太陽の畑
妖怪の山とはちょうど反対方向。更に奥にすり鉢状の草原にして花畑がある。それが太陽の畑。ここには多くの妖精が住みつき、季節の花が咲き乱れるが中でも特に有名なのが向日葵で夏になると向日葵で埋め尽くされて見事な風景を見せてくれるが今は秋なので向日葵は咲いてなく、穏やかな秋の花が色を放つ比較的穏やかな風景。今回のお話はここから始まる。
緑色の髪の日傘の少女
「……ええそれでいいわ。そちらの土いじりが終われば今度はこちらの苗の手入れを頼むわね」
触角が生えた少女
「は~い」
蝶の羽が生えた少女
「わかった~」
その太陽の畑で畑仕事をしているいくつかの姿がある。
指示しているのは日傘をさしている肩までの緑色の髪の女性。白いシャツの上に赤いスカート。首には黄色のリボンを付けている。その女性の指示に返事をしたひとりは緑色の短い髪から昆虫の触角が生えたマントを羽織った少女。もうひとりは水色の髪にオレンジの瞳、そして背中から蝶の羽が生えた少女。それはまるで蝶の妖精である。
白いヘッドドレスを被った少女
「よいしょ!よいしょ!」
青いドレスの少女
「これはどっちだったっけ?」
月型の羽を持った少女
「それはこっちの方に撒く土だよスター」
そしてちょっと離れた所でもうひとつ少女達の団体がいた。
ひとりはオレンジがかった金色の髪をツーサイドの髪型にヘッドドレスを被り、赤色のドレスで笹の葉の形をした羽が生えた少女。
ふたりもスターと呼ばれたのは青いドレスを着て腰まで伸びた長い黒髪、蝶の様な羽が生えた少女。
そしてもうひとりは亜麻色の髪をくるくる巻き毛、黄色いドレス、そして月の様な形をした羽が生えた少女。
いずれも特徴的な羽が生えていて子供の様に見える事から彼女らも妖精らしかった。
「あ~~…疲れた~」
「もうクタクタですよ~」
「全く情けないわね。まだ仕事は残っているのよ」
「でも咲いていない場所の土を弄っても仕方ないんじゃないんですか~?」
「何を言っているのかしら?散った花や枯れ木が土に残ったままだと春に害虫が増えやすいの。最近寒くなって来たし、暖かい間に土を起こしておかなければならないわ。ぶつくさ言ってないで動きなさい」
「でも私達は単に光を操れるだけの妖精なんですよ~」
「わかっているわよ貴方達が光を操れるだけの、大した力も無い、もの凄く弱いこと位。でも光は花にとって必要不可欠なもの。だからこうして私が丁寧にお願いしているんじゃないの」
(((どこが丁寧なんだろう…?)))
「何か言いたそうね?」
「「「なんでもないです!」」」
緑の髪の少女の気迫にびびる三人の妖精。
「ほら頑張ろうよサニーもスターもルナももう少しで終わりだからさ」
「アンタ達は随分元気そうね~?」
「私はここが好きだし、それに綺麗なお花が咲いたら気分いいじゃない♪」
「綺麗な花を咲かせるためなら頑張れるわ♪」
「フフフ、いい心がけじゃないの。さぁ早く古い土を運んでいきなさい」
「「「は~い」」」
とんがり帽子の少女
「幽香さ~ん。皆~」
とその時、ある方向からふらふらと違う少女が飛んできた。長い金髪で赤いライン入ったとんがり帽子とワンピース。背中には他の妖精と同じく羽が生えている。
「リリー、どうしたのかしら?」
「さっき土を捨てに行ったらですね~。変なものがあったんです~」
「変なもの?」
「はい。木でできた扉です。家が建っているのでもないのに扉だけが立ってるんです~」
「木の扉?…妙ね、あそこにそんなものは無いはずだけど」
「と、とりあえず行ってみましょうよ!」
…………
そして広大な畑の隅にある古くなった土を積んでいた場所にやって来た一行の前に…あの扉が鎮座していた。
「ね、言った通りでしょ~?」
「そうみたいね。…洋食のねこや、と書かれているわね」
「! それって前に文々。新聞に書かれていた扉のことじゃないかな?ほら、突然現れる美味への扉ってやつ」
「そういえばそんな新聞、前に寺小屋で見た様な気がします」
「私も読んだわその新聞。…それにしても私の許可も無しにまさかここに現れるなんてね。いい度胸しているじゃないの。もし花畑の中に現れて風景を壊したりでもしたら…フフフ…」
「ゆゆ、幽香さん怖いですってば!」
「冗談よ。…でもこのままじゃ邪魔ねぇ」
「じゃあさじゃあさ!皆で行こうよ!」
「私も賛成です!」
「私も行きたいな~!」
三妖精が揃って声を上げた。
「何を言っているのかしら?貴方達今仕事の途中だという事を忘れているのかしら?」
「わわ、忘れてませんよ!でもこのままじゃ邪魔なんでしょ?だったら何とかしないと駄目じゃないですか!」
「それにこの扉って一回入ったら消えるとも書いてありましたよ。だったらそれが一番手っ取り早いでしょ!」
「仕事は急ピッチで終わらせますからそれが終わったら皆で行きましょうよ~。ねぇリリーもラルバもリグルもそう思うよね?」
「え、ええ」
「わ、私は…」
「それはそう、なんですけど…」
どうやら行きたい気持ちなのは皆同じな様だ。そしてそれは彼女も実は同じ様で、
「……はぁ、仕事が終わった後でなら別に構わないわ。でも本当に直ぐに終わるかしら?」
「「「任せて!」」」
…………
そしてそこからは全員の頑張りもあって急ピッチで仕事が進み、予定した時間よりも早く終わった。
「…全く、こんな力があるのならもっと早くやったらどうなのかしら」
「えへへ♪すみません♪」
「さぁ行きましょう美味へ!」
「レッツゴー!」
「ああ待ってくださいよ~!」
「サニー達元気ねぇ。さっきまでの疲れはどこに行ったのかしら」
「まぁ気持ちはわかるよ。行きましょう幽香さん」
「…はぁ、まぁいいわ。理由はどうあれちゃんと仕事はしたんだし約束は守らなきゃね。行きましょうか」
「「「「「「は~い♪」」」」」」
という事で幽香達は扉を開けた。異世界食堂への扉を…。
…………
~~~~♪
扉を開けた一行を待っていたのは…幻想郷のどこでもない温かい雰囲気と光を放つ店内、そして会った事も無い者達が思い思いに食事をしている風景だった。その風景に言葉を失う者、呆然とする者、何とか感想を言う者、
「「「「……」」」」
「うわ~…なんか凄いです~…」
「あの扉がこんな場所に繋がってるなんて信じられないよね…」
「ここが美味への扉…なのかしら?確かに食事をする場所ではあるっぽいけど…」
すると彼女らの元に金髪で山羊の角を生やした少女の給仕、アレッタが近づいてきた。そして厨房から店主とクロも顔を出す。
「いらっしゃいませ~!ようこそ洋食のねこやへ!」
「いらっしゃい。大勢でお越しですね」
(…マスター、席を移動させておきます)
「ああ頼む…ってひとりで大丈夫か?」
と心配な店主の目の前で簡単にひとりでテーブルを動かすクロ。その光景にちょっと驚きながらも近づいてきたアレッタにサニーが尋ねた。
「ねぇ!ここって何なの?私達幻想郷から来たんだけど」
「ああ、皆さんもレイムさん達と同じ幻想郷からの方々なんですね!ようこそ!ここはねこやという異世界にある料理屋です!」
「い、異世界!?」
「ちょっと雰囲気が違うな~って思ったんだどほんとにそういうお店なのね」
「そして私はここで働いているアレッタです!宜しくお願いします!」
(…クロと申します)
「よ、宜しくお願いします。あの…その角って鬼じゃないですよね?」
「あ、はい。私はオニっていう種族じゃなくて魔族なんです」
「魔族…!」
「あの~お店って事はお金を払う必要があるんだよね?」
「ああそれなら大丈夫です。ユカリさんから皆さんみたいに来られた方のためにお金は頂いてますから」
「あら、あの妖怪の賢者も気が利くわね」
「じゃあ私も自己紹介しますね~♪リリーホワイトといいます。幻想郷に春を告げる妖精です。今は春じゃないので力が弱まっちゃってるんだけど全然問題ないから気にしないでください♪」
「アゲハチョウの妖精、エタニティラルバよ。宜しくね♪」
「リグル・ナイトバグ。ホタルの妖怪さ。虫が好きならお友達になってあげてもいいよ♪」
「宜しくお願いします!えっとじゃあ取り合えず…リリーさん、ラルバさん、リグルさんってお呼びしても良いですか?」
「いいですよ~♪」
「私もそれでいいよ」
「うん、大丈夫だよ」
「そんじゃうちらも自己紹介するわ!光の三妖精にして輝ける日の光、サニーミルク!妖精だからって馬鹿にしたら駄目よ♪」
「同じく!光の三妖精の降り注ぐ星の光の妖精、スターサファイアよ。こんにちは、異世界の人間さん♪」
「そして同じく!光の三妖精の静かなる月の光こと月の光の妖精。ルナチャイルド!宜しくお願いするわ♪」
サニーミルク、スターサファイア、ルナチャイルドは名乗りながら其々ポーズを取った。
パーンパーンパーンッ
「「「いった~~い」」」
「馬鹿な事せず普通に挨拶なさい。彼方達のせいで幻想郷のイメージが悪くなったらどうするつもりかしら?」
「そりゃないですよ幽香さん~」
「だだ、大丈夫ですか?」
「心配は不要よ。よく悪戯して霊夢にお仕置きうけても3分後にはケロっとしてるんだから。さて、最後は私も自己紹介しないといけないわね。…幻想郷の妖怪にして、最も花を愛する者。風見幽香よ。宜しく」
「お花のヨウカイさん、ですか?」
「ええそうよ。私は花を粗末にする者は断じて許さない。花を潰す者を潰し、花を愛でる者を愛でる。それだけの妖怪なの。だから…貴女も私の前で花を虐めない様気を付けてね?」
「は、はい!でも大丈夫です!私お花は大好きですから!」
「あらそう。そう言っていただけて私も嬉しいわ…フフフフ」
笑みを見せつつもどこか怖さを含んでそうな幽香の笑顔にちょっとだけビビるアレッタ。
「あ、そ、そうだ。そう言えばこちらのお店にも花の妖精さんというお客様もいらっしゃいますよ。もうそろそろ来られる時間と思うんですけど…」
「あら、そんな者もいるの。ならば是非お会いしてみたいわね…」
取り合えず一行はクロが先程合わせたテーブルに座る事にした。
「こちらサービスのお水とおしぼりです!」
(それとメニューです。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください)
「「「は、はい!ありがとうございます!」」」
因みにクロの念話に驚く者もいたのもいつも通りの光景である。中でもサニー、スター、ルナの三人はクロに即座に返事した。
「どうしたのさ三人共?」
「う~んなんでかわからないんだけど…あの黒い髪の人が凄く気になって…」
「あの喋り方が怖いの?」
「ううん、そういう訳じゃないんだけど…わかんないや」
「でもここじゃ悪戯は止めておきましょ」
ルナの言葉に強く頷くサニーとスター。彼女らは光の三妖精。対してクロは黒の神にして闇を司る物。相反する力に無意識から来るものだろうか。
「らしくないね。いつものサニー達ならいつどこに行っても真っ先にどんなイタズラしようか考えているのに」
「チルノやクラウンピースとは違うわよ!」
「…それにしても外の世界、さっきのアレッタって人は異世界って言ってたけど、ここって不思議な場所よね」
「でもそれを言ったら幻想郷だって凄く不思議な場所じゃない?地獄や天界や冥界、おまけに月都だってあるんだしさ」
「……………案外そうかも」
「とすると私達の方が変わってるのかしら?見た所妖精とかもいないし。あのトカゲの頭みたいな人やアレッタみたいな人はいないけど」
「何も珍しい事では無いわ。世界が違えばそこに住んでいる者も違う、そういう事よ」
「でもさっき言った様な花の妖精みたいな子っていないわね~」
「それよりも折角だから何か食べましょうよ~。メニューっていわゆるお品書きですよね?」
「…うわ~見た事無い食べ物ばかりです~」
「働いた後だからお腹空いてるけど甘いもの食べたい気もするしね~」
~~~~♪
とその時、扉が開かれ、鈴が再び鳴らされた。
(いらっしゃいませ)
「うむ、今日も民共々世話になるぞ」
入ってきたのは…サニーやラルバ達よりもずっと小さいが同じ様に羽が生え、緑色や黄色等様々な色彩の服を着た…まさに妖精達の団体だった。見る限り50人位はいるだろうか。その光景に彼女らの目がメニューから離れる。
「わ~言ってたら本当に来たわ~♪」
「可愛い!うちらの知ってる妖精とはまた違うわね~♪」
「まさか異世界にも妖精がいるとは思わなかったわ♪」
「な、なんですか貴女達は!?」
「ま、まて。この羽にその姿、お主らもフェアリーか?」
「でも感じは似てるけどちょっと違うような…」
好奇心旺盛な幻想郷組の妖精と、どちらかというと控えめな異世界の妖精の交流が賑やかに始まる。その光景に苦笑いをしながらため息を吐く幽香。
「やれやれ…」
「……」
そんな中、ひとりの妖精が幽香に近づいてくる。薄緑色の長い髪で花の髪飾りをつけ、薄紫を基調とした服。背中からは鮮やかな色をした蝶の様な羽が生えている。先程クロに挨拶をした先頭に浮いていた妖精だ。
「……不思議だ。お主から我らと同じ…強い花の力を感じる」
「…誰?貴女」
「無礼ですよ貴女!このお方は」
「構わぬ。初めて会うのじゃから仕方あるまい。下がっておれ」
言われて妖精は「はっ」と言って下がり、幽香に話しかけた妖精は優雅にお辞儀をし、名乗った。
ティアナ(クレープ)
「失礼した。お初にお目にかかる。我は花の国の女王、ティアナ・シルバリオ16世。見知りおかれよ」
「花の国?じゃあやっぱりさっきアレッタっていう子が言ってた花の妖精というのは…」
「うむ、我らの事だ。正確に言えばフェアリー族というが。そして恥ずかしながら我がその長を務めている」
王と聞かされて流石に礼儀を見せねばならないと思ったか、幽香も立ち上がる。
「では私もご挨拶しなくちゃね。…風見幽香、幻想郷で最も花を愛する妖怪よ。同じ花を愛する者としてお会いできて嬉しいわ。花の国の女王様」
「さようか。…しかし恥ずかしながらそなたの言ったヨウカイという種族や、ゲンソウキョウといった国は聞いた事がない。海の向こうの異国の者か?」
「いえ、私達は…」
…………
幽香は簡単に自分達の事を説明した。
「…という訳で、私やそこにいる子達は貴方達とは違う世界から来たのよ」
「なんとそうであったか…。まさかこの異世界食堂があるべき世界以外にもあったとは…。世界というのは本当に面白いものだ」
幽香とティアナが話している一方で、
「ねぇねぇ貴方達も妖精なの?どうしてそんなに大きいの?」
「私達からしたら貴方達が小さい事の方が不思議よ」
「うんうん、野良妖精はいるけどこんな小さい子達はいないもんね」
「…貴女もしかして虫の妖精?た、食べたりしないわよね?」
「大丈夫だよ。花は好きだけど食べたりしないから」
「可愛らしいですね〜♪」
「こ、こらあまり撫で回さないでってば」
「貴女も蝶の妖精?美しい羽ね」
「ありがとう♪貴女達も綺麗な服着てるね」
やり取りが続いているがなんだかんだ上手くやってる様だ。
「あの者達もまた、そなたと同じ花のヨウカイとやらか?」
「いいえあの子達は違うわ。あの子達は寧ろ貴方達と同じ妖精に近いわね。中でもあの子は春の妖精と言って、幻想郷に春の訪れを教えてくれるのよ」
「ほぉ。面白いの」
とその時アレッタが近づいてきて、
「陛下、ご注文は何時ものですか?」
「うむ、今日もクレープとミルクレープを。ミルクレープはクレープを食べ終えた後で紅茶と共に頼む」
「畏まりました!」
「…クレープ?」
「うむ、この店で我らが最も美味と思うものだ。そして我らを夢中にさせ、腹をはち切らさせようとする…恐ろしい毒でもある。ふふ」
恐ろしい事を言ったがティアナの表情からするに決して悪いものではないだろう。その言葉に興味が湧いた幽香は、
「…アレッタ、そのクレープとミルクレープというの、私達も頼めたりできるかしら?」
「はい大丈夫ですよ!クレープはどのクレープになさいますか?」
「そんなに種類があるの?」
「それならばひとつはフルーツミックスを頼むと良い。あとは…アレッタ、この者達にも我らと同じセットを頼めるか?」
「ああ確かにあれなら色々食べれますものね!畏まりました!」
言われてアレッタは店主に注文を渡しに行った。奥から「はいよ」という声が響く。
「助かったわ。お礼と言ってはなんだけど貴方達のものは私達に立て替えさせてもらえるかしら?とは言っても払うのは私じゃないけれど」
「気にするな。我らも縁があって金の方は問題ないのだ」
「そうなのね。…ところで花の国とはどういった場所なのかしら?凄く興味があるのだけれど」
「ふむ。花の国とは…」
ティアナは幽香に自分達の事を説明した。
冬が長く、夏が短いとある大陸にある年中春の陽気に満ちている花畑。それが「花の国」という場所だ。この国の民であるフェアリーは力は全く無いがエルフに次ぐ高い魔力を持ち、それによって昔かの地が戦の危機にさらされた時、当時の王が精鋭を率いて見事にその地を守った。それから花の国は多くの種族から禁足地として恐れられており、その影響もあって花の国は今も平和な時が流れている。
「そんな場所があるのね。羨ましいわ。幻想郷は四季がはっきりしているから様々な花が咲く代わりに夏や冬が厳しい時もあるから」
「しかし様々な植物や緑の姿が楽しめるのであろう?それも良いではないか」
互いの故郷の事を話しながらふたつの世界の種族の交流は続く…。
〜〜〜〜店主調理中〜〜〜〜
…………
「ところでつい同じ物を頼んでしまったのだけれどクレープってそんなに美味しいの?」
「うむ、それは我が保証する。七日に一度、国中の国民が集まり、その日この異世界食堂に訪れてあれを食するのは誰かと協議する程だ。ただな…」
「ただ?」
「先程女給が言ったようにクレープは種類が多くてな。しかも味わいも全く違う物もある。それ故国ではどのクレープを味わうかで民達がいつも揉めているのだ。なってはいないが時には興奮しすぎて暴動に近いものになった事もある程に」
「それは大変ね」
「お待たせしましたー!(お待たせしました)」
とその時アレッタとクロがカートを押して運んできた。一枚の皿には赤、黄、緑など様々な色と形をした果実と白いふわふわしたものが黄色い生地の様なもので包まれたもの。これがおそらくフルーツミックスというものだろう。そして同じく黄色い生地で包まれたものでこちらは中身が様々な種類をしたものが2、3枚の皿に数個程並べられている。幽香とティアナ、そして特に幻想郷の妖精組やフェアリー達がそれにくぎ付けになる。
「これが…クレープ?」
「中に入ってるのは果物かな?見た事無い果物もあるよ」
「どれも綺麗な色ですね~♪」
「これは果物は入ってないね。でも凄くいい匂い…」
「今日も美味しそうね♪」
「早く頂きましょ♪」
「こらこら、まだ陛下の許可がおりてからでしょ」
期待を込めたフェアリー達の視線がティアナに向く。その様子にティアナは苦笑いしながら、
「…うむ、食べてよい」
フェアリー達から歓声が上がり、各々気に入っているらしいクレープに手が行く。クレープはいくつかに区切られており、食べやすい大きさにカットされている。
「やれやれ、クレープを見ると皆目の色が変わる」
「あの少し小ぶりなのは?」
「この店の店主が気を遣ってくれてな。我らが仲互いしない様少し小さい大きさのものを用意してくれるのだ」
「成程ね。さて、折角だから私達も食べてみましょうか」
幽香に言われて幻想郷の妖精達も初めて見るそれに興味津々なのだろう。皆気になったクレープに手を伸ばす。幽香はまずフルーツミックスなるクレープを食べてみることにした。
「…これはこの生地と中を一緒に食べるのかしら?ってあの子達がそうしているからそうなんでしょうね。ちょっと下品な食べ方だけれど」
そう言いながらクレープを一口食べてみる。黄色い生地は焼かれているためなのかまだほんのり温かみを感じる。卵から作ったふわっとした生地。乳の風味がする舌の上でとろけるほど柔らかい雲。それらを引き締めているのが甘酸っぱい苺や緑色の果実。まろやかな甘みの黄色い果実。蜜柑に近いがほんの少し違う柑橘などなど様々な果物。
「!…成程、この果実達はただ単に添えられているだけでなくひとつひとつ蜜に漬けられているのね。それが甘みをより強くしていて、この白くて柔らかいものと一緒に食べる事で互いの甘みをより引き出している。でも甘すぎじゃない様に感じるのは…この生地のおかげなのね」
「うむ。我も初めて食べた時はこの生地の味の無さにちょっと残念に思ったが違った。これは中の果実達を受け止めるのに欠かせぬのだ」
「これならあの子達も気に入る食べ物だわ」
そういう幽香の横では、
「このクリームチーズっていうの?初めての味だけど美味しい!苺ともよく合ってるわ♪」
「私はこの青い木の実が好きだな~。苺より甘酸っぱくてこの白いのと合うわ♪」
「でしょ!このクリームチーズとベリーの相性のよさが何とも言えないでしょ!」
細かく切られた苺と苺のソース、それとクリームチーズがたっぷり入ったストロベリークリームチーズ。
たっぷりのブルーベリーとソース、そしてクリームチーズの組み合わせのブルーベリークリームチーズ。
「このチョコレートっていう黒いやつ、どんな味かと思ったけど凄く甘くて美味しい!この黄色い果物とよく合うわ♪」
「そうよね~。なのにこの苦みの良さがわからない子もいるのよね~」
薄く切られたバナナとチョコレートソースがたっぷりの甘さとほんの少し苦みがアクセントのチョコバナナ。
「カスタードって卵の味がしてまろやかで、甘く煮込まれたリンゴと一緒に食べるともっと美味しいんですね~♪」
「貴女わかるじゃない。カスタードの良さをわかってくれて嬉しいわ♪」
こちらは歯ごたえを残しながら甘く煮込まれたリンゴとカスタードの濃厚な風味をたっぷり感じるアップルカスタード。
「この生クリームってふわふわしてて柔らかくて凄く乳の味がするわ~。苺とも青い木の実とも合ってるし♪」
「そう!生クリームの美味さとふんわり食感が良いのは世の理なのだ!」
ストロベリーとブルーベリー、チョコソース、そしてフルーツミックスにもたっぷり入った生クリームと色々な味のWベリー&生クリーム。
「このクレープ、果物は入ってないけど口の中でシナモン?それと牛酪の凄くいいかおりが広がるよ!生地もモチモチしてるし♪」
「良かった~。このクレープの良さを分かってくれる人が異世界にもいたわ~」
そしてほのかな甘みと豊かな香りがするシナモンと牛酪(バター)、砂糖がたっぷりの温かいシナモンバターシュガーと、ふたつの世界の妖精が笑いながらクレープを食している絵がそこにあった。
「…皆いい笑顔ね」
「うむ」
そう言いながらフルーツミックスを微笑んで食す幽香とティアナだった。
…………
テーブルの上に並んだクレープがほぼ全て食べ終えた後、彼女らは新たに運ばれてきたミルクレープと紅茶のセットを味わっていた。
「これは生地を一枚一枚ずつすくって食べるのかしら?」
「店主曰くそう食べても良いらしいが我は切って食すのが好みだな」
ミルクレープはクレープに使っている生地とクリームが何層にも重なっているケーキ。それ以外は何も入っていない一見シンプルなケーキだがティアナ曰く生地の美味しさをたっぷり味わうのにうってつけのケーキらしい。とりあえず幽香は一番上の生地をフォーク(使い方はアレッタに教わった)巻き取って食べてみる。
「生地もしっとりとしてて甘さはクレープよりも控えめね。でも嫌いじゃないわ。この白いものもさっきのクレープとは少し違った味わいね」
「生地の味を楽しめる様甘さを少し抑えておるとの事だ」
「お茶にもよく合う。外の世界のお菓子は随分手が込んでいるわね」
そう言う幽香の横で妖精とフェアリーも、皆笑顔でミルクレープを味わっていた。
…………
「「「ありがとうございました~♪」」」
「「「ご馳走様でした~♪」」」
「また来てくださいね!」
(コクコク)
「ありがとうティアナ。貴女達のおかげで私達皆良い時間を過ごせたわ」
「礼には及ばぬ。我としても其方らに会えて嬉しい思いだ」
そう言うティアナに幽香はあるものを手渡す。ティアナはそれを両手でゆっくり受け取る。
「私の一番好きな花、向日葵の種よ。貴女達には珍しい物じゃないだろうけど毎年見事な大輪の花を咲かせてくれるでしょう」
「その気持ちが嬉しい。感謝するユウカ。では我からもひとつ」
向日葵の種を別のフェアリーに手渡したティアナもまた種を幽香に渡す。茶色い見た事無い種だが…その種からは強い力を感じる。
「これは我らの国の花の種だ」
「…いいの?こんな花…」
「構わぬ。育ち切るのに時間も要するし、我にとっては相応に手に入るものだからな。それに其方なら悪用はしないであろう?」
「…ありがとう。大事に育てるわ」
こうして互いの世界の妖精達によるお茶会は幕を閉じたのであった…。
…………
後日とある日、再び太陽の畑に現れた扉の前にて。
サニー
「苺と甘酸っぱいクリームチーズってやつの組み合わせだよ!今日はあれを一人前大きいの食べたい!」
スター
「あれとの組み合わせなら青い実とジャムってやつの方が美味しいわよ!あっちがいい!」
ルナ
「何言ってるの!あのチョコレートっていうものとバナナって黄色い果物の方が上でしょ!」
リリーホワイト
「う~んあのカスタードっていうものとりんごのものも外したくないですよ~」
エタニティラルバ
「苺と青い実とあのふわふわが一緒に入っているものの方がお得じゃないかな?」
リグル
「シナモンっていうのと牛酪のものも生地の味が楽しめて美味しかったけどな~」
「はぁ…全く騒がしいわね。まぁ、もしティアナも来ていたらまたゆっくりミルクレープでも嗜みながらお茶しましょうか」
フルーツミックスと一緒に食べるクレープを何にするか、どれを大きいサイズにしたいか、花の国でも毎回起こっている論争がこちらでも行われていたのであった…。
メニュー18
「秋香るグラタン」
登場人物シリーズ最多になりました汗。幽香にはティアナしかないですね。次回も少し人数多くなる予定です。
シナモンバターシュガーは自分が食べた事があるクレープで好きだったので出しました。
こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。
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あれば読んでみたい
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不安なので読みたくない