博麗神社
霊夢やプリズムリバー姉妹達がねこやの扉に入って暫くした頃、こちらは博麗神社。今日も閑古鳥で参拝者はひとりもおらず静寂そのもの。聞こえてくるといえば風の音、虫の鳴き声、そして、
こぽぽ……ずずず……、
早苗
「…もう冬も近くなってきましたね〜」
急須から茶を注いでゆっくり飲んでいる音。見ると神社の軒先にいるのは守矢神社の巫女、東風谷早苗。自分が神社を抜けると心配だからと霊夢が頼んで参拝者が来やすい時間帯だけ留守番をしてもらっていたのだ。掃除まで頼んで。二日前から留守番をしているが結局誰も来なかったのだけれども。「ぽへ〜」という雰囲気で能天気にお茶を飲む姿はまさに平和そのもの。
「今日も平和ですね〜…」
着物を着た一際小さい少女
「そうだね〜…」
メッシュが入った黒髪の少女
「そうだな~…」
そんな早苗の横にはもうふたりの姿がある。
ひとりは赤と白のメッシュが入った肩までの黒い髪。髪の間からはよく見ると角が覗いている。ワンピースに青いリボン、足にはサンダルを履いた少女。
そしてもうひとりは藤紫色の短い髪で赤い和服を着ている少女だが特徴的なのはその身体の大きさ。早苗やもうひとりの少女よりもひと際小さく、片手で軽々と持てる位の大きさしかない。小人と言っていい位である。
「こんな天気いい日に「良い事」もせず私ったら何やってんだろ全く。…な~もう帰っていいか?もうすぐ帰ってくんだろ霊夢の奴」
「ダメですよ正邪さん。私達は霊夢さんの留守番を任されてるんですから霊夢さんが帰って来るまでやらないと」
「それはお前が頼まれた事で私は関係ないっての。たまたまいた私まで巻き込みやがっていい迷惑だよ全く。私らは逃げましょうよ姫~。こんな「大人気で人が絶え間なく来てピッカピカ」な神社なんて放っといても問題無いですって」
「…霊夢に怒られるよ正邪。でも後が怖いからね」
「あのワンころはどうしたんだよ守矢の巫女?」
「あうんさんは私の代わりに神奈子様諏訪子様を手伝ってくれてます」
「あっそ。犬らしくお仕事熱心なこった」
正邪と呼ばれた少女はひと際駄々をこねたり文句を言っている。彼女は「
「てか遅いなあいつ。どっかで飯でも食ってるんじゃないのか?」
「徹夜明けでしょうから里で休んでから帰って来るんですかねぇ」
「…そういえばご飯で思い出したんだけどさ?最近噂になってるあの…外の世界の扉だっけ?」
「ねこやの事ですか?」
「そうそれ。早苗は行った事あるんでしょ?どんな所?」
「そうですね~…。温かい雰囲気がして、皆さん優しくて、いい匂いがする場所ですよ。針妙丸さんも興味あるんですか?」
「う~んご飯もだけどもしかしたら外の世界なら小槌の効果も切れて私も大きくなれるんじゃないかなぁって」
「そういえば姫がより「おっきく」なってから結構経ちますよね~」
「半分は正邪のせいでもあるんだけどね?」
「でも針妙丸さんも随分今の生活に馴染んできたんじゃないですか?そんな感じにも見えますよ」
「…う~んそうかもしれないけどでもやっぱり早く戻りたいよ」
小人と小槌と聞いて中にはある話が浮かぶ人もいると思う。
「一寸法師」
スクナヒコナという小人とそれに出てくる打出の小槌の物語。そして今早苗と正邪と共にいる少女の名は少名針妙丸。スクナヒコナの遠い子孫であり、小人族やリリパットとも呼ばれる種族。そして正邪がそんな彼女を姫と呼ぶのは以前正邪が起こした異変が関係していた。
ある日幻想郷の弱い妖怪達が一斉に暴れ始めた。より力を増して。霊夢達は調査を開始したが彼女らも妖怪達自身にもなぜなのかわからなかった。進展が見られない不安な風が流れる中、幻想郷の空に巨大な城が現れ、黒幕が明らかになる。それが正邪と針妙丸。ある時正邪は自らの能力を用いて強い妖怪を排除し、今度は自分の様な弱い妖怪が幻想郷を支配するという下剋上を起こそうとした。しかし自分だけでは何もできない。そこで目を付けたのが針妙丸と彼女が持つ願いを叶える打出の小槌だった。
「弱者が見捨てられない楽園を築くのだ!」
正邪の口車に乗せられ、針妙丸は小槌の力を使った。その力の余波が幻想郷中の妖怪達に意志無いまま力を与えていたのである。だがこの小槌は使うと大量の魔力を放出し、回復に非常に多くの時間を要するという事を正邪らは知らなかった。やがて小槌の魔力も尽き、下剋上を行う程力を得られなくなった正邪は逃げ出したが色々あって捕まり、お仕置きを受けた。一方針妙丸は黒幕ながらも小槌の力を過去の事情から知らなかった事、正邪に騙された事等を考慮され、博麗神社で保護の身となった。後に「輝針城異変」と名付けられたその時の縁によるものか、ほんの少しでもある罪悪感なのか、正邪は針妙丸を姫と慕っている様ないない様な微妙な関係なのだ。
「ん〜…さてっと、霊夢が帰ってくるまで私は少しお昼寝しようかな」トコトコトコ…
針妙丸は立ちあがり、住処としている虫篭に向かっていく。
「それじゃあ私も」
「ダメですよ正邪さん!逃げ出そうたってそうはいきませんよ」
「だーもー!天邪鬼の私がのほほんと茶飲みながらじっとしてんのは性に合わないんだよ!」
そんな風に軽くふたりがわーわー口喧嘩していると、
「ね、ねぇ正邪~!早苗~!ちょっと来て~!」
針妙丸の虫篭からふたりを呼ぶ声。言われて駆け寄る早苗と正邪。
「「どうしました針妙丸さん(姫)?」」
「ちょ、ちょっと篭の屋根開けてもらえるかな?な、中に変なものがあって…見てもらいたいんだけどさ」
言われて虫篭の天井部分をずらす。虫篭の中は一通りの家具が揃っており、籠というよりドールハウスの様である。
「どうしました?」
「コレコレ!」
「…あ!」
見ると針妙丸にピッタリサイズの扉が彼女の虫篭の中にあった。異世界ではこの様な出現は無かったがこれも博麗大結界との接触の影響だろうか?
「こ、こりゃあどういうこった!」
「わかんない。出た時はこんなの無かったから…」
「可愛らしいサイズですね~。でもまさか針妙丸さんの大きさの扉が現れるなんて…」
「やっぱりこの扉なんだ…。あ、あの早苗。これってどうしたらいいのかな?」
「扉は入って出てきたらもう消えてしまう筈ですけど…」
「そうなんだ…。じゃあちょっと行ってみようかな…?」
針妙丸は興味津々の様だ。
「ま、待ってくださいって姫!ひとりで行くなんてズルいですよ!いや危険ですよ!私らも」
「無茶言わないでよ。正邪が入れる訳ないでしょ」
「そうですよ正邪さん」
「うぐぐ〜…はっ!」
正邪の目がキラリと光る。その視線の先は…屋根の上に安置されている打ち出の小槌に向かっていた。
「正邪さんまさか…」
「くっくっく、勘が「悪い」な。そうだ!姫の小槌の力を使えばいいのさ♪これの力を使えばこの扉でもおっきくなるだろ」
「だ、駄目だよ正邪こんな事に使うなんて!それに魔力も回復してるかどうか…」
「そう、そこでこいつですよ姫。守矢の巫女、お前の能力を使えば一回分位ならなんとかなるんじゃないか?なんたって奇跡を「起こさない」能力なんだからな♪」
「い、いやいや神奈子様諏訪子様の御力はこんな事のためにあるんじゃないんですってば!それに例えうまくいってもこれじゃ大きくなったら針妙丸さんの籠が壊れてしまいますよ」
「家具だけ出しときゃいいだろ。籠はぶっ壊れてもまた後で組み立てりゃいいさ♪」
「正邪…一応私の家なんだけど」
「でも…」
しぶる早苗だがそこに正邪お得意の悪ふざけが。
「おや~?守矢ってのはこんなちっこい姫ひとりの願いを叶える事が出来ない位「御立派」な力しか出せないのか~?守矢の奇跡も大した事ねぇな~♪」
「うむむ…」
「姫が扉の先で危ない目にあったらどうするのかな~?心配だから付いていきたいっていう臣下の忠義心をよりにもよって神に支える巫女が邪魔するなんてな~♪」
「正邪言いすぎだよ…」
笑顔でおちょくる正邪。そして早苗は、
「……あ~も~わかりましたよ!そこまで言うなら起こしてみせましょう!神奈子様諏訪子様の奇跡!」
留守番している立場も忘れて正邪の口車に乗ってしまったのだった。途端に態度が変わる正邪。
「そうこなくっちゃな!いや~流石は皆の味方守矢の神々様とその巫女様♪博麗の巫女とは大違いだね~♪あ、その前にさっき言った通り姫の道具や家財は外しときましょ。はいはいちょっとどいてくださいね姫♪」
「なんか御免ね早苗…」
「いーえ大丈夫です!全く心配ありません!」
…そしてせっせと籠から針妙丸が使っているお人形サイズの布団やちゃぶ台や鏡台等が外される。残っているのは小さいねこやの扉だけ。
「よ~しできた♪それじゃあ姫お願いしますね♪」
「ふ~…針妙丸さん、お願いします!」
「ほ、本当に大丈夫かな〜?どうなってもしらないからね〜!」
「大奇跡!「八坂の神風」!!」
早苗は精神を集中させて呪文を唱え、針妙丸が今は自分の身体位ある小槌を受け取り、フラフラしながらその場で振るった。
カッ!!!!
「うわ!」
「「きゃあ!」」
小槌の光が一層強くなり三人は目を閉じた。
…………
「……え、えっと何が起こったんでしょう…?」
「…!お、おい!」
そして数秒後、徐々に光が収まり、再び三人が目を開けると前には自分達が通れるサイズになったねこやの扉が鎮座していた。
「やった!「失敗」だぜ「失敗」!」
「流石は神奈子様諏訪子様の奇跡!」
「……」
喜ぶ正邪と早苗。一方針妙丸はというと妙に落ち着いている。
「どうしたんですか針妙丸さん?」
「ふたり共、周りをよく見てみてよ…」
「え?……ええ!」
針妙丸の言葉の言う通り周りを見渡すと、自分達が彼女の虫籠に入り込んでいるのが見えた。もしや籠ごと大きく?いやというよりは…、
「こ、こりゃあ…」
「もしかして…」
「みたいだね…」
不思議な事が起こった。小槌の力が開放された瞬間、扉が大きくなったのではなく、その場にいた早苗、正邪の身体が扉サイズに小さくなってしまったのを理解した。しかも小槌を振った針妙丸自身も元より更に小さくなってしまった。
「ど、どうなってんだよ守矢の巫女!なんで扉が大きくじゃなく私らがちっちゃくなってんだ!?」
「わわ私だってわかりませんよ~。だからやめた方が良いって言ったじゃないですか~」
「私…もっと小さくなっちゃった…」
予想だにしない出来事に流石に困惑する三人。正邪も真面目モードである。
「ったくどうすんだよコレ~?もとに戻れるんだろうな~」
「どうですかね神妙丸さん?」
「う~ん半永久的に続く事は無いと思うけど何時効果が切れるかはわからないなぁ…」
「……だ~もう考えても仕方ねぇ!一応姫と一緒に行けるようになった訳だし、こんな状況だけど取り合えず行ってみないか?この扉の先によ。なんのために小槌使ったのかわからないし」
「う~んそうですね~…私は別に構いませんが。神妙丸さんはどうしますか?」
「…私も行くよ。これが本当に美味しい食べ物のお店に繋がってるなら食べないと浮かばれないや。死んだわけじゃないけど」
「よっしゃ♪じゃあ行ってみようぜ〜♪」
「こんな時でも正邪は相変わらずなんだから…」
「ごめんなさい霊夢さ~ん。後で謝りますから~!」
そして早苗らはねこやへの扉を開けた。
…………
~~~~♪
そして前回の最後に至るのである。
「あ、いらっしゃいませ~!(ませ)」
「…あれ、アンタ達!」
「あ、霊夢さん!」
「げっ!博麗の巫女!…ってなんだこりゃあ!?」
「うわ~すごーい!なにココ~!」
目の前の光景に驚く正邪と針妙丸。一方早苗はそこに霊夢、プリズムリバー姉妹がいた事に驚く。
「あ、正邪に針妙丸さんだ」
「早苗さんも一緒なんて珍しい組み合わせですね」
「ルナサさん達もいらっしゃってたんですか」
「帰る途中で会ったのよ。…てかなんでアンタらが来てんのよ。留守番頼んでいた筈なんだけど?」
「い、いやそれが…」…かくかくしかじか…
「……全く馬鹿な事したもんね。てか小さくなったって言ってる割にはアンタらなんともないじゃないの」
針妙丸達が自分達の姿を見てみるとそれぞれ身体の大きさが小槌を使う前の大きさに戻っていた。
「お、おお!元に戻ってるぜ!」
「おかしいな~、いくら何でもこんな早く戻らないと思うんだけど…」
「こっちの世界に来た影響かしら?…てかアンタらがこっちに来たって事はうちがら空きって事じゃない!」
「心配すんな博麗の巫女!お前がいない間「だーれも来てなかった」ぜ♪…ん?」
「はいはいそうですか。じゃあ誰も来てない内に一刻も早く帰るとしますかね。それじゃあご馳走様。また扉見かけたら来るわね♪」
「ご馳走様でした」
「またね♪」
「また来るからね♪」
「はい!」
(またのお越しをお待ちしております)
「…ああ、そうだわ天邪鬼。ここはアンタにとっちゃ結構楽しい場所かもしれないわよ♪」
~~~~♪
妙な笑みを浮かべながら霊夢が最後に扉を閉じた。
「…何言ってんだ霊夢の奴?」
「お久しぶりです皆さん!」
「いらっしゃい早苗さん」
「はい、サナエさんもお元気そうで!そちらの方々はお友達の方ですか?」
「ええまぁそんな感じです。ふたり共、こちらはこの異世界食堂の給仕さんでアレッタさんとクロさん、そして店主さんです」
「…異世界」
「食堂ぉ?」
「ええ。私がここ異世界食堂にしてねこやの店主です」
「アレッタといいます!宜しくお願いします!」
(…クロと申します)
「!?な、なんだ?今頭に声がしたぞ!」
「え、えっと不思議だけど…とりあえず自己紹介しようかな?私の名前は少名針妙丸!貴女達からはあまり高貴な雰囲気はしないけど私は差別はしないから安心してね」
「こんなにちっこいがれっきとした姫だからな。丁寧に扱えよ。守矢の巫女はもう知ってるらしいから次は私か、しゃあねぇ有難く聞きなよ。反逆の暗黒英雄、鬼人正邪だ。お前ら、早速だが」
この時早苗と針妙丸は嫌な予感がした。彼女の事だからわざと好まれない言い方をするに決まっていると。止めようとしたが彼女の口の方が少し早かった。
「私と「友達」になれ!」
…何もおかしな事は無い。極めて自然な流れの会話。その場にいる約三名を除いては。
「え?」
「正邪?」
「…って、あ、アレ?私今なんで」
「はい!ありがとうございます!私も皆さんとお友達になりたいです!」
「え、い、いやあのそうじゃねえ。そうじゃないんだけどそうじゃなくって!」
(あ、あれ~何か調子悪いな~?さっきも姫をおちょくるつもりが普通にちっこいと言ったし)
「シンミョウマルさんはリリパットかハーフリングの貴族様ですか?」
「え?リリパットを知ってるの?」
「はい。よく来られますよ」
「へ~そうなんだ。会ってみたいなぁ」
~~♪
とその時、早苗達の後ろで再びねこやの扉が開く音がした。ほんの少しだけ開いた扉の隙間からは誰も見えない、と思ったが、
小人達
「「「「トコトコトコトコトコ…」」」」
そうではなかった。針妙丸よりももっともっと小さい、人の掌に乗る位の大きさの者達が列を作って扉の隙間からトコトコ入ってくるのが見えた。すぐ傍で見ていた早苗達も予想だにしなかったその光景にポカンとしている。
「「「……」」」
「いらっしゃい」
「皆さんこんにちは!」
「今日も世話になる異世界食堂の方々!」
「ねぇ早く早く!」
「早くホットケーキ食べたい!」
「急かすんじゃないよ!店主さん達も困ってんだろ」
「いえいえ、はいよ。少々お待ちください。取り敢えずいつもの様にお席にお連れしますね」
言うとクロがトレーを持って既に準備していた。それを小人達の前に出すとピョンと飛んだり頑張って跨いだりして乗る。そしてそのままテーブルに運ばれていく。店主も続けてトレーを持って運ぶ。
「高い高い!」
「毎回俺これ少し緊張するんだよな」
「たく大の男が情けないねぇ」
「な、なんだあのちっこいのは…?」
「可愛らしいですね〜♪」
「……」
トントン
そんな針妙丸の足にトントンという感触があった。叩いていたのはリリパットの少年少女。
「ねえねえ」
「え?わ、私?」
「お姉ちゃんもリリパットなの?僕達よりも大きいけどハーフリングっ感じじゃないね」
「う、うん。私もリリパットだよ。あと一応女の子」
「へ~そうなんだ~!なんでそんなに大きいの~!?」
「こーらポコ、アム。よそ様に迷惑かけてんじゃないよ。すいませんうちの子が」
「迷惑なんかかけてないよ。ねぇお母さん!このお姉ちゃんもリリパットなんだって!」
「へ~こりゃあ驚いた!こんなに大きなリリパット族は初めて見るよ。アンタどこの生まれだい?」
「ねぇお姉ちゃん!僕達と一緒にホットケーキ食べようよ!」
「私もお姉ちゃんとお話してみたいな〜」
「勝手に決めるんじゃないよアンタ達」
「是非一緒に食べましょう!」
「おう、なんか「面白そう」だしな♪…てあれ?だから今のは面白くないって言うとこだろ!」
どうやらポコとアムという兄妹は針妙丸がとても気になる様だ。対する早苗と正邪もすっかりその気である。かわいいのが気になるのはこの年頃の少女には共通らしい。
「私は別にいいけど…」
「「やった~!」」
「…しょうがないねぇ。長に聞いてみないと」
……店主調理中……
…………
「へ~お姉ちゃん達は僕達の世界とは別の人達なんだ~。凄いなぁ~!」
「お姉ちゃんは同じリリパットなのになんでそんなに大きいの?どうすれば大きくなれるの?」
「ねぇなんでそんなもの被ってるの?あとその服は何?時々見るあの剣士さんのに似てるけど」
「これは着物っていうんだよ。あとこれはお椀っていって私のある種トレードマークというか」
その後、ひとつのテーブルでは幻想郷組とリリパット達の交流会が繰り広げられていた。針妙丸には椅子は大きいのでテーブルの上に直接座っているが子供、特にポコとアムから大人気で質問攻めになっている。当の針妙丸は困惑気味だが嫌な気分はしていない様だ。住む世界が違うとはいえ、同じ小人族に会えたのが嬉しそうだった。
「いやいや異世界の方が最近来られるのは知っておりましたがまさか我らと同じ種族までおられるとは」
「そうだろうそうだろう。しかもあの方は小人族の姫だからな。恐れおののけ♪」
「正邪さんが自慢できることじゃないでしょう」
「お姉ちゃん達も外の世界の人達なの?」
「ええそうです!幻想郷の東風谷早苗です!初めまして!」
「天邪鬼の鬼人正邪だ。覚えておけ♪」
「あまのじゃくって…何?」
「ふふん!「人が嫌がる事を進んで受け、喜ばせるのを生きがいとし、慕われる事に喜びを得る」妖怪だ♪」
そう言い切る正邪。
「ふ~んつまりはいい人なんだね~!」
「お姉ちゃんすご~い!」
「!!??い、いやいやそんな事無ぇ!私は本当はそんなんじゃなくってだな!」
「…正邪さんほんとにどうしたんですか?」
「私が一番知りてーよ!」
とそんな事をしているとアレッタとクロがとある料理を持ってきた。
「お待たせしましたー!ご注文のホットケーキです!」
(チョコレートパフェです)
早苗の前に出されたのは以前も食べ、彼女にとって思い入れがある今日も白き山を思わせるチョコレートパフェ。そして針妙丸と正邪、リリパット達の前に出されたのはホットケーキたる茶色く焼かれた円形の柔らかそうなものが二枚重なった様なもの。上には四角く切られた牛酪が乗せられ、その横には三色の蜜の入った銀色の小さい容器達が添えられている。
「「「わ~い!!」」」
「毎回この焼きたての匂いがたまらねぇんだよなぁ~!」
「こ~れ、ちゃんと切り分けてからだよ」
「これがホットケーキってやつか?見た目質素だけど匂いは悪くねぇじゃねぇか」
「待ってましたよ♪ホットケーキも懐かしいですね~」
「早苗は知ってるの?」
「ほんと少ないですけど子供の時に母が作ってくれた事があるんです」
「じゃあ切り分けますね!」
「おお頼むぞアレッタ殿!」
村長がアレッタにホットケーキの切り分けを頼み、アレッタが行おうとすると針妙丸がアレッタに言う。
「あ、アレッタだっけ?私にやらせてくれないかな?いつも霊夢や正邪にやってもらってるからこういうの一回やってみたかったんだよね♪」
「ではお願いしますね!」
針妙丸にアレッタがナイフを渡す。アレッタからしたら小ぶりのナイフだが針妙丸からすれば両手剣といってもいいサイズだ。それを皆のリクエスト毎に細かく切っていく。
(うわぁ…いい匂いだなぁ…)
ナイフを入れると刃がすんなり通るふわふわした感触。更に切ったそこから漂ってくる甘い匂い。更にそこに溶けた牛酪がしみ込み、より香りを増している。
「うんしょ!うんしょ!」
「「「お姉ちゃんがんばれ~!」」」
「なんか姫が可愛いな♪…ま、まただよほんと。一体どうなってんだ私?」
そうこうしている内にリリパット達のホットケーキは切り分けられた。大小様々な大きさに切り分けられたそれはケーキを分ける係によって其々に行きわたる。
「感謝するぞ。異世界のリリパットよ。…さて、皆恵みをもたらす大地の神に感謝し、頂くとしよう」
長がそう言った頃には既に多くのリリパットがホットケーキを食していた。家族、恋人、友達同士で其々お気に入りの味を交換したりしている。
「ねぇお姉ちゃん!これはチョコレートが美味しいんだ!」
「あ~ずるいお兄ちゃん!私はジャムが好きなのに~!」
「あはは、じゃあどっちも仲良く食べようか」
言われて針妙丸は自分の両手で持てるサイズに切ったケーキにまずチョコレートという黒いものをかけて食べてみる。ナイフで切ってて既に知っていたが口の中でもふんわりと柔らかく、いい香りと優しい甘さと温かさがする。更にそこに甘みとほんの少し苦みがあるチョコレートをつけて食べるとより甘みが増す。
「…美味しい!このチョコレート?ってやつ見た目に反して凄く甘くて美味しい♪」
続いてアムおススメのジャムというものも食べてみる事にする。今日はふたりの母親曰くベリーのジャムらしい。早速つけて食べてみると果実を思わせる甘酸っぱさ、これもホットケーキのシンプルさとよく合っている。
「これも甘酸っぱくて美味しいね!」
「「でしょでしょ!」」
「へ~、私の食べた時は蜂蜜とかだったんですけどそんな食べ方もあるんですね~」
「色々な味で食べれるって飽きなくていいな。じゃあ私はまずこれで食ってみるか。蜂蜜かな?」
思った正邪は茶色に輝くそれをホットケーキにかけ、ナイフで切って一口食べる。
それは蜂蜜ではなかった。甘いがほんの僅かにしょっぱさ、そしてかいだことがない香りが口に広がる。チョコレートやジャムという物よりも柔らかく、ケーキに良く馴染んでいる。
「…これは蜂蜜じゃない。でもなんだ…?何か木みてぇな香りがして、ほんの少し苦いけどそれ以上に甘くて、なんか複雑な味わいだがうめぇな♪」
「お?アンタわかるじゃないか。そうだよホットケーキを一番味わえるのはやっぱこのメープルが一番だよ♪」
「このホットケーキってのがあんまり甘くねぇから色々な甘味つけても合いそうだな。なぁ早苗、ちょっとそれもらうぜ♪」
「あ、正邪さんずるい!」
正邪は早苗のチョコレートパフェから取った生クリームをケーキに乗せてみる。勿論これも合う。自分の言葉の異変の事をすっかり忘れ、ホットケーキの味に満足していた正邪だったがこの時正邪は思った。料理達をひっくり返すイタズラをしようと。
(思えばさっきから言葉がおかしくなってんなら最初からこうすりゃ良かったじゃないか♪……?あ、あれ?)
正邪は言葉に出さず自らの能力を使おうとした。…しかし、何も起こらなかった。
(お客様)
その時、いつの間にか正邪の後ろにいたクロが彼女に話しかけた。彼女の顔色は普段と全く変わらないがそこからは何とも言えない様な凄まじい何かが発せられているのを正邪は感じ取る。一方隣の早苗は平然としている。正邪にしか伝わってないらしい。
(どうかされましたか?)
「いいいや何でもない!何でもねぇよよよ!?」
クロは(そうですか…)というと下がっていった。
「どうかしました正邪さん?」
「…なぁ早苗、お前のその白いやつちょっともらうぞ」
「あ~正邪さんまた~!私もちょっとホットケーキもらいますからね!」
正邪は若干青い顔をしながら早苗のパフェのアイスクリームを掬い取った。
「お姉ちゃんのお友達って面白い人達だね~」
「アハハ…。でも、うん、いい友達だよ」
……少女食事中……
…………
「ありがとうございました!(ました)」
「今日もも世話になった!」
「メープルもありがとな!これでまた次まで美味いパンが食えるぜ!」
「また会おうねお姉ちゃん!」
「約束だからね!」
「うん!ポコもアムも元気で!」
「こちらお土産のサンドイッチとシャンパンのボトルです」
「わ~!ありがとうございます!…どうしました正邪さん?」
「…な~んか知らないんだけどこの店、私には慣れる時間が必要だわ」
「私は正邪が心変わりしたみたいで嬉しかったんだけどな~」
「それは無いですよ姫~」
「でも正邪さんもそう言いながら悪い気はしなかったんじゃないんですか?」
「う~ん………まぁな…」
幻想郷ではどちらかというと嫌われている彼女だが周りからいい人として見られるのは経験が無い事もあってなんとも言えなかったが不思議と悪い気がしないのも事実であった。
(は!いかんいかん!もしやこんな風に思うのもここの影響なのか?)
「は、早く帰りましょ姫!ほら随分長居しちゃいましたし私達は留守番してるでしょ!」
「あ、そうだね。まぁもう霊夢帰ってるけど」
「それじゃあ皆さんお世話になりました!」
「いえいえ。皆様のまたの来店をお持ちしております」
…………
~~~~♪
ドンガラガラガッシャーン!!!
扉を開けた瞬間、続け様に突然派手な音が鳴り響く。
「イッタタタ…な、なんだ一体!?」
「な、なにが起こったんですか~!?」
「…むぎゅ~」
正邪と早苗は驚き、ふたりに伸し掛かられた状態になった針妙丸。そしてそんな彼女らを居間から霊夢が呆れ顔で見ていた。
「……アンタら何やってんのよ」
「あ、霊夢さん!た、只今戻りました~」
「お、おい!私達に何があったんだ今!」
「何がもそもそもアンタら突然そいつの部屋から飛び出してきたんじゃないの」
よく見ると自分達の身体の大きさが元に戻っていた。
「お、おおこっちでも元に戻った!」
「ですが針妙丸さんの籠が…」
どうやらねこやの扉から出た瞬間小槌の力が切れ、身体が戻ったらしいがそれに巻き込まれる形で神妙丸の部屋がバラバラに壊れてしまっていた。
「私の鳥籠が~…」
「す、すみません針妙丸さん…」
「やれやれお部屋が壊れてしまって「羨ましい」ですね~♪………アレ?」
正邪は今の自分の言葉にきょとんとする。
「やったー!やっといつもの調子に戻った!」
「ひどいよ正邪~」
「…あ。い、いえ違うんです!本当にちょっと可哀そうと思ったんですって!姫の泣き顔が「面白い」なんて思ってなんか」
「正邪さん今は喋らない方が良いかもしれませんよ!」
落ち込む神妙丸、宥める早苗、そして突然戻った自分の言葉に今度は困惑する正邪。そんな彼女らをよそにお茶を飲む霊夢。今日も幻想郷は平和だ。
…………
その日の夜の霊夢。おみやげのステーキサンドとビールで夕食中。
「…もぐもぐ。ふっふっふ、正邪のあのあたふたした顔笑えたわね~♪こういう事が心配だったから念のために用意しておいて良かったわ。まぁ私の力ならこんなもんよ♪…紫達にもちょっと力借りたけど」
(はいコレ。家の霊験あらたかな御札よ。商売繁盛のお守りに置いといて♪ メニュー11より)
(博麗と八雲の護符(特注))
霊夢と紫、藍らの共同制作である特注の護符。範囲は非常に狭いがこれのある場所での生き物に対する幻想郷の住人によるあらゆる攻撃的な能力や悪意を感じとり、それらを封じ狂わせる。紫の能力で札そのものを結界で包んでおり、力を感じ取れなくしている。以前チルノやはたて、今回の正邪の能力が封じられたのはこの力が働いた事にもよる。幻想郷と外の世界と異世界の間にいざこざを起こさない様にと霊夢達が用意した。悪意が無いものや物体に向けては効かないので霖之助や小鈴等の力には不向き。
「次行けたら何食べようかしらね~」
そんな事を考えながら霊夢の夕餉は続いた。
メニュー25
「一角猪肉のテリヤキとショウガヤキ」
正邪の能力を描くのは難しいですね汗。
こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。
-
あれば読んでみたい
-
不安なので読みたくない