幻想郷食堂   作:storyblade

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とある日の異世界食堂の夜のまかないにて…。

「どうだ?」

「とても美味しいです!甘くて温かくて色々な味がします」

(…コクコク)

「それは良かった。今年は豊作てんで沢山送ってもらってな。試しに作ってみたんだ」

「これもメニューとして出すんですか?」

「ああ。今は旬で一番美味いからな。丁度ハロウィンの時期でもあるし限定だが加えるつもりだ」

(…はろいん?)

「お腹も一杯になりますし、これなら皆さん喜ばれると思います!」

「はは、そうだといいな」


メニュー17「秋香るグラタン」

幻想郷 妖怪の山

 

 

ここは幻想郷妖怪の山。四季がはっきりしている幻想郷だけあってこの山々も秋色にふさわしい色を付けている。

 

帽子を被ったカール髪の少女

「静葉~こっちこっち!」

楓の髪飾りの少女

「ちょっと待ってよ穣子」

 

そんな山中にふたつの姿があった。葡萄の帽子飾りを付けた赤い帽子を被り、オレンジ色のエプロンに黒いロングスカートをはいた金色のカール髪をした少女。もうひとりは上から徐々に赤色から黄色に変わる独特な配色をしたロングスカートのワンピースを着た頭に楓の髪飾りを付けた少女。髪型や目の色は違うがどことなく顔が似ていることから姉妹に思える。

 

「どこまで行くのよ~」

 

「いいからいいから♪……ほらもうそこだよ」

 

「え?……わぁ~」

 

ふたりが着いた先にあったのは…その場の空を覆いつくさんばかりの無数の赤、赤、赤。錦木の群生がそこにあった。地面も鮮やかな葉が覆いつくし、まさに赤の世界という感じだ。

 

「良く見つけたわねこんな場所」

 

「そうでしょ?でも秋の使いの私達、しかも静葉が見つけられなかったらダメでしょ〜」

 

「うっ…」

 

やや呆れながら笑う穣子。穣子と静葉のふたりは幻想郷の秋を司る神。妹の穣子は幻想郷の作物の出来不出来を司るいわば豊穣の神。姉の静葉は秋の風景を司る紅葉の神なのだ。

 

ヘッドドレスの少女

「ふふ、よく言うわ。穣子だって私が教えるまでは気づかなかったくせに」

 

すると一本の錦の木の裏からもうひとり少女が姿を現した。鮮やかな緑色の長い髪に赤色のヘッドドレスを付け、白いフリルがついた赤いワンピースドレスを着た少女だ。

 

「雛じゃないの。な~んだアンタも教えてもらってたのね。不思議だと思ったわいつも一緒にいるのにどうしてアンタだけここを知ってたのかって」

 

「う…し、仕方ないじゃないの。今年は文さんからの命令もあってまだゆっくり秋を味わえてないんだから!」

 

以前ねこやの扉の写真を撮った自称新聞記者にして、霊夢を始め紫からきつーく注意された射命丸文。実は彼女は妖怪の山ではそれなりの地位につく者であり、天狗を始め多くの妖怪達に命令できる立場なのである。(慕われているかは別問題だが)。そしてそんな文から最近、妖怪の山に住む妖怪達にちょっとした指示が出ていた。それは、

 

 

(七日に一度現れる洋食のねこやという美味の場所に繋がる扉を探しなさい)

 

 

「そういえば前ににとりとたかねが行った事あるって言ってたよ。その時は滝の裏の洞窟に扉が現れたんだったって」

 

「この前は守矢神社にも出たって言ってたわ。そこからまだ幾分も経ってないし、今回はお山には出ないんじゃないかなぁ」

 

「甘い!」

 

 

ビューンッ…スタ!

 

 

ツインテールの少女

「そういう油断が特ダネを逃してしまうの!こういう時だからこそ近場を警戒しないといけないの!」

山伏風の帽子を被った灰色の髪の少女

「お疲れ様です三人共」

 

その時ふたつの姿が三人の所に降りてきた。ひとりは長い茶色の髪をツインテールにした髪型にし、紫のフリルのシャツに黒ネクタイ、スカートにソックスといわゆる女子高生の様な恰好をした少女。そしてもうひとりは山伏が被る様な帽子を被った、獣の耳が覗いている灰色の髪。椛の様な模様が書かれた黒と赤のスカートに白い上着。そして剣と盾を持った少女。

 

「はたてに椛じゃない。どうしたの?」

 

「決まってるでしょ。文よりも先に扉を見つけようと探しているのよ。索敵や捜索なら私の能力の方が優れているしね。暇そうだから椛にも手伝ってもらって」

 

「ああそう言えば今日がその日だったっけ?」

 

「そうです。それはさておき暇とは失礼ですねはたて。私にはそもそもお山を巡回警備する任務があるのですよ」

 

椛と呼ばれた耳が生えた少女の力は「千里先まで見る程度の能力」、つまり千里眼である。彼女は普段この力を活かし、山への侵入者を発見する任務に就いている。…のだが、

 

「わかってるわよ。でもここんとこはなんの異変が起こる気配も無いじゃない。前みたいに霊夢が喧嘩売ってくる事もないし、少し位いいじゃん♪」

 

「そうは言っても仕事ですので」

 

「…でも異変といえばその美味への扉というのも案外異変と呼べなくもないんじゃないかな?だって外の世界に繋がる扉なんでしょ?」

 

「それに幻想郷の外に繋がる異変といえば前に菫子ちゃんが起こしかけた事もあったしね」

 

「はい。だからこそ私は警戒すべきだと思っているのですが…文さんが霊夢から聞いた話ではあの時の異変程警戒する事は無さそうだから今は様子を見るに留めるとの事で」

 

「早苗ちゃんもそんな風に言ってたわね」

 

霊夢や早苗も今の所危険性は薄いと認識しつつも、扉の先に里の人間が入ってはまずいとしてねこやの扉は現在警戒レベルとしている。最も既に小鈴は入っているのだが。

 

「まぁその扉に事情を知らない人間や妖怪が入り込んだりしたらマズイですからそれを防ぐ意味では扉を見つけるというのはある種任務とは言えなくも無いですが…」

 

「そうそ、これも大事な任務よ♪」

 

ため息を吐く椛と笑うはたて。すると雛が。

 

「でもさ、気付いたんだけどはたての力なら簡単に扉を見つけられるんじゃないの?扉を願えばその場面が写し出されるんでしょ?」

 

「あそうか。扉は文さんの写真でわかってるしね」

 

はたてと呼ばれた少女の能力は「念写を操る程度の能力」。心で望んだものを写真として映し出す能力である。これによって今現在のねこやの扉を心の中で思い、それが現れた場所を探し出そうとしているらしい。

 

「それがそう上手くはいかないのよね〜。私の念写は今現時点のものしか写さない。つまり扉が現れていなければ写真に写せないし〜」

 

「じゃあお家の中とかに現れたらわかりやすいの?」

 

「かもしれないけど…でもさ、仮に博麗神社や紅魔館や地底に現れたとして皆行く気ある?」

 

…その場の者達が全員首を横に振った。

 

「仮に森の中や山の中に出てもその場所がどこかピンポイントでわからないとね~。だからここの地形や地理にひと際詳しい椛に協力してもらってるって訳。文は今里に行ってるからね♪」

 

そう言うとはたては自らの能力で再び探索を行うために念じ始める。扉の形は文の以前撮った写真でわかっているから今現在扉が現れているとすれば手にした取材用の携帯電話の画面にその場所が映し出される筈であるが。

 

「因みにもうどれ位捜してるの椛?」

 

「かれこれもう一時間以上探していますが…流石にそんな急には」

 

~~♪

 

「出たー!」

 

とその時、携帯電話の撮影音がした。どうやら画面に画像が出たらしい。その場にいる全員が詰め寄る。

 

「どこどこ!?」

 

「私にも見せて!」

 

「こ、こら押さないでってば穣子」

 

全員が目を開く。画面には確かに猫の看板が掲げられた扉が写っている。

 

「……これはどこか外ですね。木も見えますし、これは紅葉か錦でしょうか…?」

 

「……あ!!」

 

そしてその周りは…無数の赤い葉と満開にしている木々。それはまるで、

 

「…近くにはないね」

 

「も、椛!アンタ見えない?ここから遠くじゃない筈よ!」

 

「…………!こっちです!」

 

椛の案内で錦木の間を走る5人。そして少し程走った先にあったのは…まさにその扉であった。

 

「ほんとにあった…」

 

「嘘みたい…」

 

「本当に突然現れるのね…。さっき通った時は何も無かったのに」

 

「やったー!ついに文よりも早く特ダネをゲットできるわ~!お手柄よ椛!」パシャ

 

「ちょ、ちょっとまさかすぐに行くつもりですか?せめて文さんには知らせた方が」

 

「そんな事したらあの子に先に新聞作られるわよ!無駄に足と編集のスピードだけは速いんだからあの子は」

 

「いやはたてちゃんそれが文さんの能力なんだけど…」

 

「まぁ行ってみたい気持ちもわかるけどね。皆で行ってみる?」

 

「わ、私は留守番を」

 

「何言ってるのよ椛、アンタも一緒に行くわよ!という訳でレッツゴ~♪」

 

「ゴ~♪」

 

「わ、私行っても大丈夫かな?何か厄が無ければいいけど…」

 

張り切るはたてと穣子に引っ張られる形で彼女らは扉を開けた…。

 

 

…………

 

~~~~♪

 

そして一行は異世界食堂、洋食のねこやにやってきた。そこは先程までの外の寒さは無く、温かさと賑やかさで満ちている。

 

「うわ~!ここが…えっとなんだっけ?」

 

「洋食のねこや、ですよ穣子」

 

「暖か~い」

 

「随分賑やかね~。あと見た事無い人や形の人ばかりだわ」

 

するとそこに一向に気づいたアレッタが駆け寄って来た。

 

「いらっしゃいませ~!」

 

「あ、貴女無暗に私に近づかない方がいいわ。厄がムグググ」

 

「はいはい黙ってましょーねひ~な」

 

雛の口を押えるはたて。

 

「あの…どうかしましたか?」

 

「ううん何でもないのよ~。ねぇ、私達霊夢って人の紹介でここに来たんだけど~(嘘)」

 

「ああではお客様達も幻想郷の方々なんですね!ようこそ洋食のねこやへ!私はアレッタと言います」

 

「うん初めまして!私は秋穣子、幻想郷の秋の実りを司る神よ!」

 

「私は秋静葉、紅葉を司る神よ。そして穣子の姉でもあるわ。宜しくね異世界の方」

 

「…では私も自己紹介はしないといけませんね。白狼天狗の犬走椛です。宜しくお願いします」ペコリ

 

「ムググ…ぷはぁ!もうはたて!…あ、な、流し雛の鍵山雛。一応厄神なのだけれど…」

 

「ミノリコさんにシズハさん、モミジさんにヒナさんですね。そして」

 

「姫海棠はたて、新聞記者よ!ねぇ聞きたいことが山ほどあるんだけどいいかしら?貴女人間じゃないわよね?鬼なの?てかここって外の世界のご飯屋さんって本当?」

 

「え、えっとお客様落ち着いて下さい」

 

「そうはいってもこんな場所に来ると記者としての血が燃えるのよ!ねぇちょっとだけ」

 

(おやめ下さいお客様)

 

引き気味のアレッタと興奮冷めやらないはたての間にクロが割って入って来た。

 

「!!は、はたてとりあえず落ち着こう?今はお仕事中みたいだし迷惑だわ。今は席に座りましょ。ね?ね?」

 

「ど、どうしたのよ雛」

 

「ですがはたて、雛の言う通りです。お店の方々にご迷惑をかけてはいけません」

 

「え~。…う~わかったわよ~」

 

(……)

 

「え、えっとではお席の方にどうぞ!」

 

取り合えず5人は席に座り、クロが人数分の水とおしぼりを持ってくる。

 

「あ、ねぇ、ここの店主さんとちょっとだけお話していい?ほんとにちょっとだから」

 

(…承知しました。少々お待ちくださいませ)

 

「はたて、あまり困らせてはいけませんよ」

 

「それはそうとさっきどうしたのよ雛?あんな吃驚した顔して。確かに頭に言葉が入ってきたのはちょっと驚いたけど」

 

「う、うん…なんでもない」

 

「へんな雛~」

 

するとそこにクロから話を聞いた店主がやって来た。

 

「いらっしゃいませ」

 

「あ、貴方がここの店主なの?」

 

「ええ私がここ、ねこやの店主です。ようこそ異世界食堂へ、幻想郷からのお客様」

 

「ほ、ほんとに人がこんなお店の店主やってるんだ」

 

「ええ驚きです。それに私達が知っている人というのは妖怪や人でない者に怖さを感じる者が殆どですが…失礼ながら私達を見て怖くないのですか?」

 

「はは、もうすっかり慣れてしまいましたから。ところで私に何か用だとか」

 

「ねぇ店主さん!私ははたてっていう幻想郷で一番(嘘)の記者なの!是非ここの取材をお願いしたいのよ!ねぇどうかしら?ここの事知ったらもっと多くの人が幻想郷から来てくれると思うんだけど!」

 

はたてが容赦なく店主にそう持ちかける。しかし店主は苦笑いしながら、

 

「え?…あ~嬉しい話なんですけどお客さん、すみませんがうちはそういういわゆる取材とかはお断りしてるんですよ」

 

「え~!!」

 

「見ての通りそんなに大きい店でもないですし、この異世界食堂は特別営業で、いわば俺の趣味みたいなもんなんで。利益よりも美味い飯を出して喜んでもらえたらそれでいいんで。今以上に流行ったりってのは望んでません」

 

「欲が無い人ね」

 

「う~…じゃあさじゃあさ!せめてこの後少しだけ質問応答させてくれない?ほんの少しだけでいいの!お願い!」

 

「はたて必至だねぇ」

 

手を合わせて拝むように頼むはたて。

 

「……はぁ、わかりました。俺等の世界の新聞じゃありませんしほんの少しなら。ランチタイムが終わった後で良いですか?」

 

「勿論よ♪」

 

店主は頭に手をやってう~んと言いながら折れた。そして次に椛が尋ねる。

 

「ところで店主さん。私達ここに並んでいる料理は初めてなものが多いのですが…何かおすすめのものはありますか?」

 

「それなら……そうだ、うちの給仕から聞いたんですがお客さん方、何でも秋の神様がいらっしゃるんですよね?」

 

「ええ。私とこの穣子の事よ。私が紅葉の、妹は実りの神なの」

 

「でしたらこちらの」

 

「マスター!注文入りました~!」

 

「お、はいよ。すいませんお客さん、注文が決まりましたら言ってください」

 

マスターは下がっていった。

 

「…今の人、私達を前にしても全然動じなかったわね。やり手だわ」

 

「それにしてもはたて、アンタ結構あっさり引いたわね」

 

「ふふん甘いわね雛。アポなしで突撃してるんだからこれ位は想定内よ。来た事そのものに意味があんの♪質問の約束は取り付けたし、写真ならバレない様こっそり念写でやればいいの。顔は覚えたしね♪じゃ早速…」

 

はたては再び自らの能力で店主の仕事風景を写真にしようとした………が、

 

「……………アレ?」

 

しかし、何も起こらなかった。

 

「できない…」

 

「もう一回強く念じてみたら?」

 

再び念写を行おうとするはたて。しかしやはり何も起こらなかった。

 

「……駄目、どうしても撮れない!どーして〜!?」

 

「おかしいね。さっきここの扉見つけた時はできたのに」

 

「もしかしてここじゃできないんじゃない?一応外の世界だしさ」

 

「そんな〜!」

 

「でも小鈴ちゃんとかは前に来た時に知らない文字とか読めたって聞いたけど…」

 

「仕方がない、かくなる上は携帯でさり気なく撮るしかないわ!にとりに頼んでシャッター音もフラッシュも出ない様にしてもらったの!」パシャ

 

「はぁ…まぁ頑張りなさいな」

 

「ねぇそれより早く何か頼もうよ〜。お腹空いた〜」

 

「そうですね。そういえば先程店主さんが何やら私達におススメしていた様な気もしますけど」

 

すると店主が開いていたメニューのページに、

 

「……あ、もしかしてこれじゃない?」

 

「……成程ね。もし本当なら私達にピッタリの料理だわ。どんな料理かはわからないけど」

 

「じゃあこれを注文しましょうか。皆もこれでいい?」

 

頷く一同を見て静葉は直ぐ近くにいたクロを呼ぶ。

 

「この「秋のグラタン」という料理を貰えるかしら?」

 

(承知しました。付け合わせはパンになりますが宜しいですね?)

 

「ええ」

 

(畏まりました。少々お待ちくださいませ…)

 

クロは店主に注文を伝えに行く。

 

「……」

 

「どうしたのよ雛?そんなにあの人怖い?」

 

「…うーん怖いというかなんというか。あの人、何か私に近い様な気がするのよね」

 

「雛に近いって事は…厄の力?」

 

「そういえばさっきアンタがあのアレッタって子を一瞬近づけようとしなかったのもそれが原因よね。…でも今のとこあの子もあの店主さんもなんも起きてないじゃない。気にしすぎじゃないの?」パシャ

 

「…確かに今のところ彼女らにも周りの客らしい者達にも何も起きていませんね。それどころか私達も気にせず料理を楽しんでいる様です」

 

「いいじゃない、人里よりも気楽でいいわ」

 

天狗や神である自分達を見て驚かれる事も恐怖の対象として見られていないこの状況と雰囲気を彼女らは少しずつ気に入り始めているようだ。

 

「ふ~食った食った。もう腹一杯だな」

 

「ええほんと。パナップにクマーラにマローネ、具は食べごたえあるものばかりだしパンも合わせたらお腹一杯だわ」

 

「この組み合わせは初めてだったけど騎士のソースとチーズとも凄く合ってたぜ」

 

「そうね。中の野菜は今の季節そんなに高くないものばかりだし。味は落ちるけどこれならうちの宿でも出せるかもしれないわ」

 

「ほんとか?もしできたら知らせてくれよマイラ。食いに行くからよ」

 

「ふふ、知らせてなくてもしょっちゅう来てるじゃないの。勿論売り上げに貢献してもらうわよヨハン」

 

そしてこちらでも、

 

「お、メンチカツも今日はそれ選ぶか」

 

「偶には違うメニューも良いかなって思って。そういう貴方も食べたのねモンブラン」

 

「マローネの新しい料理となりゃ興味あるからな」

 

「で、どう?アレッタがキセツゲンテイメニューって言ってたけど」

 

「ああすげえ美味かったぜ。腹も一杯になるしな。マローネの食い方っつったら菓子しか思いつかねぇがこんな食い方もあるんだな」

 

「お待たせしました。モンブランです!」

 

「おうありがとよ!へへ、グラタンも美味いがやっぱコレだよな♪」

 

そんな会話をしている者達の前には…何やらこぶりのかぼちゃが置かれていた。

 

「……ねぇあれってかぼちゃよね?」

 

「もしかしてかぼちゃそのまま食べる…って事?」

 

「幾らなんでもそんな事はないと思いますけど…」

 

「それもあるけどさっきから聞きなれない食材の名前も出てるからちょっと心配かも…」

 

「まぁ食べれないものが出てくるとは思えないし、来てからのお楽しみって事にしときましょ」パシャッ

 

 

 

 

~~~~店主調理中~~~~

 

 

 

 

…………

 

「お待たせしましたー!」

 

そしてアレッタがカートを押して人数分の料理を持ってきた。

 

「今だけの季節限定メニュー、秋のグラタンです!」

 

彼女らの前に出されたのはちょっと小ぶり目のかぼちゃ。…いや正確には何かの器にしているらしいかぼちゃ。上部分に切り込みが入っている。思うにそれが蓋になっているのだろう。そしてその横にはこんがりと焼かれたバゲットが添えられている。

 

「あの…アレッタさん、これは中にあるものを食べるのですよね?」

 

「はい。パナップ…あ、マスターや皆さんの世界では確かカボチャと言うんでしたっけ?それが器になってるんです。とても熱いのでお気を付けくださいね。こちらのパンも一緒に食べると美味しいですよ。それではごゆっくり!」

 

そう言ってアレッタは下がっていった。

 

「パナップってかぼちゃの事だったんだ。異世界じゃ珍しい呼び方するのね」

 

「凄くいい匂いがする~!ねぇ早く食べようよ」

 

穣子の言葉に頷いた5人は目の前に出された蓋部分を外してみる。

 

「「「…わぁ」」」

 

その下にはかぼちゃ…では当然なく、アレッタの言った通りかぼちゃを器にし、そこに波々と入れられた見た事無い食べ物。表面にこんがりと焼き目が付き、まだ熱を存分に持っているのかグツグツと音を立てている。

 

「熱そう~。グツグツいってる~」

 

「下からならともかく上から火を当てたのかな?どうやってるんだろう」

 

「この焼かれてるの、ほんの少し乳みたいな匂いするけど…牛酪じゃない」

 

「取り合えず食べてみましょ。初めて見るけど食べれないなんて事ないでしょ」パシャ

 

「そうですね。あとはたて、食事中は撮影は止めた方が良いと思います」

 

初めてみるそれに警戒しつつもそこから漂ってくる食欲をそそるいい匂いと焼き色に食欲を刺激されたので匙を入れてみる事にした。

 

…パリッ!ジュワッ

 

表面に匙を入れると小さい音で「パリッ」「サクッ」という音。こんがり焼かれているらしいのが良く分かる。そしてそこから湯気を出しながら濃い乳色をしたとろみがあるソースが出てくる。表面のサクサクしたそれと一緒に掬うとそれが絡みつくように伸びてくる。

 

「わわ、何か伸びるよこれ」

 

「不思議な食べ物ですね」

 

湯気を放っているそれを息を当てて冷ましながら口に運ぶと…濃厚な乳の風味を感じる。まろやかで濃厚、ちょっとのとろみがより温かみを増している。伸びて一瞬奇妙に思った表面のそれも食べてみると塩気とほんの少しクセはあるものの慣れると味わいがあって美味だ。

 

「あつ、あつ!いけど…美味しい〜」

 

「ええ、食べててほかほかする気分だわ。安心するというか…」

 

「とってもまろやかだし温かみを感じる…。似たような感じがする食べ物で言えば…甘くないけどお汁粉とかかな」

 

「それにこの伸びているもの、この白いお出汁みたいなものよりも味が濃い、初めて食べるけど嫌な味じゃないわ」パシャ

 

「ほ、ほふへふへ(そうですね)」

 

「…あれ?何か入ってるよ」

 

熱いのを冷ましながらゆっくり食べ進めていくと中に何かある事に気づいた。

 

「…あ、これかぼちゃ?」

 

「これは…栗だね」

 

「こっちのはさつま芋だよ」

 

中には細かく切られたかぼちゃかぼちゃ(パナップ)さつま芋(クマーラ)、そして(マローネ)と秋を代表する作物がたっぷりと入っていた。それと薄切りの玉ねぎも。どれも味わいが最も出るように下ごしらえされているらしく、とても柔らかくて味も良い。かぼちゃやさつま芋の繊維質ある果肉やホクホクの栗が白いソースと絡み、混ざり合って味に深みを増し、甘みを生み出し、色を染める。更に掘り出す毎に素材のいい香りが増してくる。

 

「「「…甘〜い。優しい〜」」」

 

「野菜の甘みが溶け込んで色味も変わって香りもいい、秋の実りが沢山。まるで宝箱ですね」

 

「このパンってやつと一緒に食べると染み込んでもっと美味しくなるわよ♪」パシャ

 

「あ〜ずるいはたて!私もやる〜!」

 

「そんなに慌てて食べると火傷するわよ穣子」

 

「料理は逃げはしませんよ。じっくり味わいましょう。私もこんなにゆっくり外食するのは久々です」

 

皆秋香る秋のグラタンに満足している様だ。

 

「ねぇねぇ、折角だから甘いものも食べていこうよ!」

 

「良いわね。あとおみやげも持って帰りましょ♪」

 

「おみやげは賛成ですがあまり長居するのも…」

 

「何言ってんの。この後で私の取材があんだから多少長居するのは当たり前。堂々としときゃいいのよ、私達はお客なんだから♪」

 

笑うはたて、ため息をつく椛、デザートに先程のモンブランたるお菓子を選びそうな雰囲気の秋姉妹。一方雛は、

 

(大丈夫かな…?ここの人達に何か厄が振らなきゃいいけど…)

 

厄神たる自分がいる事で周りに厄がかからないか不安らしい。彼女は厄神ではあるが人付き合いは良く、決して悪い者ではない。するとそんな彼女の頭に、

 

(大丈夫)

 

「…え?」

 

(このお店に来た人達は…ここの美味しい料理を食べて皆笑顔になる。生の力に満ちている。私の力の余波も及ばない位。貴女が例え…禍つ力を持っているとしても。…大丈夫)

 

少し離れた場所からクロは雛に微笑みながらそう言った。気を遣ってくれたのかどうやら彼女にしか聞こえない様だ。そんなクロの言葉に雛もまた笑顔になるのだった。

その後、ランチタイムが終わってひと息ついた所でモンブランを堪能する者達の横で約束通り店主がはたての取材に応える事になったのは言うまでもない…。

 

 

…………

 

〜〜〜〜♪

 

食事と再会を願う挨拶を済ませ、一行は妖怪の山に戻ってきた。

 

「あ、扉消えちゃった」

 

「不思議な場所でしたね」

 

「でも良いお店だったね。ご飯も美味しかったし人もいい。悪い気も全然感じなかった」

 

「そうね。霊夢や紫様が一目置くのもなんか納得だわ」

 

秋姉妹、椛、雛が其々感想を言う中、

 

「むふふ〜♪遂にやったわね!文よりも先にあの店の情報と写真を手に入れたわ♪」

 

「はぁ〜。はたて、気持ちはわかりますがそれを記事にはしないでくださいよ。飯綱丸様や紫様からもきつく言われているでしょう?」

 

「わかってるわよ椛。でも自分で楽しむのは良いでしょ。自分だけが持っている特ダネってのは愉悦感に浸れるのよ♪ネタは早い者勝ち、おみやげも持って帰ってきたんだからこんくらい良いって♪」

 

 

…………

 

はたて達を見送った後のねこや

 

 

「ふ~やっと一息ついた」

 

「お疲れ様です(お疲れ様です)マスター」

 

「悪いな、まかないが遅くなって」

 

「いいえ。それにしてもあのハタテさんという方、随分熱心でしたね」

 

「インタビューってのはまぁそんなもんさ。俺の知り合いの店が以前取材を受けた事があんだがそっちは大変だったとボヤいてたよ。カメラやマイク向けられなかっただけマシさ」

 

苦笑いしつつまかないに手を付ける三人。

 

「それにしてもハタテさん、先程のインタビュー…でしたっけ?キジにするおつもりなんでしょうかね?」

 

「さぁなぁ」

 

(…大丈夫)

 

「「…え?」」

 

(この店には沢山の守護がある。だから大丈夫)

 

チキンカレーを食べながらクロはそう言った。

 

「はは、クロが言うとなんか妙な安心感があるな。ま、俺は仕事に支障が出なければいいさ」

 

「そうですね♪」

 

 

…………

 

翌日、妖怪の山にて

 

 

「も~!信じらんなーい!」

 

そこには沢山の写真を前にしているはたての姿。昨日自分の携帯で撮ってきた写真を早速現像したのだが…、

 

「なんで写真がどれもこれも真っ暗なのよー!」

 

はたてがねこやで撮ってきた写真は…真っ黒なペンキでも塗られたように、或いは真っ暗な影でも覆っている様に黒一色、なんにも写されていないのであった。正確には店主やアレッタやクロ、異世界の人物達が写った写真だけ真っ黒で料理を写した写真だけは無事だった。

 

「見事に真っ黒ですね。まるで墨でも塗ったみたいに…」

 

「まぁでもいいじゃない。店主さんとのやりとりやお料理の写真は無事なんでしょ?」

 

「それだけじゃないのよ!写真のデータまできれいサッパリ消えてるのよ!あり得ないんだけど〜!?も~なんで〜!?」

 

「この射命丸文を出し抜こうとするからバチでもあたったんじゃないですか。ふふふ♪」




メニュー18

「ふわとろオムライス&オムレツ」


いも・くり・なんきんで一番好きなのはなんきん。異世界食堂でかぼちゃが出ていない(と思う)のでパナップと名付けたのはオリジナルです。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
  • 不安なので読みたくない
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