、押したが……扉は開かない。

 

「…あれ?鍵がかかってる」

 

「いや引き戸なだけじゃないか?」

 

そう言われて引くと扉がほんの少しだけ動く。どうやら扉は引き戸の様だ。

 

「あはは♪霊夢だせ~」

 

「う、うっさいわね!さっさと行くわよ!」

 

 

ガチャッ!~~~~♪

 

 

笑われたのがむかついたのか霊夢は扉を一気に引き、扉が開くと鈴の音が鳴った。

 

 

…………

 

???

 

 

それより少し前。ここはその幻想郷にあってどこでもないどこか。周囲に無数の巨大な目の様なものが浮かんでいる部屋。

 

変わった格好をした女性

「………」

 

そんな異質な部屋の中にひとり変わった女性がたたずみ、水たまりの様なものをのぞき込んでいたのだが…。

 

「…私がこの地に住んで幾年。数えきれない程の年月が経ったけど…あんなものは初めてだわ…」

 

何やら目に映ったのか女性は相槌を打った。話の内容からして何か奇妙なものでも見つけたのか…。

 

(どういう物か……あの子に調べてもらおうかしら)

 

そんな事を考えている女性の傍にもうひとり近づいてくる。

 

尻尾がある女性

「~~様、本日のお食事は何がよろしいですか?」

 

同じく変わった格好の女性だが最も特徴的なのはいくつもの狐の様な尻尾がある事だろうか

 

「あらもうそんな時間だったのね?そうね~、何か温かいものがいいわね~」

 

「承知しました。…ところで先程から熱心に見られてましたが何かあったのですか?」

 

「…あれを見て」

 

先の女性が映し出されたそれを指さし伝える。それを見た尻尾がある女性は訝し気な表情を浮かべる。

 

「……初めて見るものですね」

 

「外の世界では幾らでもあるのだけど少なくともこの地、そしてあんな場所にあるものでは無いわね~」

 

「……異変、ですか?」

 

「どうかしらね~。怪しくはあるけど何故か不穏なものとは思えないのよね…。あの子に知らせて行かせてみようかしら?」

 

「博麗の巫女ですね」

 

「そ、じゃあ早速知らせに……?」

 

するとふたりは映像に映ったそれを見て少し驚いた。

 

「あれは……」

 

「……どうやらわざわざ知らせに行く必要は無くなったようね~。それじゃもう少し様子を見てみましょうか…」

 

 

…………

 

霊夢・魔理沙・霖之助

「「「……」」」

 

三人は目に映ったものを見て言葉を失った。扉の先には不思議な世界が広がっていた。全てではないが全体的に木を多く使ったモダンな造りの屋内。ところどころに透明だったり綺麗な模様がある小物や入れ物や額に入った絵などで飾り付けされたインテリア。火の光とは違う暖かい光を放つ照明。そして室内と同じく木で造られた沢山のテーブルと背もたれがついた椅子。テーブルの上にもいくつかの小瓶がある。そんなテーブルで何やら食事をしている何人かの人物と、彼らに対応しているふたりの少女。部屋の横にはひときわ大きい窓の様なものがあり、隣が見える様になっている。どうやら隣にもなにかしらの部屋がある様だ。

 

「ななななな、なんだこりゃ~!?」

 

「…沢山のテーブルに椅子、そして皆何かを食べているらしいから食事の店なのかな?だとしたら隣は…多分厨房だね」

 

魔理沙は驚きの声を上げる。霖之助も冷静に状況を分析するがそれでも驚きはしているらしく、目は大きく見開いている。

 

「この部屋もだけど…」

 

一方霊夢は別の事に驚いていた。その場所では確かに何人かの人物が食べ物らしき物を食している。もしここが食事をする場所ならば何の変哲もない当り前の光景だろう。繁盛もしている。…だがその人物達が変わっていた。

 

高級そうなローブに身を包んだ白い髭を生やした老人

その老人と談笑しているのは黒いマントで帯刀している髷らしき髪型をした男

カラフルな果実と柔らかそうな黄色い食べ物を食する、とがった耳をした銀髪の女性

同じく果物をくるんだお菓子らしきものを食べている蝶の羽が生えた小人の様な者達

勢いよく丼を掻っ込んでいる頑強な肉体と獅子の様な獣の顔をした男等など…、

 

「なんだあいつら…?」

 

「妖怪、なのかしら…?でも幻想郷であんな妖怪は見た事ないわ…」

 

「そうだね…。それに妖怪だとしても普通に人と混じって食事しているのも変だし…」

 

目の前の光景に呆然と驚く三人。

 

「いらっしゃいませー!」

 

とその時、忙しく動いていたひとりの少女が三人に気づいて挨拶をしながら近づいてきた。姿格好からしてどうやら給仕であろう。元気に挨拶してきたその少女に霊夢が返事をした。

 

「ね、ねえちょっと…!?」

 

そして気づいた。少女の頭に…山羊の様な角が生えている。彼女もまた人ではない事に。その事に一瞬慌てた霊夢は博麗の巫女の本能か、手に異変解決の時にいつも持っている大幣を構えようとする。

 

(駄目)

 

だがそれは叶わなかった。突然自分の頭に響いた声に止められたのだ。

 

「!!」

 

「ななな、何だ今の声!?」

 

「頭の中に声が響いた…!」

 

そしてその声は霊夢だけでなく他のふたりにも響いていた。

 

(ここでの争いは駄目…。絶対…)

 

声色からして少女の声。しかし目の前の少女ではない。そして異常だったのはその声は何よりも大人しい雰囲気なのに…何よりも凄まじい威圧感と迫力があった。絶対に逆らってはいけない位の。それを霊夢は素早く感じ取り、つい小声になる。

 

「これは…テレパシーみたいなものだわ。でも単なるものじゃない…。何かはわからないけど…途轍もなく強い力を感じる…。私でさえとても対処できない位の…!」

 

「霊夢でもだって!?」

 

「落ち着いて魔理沙。気持ちはわかるけどこういう時に霊夢は嘘はつかないだろう?…で、どうする?」

 

「……一旦落ち着きましょう。怪しいけど今はじっとしていた方がよさそうだわ。でも油断しないで」

 

自分ひとりだけなら何とか対処方があるかもしれないが今は非戦闘員の霖之助や店内に人間もいる。下手な争いはしたくなかった。そんな三人を知ってか知らずか給仕らしい少女が再び声をかける。

 

「あの~どうかなさいましたか?」

 

先の声はこの少女には届いていない様だった。

 

「あ?ああいえ、なんでもないわ…。それより…ここは何なのかしら?」

 

「そうだぜ!紅魔館でも地霊殿でもましてや月でもねぇし!一体どこなんだここは!?」

 

魔理沙はまだ興奮冷めやらぬ様だ。

 

「こうま…かん?」

 

「ああすまないね。僕達凄く驚いてるんだ。よければここがどういう場所か教えてもらえないかな?」

 

「ああすみません!失礼しました!」

 

年長者らしく応答する霖之助に少女は元気にこう返した。

 

給仕の少女

「ようこそ!洋食のねこやへ!」

 

洋食のねこや。この場所の事を少女はそう言った。

 

「洋食の…」

 

「ねこやぁぁ?」

 

「はい!ここは「ねこや」っていう料理屋です!」

 

「表の看板と同じ…。やはり料理を出す店なんだね」

 

「そして私はここで働いている、アレッタです!」

 

少女の名前はアレッタと言った。彼女の敵意全く無しな笑顔にひと安心した霊夢達は警戒をゆるめ、とりあえず自己紹介する。

 

「アレッタ、ね。じゃあ私も一応自己紹介しとくわ。私は博麗霊夢。一応博麗の巫女なんて肩書で通ってるわ。霊夢って呼んでくれていいわよ」

 

「私は霧雨魔理沙!どこにでもいる普通の魔法使いさんだ。私の事も魔理沙でいいぜ!」

 

「僕は森近霖之助。よろしくねアレッタさん」

 

「レイムさんにマリサさんにリンノスケさんですね。宜しくお願いします!」

 

「じゃあ早速ひとつ聞きたいんだけどアレッタ、ここは一体どういう料理屋なのかしら?」

 

霊夢はとにかく一番気になった事を聞いてみた。

 

「ここは、異世界にある料理屋です」

 

「い、異世界だって!?」

 

「異世界」という言葉に再び驚く魔理沙。他の客らしい者達はそんな反応に慣れているのか、特に魔理沙の声に驚いたりしていない。

 

「外の世界…みたいなものなのかな?」

 

「…いえ、単純にそうとも思えないわ。外にあんな存在はいないもの」

 

霊夢は羽が生えている小人や獣の顔をした男を見てそう思った。

 

「いらっしゃいませ」

 

とその時、厨房が見える窓からひとりの人物が顔だけ見せた。白い長い帽子をかぶった髭面の男。どうみてもコックの様な風貌。

 

「うお!吃驚した」

 

「アレッタさん。とりあえず新しいお客様をテーブルにご案内して。少し落ち着いたら俺が対応するから。クロさん、お冷とおしぼり先にお出しして」

 

「はいマスター!それではこちらの開いてるお席にどうぞ!」

 

そう言われて三人はとりあえず座る事にした。三人が座れるテーブルは空いて無さそうなので霊夢と魔理沙が同じ席に、霖之助がすぐ隣にあるテーブルに座る。

 

「なんなんだろなココ…?」

 

「怪しいけど…不思議と悪い感じはしないわね。この店の雰囲気がそうさせるのかしら?少なくとも幻想郷にある店じゃない事は確かだわ」

 

そんな事を話していると、

 

黒髪の少女

(いらっしゃいませ。こちらサービスのお冷とおしぼりです)

 

コックの男にクロと呼ばれた長い黒髪と金色の目の少女が水とおしぼりを人数分差し出してきた。そして三人は驚いた。話かけられたというよりは頭に直接声が響き、それは先ほど聞こえた声と全く同じだった。

 

「!!」

 

「また頭の中に声が!?」

 

「それにこの声は…!」

 

(先ほどは失礼しました…。もうすぐ店主が来ますのでもう暫くお待ちください)

 

少女は涼しい顔で席を離れた。その後ろ姿を見ながら魔理沙は霊夢に話しかける。

 

「…なぁ霊夢。今のって…」

 

「わかってるわよ…。でもさっきも言ったでしょ。今は手出ししない方がいいわ」

 

「とりあえず店主とやらに詳しく聞いてみようじゃないか」

 

ふたりは霖之助の提案に頷くしかなかった。

 

「この水レモンが入ってるのか。さっぱりして冷たいしうめぇな」

 

「こんなよく冷えて綺麗な水なんてどこで採ってるのかしら?」

 

「このおしぼり温かい。冷たいのよりこちらの方がほっとするね」

 

三人がレモン水や温かいおしぼりに少なからず驚いていると、先ほどの男が用事を済ませてやってきて、

 

コック姿の男

「改めていらっしゃいませ。ようこそ、「異世界食堂」へ」

 

ここの事を異世界食堂とも言った。

 

「異世界…」

 

「食堂…?」

 

「ええ。先程彼女が言った通り、ここは異世界にある料理屋、洋食屋です」

 

「異世界にある料理屋、か。通りで僕達の知ってる店とは雰囲気が違う訳だ」

 

「うちからしたら普通なんですけどね。お客さんからしたら変わってるってよく言われます」

 

苦笑いしながらそういう店主に不信よりも好奇心が勝ち始めていた魔理沙が質問する。

 

「なぁおっさん!ここが異世界だとするとどうやって別の世界とつながったんだ?」

 

「おっさ…いやまぁいいか。俺も詳しくは知らないんですが、あそこの常連のじいさんが言うには、何でも時空を捻じ曲げ、異世界にここの扉をいくつも生み出してるって話です。つってもつながるのは七日に一回だけなんですけどね」

 

「七日に一回だけ?」

 

「ええ。ほら、あそこに鈴があるでしょう?あれがあの扉と異世界を繋げてるらしいです。あと、お客さんと言葉が交わせるようになってるみたいで」

 

店主が指さしたのは先ほど鳴ったドアにつけられた鈴だった。

 

「異世界とつながるだけじゃなく通訳機能まで…結構すげぇマジックアイテムだな」

 

「だから私達もアレッタと会話できたのね。他のお客さんも皆日本語話してるからなんでかって思ったわ」

 

「ええ。ここが日本にある店だからだと思うんですけどここに来た皆さんの言葉は何故か皆日本語で………!?」

 

とその時店主が一瞬言葉を詰まらせた。

 

「ど、どうしたおっさん?」

 

「い、いや、あの、お客さん方。何故「日本語」という言葉を知ってるんですか?」

 

どうやら店主は霊夢が「日本語」と言ったのに驚いている様だった。無理ないかもしれない。彼からすれば彼女達も異世界の住人。なのに何故日本語を話すのか?すると霊夢が、

 

「当然でしょ?私達は多分、貴方と同じ世界の住人なんだから」

 

 

…………

 

それから霊夢達は自分達がどういう存在なのかを簡単に店主に話した。

 

「幻想郷…。俺達の世界にあるもうひとつの世界、ですか…」

 

「私達は貴方達の世界の事を外の世界って言ってるけどね。まぁとにかくそういう事よ」

 

「僕達はそちらとは別の空間に生きている者さ。但し間違いなく存在している」

 

「難しい事は苦手だから省いてほしいんだけどな」

 

すると店主は、

 

「わかりました」

 

驚きつつもあっさり了承した。

 

「ズコッ!言っといてなんだけど早いな!もっと慌てると思ったのに」

 

「異世界食堂なんてやってたら今更そんな事位では驚きませんよ。それに飯屋ってのは「飯がうまければそれでいい」ってうちの先代も言ってましたし、お客さんがどういう場所にお住まいかなんて気にしません」

 

「大した神経ね。…それより店主さん、ふたつ聞きたいんだけど貴方達の世界からあの扉を通って私達の世界に来れたりとかはしない?それだと非常に困るんだけど」

 

「ああそれなら大丈夫。物は通ってしまうんですが人は自由に移動できません。実際うちの給仕も自分の世界とこの店、シャワールームと休憩室だけです。勿論窓から外にも出られません」

 

店主は嘘は言っていない。魔法瓶や風呂敷は扉を通り抜けられるがアレッタやクロは基本今言った場所以外は自由に移動できない。これで取り合えず幻想郷に異世界の人物が入ってくる心配は無くなった。

 

「それなら大丈夫そうね…。あとひとつ、あのドアの鈴だけどどうやって手に入れたの?」

 

「そうだぜ!世界を越えられるマジックアイテムなんて滅多にないしな!」

 

これには魔理沙も乗っかってきた。

 

「ああ…。ここは先代、正確には俺の爺さんが婆さんと始めた店なんですが、その婆さんが見つけてきた物らしいです。詳しい経緯は知らないんすが…」

 

これも店主は嘘は言っていない。詳しく知ろうと思えば知れるんだろうが店主自身そこまではあまり興味はない。祖父も随分昔に亡くなっている。ともかくあの鈴の効果は「異世界とこの食堂が七日に一度つながる事」そして「通訳機能」のふたつ。更にこの店を中継して世界を自由に行き来できないなら取り敢えず幻想郷に大きな危機はなさそうだと霊夢は判断した。

 

「……そ、ならいいわ。ごめんなさいね色々と」

 

「いえいえ構いませんよ。さてお客様、せっかくだから何か食べていかれますか?これでも結構評判いいんですようちの店」

 

確かに周りの客層は皆いかにも美味しそうに食べている。

 

「う~ん、そうしたのはやまやまなんだけど僕達まさかこんな事になるなんて思ってなかったからお金そんなに持ってきてなくて」

 

霊夢と魔理沙に至っては財布も無いと頭を縦に振る。

 

「構いませんよ。うちはお客さんの様に急に入ってこられる方もいますから後払い、何なら一品位ならタダでも」

 

「いただいてくわ!」

 

「私も食べてくぜ!」

 

タダという言葉に霊夢と魔理沙が食いついた。若干目を輝かせているようにも見える。

 

「はは、かしこまりました。今メニュー持ってこさせますんで。ああ日本語の方がいいですね」

 

そう言って店主はその場を離れた。

 

「思ってたよりずっといいお店といい人で良かったわ♪」

 

「そうだな♪」

 

「やれやれ、ふたり共さっきまで怪しがってた癖して」

 

さっきまでの緊張はどこへやらすっかり気を許した霊夢と魔理沙。とそこにアレッタが霊夢と魔理沙に、クロという少女が霖之助にメニューを渡した。

 

「こちらメニューです!」

 

(ご注文がお決まりになりましたらお呼びください)

 

三人はメニューを開き見る。そこには確かに日本語で様々なメニューが書いてあった。

 

「お〜結構あるな。……う~ん悩むぜ。知らない食べ物まである」

 

「和食物はなんとなくわかるんだけど洋食はめったに食べないものね…」

 

非常に悩んでいた。理由はふたつ。ひとつは霊夢達が住む幻想郷では基本和食が主な食事なので一部の者を除いて洋食には縁が無い。なので見た事も聞いた事も無い食べ物が多かった。もうひとつは幻想郷は山に囲まれ、川が流れているが海が無い。そのために海の魚を使った料理にはそれ以上に縁が無いのであった。

 

「折角の洋食屋なんだから洋食、海のもん食いてぇしな~……あ、私これにする!これなら何となくわかるしな」

 

「なるほどね。私は魚でも肉でも……あ、私はこれにするわ!霖之助さんは?」

 

「僕はもう決めてるよ」

 

という訳で霊夢がアレッタを呼び、注文する。

 

「アレッタ、ビフテキひとつもらえるかしら♪」

 

「私はこのエビフライにするぜ♪」

 

「僕は日替わり定食でお願いするよ」

 

「はい!ビフテキにエビフライに日替わり定食ですね!…マスター!ビフテキにエビフライ、日替わり注文いただきました!」

 

「はいよ。少々お待ちください」

 

店主は調理に入り、アレッタは別のテーブルの注文を受けに行った。

 

「久々の肉ね!しかもステーキ!そのうえ無料よ無料♪」

 

「私も楽しみだぜ♪」

 

「存分にご馳走になるつもりだね」

 

すっかり上機嫌な霊夢と魔理沙。

 

「随分嬉しそうな顔しとるのぉ娘さん」

 

とその時、カウンター席に座るローブに身を包んだ老人が霊夢達に話しかけてきた。一緒にいた髷の男は食事を終えたのかいつの間にやら店を出て行っていた。

 

「当然よ!普段山菜や川魚ばかりだからね。テンションも上がるってもんよ♪」

 

「爺さんは何食ってんだ?」

 

見ると老人の前には何やら揚げ物の様な料理がある。

 

アルトリウス(ロースカツ)

「ほっほ。儂はいつもこのロースカツじゃ。そういえば自己紹介が遅れたの。儂はアルトリウス。ここではロースカツで通っておる。よろしゅうな」

 

「…?それって料理名ではないのですか?」

 

「ここでは自分が一番うまいと思う料理の名前で呼び合うのがいつの間にかの風習なんじゃ。儂はここに通ってもう三十年以上になるが、以来ずっとロースカツとビールじゃよ」

 

「三十年もおんなじもん食ってんのか!よく飽きないな!?」

 

「はっはっは。儂がロースカツとビールを食わぬ時が来たとすれば、儂が死ぬ時じゃろうな」

 

「……てかもしかして爺さんも魔法使いか?凄ぇ魔力を感じるぜ」

 

するとすぐ近くにいたアレッタが答える。

 

「マリサさん。アルトリウスさんは王国、いえ大陸一の大賢者と言われている凄い方なんですよ。昔、そのお力で世界を救われたんです」

 

「ふえ~」

 

「そんな人が三十年も通い詰めるなんて凄いお店なのね」

 

「そんなに固く考えんでもよい。ここではそんな肩書や身分は不要じゃ。そういうお嬢さんも魔術の心得があるようじゃな」

 

「おう!私は幻想郷でも知る人ぞ知る魔法使いだぜ♪」

 

「知る人っていっても私達だけでしょうが」

 

悪態つく霊夢に反論する魔理沙。

 

「すみません騒がしくて…」

 

「気にしなくてもよい。さっきも言ったがこの店もそれなりに長くなった。当然客層も変わっておる。儂の知り合いには亡くなった者もおる。そんな中でお主らみたいな若者が新しく客として入ってくれるのはありがたいことじゃよ」

 

霊夢と魔理沙はともかく、霖之助は妖怪なのでおそらくアルトリウスよりも長生きなのだが、それは言わぬが口である。改めて見回すと他にも入れ替わり入れ替わりで客が入ってきているがそれについてはまたいずれ。

 

 

 

 

……店主調理中……

 

 

 

 

…………

 

「おまたせしましたー!」

 

やがてアレッタがワゴンで、クロが手で料理を運んできた。

 

「ビフテキとエビフライです!」

 

(本日の日替わりのメンチカツです)

 

「マスターがお知り合いの方から取り寄せているので美味しいですよ!あとレイムさんはお酒は?」

 

「ええ飲めるわよ」

 

「良かった!ではこちら赤のぶどう酒になります」

 

グラスに赤いワインを注ぐアレッタ。その間にクロが説明する。

 

(ビフテキは鉄板が熱いのでお気を付けください。エビフライは特製タルタルソース、メンチカツはソースとレモンをつけてお召し上がりください)

 

「パンとスープはお変わり自由ですので気軽に仰ってください。それではごゆっくり!」

 

そう言ってふたりは離れていった。三人は目の前の料理に目を向ける。

 

掌よりも大きい肉が鉄板の上でジュウジュウと音を立てながら焼かれ、良いニオイを放っている。傍にあるステーキソースで食べるのだろう。

こんがりときつね色に揚げられた小エビよりもずっと大きいサイズのエビが二本、綺麗に盛り付けされ、タルタルソースという白いソースが添えられている。

同じくきつね色に揚げられた円型のものがふたつ。今でもパチパチッという音を立てているのが揚げたてを意味していた。

 

「こんな肉の塊初めてだわ~♪凄く食欲そそられるにおいね!」

 

「このエビでけぇな~!てかタルタルソース、だっけ?初めて見るなこれ」

 

「これは…まるで隕石みたいだな。まぁそんなわけないか」

 

我慢できなくなった三人(特に霊夢と魔理沙)はさっそく食べる事にした。ナイフとフォークはあまり慣れていないので必要でない魔理沙と霖之助はお箸を貸してもらった。

目の前のビフテキを早く食べたい霊夢は肉の塊にナイフを入れる。たやすく切れた肉をソースと共に口に運ぶ。鉄板に乗っていた事もあって凄く熱いが、それよりも分厚い肉からは思えないとても柔らかい歯ごたえ。噛むたびに肉から出てくる脂と肉汁の旨味に霊夢は恍惚な表情を浮かべる。

 

「う~ん美味し~!お肉も凄く柔らかいし、このソースも絶品だわ!串焼きとは違う!猪肉や鳥肉も良いけどやっぱり牛肉よね~♪」

 

魔理沙は大きいエビフライを箸で持ち、まずそのままかぶりつく。嚙み切った海老の白い断面から出てくる潮の香りが鼻に抜け、弾力ある身が歯を押し返す。次に少し軽くなったエビフライを今度はタルタルソースにつけ、再びかぶりつく。更に美味くなったその味に魔理沙もたまらない様子。

 

「このエビ、身がぷりぷりだし太くて食いごたえもあるな!そのままでも十分だけどこのソース付けるともっとうめぇ!作り方教えてほしいぜ!」

 

霖之助が箸でメンチカツに切り込みを入れると中から肉汁がジュースのごとく溢れ出る。口に運ぶとそこから更に肉汁とミンチ肉の豊かな味、玉ねぎの甘み、ほのかに胡椒の香りがした。そのままでも十分美味いがそれがソースとレモンの味付けで更に完成度が上がり、驚く霖之助。

 

「!これは…まるで肉汁の爆弾だね。レモンが加わる事で見た目よりさっぱり食べれるし、このパンともよく合うよ」

 

「ぶどう酒ってワインだっけ?紅魔館以来久々に飲んだわ」

 

「パンもスープもうめぇ~。今までパンは13枚しか食ってないけどまさか異世界で記録更新するとはな♪」

 

「ねぇ魔理沙、アンタのそのエビフライ少し分けてよ!私のステーキ端っこ少しあげるから!」

 

「えぇ嫌だぜ!これは私が頼んだんだからな!どうしてもってんなら真ん中部分の肉しか受け付けねぇぜ!」

 

「ふたり共店主さんに奢ってもらっているっていう事忘れてないかい?まぁ気持ちはわかるけどさ」

 

三人は自分達が頼んだ洋食に大満足の様子。

 

 

~~~~♪

 

 

「店主!世話になるぞ!」

 

とその時、先ほど霊夢達が入ってきた扉が開いた。入ってきたのはブーツをはき、腰に立派な剣を備えた金髪の男性だった。

 

「アレッタ!今日もいつもので頼む!」

 

「こんにちはハインリヒさん!」

 

ハインリヒという男性はテーブル空いているテーブルに着こうとしていた…その時、

 

「おっ!娘よ、エビフライを頼んだのか!同士が増えて嬉しいぞ!」

 

魔理沙のエビフライに反応した。

 

「え?あ、ああそうだけど…アンタ誰だ?」

 

ハインリヒ(エビフライ)

「私は公国が騎士、ハインリヒ・ゼーレマンである!この店で最もエビフライを愛する男だ。エビフライと呼んでくれたまえ!」

 

「…そういえばこのお店では好きな料理で呼び合うって言ってたわね」

 

「エビフライは美味いだろう?何しろ私、もっと言えば我が公国を救ってくれた料理だからな!」

 

「国を救った?」

 

「力尽きかけていた私に力を与えてくれた。そのおかげで私は我が公国を危機から救う事ができたのだ。感謝してもしきれん!」

 

エビフライをまるで勇者の様に話すハインリヒ。

 

「全く大げさなのよエビフライ」

 

するといつの間にか別の客らしい人物が入ってきていた。皮の胸当てをつけ、黒っぽい服を着た三つ編みの茶髪の女性。

 

「お、おおメンチカツ。久々だな。元気か?」

 

女性をメンチカツと呼ぶハインリヒ。おそらくメンチカツが彼女のここでの呼名なのだろう。しかしその女性を見るやいなや少し声のトーンが下がる。

 

「ええおかげさまでね。…ごめんなさいね。折角の食事を邪魔して」

 

「別に気にしてないわよ。熱気には少し驚いたけど」

 

サラ(メンチカツ)

「初めて見る顔ね。私はサラ・ゴールド。トレジャーハンターよ。ここではメンチカツで通ってるわ。宜しく」

 

「トレジャーハンター…宝探しか。私と同じだな♪」

 

「アンタはただのコソ泥でしょうが」

 

霊夢、魔理沙、霖之助もサラとハインリヒに挨拶した。そのふたりは霊夢と魔理沙の隣のテーブルに座る。サラはアレッタを呼び、いつものと言って注文する。メンチカツで通っている事からおそらくメンチカツだろう。

 

「また遺跡に潜っていたのか?」

 

「ええさっき出てきたばかりよ。大した物は見つからなかったけど」

 

するとサラは袋から小物を取り出す。

 

「一体どういうものなのだ?」

 

「それをこれから調べるんでしょ」

 

右手に持ったそれを見ながら顎に左手を当てて考えるサラ。すると霖之助が、

 

「すまない。それをちょっと貸してもらってもいいかい?」

 

「えっ?いいけど」

 

そう言ってサラはそれを霖之助に渡す。彼はそれを手に取って見る。

 

「………ふむ。これは~~~。~~~するための道具だね」

 

「………え?ど、どういう事!?なんでそんな事貴方にわかるの!?」

 

あたかも知ってるかの様に名前と用途を話す霖之助。当然サラは驚く。そんな彼女にふたりが教える。

 

「ああそうか。こーりんは確か物の名前と用途がわかる程度の能力があるんだった」

 

「そういえばそうだったわね」

 

「これでも道具屋だからね。使い方はわからないけど年代に関わらず大抵の物はわかるよ」

 

「それって本当!?詳しく教えて頂戴!アレッタ、私のメンチカツこっちに持ってきてね!」

 

興奮したサラは霖之助のテーブルに移った。どうやらそのままそこで食事する様だ。その様子を何も言わず見るハインリヒ。するとそんな彼に霊夢がサラに聞こえないよう小声で。

 

「……ハインリヒさん、いやエビフライだっけ?貴方、あの人に惚れてるわね?」

 

「!!なななななななななな!!」

 

「ど、どうしたのエビフライ?」

 

「いいいいやなんでもない!」

 

水を一気飲みしてとりあえず落ち着くハインリヒ。すると彼も聞こえない様小声で。

 

「………何故わかったのだ娘?」

 

「今の貴方の顔を見ての勘よ」

 

「霊夢の勘はよく当たるからな。あと巫女もやってるから鋭いぜこういうのは」

 

「巫女…。司祭みたいなものか?……ならば少し話を聞いてほしんだが…」

 

それからハインリヒは以前あったとある事を簡単に話した。それによると確かに彼は彼女、サラに惚れているらしく、以前思い切ってプロポーズしたことがあるらしい。しかしそれをしたのが知人の結婚パーティーの中だった事、更に自分の仕事を捨てられないと断られ、見事に玉砕したのだとか。それを聞いて霊夢と魔理沙は、

 

「……貴方ね。申し出をするのは勝手だけど場所を考えなさいよ。仮にも共通の友達の結婚を祝う場所で結婚の申し出なんて下手したら場をしらけさせるのわかるでしょ?」

 

「そうだな~。メインイベントをメインイベントで上書きしてるっつうか、二番煎じみたいなもんだもんな~」

 

「うっ!…あ、あいつにも同じことを言われたよ…。二番煎じとな」

 

二番煎じと言われてへこむハインリヒ。そんな彼に霊夢がアドバイスする。

 

「…まぁそれでもこうして一緒に同じテーブルで食事してくれるっていう事は貴方の事、嫌ってはいないんでしょ?サラさんは多分貴方のプロポーズを嫌で怒ったんじゃなく、あまりにも場をわきまえない身勝手なものだったから怒ったんじゃない?」

 

「…そうなのか?」

 

「まぁでももう暫くはプロポーズは止めといた方がいいと思うわ。ぶり返してしまうかもしれないし。もう少し男として自分を磨いて、ここじゃなく自分から直接彼女の所に行ってする位の男気を見せなさい。それ位すれば彼女の心も少なからず動くと思うわよ」

 

「れ、霊夢が巫女らしい事している!」

 

「いつもしてるわよ失礼ね!」

 

「わかった!感謝するぞ娘!」

 

思わず声を高くするハインリヒ。

 

「…どうしたのエビフライ。さっきから変よ?」

 

「い、いや何でもない!何でもないぞ!」

 

「あと霖之助さんの事なら気にするだけ損よ。そういう事には全く関心ない人だから。ねぇ魔理沙?」

 

「なんで私にふるんだよ!」

 

そんなこんなで騒がしい交流会も交え、食事は進んでいった…。

 

 

 

 

……少女食事中……

 

 

 

 

その後、ランチの時間もだんだんと落ち着き、他の客やサラやハインリヒ、アルトリウス達は食事を終えて先に店を出ていった。霊夢と魔理沙、霖之助は食後の飲み物を注文してひと段落していた。霊夢はアイスティー、魔理沙と霖之助は紅茶。因みに支払いは霖之助のツケ。

 

「なぁ霊夢。店主のおっさんの話だとあの鈴がおっさんの世界と幻想郷を繋いだってことはおっさんのせいじゃないってことだよな?なんで繋がっちまったんだろ?」

 

「そんな事わからないわよ」

 

ふたりは何故幻想郷にねこやの扉ができたのか不思議だった。しかし今すぐにはその答えは出ないような気がした。とその時店主、そのすぐ後ろにアレッタとクロがついてきた。

 

「どうでしたお客さん。お口にあいましたか?」

 

「あ、おっさん。ああ!スゲー美味かったぜ!」

 

「こんなに美味しいお店なら毎日でも来たい位だわ~♪」

 

「食べた事ないものだったけど確かに凄く美味しかったよ」

 

勿論全員絶賛した。

 

「ですよね!私もマスターのご飯、初めて食べた時は感動しました!」

 

クロも「そうだ」という意味で頭を縦に振った。

 

「はは、そんな風に言ってもらえたら料理人冥利に尽きます。もし良ければ、七日後また食べに来てください。ただし次回からは、ちゃんとお金頂きますけどね」

 

「うっ…そこが問題なのよね…」

 

「七日に一度って言っても流石に毎回は贅沢だよな〜」

 

霊夢と魔理沙はお金の話で一気に現実に引き戻されたらしく、残念そうだった。…とその時、

 

 

「お金の心配はいらないわ」

 

 

店内に突然、響く声があった。




次回

「ブイヤベース」

幻想郷食堂第一話、いかがでしたでしょうか。楽しんでいただけた方も面白くないと思われた方も、ご意見いただければ嬉しいです。
自身の仕事の関係や、前作に比べて知識が浅く新たな東方の設定やキャラなどを勉強しながら書いていく予定なので、本作は月一位の投稿になる予定です。そのかわり一作品の字数を多くする事を頑張ります。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

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