(~~~食べ放題?)
「それって以前やったバーベキュー食べ放題と同じ様なものですか?」
「ああ。あれは爺さんの考案だったがたまには全く新しい事をやってみようと思ってな。バーベキューより色々な味が楽しめるぞ」
「それは楽しみですね!」
「……となるとレオンハートにもっと注文しとくか」
(お酒?)
「間違いなくいつもより酒が減りそうな気がするしな。ははは…」
博麗神社
「大分紅葉も少なくなったわねぇ」
「もう冬も近いもんな〜」
「まぁいいじゃないの。ちらほら残ってるそれを見るのも」
その頃、博麗神社の縁側では冬が近づいて残り少ない秋色を見ながら酒を嗜む三人の姿が。ひとりは霊夢。ひとりは魔理沙。そしてひとりは先週妖夢の師を務めていた茨木華扇。
ヒュゥゥゥ…
「う〜今の風は寒かったわね!上着着て来ればよかったかしら」
「もう冬も近いもんな〜(2回目)」
「仮にも仙人がこんな寒さで情けないわねぇ」
「仮じゃなくてちゃんとした仙人よ。仙人でも苦手なものはあるものよ」
「そういう霊夢だって幽々子の件の時ずっとこたつで蹲ってたじゃんか」
「もしもの時のために栄養を蓄えていたのよ」
「物は言いようだぜほんと。それはそうと華扇、お前先週ねこやに行ったんだって?妖夢から聞いたぜ」
「ええ。うちの庭に扉が現れてね」
「出たんなら誘いなさいよ薄情ね〜」
「突然私が来たらいつも逃げ出すでしょ?」
「はは、違えねぇ。今回は何処にでるかな〜」
「出る場所が増えてるみたいだからまたうちに出てくれないかしらね〜」
(…まさかあそこに出たりしないかしら。可能性は無いことないか。出たとしたら間違いなく行くでしょうね。迷惑かけないといいけど…)
「どうしたんだ華扇?」
「いいえ何でもないわ。それよりも寒いから身体を動かしましょうか霊夢…ってもういない!」
「霊夢なら考え込んでる間に「あ、嫌な予感がする」って逃げたぜ。あいつのこういう勘は当たるからなぁ」
…………
「旧地獄」
博麗神社や守矢神社、紅魔館や白玉楼や迷いの竹林、人里等多くの場所が点在している幻想郷だがそんな幻想郷の地下には巨大な地下空間が存在する。それが「旧地獄」である。旧という字が付いている理由は本来はひとつの地獄であったのだが、地獄の管理者でもある閻魔が地獄をよりスリム化しようと計画し、ふたつに分裂させた。そのうち閻魔や特殊な妖怪達が移住したのが「新地獄」、元々あった地獄が「旧地獄」となった。その際多くの施設が新地獄の方に移ってしまったために残された旧地獄は最初廃墟同然の状態だった。更に残された怨霊達で溢れかえる場所になり、誰も手が付けれない有様だったがそれも昔の話。今は多くの妖怪達や霊によって立て直され、一大都市みたいな場所となっている。
一本角の長い金髪が生えた大柄な女性
「な、いい案だと思うだろ?」
古明地さとり
「確かに魅力的な話ではありますが…」
そんな旧地獄のとある場所で大柄な女性と少女が話合っている。小柄な少女は古明地さとり。以前異世界食堂に迷い込んだ古明地こいしの姉にして旧地獄の中心的施設である地霊殿の主。
もうひとりは額から赤い角が伸びた長い金髪。手首に鉄の腕輪を付け、体操服を思わせる服に変わったロングスカートを履いている女性はなにかをさとりに力説している。
「ここも昔よりもっと多くの人妖や妖怪が来るようになった。温泉街も最早昔みたいな瓦礫だらけの陰気臭い場所じゃない。前に間欠泉問題が起こってから温泉もより出てきやすくなった。でも小さい温泉はあちこちあるけどそれをもっと活かした目玉になる様な施設みたいなもんがねぇだろ?」
「それで宿泊や買い物も日帰りで遊ぶこともできる一大巨大温泉施設という訳ですか。前に外の本で読みましたが「テーマパーク」や「レジャー」でしたっけ」
「名前は知らないがまぁそうさ。ここもより盛り上がる事間違いなし!もっと多くの客が地上から来てくれるかもしれないだろ?」
「しれないですか…便利な言葉ですね。確かに今は昔と比べて地上地底の互いの不可侵条約が緩くなっていますが…ここはただでさえ強力な妖怪や地霊が多い場所。ひとつ作ったところでそれ程大きな変化があるでしょうか。ましてや人間が来ることは絶対あり得ないでしょう?」
「まぁ勿論最初はそれほど変わらないだろうさ。工事期間も相当かかるだろうしな。しかし完成すれば利が大きいのも確かだよ。例え人間が来なくても興味を持った奴らが来てくれればそれだけでも価値はある」
「宣伝はどうするのですか?」
「守矢に協力をとりつける。間欠泉問題はそもそもあいつらにも原因があるんだし前に似た様な事して博麗の巫女に止められたろ?あと里では鈴奈庵や香霖堂とかを使うつもりだよ。あそこなら妖怪とか稀に人間も来るだろ?」
「ほう、結構考えているのですね…」
「さっきアンタも言ったがここは普通なら誰も来たくない場所だよ。地底の奴等の中にも虐げられる可能性がある地上と関わりを持ちたくないって思う奴らは大勢いる。しかしそれじゃ地底は緩やかに衰退するだけだ。ほんの何十年の間に地上は色々できてる。ならうちらもこの地底のために何かすべきだと思うんだ」
熱心に説明する女性。
「……地底のため、ですか。そう言われては断りにくいじゃないですか」
それを聞いた女性はニカッと笑った。
「じゃあ…」
「…私も生粋の地底っこですしね」
…………
二本角の少女
「お疲れ勇義~♪」
金髪のポニーテールの少女
「お疲れ様です~♪」
その後、やりとりを終えた勇義という名前らしい女性はどこかの屋根の上で知り合いらしい者達と酒を酌み交わしている。
ひとりは子供程の背で背丈ほどもある長い茶色い髪にねじれた二本の角が生え、女性と同じ様に腕に鉄の腕輪。白い服に紫のスカート。そして腰には色々な飾りを付けた瓢箪を付け、少女はずっとその瓢箪に口を付けている。酒を飲んでるのか酔っ払っている様だ。
もうひとりは金色の髪をポニーテールにした髪型で茶色いリボンをつけ、黒い服の上にゆったりとした黄色いスカート。その上から黄色い帯が巻き付いている変わった服装の少女である。
「全く面倒な説明を私ひとりに押し付けて気楽なもんだねぇ…」
「だってしょうがないじゃないですか~。私はさとりさんちょっと苦手ですし萃香さんは酔っ払って説明ができないし」
「その通り~。こういうのは勇義でないとね。年長者だし~」グビグビ
「歳を言うならアンタもそう変わらないじゃないか萃香」
「でもほんと心が読めるさとりさんを相手に良く許可下りましたね。少しでも変な考えがあれば却下されそうなのに」
「きっと勇義の熱意が伝わったんだね~」グビグビ
「ここを賑やかにしたいってのは嘘じゃないからね。そこんところはあいつもわかっての事なんだろさ。まぁあくまでも許可が下りただけだけどね」
「費用も人員も協力してくれるって言ったんでしょ~。ならあとは時間だけじゃん。気長に待とうよ~」グビグビ
「そうだね。…あ~一仕事終わったら腹が減ったよ。なんか食いに行こうかね」
「こういう時にか…あいつが言ってたあの扉が現れてくれたら酒のいい肴が食えそうなんだけどね~」
「扉って…もしかしてあの「ねこや」っていう外の世界のご飯食べられるとこですか?」
「何だヤマメ知ってんのかい。前に知り合いが行ったって聞いてねぇ。ここが何とも美味い酒と飯が出るとこらしいんだ。一回行ってみたいねぇ」
「旧地獄にも出てくれないかな~」
桶に入った少女
「お~い皆~」
とそこにまたひとりの少女がふわふわ飛んできた。桶に入った緑髪の少女だ。因みに桶には綱がかかっているがどこから伸びているのだろう?
「キスメじゃん。どうしたの?確か今日はパルスィと一緒に穴の見張り番でしょ?」
「う、うん。そうなんだけどついさっき穴の出入り口に突然見た事無い扉が現れてさ。でも誰も出てこないし、なんか不安だから皆を呼んで来ようと思って!地霊殿にも相談したほうがいいかなぁ…?」
するとそれを聞いた途端突然勇義と萃香というふたりが突然立ち上がり、
ガシッ!
「「え?」」
「ふっふっふ…来たね来たねぇ。行くよ萃香!」
「あいよ〜!」
「え、え?て、わわ!」
「ちょ、ちょっと引っ張らないでぇ~!!」
高速で駆けていくのだった…。
…………
ビュゥゥゥゥ……スタ!
金髪で緑色の目をした少女
「…あ、皆」
「よぉパルスィ。お勤めご苦労さん」
彼女らがやって来たのはとある長い橋。ここは旧地獄への入り口でもある。地上から地底には広く長い縦穴を抜け、抜けた先にある長い橋を渡る。それがこの橋という訳だ。そしてその橋を守る役割を受け持っているのが勇義達を迎えたこの少女。金髪をショートボブに揃え、目は緑色をしている。加えてほんの少し耳が尖っているのも特徴だろうか。
「し、死ぬかと思った…」
「全速で引っ張らないでくださいよも〜」
「そんでそんでパルパル〜。扉どこ扉〜?」
「あそこ…」
少女が指差した先にあったのは橋の丁度真ん中あたりに不自然に立つ扉。猫の看板が掛けられ、「洋食のねこや」と書かれている。
「なんなのアレ…。むかつくわねぇ、私の守りを潜り抜けて突然我が物顔で現れ」ガシッ「…え?」
「早速行ってみようかね!」
「賛成~♪あ、でもその前に」
萃香という少女が口笛を吹くと…ひとりの妖怪がやって来た。彼女らと同じく角が生えた妖怪。
「他の鬼達に伝えな。私らは少し出かける。その間地底の見張りを頼んだぞ」
妖怪は頷くと直ぐに姿を消した。
姿から想像できるかもしれないが勇義と萃香、ふたりは「鬼」である。頭に角、鋭い牙と爪が生え、筋肉隆々な姿が一般的な姿として知られる「鬼」は人々に最もよく知られている妖怪と言っても過言ではない。地獄の閻魔の元で亡者に罰を与える、人里離れた場所で暮らして人を食う等邪悪なものとして書かれる事が殆どだが、地域によっては邪悪なものから守護する神聖な存在として書かれる等その姿は多種多様である。そんな「鬼」である彼女らは元々は地上の妖怪の山で暮らしていたがいつしか地上の暮らしを捨てて地底を自らの拠点とした。今は地底の妖怪や霊達を統治し、治安を守る役目を担っている。
「これでよし。んじゃ行こうか皆~♪」
「わ、私達も行くんですか!?」
「なんなのなんなの一体!?」
「いいからいいから。酒ってのは大勢で飲んだ方が楽しいもんだ♪」
そう言いながら橋守の少女を担ぎながら勇義は扉を開けた。
…………
~~~~♪
少々乱暴に開かれた扉。その扉の先には地底のそれとはまた違う明るくて温かい、そして
「こっちに盛り合わせ三人分頼むぜ~!」
「こっちも二人前頼む!」
「ビールも大ジョッキで頼むぞい!」
「は、はいただいま~!」
何時もよりも熱気に包まれたねこやがあった。
「え~~!ななな、なんなのココ!?」
「み、見た事無い妖怪で一杯~!」
「皆あんなに楽しそうに。…全く、全く妬ましいわ」
動揺してるキスメ、アヤメ、パルスィ。対して勇義と萃香のふたりは楽しそうだ。
「お~お~盛り上がってるねぇ。大歓迎だよこういうの♪」
「美味しそうな匂いがするね~。においだけで酒が進みそうだ♪」
「あ、い、いらっしゃいませ~!直ぐに伺いますので少々お待ち」
「おーい追加の注文を頼むー!」
「は~い!」
(アレッタ、私が行く)
そう言って彼女らの元にクロがやって来た。
(いらっしゃいませ)
「…え?今なんか言ったキスメ」
「ううん私じゃないよ」
「ほ~これは不思議な術だね。まるでサグメみたいだ。ねぇ、ここがねこやっていう外の世界の飯屋かい?」
(はい。…お客様。もしかしてレイムさん達と同じ世界の方ですか?)
「あれ~霊夢の事も知ってるんだね~。まぁ当たり前か。私は伊吹萃香。これでも鬼だよ~♪」
「私は星熊勇儀。こいつと同じく見ての通り鬼さ。勇義って呼んどくれ。ほら、アンタらも挨拶しな」
「は、はい!…キスメ、です。つるべ落としです!」
「わ、私は黒谷ヤマメ。土蜘蛛っていう妖怪よ。よ、宜しく」
「…水橋パルスィ。橋姫よ。…貴女、今凄く幸せそうね」
(…?)
つるべ落とし、土蜘蛛、橋姫。いずれも鬼と同じく日本では広く知られた妖怪達である。
「ねぇねぇ~それよりもさ。ここって「ビール」とか「ワイン」って酒が飲めるお店なんでしょ~?」
「前に知り合いが土産で持ってきたのを貰ったんだけど実に美味くてねぇ。おまけに飯もすっげぇ美味いらしいじゃないか。だから来たんだよ。今空いてるかい?」
「おう、それならこっち来いよ!」
その時勇義らに声をかけた者達がいた。
黄色い角が生えた大男
「こっちだこっちだ!」
同じ風貌の女性
「そんな大きな声出さなくとも聞こえるよアンタ」
真っ赤な肌の上に虎柄の簡素な服。ざんばらとした黒髪からすらりと角が覗く大男とその隣にはよく似た風貌の大女。見る限りとても豪快な性格らしいふたりであるのがよくわかる。
「相席になっちまうが一緒に飲もうぜ!」
(…宜しいですか?)
「うちらは全然構わないよ。郷に入ってはってやつだ。アンタらもいいだろ?」
言われてキスメらも頷く。早速五人は誘ってくれたふたりと同じテーブルに着くと、
「ほんじゃあ早速だけどあのビールってのお願いするよ!」
「あたしもビールってやつな。アンタらはどうする?」
「わ、私も同じのでいいです!」
「私も初めてですからお任せします」
「…同じく」
「おうクロのねーちゃん。俺とこいつもお代わり頼むぜ」
(承知しました。少々お待ち下さい)
言われてクロは人数分のビールとおしぼりを持ってくるため一旦下がる。
タツジ(ローストチキン)
「おれはタツジ。こいつはカミさんのオトラってんだ」
オトラ(ローストチキン)
「にしてもまさかここで同族に会えるなんて思わなかったねぇ」
「やっぱりアンタらも鬼かい。その風貌だしそうだと思ったよ。私は星熊勇儀だ。勇義って呼んでくれ」
「私は伊吹萃香。萃香でいいよ~」
キスメ、アヤメ、パルスィも自己紹介をする。
「おう、宜しくな!てかユーギとスイカはともかくお前さんらは聞いたことない種族だな。どこの生まれだい?」
「何言ってんだよアンタ。さっき言ってたろ?うちらとは別の世界の出身だって」
「幻想郷の事知ってんのかい?」
「前に他の客が噂してんの聞いたんだよ。そっちにもオウガがいるとは思わなかったけどさ」
「…おーが?」
「鬼の事さ。オニなんて古風な呼び方、東位しか知られてないんじゃないかねぇ」
とそこにクロが人数分のビールを簡単に持ってきた。
(ビールをお持ちしました。ごゆっくりどうぞ)
「わ~綺麗なお酒ですね。…わっ!冷たい!」
「ほんと!井戸水で冷やしているのかしら?」
「んじゃ早速乾杯の挨拶と行こうぜ♪」
「そうだね。かんぱ~い!」
計七人の黄金色のジョッキが「カァァンッ」とぶつかり、全員一気に飲む。
「…!び、吃驚した~!なんですかコレ!?」
「炭酸みたいな強い刺激…でもなんの雑味もないすっきりとしたのど越しと後味…。こんなお酒が外にあるなんて…羨ましい」
グビグビ…ドン!「かっはー!こいつはいい全身に染み渡る!お代わりだ!」
「水みたいに幾らでも飲めちゃうよ~♪私もお代わり!」
「あはは、良い飲みっぷりだねぇ気にいったよ。ビールだけでなくここにはあたしらおススメの焼酎とか、ウィスキーとか色んな酒があるんだよ」
「まぁ今回のメインは揚げもんだからビールが一番だけどな」
そう言うタツジとオトラの前の皿には食べ終えたらしい大量の串が乗っている。
「串にささった食べ物ですか?」
「今日初めて食ったんだがこいつも実にウメェ!ほら、他の奴等も食ってるだろ?」
タツジに言われて周りを見てみると確かに殆どの者が同じ料理を食べている様だ。
「これ美味しいねファル!ライスバーガーのきんぴらのテンプラみたい」
「…エルフでも食べれるフリットまであるなんて。何なのオカラパウダーって。これからも豆腐のにおいがするし、かといって同じものじゃないし、どういう事なのよ。それさえ分かればこれ位は私にもできそう…と言いたいけどそんな単純なものじゃないわね。あと醤油!やっぱりここでも出てくる!あーもうほんとなんて万能な調味料なの!」
「ファル〜。今はご飯を楽しもうよ〜」
「ほんと許さないんだから!アレッタ!野菜の串カツもう二人前持ってきて!」
「は、はい〜!」
「…ほう!こういう豚料理も美味いではないか!」
「こちらの海老や烏賊も実に美味ですね」
「この「うすたぁそぉす」とやら。いつも食っているお好み焼きのと比べて随分水っぽいが味の力強さは全く劣らんな!」
「ええ。かといって濃すぎるわけでもない。揚げたてのこの串かつとやらにたっぷりと染み込んで、実に見事ですね」
「…すまん同じのを、いや、しぃふぅどの串かつをもうニ人前頼めるか」
「…私は豚の串かつを」
「はいよ!少々お待ちください」
あちこちからおかわりを頼む声にアレッタもクロもてんてこ舞い。店主も先程から串カツの調理で忙しいのがわかる。
「に、人間が妖怪達にご飯作ってる!」
「嘘みたい…」
「まぁともかく酒とかは別料金だが今日はこの串カツっつう料理が同じ額払えば食べ放題なのさ♪」
「ほぅ、そいつはいい事聞いた♪。んじゃ私もその串カツってのを頼むとするかね」
「あたしもそれでいいよ~」
(ビールお代わりお持ちしました)
「お、丁度いいとこに。なぁ、うちらもこの串カツってのを盛り合わせで頼めるかい?」
(俺達もお代わり頼むぜ!)
(かしこまりました。ご注文が多いので少しお時間を頂きますが宜しいですか?)
「いいよいいよ。飲んで待ってるから~」
言われてクロは下がる。因みにキスメやアヤメパルスィも同じ注文を頼んだのはいう間でもない。
「ねぇところでさ?アンタらの世界について少し聞かせてくれよ。どんなとこだい?」
「え、えっと、げ、幻想郷と言いまして…」
……店主調理中……
…………
「…という訳です」
「人間の住む世界と別けられたもうひとつの世界、でも人間がいなきゃ成り立たない世界か…。ほんでもってそのヨウカイ?っていうのは人間をビビらせるのに人間がいないといけないって変わった話だねぇ」
「うちらは人間の恐怖心が生み出した存在だから人間がいないと自分達もいなくなったのと同じなのさ」
「でも怖がらせるなら出てこなきゃいいんじゃねぇのか?」
「ずっと出てこないと人に妖怪なんていない、と思われてしまいますね。だからたまに怖がらせたりしないと駄目なんです~」
「忘れられたらいけないからね…」
「ふ~ん、魔物と違ってややこしいんだなそのヨウカイってのは」
「まぁ気持ちはわからなくもないけどね。うちら魔物も今でこそ人間や他種族と一緒に暮らす者も多いが昔は魔族と並んで最悪の関係だったからね」
「おまけに俺らは人間や他の魔物も食うオウガだからな」
「ひ、人食い!?も、もしかして妖怪も!?」
「ああ心配すんな。別にそんなもん食わなくても生きていけるし他にも美味い食いもんや酒もあるしな」
「お待たせしましたー!ビールと串カツ盛り合わせです!」
その時アレッタとクロがお代わりのビールと串カツという料理を持ってきた。皿に敷かれた油を吸い取る用の紙の上に乗せられたこんがりと揚がったきつね色の衣を纏う串カツ達。因みにこの時点で勇義と萃香はなんのつまみも無しにビールをもう数杯お代わりしている。
「来た来た~♪」
「マスターから串カツは本当なら一本ずつお出しするらしいのですが、ご注文が多いのでこういう形で申し訳ないとの事です」
「気にしなくていいよ。寧ろそんな上品な出し方されるよりこういう出され方の方が好きだ」
(こちらのウスターソースにつけてお召し上がりください)
「お代わりからはお好きなものを言っていただければご用意できますので。それではごゆっくり!」
「んじゃ酒も料理も出てきたとこで二回目の乾杯といくか♪」
「賛成~。乾杯は何回やってもいいもんだ♪」
そして再度「カァァン!」と乾杯をし、トラジは早速一本豪快に食べ、続けてビールを飲む。
「く~!やっぱ揚げたてはビールに最高だぜ♪お前らも食え食え!」
「いただきま~す!」
萃香が取ったのは海老の串カツ。それにウスターソースをかけて食べる。カリッと揚がった衣の中にプリプリとした海老の食感。衣に濃厚なウスターソースがしみ込み、絶妙の味わいを生み出す。そこにビールを一気に流し込む萃香。
「うま~い!これ一本で一杯行けるね~♪」
「海老なんて滅多に食べないですけど、こんなに美味しいものなんですね~!」
勇義が取ったのは牛の串カツ。肉の繊維質がしっかり感じ取れ、衣に隠された牛肉の旨味が口に広がる。ソースとの相性も抜群。凄く熱いが逆にそれがいい。勇義も一本で一気に一杯飲む。
「これはたまらんね!熱々のこいつをキンキンに冷えたビールで流す、最高だ!もう一杯!」
「揚げものなのに凄く軽いですね!」
「このソースというもの…。妬ましい位この料理に合ってる…!」
「こんな風に玉ねぎ食べるのは初めてですけどシャクシャクしててすっごく甘くて美味しいです!」
「これ何?…あすぱらがす?ちょっと青っぽいにおいだけど美味しい…。このべーこんって肉の塩気とも合ってる」
「レンコンもサクサクとしててホクホクしてて煮物とはまた違う食感です」
「で、でかい貝だねこれ。ホタテ貝?でも凄く美味しい。貝の美味しさが噛むと湧き出てくるよ」
「うお、なんだこれ!なんか伸びるぞ」
「ああそれはちーずっていうらしいよ。強い塩気で美味いだろ?」
他にも海老や牛肉と並んで人気の豚肉や鶏ささみ、黄身の味が濃いウズラ卵、ほんのりな辛味を感じるししとう、卵のプチプチが楽しいシシャモ、ホクホクとしたジャガイモやさつまいも等々色々食べるがどれも全て味が良い。そして様々な食感で楽しませてくれる。更に何よりもウスターソースがそのどれにも合っている。
「なんか一回一回このソースってのかけるの手間だねぇ。アレッタだっけ?ちょっと皿一枚持ってきてくれるかい?」
言われてアレッタが皿を持ってくると勇義はそこにソースの瓶を開けて全て流し込む。そこにたっぷりと海老の串カツを付ける。
「うん!やっぱりこれ位たっぷり付けた方が美味いね♪」
「勇義頭いい~♪あ、追加の串カツとビールお代わり!」
「は、は~い只今~」
既に10杯は優に超えているがそれでも全然飲むスピードは収まらない。とここで萃香が待ちきれなくなったのか瓢箪を取り出す。
「なんだいそれは?」
「あ、これはね~私自慢の「伊吹瓢箪」さ。こいつは無限に酒が湧き出るんだよ~♪」
「な、なんだってぇー!?なんてもん持ってやがんだ!」
「なんならアンタらも飲むかい?」
萃香は誘うがタツジとオトラは、
「あ〜…滅茶苦茶魅力的だが、でも遠慮しておくわ」
「へ~どうしてだい?」
「そりゃあおめぇ、俺もこいつも確かに酒は好きだし、幾らでも飲めるなんて羨ましい限りだがここに悪いしな」
「そうだねぇ。うちらは客として来てる訳だし、ちゃんと金を落として飲む事にするよ」
「み、見た目によらず律儀ですね。あ、ごめんなさい!」
「…貴方達鬼なんでしょう?鬼と言えば強力な妖怪。外の世界とはいえ店と人間に何故そこまで遠慮するの?」
パルスィ達の疑問にタツジとオトラは、
「自分で言うのもなんだが俺らは住んでる辺じゃ夫婦そろってちょっとは名が知れたオウガでな。若い頃は色々馬鹿やったもんだ。何度も討伐隊や他の魔物の縄張り争いに襲われた事があるが全部返り討ちにしてやった。今はそんな事も殆ど無くなったけどな。だが一応人食いの魔物にはちげぇねぇし、昔程ではねぇにしろ未だに恐れられてはいる」
「それはさっき聞いたよ~」
「そんなある日偶然からここの扉の事を知ってね。でも入ってみたら度肝抜かれたよ。場所もだけど何しろ伝説とも言われた武士や賢者、凄腕の騎士や魔導士やリザードマン、挙げ句の果てには大神官や王様までいたんだからね。とんでもない場所に来ちまったって思った。正直あん時ほど死を覚悟したのはそうないねぇ」
「き、聞くだけでも凄いですね…」
「だが俺らが恐れてた様な事は全く無かった。全員が俺等に目もくれず笑いながら飯を食ってた。人間も魔物もな。まぁ中には見てる奴もいたがそれだけだ。店主も全くビビらずに何も言わず俺等に美味い飯と酒を食わせてくれた。土産まで持たせてくれてまた来てくれと言いやがった。なんか妙に悪い気がしなくてな。初めての経験だった。居心地も良かった。それから定期的に通う様になったのさ」
「ほら、あそこに獅子の頭の奴がいるだろ?あれも上級魔族で恐れられる奴だったらしいけど普通の客として接してくれたのが嬉しかった、なんて言ったんだよ。今じゃ大人しいもんさ」
「ふ~んそんな経緯があったんだね」
「俺らにとっちゃここは安心できる数少ない場所だ。だからここに迷惑をかける様な事はしたくねぇんだよ」
(オトラの腹の中の子もいつか連れてきてやりてぇしな)
「り、立派な考えだと思います!」
「…まぁわからなくもないけどね。うちらもちょっと前になんだかんだあったけど今は博麗神社や守矢の宴会に呼ばれる位は付き合いができた。あれが無くなるって思うと寂しいしね。それと同じ様なもんか。そういう事なら私らもズルせずに素直に食事を楽しむとするかね。てな訳で、追加の酒と串カツ頼むよ~♪」
「私も~♪」
「私も頑張って食べます!」
「私も!」
「…私も付き合わざるを得ないわね」
「はっはっは!こりゃ俺らも負けてられねぇな!」
「こうなりゃどっちか潰れるまでとことんやるよ!うちらもお代わり!」
「は、はい~!(はい)」
その声を聞いた他のテーブルからも続々と注文の声が飛ぶ。幻想郷と異世界の酒豪達の飲み会はそんな感じでまだまだ夜まで続くのであった…。
……少女食事中……
…………
「お。お疲れ様で~す…」
(お疲れ様)
その日の夜、最後の客である赤の女王を送った後の疲れ切ったアレッタと涼しい顔のクロ。
「今日はお疲れだったなふたり共。…しかし店の酒という酒が全部無くなるとはなぁ」
(大丈夫アレッタ?)
「は、はい大丈夫です。お皿とジョッキの持ち過ぎでちょっと腕が痛いですけど」
「そういう事か。ちょっと待ってろ。ほら、湿布貼ってやるよ」
「あ、ありがとうございます」
そして店主がアレッタの腕に湿布を貼ってると、
「……」
「どうしたアレッタ?」
「い、いえ。子供の頃、私が怪我した時にお父さんが同じ様に手当てしてくれた事を思い出して」
「はは、そうか。俺には一生できない経験だな」
(マスターはあのフウフみたいにケッコンというものしないの?)
「あ~…まぁあれだ、人生色々ってやつさ」
「でも私にとってマスターはこっちの世界のお父さんみたいな人ですよ!」
「!…ふっ、ありがとな。じゃあ賄いにするか」
「はい!(はい)」
…………
守矢神社
一方その翌日、幻想郷では、
「…く~!前に飲んだシャンパンも中々美味いもんだったがこいつも美味いね。何より豪快に飲めるのがいい」
「わかるわかる。これは上品に飲む感じのお酒じゃないよね~♪」
「おつまみできましたよ~」
こちらも豪快にビールを飲んでるのは守矢の神である八坂神奈子と守矢諏訪子。そして早苗が作ってきたのは串カツ…に似せた天ぷら。
「ああありがとね。ほら早苗も飲んで飲んで♪」
「にしてもあの鬼達がうちに依頼してくるとはねぇ。しかも差し入れまで送って来るなんて」
「旧地獄につくる…れ、れじゃ~?、だっけ」
「どうしましょうか神奈子様、諏訪子様?」
「まぁ面白そうだししてあげてもいいんじゃない?地底にもうちの布教活動が広まるかもしれないしね」
そんな事もあり、まだまだ先ではあるが、後に旧地獄にアトラクションなり温泉なりグルメなり色々楽しめるトラブル付き?温泉施設ができる事になるのは余談である。
メニュー27
「デミグラス&チーズインハンバーグ」
自分がやっている東方のスマホゲームで旧地獄にできた温泉施設のストーリーがあったのでこの話を作りました。
次回はまた少し遅れます。申し訳ありません…。
こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。
-
あれば読んでみたい
-
不安なので読みたくない