幻想郷食堂   作:storyblade

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遅ればせながら今年初の投稿です。宜しくお願いします。
お気に入りが600を超えました。ありがとうございます!


メニュー15「カレー三昧」

人里の中のとある通り

 

 

ビュゥゥゥゥゥ…

 

 

「う~寒い!まだ秋なのに風だけ冬になってない?もう少し厚着してくるべきだったわ」

 

そこに急遽依頼を受け、博麗神社からやってきた霊夢がいた。とはいえ既に依頼は達成し、これから帰ろうとしていたのだが…急な寒さに参っている様子。

 

 

ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

 

 

「これはちょっとどっかに入って暖まりましょ!丁度依頼料もあるし」

 

という事で霊夢は近くの茶屋に入って暖を取る事にした。

 

「おじさ~ん、温かいお茶とお団子大至急お願いね!……あら、妖夢じゃない」

 

「あ、霊夢」

 

すると入った先の茶屋には白玉楼の妖夢がいた。

 

「人里に買い出し?」

 

「はい。それは既に終えているのですがちょっと風が強くてこちらで暖を取ろうと…。あまり防寒もしてこなかったのが迂闊でした。霊夢は?」

 

「私は依頼を終えて帰るとこだったんだけど急に寒くなってね!あ、火鉢!」

 

「店主さんが急遽用意してくださったんです」

 

「ラッキー!私も当たらせてもらうわ!…ふ~助かった助かった。寒い日はやっぱり火に当たりながら温かいお茶に限るわね~」

 

そんな事を言いながら出されてきたお茶を啜る霊夢。

 

「なんか時期外れの寒さ、春雪異変を思い出すわね〜」

 

「あれもとっくに冬を終えていた頃の時期でしたからね。…その節はご迷惑をかけました」

 

「もう昔の事よ。…ところで妖夢、随分沢山買ったわね。全部食材じゃないの。まぁあの暴食の幽々子相手なら仕方ないか」

 

「山菜や豆腐や調味料なんかはネムノさんの所で買っているんですが里でしか買えないものもありまして。あと幽々子様をなにかの某漫画キャラクターみたいな風に言わないでくださいよ。まぁ人よりちょっと…いやかなりよく召し上がるのは認めますけど」

 

「あと食欲の秋も重なってるんじゃない?」

 

すると同じくお茶を啜る妖夢はため息を吐きながら言った。

 

「そうですね。…まぁ最もそれだけではないんですけど」

 

「というと?」

 

「ええ。実はねこやにいつまでも行けない事がよほど悔しいみたいでして…」

 

「ああそういや前に白玉楼に出て以来、そっちは現れていないのね」

 

「そうです。それでやけ食いという程ではないんですけど、ちょっと食事のリクエストや量が最近多くて…」

 

「アンタも大変ね」

 

「そう言えば霊夢や魔理沙は二回行かれたんでしたっけ?」

 

「そうよ。あと守矢に現れたら連絡してくれる事になっているからもしかしたらまた行けるかもね。あそうだわ。丁度連絡用のお札まだ持ってるし、渡しておくわ♪」

 

「…抜け目ないですね本当に」

 

そんな事を言いながらお札を受け取る妖夢だった。

 

「それはそうと妖夢、私もおじゃましていいかしら?見た感じ鍋物でしょ?今日は寒いしうってつけだわ♪」

 

「…本当に抜け目ないですね。まぁ買いすぎた気もしてましたからいいですよ」

 

 

…………

 

一方その頃、白玉楼では…

 

 

ヒュウゥゥ……

 

 

「ふ~…お昼を過ぎてから寒くなってきたわね~。妖夢ちゃん、お夕飯は温かいものでも作ってくれないかしら~」

 

ここの主にして妖夢の主人、西行寺幽々子が同じ様にお茶を飲んでいた。白玉楼の庭は庭師でもある妖夢の手入れのおかげで秋色に染まった草木があるが、ほぼ桜で埋め尽くされている場所なのでその花が咲いていないとどうも寂しい感じがしなくもない。おまけに昼頃から寒い風が出てきた事もあり、葉もその風で少なからず落ちてもいた。そんな庭にある中でも一際大きい桜の木、西行妖を見ながら幽々子は思う。

 

「もうすぐ冬になるのね〜。思えばあれから何度目の冬かしら。私があの異変を起こしてから…」

 

ある日幽々子は咲かずの桜、西行妖の下に何者かの亡骸が眠っている事を知った。その事に興味を持った彼女は西行妖をどうにかして咲かせればその者も蘇るのでないかと考え、そのために必要な春を集め始めたが、その代償として幻想郷に終わらない冬を起こしてしまった。これが終わらない冬の異変とも呼ばれた「春雪異変」である。その後霊夢達に計画は阻止され、幻想郷に春は戻ってくる事になった。

 

「生きている頃の私なら何か知っていたんだろうけど相変わらずな〜んにも覚えていないのよね〜。まあ死んでても生きてるのとあまり変わらないし困りはしないのだけれど」

 

そして今の幽々子には生きていた頃の記憶は無い。思い出そうとした事もあったがどうしても叶わなかった。もしかすると幻想郷の中では彼女の記憶について知っている者もいるのかもしれない。紫や霖之助、阿求等が当てはまるだろう。しかし今まで彼らからその話を聞いた事は無い。一方の幽々子も積極的に聞こうとは思わない。今の生活を彼女自身も気に入っているし、聞かなくても困る事も無い故に。

 

……ぐぅぅぅぅ

 

「…考え事をしていたらお腹空いちゃったわね。妖夢ちゃん早く帰ってこないかしら〜」

 

まだお昼ご飯(たっぷり)を食べてから二、三時間しか経っていないのに幽々子のお腹が鳴った。

 

「こんな時あの食堂の扉でも現れてくれたら良いのに〜。霊夢や魔理沙なんて2回も行ったって新聞で読んだしずるいわ〜」

 

ぶーぶー言いながら炬燵の机に顔を落とす幽々子。どうやらねこやに行けずに不貞腐れているというのもあながち嘘ではない様だった。そんな事を言いながら急須に新しいお湯を汲もうとした…その時、

 

「……?」

 

ふとなんらかの気配を感じた…様な気がする幽々子。

 

「今一瞬何か…。気のせいかしら…?」

 

感じたのはつい先程まで目をやっていた西行妖の方。改めてそちらの方に目をやると、

 

「……!」

 

西行妖の太い巨木の前に…先程は無かった扉が現れていた。

 

「あらあら、ちょっと目を離したあんな一瞬で…」

 

驚きつつもペースを崩さない幽々子は炬燵から抜け出して扉に近づく。それはやはりあの扉だった。木造りの、猫の看板が掲げられた扉。

 

「…洋食のねこや…。本当にこんな突然現れるのね…」

 

扉を見つけた幽々子は妖夢を待とうか霊夢に連絡しようか一瞬考えたが、

 

「…まぁいいか♪妖夢ちゃんも前に私に黙ってひとりで行っちゃったし~、霊夢は2回も行ってるんだし~。お腹も減っちゃったし、私だけで行きましょ♪」

 

先の考えをあっさりと捨てて幽々子は扉を開けて入っていった…。

 

…………

 

………

 

……

 

 

「幽々子様。只今帰りました」

 

「お邪魔するわよ~。……ってアレ?」

 

「幽々子様?」

 

 

…………

 

 

~~~~♪

 

 

幽々子が扉を開けると…そこには自らが住んでいる白玉楼とは全く違う光景が広がっていた。

全てが洋風のもので埋め尽くされた部屋。見た事無い人種や種族。嗅いだことが無いにおい。

 

「ふわ~…ほんとに見た事無い場所だわ。ここが外の世界のご飯屋さんなのね」

 

とその時、幽々子の存在に気づいたアレッタが近づいてきた。

 

「いらっしゃいませ~!ようこそ洋食のねこやへ!」

 

「ええこんにちは。あの、ここって外の世界の食堂で良いのよね?」

 

「はいそうです!ここは異世界にある、ねこやという料理屋です!」

 

その答えを聞いて笑みを浮かべる幽々子。

 

「やっぱり~。妖夢ちゃんや紫から聞いてどうしても一回来たかったのよ~」

 

「ありがとうございます!あ、ヨウムさんやユカリさんのお知り合いの方ですか?」

 

「ええそうよ。自己紹介するわね。私は西行寺幽々子。白玉楼の主にして冥界の管理者。亡霊なんだけれどこれでも風流な亡霊なのよ♪」

 

「ぼ、亡霊!?とと、という事は…し、死んでるって事ですか!?でも全然そうは見えないんですけど…。私達と殆ど変わりませんし」

 

亡霊という言葉を聞いて流石のアレッタも驚く。アレッタからすれば普通に生きている人間にしか見えない。

 

「うふふ、御免なさいね驚かせて。でも大丈夫よ。正真正銘本物の亡霊だけど楽しい事やお喋りが大好きなの。あとこう見えてご飯も食べれるから全然気にしないで頂戴ね♪」

 

「…幻想郷って本当に不思議な場所なんですね。…あ、失礼しました!とりあえずお席にどうぞ!」

 

「ええありがとう~」

 

幽々子はひとつの空いているテーブルに座る。すると同じタイミングでクロが水とおしぼりを持ってくる。これも見慣れた光景だ。

 

(お冷とおしぼりです)

 

「あら、頭の中に声が…。ああ、貴女が紫が言っていた人なのね。確かに不思議な術だわ~」

 

(あの方を御存じなんですか?)

 

「ええ、もう千年以上の付き合いよ。悪い子じゃないから仲良くしてあげてね♪」

 

(…承知しました。…メニューが決まったらお呼びください)

 

そう言ってクロは下がる。

 

「うふふ♪異世界って面白い人ばっかりね~」

 

「いやいや拙者らからすればお主の方がよほど面白いぞ」

 

その時向いのテーブルに座っている、獅子の頭の人物と一緒に食事をしている男が声をかけてきた。以前妖夢と一緒に食事をしたタツゴロウだ。

 

「先程お主は自分を亡霊と云うたが…拙者は大陸中を見て歩いてそのような魔物に出くわした事もあるが、お主の様なものは見た事が無い。本当に生きている人間と見た目変わらぬな」

 

「貴方は?」

 

「ああ失礼した。拙者はタツゴロウと申す。ところでお主先程自分をユユコと名乗ったが…もしやヨウムの主というのはお主か?」

 

「あら、妖夢ちゃんを知っているの?ええそうよ。…ああそう言えば妖夢ちゃんがそんなお名前のお侍さんにお世話になったって言っていたわ。あの子は迷惑かけなかったかしら?」

 

「いやいやそんな事は無い。安心召されよ」

 

そんな感じで互いに挨拶を交えながら交流をしていると、

 

 

~~♪!!

 

 

銀髪と髭の男性

「カレーライスをもらおうか!!」

 

勢いよく扉が開かれ、同時にひとりの大柄な人物が入って来るや否や注文の声を上げた。高貴な服装とマントに身を包んだ男性。見た目貴族の様だが銀髪と髭を生やした顔には戦いでできたのだろう傷が見え、威厳を感じられる。

 

「ひゅい!い、いらっしゃいませアルフォンスさん!」

 

(いらっしゃいませ)

 

「元気そうだなアレッタ、クロ!今日も頼むぞ」

 

そう言ってアルフォンスと呼ばれた男は丁度幽々子の隣のテーブルに座った。

 

「よう、ざっと三ヶ月ぶりじゃねぇか」

 

「息才だったか?」

 

「カツドンにテリヤキか。うむ、昨日ようやっと渡航から戻ってきたところだ。全く幾ら友好国からの招待とはいえ、既に退官している老いぼれに騎士団の訓練を指導してほしい等と軍も人使いが荒い」

 

「へっ、老いぼれても未だに現役の騎士が束になってもかなわねぇ元将軍様が何言ってやがんだ」

 

「幾らそうでも歳は食うものだぞ。昔ほど動きにキレが無くなってきたわ。それはそうと私がいない間何か面白い事はあったか?」

 

「そうさな…。お前が出かけていた間に新しい客が増えたぞ。しかも別の世界のな」

 

「ほお!それは驚きだ。してそれはどんな客だ?」

 

タツゴロウの言葉に反応する男。すると隣のテーブルに座っていた幽々子が語りかけた。

 

「それは多分私達の事ではないかしら~?」

 

「む?おおそうなのか。騒がしくて失礼したな」

 

「いえいえどういたしまして」

 

すると厨房から店主が顔を出してきた。

 

「アルフォンスさんいらっしゃい。久しぶりですね」

 

「おお店主!早速だがカレーライスを大至急で頼むぞ!三ヶ月食えなかった分も腹一杯食うために朝から何も食っておらんのだ!」

 

「その事なんですがアルフォンスさん。ちょっとメニューを見ていただけますか?」

 

言われてアルフォンスという男がいつの間にかクロが持ってきていたメニューを開いてみると、

 

「…何!スープカレーとグリーンカレーだと!」

 

「ええ。実はカレーライス、チキンカレー、牛すじカレーの他に、以前試食で召し上がっていただいたカレーもメニューに加える事にしたんです」

 

「マスターが少し改良したって聞いてまかないで食べてみたんですが凄く美味しかったです!」

 

(……)コク

 

「それは嬉しい話だな!うむ、そう聞いたら久々に食べたくなった!今日は全種類食べていくとしよう!勿論最初はいつものカレーライスで頼むぞ!」

 

「はいよ」

 

すると隣の幽々子が再び声を出した。

 

「あの~私もそのかれー?というお料理を頂けるかしら?」

 

「え?ええ構いませんよ。どのカレーでしょうか?」

 

「私もこの殿方と一緒で全部食べたいわ~♪」

 

それを聞いて周りの一部の者は「え?」という表情を浮かべる。しかし当の幽々子は至って気にしていない。

 

「私もこう見えて結構食べれるの♪だから心配なさらないで。あと因みに最初に頼むのはどれがいいかしら?」

 

そこにフォローを入れるのはアルフォンス。

 

「それならばまずはカレーライスを食ってみると良い。最初はやはりカレーライスからいくべきだ」

 

「まぁそう。では私もそれをお願いするわ~」

 

「は、はぁ。わかりました。では少々お待ちください」

 

そう言って店主は準備に入った。

 

「いやいや初めての注文でカレーを選ぶとはお目が高いな異世界のご婦人よ」

 

「貴方があれほど熱望されているのを聞いてきっととても美味しい物と思ったのよ~。ああ自己紹介をしなくちゃ。幻想郷の西行寺幽々子よ。どうぞ宜しく」

アルフォンス(カレーライス)

「ユユコ殿か。ではこちらも名乗らねばならんな。元公国海軍将、アルフォンス・フリューゲルだ。ここではカレーライスで通っておる」

 

「それはお料理の名前じゃないの?」

 

「ここでは自分が最も美味いと思う料理で呼び合うのだ。だから私はカレーライスという訳だな。はっはっは」

 

「へ~面白いしきたりなのね~♪」

 

そんな感じでアルフォンスのみでなくタツゴロウやライオネル、その他の客達とも交流を深める幽々子。すっかりここの客に馴染んだ様に見えるのは彼女が放つほんわかとした雰囲気からだろうか。

 

 

~~いつもより短めの店主調理中~~

 

 

…………

 

「…む〜まだか、まだなのか!」

 

するとアレッタがアルフォンスに、クロが幽々子にあの料理を持ってきた。

 

「おまたせしましたー!」

 

「おおやっと来たか!あとほんの数分で飢え死にしてしまうところだったぞ!」

 

(カレーライスです)

 

「ありがと〜♪」

 

そしてふたりの前に出されたのは…白米にとろみがついた様な濃い茶色いスープみたいなものがかかった一品。スープの中にはオレンジや白、黄色い色々な野菜や大きい肉が見える。そのスープからはとても特徴的な香りがし、それがえらく食欲を掻き立てる。

 

「これが外の世界のお料理…。確かに見た事も無い料理ね~。でもこのにおい…凄く食欲をそそるわ~♪」

 

(少々辛いかもしれませんのでお気を付けください)

 

「それではごゆっくり!」

 

「……うんうん!このにおいだ!早速頂くとするか!」

 

「いただきま~す。これは一緒に食べるのがいいのでしょうねきっと」

 

横のテーブルで既に食べ始めているアルフォンス。それにちなんで幽々子もスプーンを取り、ライスとカレーを一緒に掬って口に運ぶ。最初に感じたのはまず今まで感じた事無い辛み。唐辛子とはまた違う香辛料らしいにおいがしたので少しは辛いと思っていたが思っていたよりも辛かった。だが単純に辛いだけでない。それ以上に深い旨味を感じる茶色いスープだ。

 

「辛いけど見た目以上にとっても深くて色々な味がするわ~」

 

浮いている人参(カリュート)、玉ねぎ(オラニエ)、ジャガイモ(ダンシャク)は柔らかくもあるが歯ごたえもしっかり残し、同時にこのスープの旨味もしっかりと含み、豚肉は旨味のみでなく甘みも感じられる。そして一緒にあるライスが具もスープもしっかりからんで受け止め、一緒に食べるたびに口の中で様々な味が広がる。それを次々に味わいたいためか辛いと思いつつ匙が止まらない。

 

「これは食べれば食べるほど食欲が増すお料理ね♪こちらのフクジンヅケというお漬物もこのかれーというお料理の辛さに合っているわ」

 

「そうであろう。私も最初食った時は辛さに驚いたが慣れてくると次々に食いたくなるのだ!おかわりを頼むぞ!無論大盛りでな!」

 

既に最初の一皿を食べきっていたアルフォンス。それを見てなのか元からなのか、幽々子もお代わり大盛りをリクエストし、ふたり共最初のカレーライスを計5杯ずつ平らげた。

 

 

…………

 

6杯目~

 

「お待たせしましたー!チキンカレーです。カレーライスよりも大分辛いですのでお気をつけくださいね」

 

カレーライスの次に出てきたのはチキンカレーたる一品。ライスの器とカレーの器が別々になっている。特徴的なのは先程のカレーよりも色に赤みがあり、かなり香辛料の香りが強い。そして見た目大きい鶏肉以外の具は見当たらない。

 

「これは別々に食べればいいのかしら?」

 

「はっはっは、いやいやそれは止めた方が良い。私も最初そう思って食べたがあまりの辛さに面食らった。やはりカレーはライスと一緒に食うのが一番だ」

 

言われて幽々子はほんの少しライスにカレーをかけ、すくって食べてみる。…確かにかなり辛い。スープだけならもっと辛いだろう。しかしライスと共に食べる事で辛さが和らぎ、カレーに溶け込んでいるらしいいくつもの野菜や素材の旨味を感じる。チキンカレーという名前の主役にふさわしい大きい鶏肉も良く煮込まれていてとても柔らかい。

 

「辛いけどとても美味しいわ~。成程~このかれーはお野菜が入っていないのではなく、完全にスープに溶け込んでいるのね。この鶏肉もあまり噛んでいないのにとても柔らかいわ♪」

 

幽々子はここでもチキンカレーを5杯お代わりした。

 

 

…………

 

11杯目~

 

(お待たせしました…グリーンカレーです)

 

11杯目に出てきたのはアルフォンス曰く「ちょっと口直し」として選んだグリーンカレーたる一品。チキンカレーと同じくライスとカレーが分かれているが、それとは別に幽々子はある事にちょっと驚く。

 

「あら~名前の通り本当に緑色みたいな色してるのね~」

 

特徴なのは先のふたつと色がまるで違う事。うっすら黄色がかった緑色をしている事だった。更に具が大きい。肉、そしてカレーライスには見えなかった野菜も含まれている。そして水分が多いのかとろみが弱い。

 

「これはさっきのかれーよりも辛くなさそうだからちょっとスープだけ飲んでみようかしら」

 

幽々子はスプーンで一杯スープだけ食べてみる。するとさっぱりとした風味と香草の香り、そして不思議な事にミルクに近い風味も感じる。メニューにはココナッツミルクという果実から作った乳が使われているとの事。具として使われているのは鶏肉とタケノコ、そしてパプリカだ。これらの歯ごたえもしっかり残しながら煮込まれているらしい。そして辛味が後半になって来た。

 

「こちらは後からじんわりと来る辛さなのね。ちょっと変わっているけどこれも美味しいわ♪」

 

「ほ~前に食べた時よりも風味が増しておる。このタケノコという野菜の歯ごたえも面白い。うむ、美味い!」

 

続けてのグリーンカレーも5杯綺麗に平らげた。

 

 

…………

 

16杯目~

 

「お、お待たせしました。牛すじカレーです」

 

幽々子の食欲に驚きながらアレッタが次にふたりに出したのは牛すじカレー。見た感じは最初のカレーライスやチキンカレーに近い。だが浮いているのは豚肉でも鶏肉ではなく牛肉、その中の牛すじという肉であるらしい。幽々子は大きめに切られた牛すじを食べやすい様にスプーンで切ろうとするといとも簡単に切れる位柔らかかった。

 

「まぁ、この牛肉凄く柔らかいわ~」

 

カレーと牛すじ、そしてライスを一緒に口に運ぶ。改めて思うのは牛すじが噛まなくても簡単に歯で切れる位柔らかい。そしてスープの味もこれまでのものと違い、辛みと深いコクを感じる。牛すじの良質な脂、そしてチキンカレーと同じく溶け込んでいるらしい野菜の旨味、更にほんの少し酸味を感じる。店主曰くカレーよりもトマト(マルメット)を多く使っているらしい。

 

「牛肉に鶏肉に豚肉、かれーってどんなお肉にも合うのね~♪」

 

「肉だけでなく魚やフライ物も合うぞ。カレーの可能性は無限大だ!」

 

やはりここでも牛すじカレーをふたりは5杯ずつ綺麗に平らげた。

 

 

…………

 

21杯目~

 

(お待たせしました、スープカレーです)

 

21杯目として運ばれてきたのはスープカレー。においはチキンカレーに並ぶ位香辛料の香りが強く、色はカレーライスの色に近いが見た所かなり水気がある。具は今までのカレーよりもごろごろと大きく、人参にジャガイモ、鶏肉などの他に半分に切られたゆで卵なども入っている。幽々子がスープだけをまず飲んでみると、見た目味が薄そうなのとは裏腹にしっかりと味がついている。

 

「見た目からは想像できない位味がしっかりしているのね~。水気があるからご飯ともよく絡むわ~♪」

 

「スープカレーは私の国の寒い地方で生まれたカレーなんです。薬膳といって色々なスパイスを使っていて、寒さに負けない様身体を温めたり食欲回復や滋養強壮などの効果もあるんですよ」

 

「ほ~その様な効果がこのカレーにあるのか」

 

「ええ。そうだ因みに私の国にも自衛隊…まぁ海軍みたいなものがあるんですが、そこでもカレーは大人気の食べ物ですよ」

 

「ふっふっふ、そうであろうな。我が公国の軍でもカレーが作れるようになれれば私ももう少し頑張りたいところだ」

 

愉快そうに笑ったアルフォンスと幽々子は勿論スープカレーも5杯完食し、ねこやのカレーを全て味わったのだった…。

 

 

…………

 

26杯目~

 

「お、お待たせしました…カレーライス、です」

 

「ありがと~♪」

 

そしてふたり共計26杯目に選んだのは…最初に食べたカレーライス。アルフォンスの事は知っているが顔色一つ変えずに20杯以上平らげている幽々子に驚きを隠せないアレッタ。

 

「う~むやはりこれだ。他のカレーも勿論美味いがやはりこの味が一番だな!先程のスープカレーの効果かまた食欲が増したわい!」

 

「本当にこのお料理がお好きなのね」

 

「おおとも。私にとって魂の味にして、至高にして、命を救ってくれた料理だからな」

 

「まぁ命を?一体何があったのかしら?」

 

「う~むこれに関しては少し事情があるのだがな…」

 

アルフォンス・フリューゲルは今から約二十年前、西の大陸に向かう商船の護衛任務を務めていた。そんな中伝説の怪物と恐れられた魔物、クラーケンと交戦。自らと自らの船を代償として商船を逃がすことに成功したが誰もが彼の死を疑わなかった…。

…しかし彼は生きのびていた。航路から途轍もなく離れた名も知らぬ無人島に船の物資と共に漂着していたのだ。だが喜びもつかの間、そんな島故助けの気配等全くなく、島の獣や魔物達と戦いながら彼はこのまま死にゆく運命と思った。島に突如現れたねこやの扉と先代店主。そしてカレーライスに出会うまでは…。

 

 

(カレーなら直ぐに出せるけどそれでいいかい?)

 

 

「とまぁ、そんな私を救ってくれたのが先代の店主とこのカレーライスだったのだ」

 

「それは良かったわね」

 

「それからはただただ七日に一度のカレーライスを食いたいために生き続けた。二十年以上。今までに食った数はとっくに千回を超えたが全く飽きる気がせんわ。はっはっは♪」

 

そんな感じで最後の締めのカレーライスを5杯ずつ味わう幽々子とアルフォンス。結局二人ともに其々30杯に及んだのだった。因みにアルフォンスからトッピングもできると聞いた幽々子は最後の5杯をロースカツやコロッケ等で堪能し、運んできたアレッタが言葉を失うヒトコマもあった。

 

 

…………

 

「いやはや私についてこれたのはこのクロに続いて二人目だ。見ていて実に気持ちの良い食いっぷりだったぞ」

 

「ありがとうアルフォンスさん。それにしても紫や妖夢ちゃんの言っていた通り本当に美味しかったわ~♪」

 

「ほ、本当によく召し上がられましたね…。苦しくないんですか?」

 

「アレッタちゃんだったかしら。大丈夫よ~これ位は慣れているから。どうもご馳走様でした。おみやげもありがたく頂くわ♪」

 

(ありがとうございました)

 

「またのご来店をお待ちしております」

 

挨拶を終え、幽々子は扉を開けて戻っていった…。

 

 

…………

 

 

~~~~♪

 

 

「あらら、消えちゃったわね~。ずっとここにあればいいのに」

 

「幽々子様!?」

 

幽々子の姿を見た妖夢が慌てて駆け寄って来た。それから少し遅れて霊夢も。

 

「あら妖夢ちゃん。それに霊夢、来ていたの」

 

「どちらに行ってらしたんですか幽々子様~!本当に物凄く心配したんですよ~!」

 

「帰ってきたらアンタの姿が見えなくて。ここどころかどこにも気配が無いから妖夢がもんの凄く心配してたのよ?泣きべそかいてたんだから」

 

霊夢の言う通り妖夢は涙を流している。

 

「あらあら、そうだったの。御免なさいね妖夢ちゃん」

 

「…いえ、良いんです。幽々子様がご無事でしたらそれで…。もしお守りできなかったとしたら…私は、私は幽々子様のお守り役として…」

 

「はいはい。それ以上は言わないの」

 

妖夢を慰める幽々子。それはやはり親子の様だ。

 

「それはそうと幽々子アンタ、どこに行っていたの……ってその手に持ってる袋!」

 

「あっ、そうそう。実はねこやに行っていたのよ。またここに扉が現れたの。今帰って来たところなのよ~」

 

「えー!」

 

「やっぱり〜!も~どうしてまたお札渡す前に出てきちゃうのよ~!」

 

「おみやげにかれーぱんという物を頂いてきたわ。皆で頂きましょうか。店主さんが温かい間が美味しいって言ってたのよ」

 

「でも幽々子様、たった今お食事されてきたのでは…?」

 

「うふふ、妖夢ちゃんの顔を見たら安心してまた小腹が空いてきちゃったわ。という訳で妖夢ちゃん、お茶お願いね♪」

 

少々呆れつつも幽々子の笑顔にやっぱり喜びが勝る妖夢だった。




メニュー17

「クレープ&ミルクレープ」


幽々子とアルフォンスの組み合わせも初期の頃に考えていた組み合わせなので書いていて楽しかったです。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
  • 不安なので読みたくない
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