幻想郷食堂   作:storyblade

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次の話が長くなりそうなので分割しました。


幕話「特報!美味への扉!?」

霊夢・魔理沙・あうんの三人がねこやに訪れてから更に一週間が経った。今日もどこかに扉が現れているのだろうか…。

 

 

博麗神社

 

 

「…ZZZ…ZZZ…」

 

時刻は昼を少し上回った頃。場所は前回に続き博麗神社。朝の境内の掃除を終えた霊夢は縁側でお昼寝していた。気温も快適湿度も快適。お日様の光も柔らかく、お昼寝には絶好の天気である。

 

 

「………………お~い」

 

 

……すると空の彼方から何やら声が聞こえてきた。よく見るとそれは急速に寝ている霊夢のところに近づいてくる。そして、

 

「おーい大変だー!」キキィィィィィィィィ!!

 

空から物凄いスピードで霊夢の元にやってきたのは前と同じくブレイジングスターでかっとんできた魔理沙だった。そのブレーキ音で寝ていた霊夢も流石に目が覚める。

 

「び、吃驚した!何よいきなり!?てか先週も同じ事してたわね」

 

「そんな事言ってる場合じゃねぇこれ見ろ!今朝鈴奈庵で売ってたんだ!」

 

気持ちよく寝ていた霊夢は荒い起こされ方をして不機嫌そう。そんな魔理沙が持ってきたのは…一枚の新聞だった。

 

「……文々。新聞じゃないの。てか珍しいわね、あんたが天狗の新聞買うなん……!!」

 

魔理沙から渡されて面倒そうに中身を見た霊夢は…言葉を失った。

 

 

「特報!!幻想郷に謎の扉出現!扉の先には未知の美味!?その味に博麗の巫女も大満足!!」

 

 

一面に書かれていたのはこういう文字。そして写真はおみやげの袋を持ち、満足そうにお腹をさすっている霊夢だった。

 

「……」

 

「こ、これって先週のあの時だよな?」

 

ガタッ!!

 

すると眠気も吹き飛んだ霊夢は立ち上がった。

 

「おいどこ行くんだ?」

 

「決まってるでしょ!直ぐに新聞を回収するわよ!」

 

「でももう随分時間経ってるぜ?」

 

「考えてみなさい!これには扉の事だけでねこやがどういうお店かは書かれていないわ!もしこれを読んだ人が間違って扉開けてねこやに行ってみなさい!店主さんはともかくアレッタとかライオネルさんとかあのトカゲの人とか見たら!」

 

「………ただじゃすまねぇかもな」

 

「そういう事よ!あああと、どうせ聞いてるんでしょ!紫!」

 

 

………ギュゥゥゥゥゥゥンッ!

 

 

「呼ばれて飛び出てじゃじゃ~んってね。そんなに大声で呼ばなくても聞こえてるわよ」

 

すると霊夢の呼びかけに応じる様に突然次元の裂け目が出現し、そこから八雲紫が現れた。

 

「あんたも手伝いなさい!どうせ暇なんでしょ!」

 

「そんなに必死に私に頼むなんて…親として嬉しいわ~♪」

 

紫はのんびりとしている。

 

「…あんたね~。冗談を言ってる場合じゃ」

 

「わかってるわよ。霊夢、魔理沙、ふたりはこの新聞を作った張本人に事情を説明してきなさい。新聞の回収は私に任せておけばいいわ」

 

「…大丈夫でしょうね~?」

 

「心配しなくてもいいわ」

 

笑顔を崩さない紫。紫に頼むのはどこか癪だったが紫の力は霊夢も良く知っている。

 

「…わかったわ。そっちは頼むわよ!行くわよ魔理沙!」

 

「おう!」

 

そして霊夢と魔理沙は飛んで行ってしまった…。

 

「…ふふ、最近退屈だったからたまには必死になるのもいい運動になるからいいでしょう♪とまぁのんびりはしてられないわね。藍と橙にも手伝ってもらわないと」

 

そう言って紫は再び自らが生み出したスキマに入り、消えた…。

 

 

…………

 

「人間の里」

 

 

別名「人里」や「里」と呼ばれる事もある幻想郷において唯一人間が安心して過ごせる集落。以前も述べたが妖怪は人の恐怖心から生まれた存在であり、人間がいなくなることは妖怪もいなくなる事に等しいので妖怪からこっそり守られている場所であり、災害や天災でも里が大きな被害にあう事は殆どない。最もその真実を知る人間は多くは無いため、殆どの人間は妖怪を恐れるし、妖怪の動きが活発になる夜の時間帯は外に出歩く者もほぼない。

そしてそんな里に住む人間は基本妖怪の様な能力や、霊夢や魔理沙の様な特殊な力を持たない純粋な人間である。最も極まれに特殊な力に目覚める者もいなくはないし、里の中にも少数だが存在し、妖怪が通う店も僅かだがある。今回はそんな場所のひとつから始まる…。

 

「じゃあ新聞貰ってくよ小鈴ちゃん!」

「私も!はいお代ね!」

「美味いもんに続く扉だって!?俺も行ってみてぇなぁ~」

 

とある場所にて多くの人間が手に持った物を次々に買っていく。それは魔理沙が持ってきた文々。新聞だった。

 

鈴が付いた髪留めをした少女

「ありがとうございました~。また来てくださいね~」

 

そしてその新聞を売っているのがこの少女。紅色と白色の市松模様の着物に緑色の女袴を履き、その上に「KOSUZU」と書かれたエプロンを付けている。

 

「は~今日は久しぶりに新聞が大人気ねぇ~♪貸本屋としてはちょっと残念だけどまぁ文さん曰く久々の特ダネらしいから無理ないか~。妖怪の皆さんも沢山買ってくれたし~」

(ご近所さんにはとても言えないけど)

 

貸本屋とは江戸時代に始まった本を有料で貸し出すという商売の事で、貸出だけでなく本の販売や複写なども行っている。そして幻想郷で唯一の貸本屋が最初に魔理沙が言ったここ鈴奈庵であり、そこの娘がこの小鈴という少女。とりあえず店内に客がいなくなったので小鈴もまた新聞を手に取る。鈴奈庵では以前とある事情で文々。新聞の作者と契約を結び、店で新聞を取り扱う様になったのだ。

 

「……ふ~ん博麗神社に突如現れた美味に繋がる扉、ねぇ。でも私先日神社に本の延滞金回収しに行ったけどそんな扉無かったんだけどな。霊夢さんが隠しているのかしら?まぁあの人ならありえるかも~」

 

そんな感想を小鈴が言っていると、

 

 

~~~♪

 

 

華の髪飾りを付けた紫色の髪の少女

「失礼するわよ」

 

鈴奈庵の扉をくぐって入ってくる者がいた。紫色の髪に花の髪飾りを付け、緑色の着物の上に花が描かれた黄色い中振袖、そして赤い袴を着た少女。

 

「いらっしゃ…なんだあんたか阿求」

 

「…前から思ってたんだけどあんた、私に対してだけちょっと失礼じゃない?」

 

「気のせいじゃないの?仮にも人里最大の名家たる稗田家当主に失礼な態度なんて取る訳ないじゃない♪」

 

初代当主、稗田阿礼を祖とした古くから人里に存在する名家「稗田家」。小鈴から阿求と呼ばれた彼女はその九代目にあたる人物である。稗田家の当主には他の家にはない力、呪いともいえる運命があった。…「転生」。稗田家当主は代々死を迎えた後、冥府で一定の期間を過ごした後に再び幻想郷に生まれてくる。転生した者は前世の記憶を引き継ぐが、周りの者からその者の記憶はほぼ全て忘れ去られてしまう。しかも稗田の者は何れもかなり短命であり、老いる前に寿命を終えてしまう。そこで稗田家は代々「幻想郷縁起」という幻想郷の歴史書の様な物を作成し、次の代と人の世に伝承と奉仕をし続けてきたのである。

 

「はぁ、まぁいいわ。はい、借りていた本これで全部ね」

 

「……はい確かに。まいどあり~♪」

 

「…ん?ああ文さんの新聞ね」

 

「そ!今日一番の売れ行きよ♪ああ読みたいなら立ち読みは厳禁だからちゃんと買ってね」

 

「残念だけど買う必要は無いわ。うちの使用人が買っていたものを読ませてもらったから」

 

「え~そんなのずるい~」

 

「はいはい。…それにしても何もないところに突然現れて消える扉、ねぇ。聞くだけだとものすごく奇妙な話だけど」

 

「紫さんとかはスキマだっけ?それを使って行き来しているから扉なんて使わないもんね。隠岐奈さんはまぁ作れるけど」

 

そう言いながら霊夢が満面の笑みでお腹をさする写真に目を移す。

 

「でも霊夢さんがこんなに笑っているのを見ると悪い感じのものとは思えないけどね」

 

「未知の美味か…。まぁこの狭い幻想郷にとって大抵のものは未知だけど。案外外の世界に繋がる扉だったりして」

 

「確かに外の世界の食べ物とか食べる機会ないもんね。もしそうなら私もちょっと食べてみたいかも♪」

 

「あんたは外に憧れてるからね」

 

 

~~~~♪

 

 

その時、再び店の鳴子が鳴った。

 

「あ、いらっしゃいませ~」

 

すると入ってきたのは、

 

霖之助

「お邪魔するよ」

 

香霖堂の店主である霖之助。そして、

 

帽子を被った長い銀髪の女性

「失礼する」

背中と頭に羽根が生えている少女

「こ、こんにちは」

 

腰まで届く銀色の髪に変わった形の帽子、白い袖と胸元に赤いリボンがついている上下青色の服とスカートの女性。もうひとりは白い髪に青いメッシュが混じり、背中と頭に朱鷺色の羽根が生え、白いラインが走る青と黒の服を着た少女だった。

 

「霖之助さん。それに慧音先生に朱鷺子ちゃん。こんにちは」

 

「うん、久しぶりだね小鈴ちゃん阿求ちゃん」

 

「霖之助さん。その呼び方は恥ずかしいからやめてくださいって言ったじゃないですか」

 

「ははは、すまないね阿求ちゃん。ああ小鈴ちゃんはい、外の世界の本持ってきたよ」

 

「わ~ありがとうございます♪いいんですか?」

 

「ああ、もう何度も見て覚えたからね」

 

そう言って霖之助は何冊かの本を小鈴に渡す。特に外の世界から流れてきた本はここでは結構貴重なのだ。

 

「霖之助さんや朱鷺子ちゃんはともかく慧音先生がこんなとこに来るなんて珍しいですね?」

 

「こんなとこで悪かったですね~」

 

「ああ、霖之助とは途中で会ってな。実は私が教師をしている寺子屋で今度で読書週間たるものを開くんでな。そのための本を何冊か探しにきたんだ。朱鷺子はその付き添いさ」

 

慧音という女性の言葉に朱鷺子はコクコクと頷く。どうやら少し無口な性格らしい。

そして上白沢慧音。彼女はこの人里の中の寺子屋、今でいう学び舎の教師として人間の子供や人間への危険性が無い妖精に読み書きを教えているのだ。そして彼女自身も純粋な人間ではない。阿求より「知識豊富で最も賢い獣人」と呼ばれる彼女はハクタクという神獣の血を引いている半人半獣であった。

 

「読書週間?」

 

「本を読んで感想文を書いてもらう。読み書きだけでなく理解力や感じる能力も鍛えられると思ってね。でもあまり難しすぎる本はうちの生徒達には多分無理だろうしな。そこで同年代で最も本が好きな朱鷺子にも協力してもらいたいと」

 

「朱鷺子ちゃんは小鈴と同じ位本が好きですからね」

 

「ははは、だからこそあの時は苦労したよ」

 

そう言う霖之助は苦笑いを浮かべる。朱鷺子という少女妖怪。実は以前本を読んでいた時に通りすがった霊夢とその後魔理沙にもなんとなくな気分で倒されてしまい、本を取られてしまった経緯があったのだ。故に彼女はふたりの事がかなり苦手である。

 

「私はただ本を読んでただけなのに…」

 

「ま、まぁまぁ。霊夢さんの口添えで今は慧音先生の寺子屋に通えているし友達もできていいじゃない」

 

「……ん?ああ新聞が入ったのかい。ついでだから一枚頂けるかな?」

 

「あ、はいありがとうございます♪」

 

「では私と朱鷺子は本を見させてもらうぞ」

 

そう言って慧音と朱鷺子は本を探し、霖之助が小鈴にお金を払い、新聞を手に取る。

 

「ほうほう特報だって。…………えっ」

 

そしてその新聞を一目見た霖之助の口が開いたまま固まる。

 

「どうしました霖之助さん?」

 

「……うん、いやちょっとね。はぁ…まぁ幻想郷に扉が現れたとなった時点でもう何時こうなるかはわかってた事か」

 

「…?それってどういう…」

 

とその時、

 

「おーい小鈴、ちょっと来てくれないか?」

 

小鈴達や玄関からは丁度隠れた場所の本棚裏から慧音の自分達を呼ぶ声が聞こえた。

 

「どうしました慧音先生?」

 

「あんな扉いつ付けたんだ?」

 

「あんな扉?……え!」

 

慧音が指さした方向に小鈴が目をやるとそこには…本棚と本棚の丁度間にあるものが鎮座していた。

 

「と、扉!?」

 

それは扉だった。木造りで、金色のドアノブ、そして猫の絵がかかった扉。

 

「扉…です」

 

「小鈴、あれはお前がつけたんじゃないのか?」

 

「いえいえ知りません!あんなの見た事もないですよ!」

 

すると小鈴の大声を聞いて阿求もやってきた。

 

「どうしたの?そんな大声……何あれ小鈴?」

 

「だから知らないって!第一あんな場所に扉なんてつける訳ないでしょ!」

 

見た事無い扉に阿求は驚きがしたが冷静に小鈴に尋ねる。しかしやはり彼女にはわからない。

 

「…なんか、つい最近どこかで見た様な気がするわね」

 

そう言う阿求。すると霖之助が遅れてやってきた。

 

「どうしたんだい皆。……」

 

すると霖之助はそのまま扉に近づき、何かを調べる。

 

「霖之助?」

 

「霖之助さん?」

 

驚きも慌てる事もない霖之助に後ろの者達は緊張する。すると、

 

「……はぁ、店主さんの言っていた通り本当に突然だね。まさかこんな場所にまで現れるなんて」

 

「…霖之助、お前はこれが何か知っているのか?」

 

「知っているも何も、君達もついさっき見たばかりじゃないか」

 

すると霖之助が「大丈夫だ」という感じで皆を扉に近づける。すると、

 

「…あ!」

 

「こ、この扉まさか!」

 

すると朱鷺子が新聞を手に取って持ってくる。

 

「これ…新聞に書かれている扉と同じ!?」

 

「そうさ。これはその写真にある異世界食堂、洋食のねこやに続く扉さ」

 

「…異世界、食堂…?」

 

「洋食の…ねこや?」

 

聞いたことが無い言葉にぽかんとする小鈴と朱鷺子。その横で慧音が霖之助に問いかける。

 

「…でも霖之助。何故そんな事を知っているんだ?まるで行った事がある様な……!」

 

「まさか…霖之助さん!」

 

霖之助は頬をかきながら答えた。

 

「…あはは、そう。実は一回行った事があるんだ。この扉の先に。霊夢や魔理沙と一緒にね」

 

「な、何だって!」

 

「「ええ!」」

 

「そ、それで大丈夫だったんですか!?」

 

慌てる慧音や小鈴に対し、霖之助は笑って返した。

 

「うん。決して危険な場所ではなかったよ。まぁ初めて来た人は多分驚くだろうけど」

 

そして話は扉をどうするかという話になる。

 

「さてどうしようか…。いつまでも扉をこのままにはしておけないし、店主さんの話じゃ入ったら消えるらしいんだけど…」

 

「店主?」

 

腕を組んで霖之助は暫し考えた後、

 

「…仕方がない行ってみるか。皆はどうする?」

 

「ど、どうするって言われても…」

 

すると慧音が、

 

「…私も付き合おう。お前だけでは心配だからな」

 

「慧音先生!」

 

「大丈夫だ朱鷺子。霖之助が無事だったんだ。きっと心配する様な事はないさ」

 

「なにか引っかかる言い方だね慧音」

 

「じゃあ私も行きます!」

 

小鈴が手を挙げてそう言った。

 

「小鈴、アンタねぇ…」

 

「こういうのってロマンがあるじゃない♪今臨時休業の札立ててきますので!」

 

小鈴は楽しそうにそう言うと簡単に店終いの作業を始めた。

 

「阿求ちゃん、朱鷺子ちゃん。君達はどうする?不安なら無理しなくてもいいよ」

 

そう言う霖之助に対し、

 

「……いえ、私も行きます。小鈴だけ行かせるのもなんだしそれに…私も少し興味がありますから」

 

「…皆さんが行かれるなら私も行きます」

 

阿求と朱鷺子も行く事にした様だ。

 

「お待たせしました~」

 

「じゃあ行ってみようか。きっと驚くと思うけど心配しないでね。ああそれから皆、お腹は空いてるかい?」

 

「「「「え?」」」」

 

 

~~~~♪

 

 

霖之助がドアノブを引き、5人はドアを開けて入っていった。そして暫くして扉も消え、店内には誰もいなくなった。

 

 

……………ギュゥゥゥゥンッ!

 

 

「こんにちは小鈴ちゃん……ってあら?誰もいないわ。丁度良かった、今のうちに回収しちゃいましょ。ごめんね小鈴ちゃん♪)

 

こうして新聞はあっという間に全て回収された。




メニュー12

「五種のスパゲッティ」


こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
  • 不安なので読みたくない
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