おみやげ1「ステーキサンド&メンチカツサンド」
突然幻想郷に現れた異世界食堂「洋食のねこや」から戻ってきた霊夢達。霖之助と紫は一足先に帰り、魔理沙も最初家に帰ろうと思ったが、
「家に帰ってもひとりだし、折角だから一緒に土産食おうぜ♪」
と言って結局夕飯も一緒に取ることになった。霊夢も面倒くさそうな顔をしたが結局了承した。なんやかんや仲は良い。
「こーりんもおみやげ貰えば良かったのにな~。相変わらず堅物だぜ」
「ほんとほんと。紫の奢りになりすぎるのも申し訳ないって。私なら遠慮なく頂くわ」
「全くだ。さてさてどんなもんかな~」
ふたりは自分達が持ち帰った紙の箱を開ける。
霊夢は「ステーキサンド」。ねこやで自身が頼んだビフテキを厚手のパンで挟み、箱に収まるサイズに切りそろえたもの。肉の中はほんの少し赤みが残った良い焼き加減だ。
魔理沙が頼んだのは霖之助がねこやで注文した日替わり定食のメンチカツという料理を同じくパンに挟んだ「メンチカツサンド」。メンチカツの他に薄い葉野菜が一緒に挟まれている。あとお酒は自前の酒を用意した。
「やっぱり何度見てもお肉が分厚いわね♪」
「こっちも美味そうだぜ♪」
ふたりは「いただきます」をし、其々から一切れ取って口に運ぶ。ソース以外の味付けをシンプルに抑えているビフテキは肉の味を強く感じられ、先程食べたものと同じく歯で簡単に噛み切れる程の柔らかさ。噛む度に甘い脂を感じ、薄く塗られているらしいステーキソースと脂を吸ったパンと合わさってとても美味に感じる。
魔理沙のメンチカツサンドもミンチ肉の肉汁とみじん切りにされた玉ねぎの甘み、ほんのり香辛料の風味、そしてソースがたっぷりと塗られていて衣がしっとりとしているのがパンに良く馴染んでいる。
「ん〜そのまま食べても美味しいけどこういう食べ方もありね〜♪次行けた時もおみやげこれにしようかしら」
「メンチカツサンドも美味いぜ♪あとはこいつに合う酒があればもっといいんだけどな〜」
「…う〜ん確かに全くじゃないけど日本酒や梅酒って感じじゃないわね。あのおじいさんが飲んでたビール?ってお酒は合うのかしら。あれも一緒におみやげにできるか聞いてみよっと」
「なぁ霊夢、一切れ交換しよ〜ぜ?」
「嫌よ。欲しいなら次行けた時頼みなさい」
「え〜ケチ〜」
「ケチで結構よ。てかアンタに言われたくないっつーの」
お昼の時のやりとりをここでもするふたりの光景が遅くまで続いた。重ねるがなんやかんや仲は良いふたりである。
…………
おみやげ2「シュークリーム」
「…ごちそう様~」
レミリアとのケンカの後、フランドール達は咲夜が用意した夕食を食べ終えた。パチュリーの言った通りお腹が空いていた事もあってケンカは長くは続かず、フランドールの方から止めていた。しかしやはり連れていってもらえなかったのが不満なのか少し不機嫌な様子。
「お粗末様です。お嬢様とパチュリー様は本当にお夕飯は召し上がられないんですか?」
「ええ。もうねこやで食べたからいらないわ」
「…む~私も行きたかったな~む~」
「…変な声出すのは止めなさいフラン」
「パチュリーだってお姉様と同罪よ。置いていくなんて酷いわ」
「仕方ないじゃない。どんな場所かもわからない場所に貴女を連れていけないわ。もう大丈夫という事はわかったから次は行きなさい」
「それはそうだけど〜!」
どこか釈然としないフラン。とそれを見たレミリアが、
「…ま、デザート位なら入るかしら。咲夜、店主から頂いたおみやげ出してもらえる?」
「畏まりました」トコトコ…
「おみやげですか?」
「ああそういえば美鈴は気絶していて知らなかったのね。ねこやのおみやげよ。皆で頂きましょう」
「ほんと?やった〜!」
大喜びのフラン。とそこへ咲夜が何やら乗ったトレーを運んできた。
「お待たせしました」
「ほら、美鈴も小悪魔も座りなさい。貴女達の分も貰って来たわ」
「私達の分もですか!?」
「ありがとうございます!」
揃った彼女らの前に出されたのは…見た感じ何の飾り気も無い、小麦色の生地のお菓子。大きさは大人の拳位のサイズで、平面でなくパンみたいに膨らんでいる。
「な〜にこれお姉様?」
「「シュークリーム」っていうお菓子よ。知ってるでしょ?」
「お〜これがシュークリームなんですね。勿論知ってはいましたけど食べた事無いですね」
「咲夜が作らないのよね…こういうのは」
「直接手で持って食べるのはあまりお行儀が良くないので」
「でもパンは作るじゃないの」
「パンは手でちぎらないと仕方ありません。それにブレッドはナイフで切る事もできます。これはそれができないのでせめてという事で紙ナプキンを置いてあります」
「はいはいありがとう。では頂きましょうか。ちょっと下品だけど直接かぶりつくのが一番美味しい食べ方らしいわ」
「かぶりつくのが下品なら吸血鬼なんてやってられないわよレミィ?」
という訳でシュークリームを持ち、彼女らはそのままかぶりつく。口元に近づけるだけで強い甘い香りがし、ふわっとする生地に歯をいれると特に特徴はない生地の中から溢れ出てくるのは雲の様に真っ白い生クリーム。甘さはやや控えめだが乳の味を強く感じ、舌の上で滑らかに溶ける。
更にその下にはもうひとつの淡い黄色のカスタードクリーム。こちらは甘みが強く、口の中に絡みつく濃厚な味わい。まさにたっぷりのクリームを食べるためのお菓子である。
「甘〜い!」
「ほんととっても甘いですね!」
「中の甘みが強いから皮はあえて味を弱めているのね…」
「これは紅茶が合いますね」
「美味しいねお姉様!」
「ええそうね。甘味も中々良い仕事するようねあそこは」
どうやらシュークリームの味を全員が気に入った様だ。
「…フラン、貴女ほっぺにクリーム付いてるわよ」
「え、本当?ってお姉様もじゃない、アハハハ♪」
…ただシュークリームはこういう事が稀に起こる。
…………
おみやげ3「パウンドケーキ(ドライフルーツ)」
人形師のアリス・マーガトロイドがねこやにいった翌日。彼女の家には、
「たっくよ~…まさかここのすぐ近くに出たなんて思いもよらなかったぜ~。こっちは結構探したってのに」
がっくりした顔をした魔理沙が再び来訪していた。一方アリスはお茶の準備をしている。
「アリスもひで〜よな〜。出たなら教えてくれてもいいじゃねぇか」
「だって貴女どこに行ったのかわからなかったんだもの。それにこんなすぐ近くに出たのに気付かない貴女にも責はあると思うけど」
「ひでぇ。…で、どうだったよ、そんな悪い場所じゃなかったろ?」
「…まぁね。少なくともまた扉見つけたら行ってみたいとは思う場所ではあったわ。魔理沙もたまには本当の事言うのね」
「…私泣いちゃうぜ」
言いながらアリスは魔理沙の前にお茶を出す。彼女の入れる紅茶も美味しいと評判でいい香りを放っている。そしてその横には彼女がねこやからおみやげで貰って来た「パウンドケーキ」がある。横縦7~8センチ位の大きさで中は黄色く、外側は仄かに茶色い焼き色のそれが二切れお皿に飾りつけられている。
「ん?いつもとは違うケーキだな」
「ねこやのおみやげよ。パチュリーもお誘いしたんだけど忙しいんだって」
「ふ〜んアリスのお茶を断る程の研究か。なんか興味あるから今度本借りに行った時聞いてみるか。それはともかくありがとよアリス。私のためにおみやげ持って来てくれたんだな♪」
「別に貴女のためじゃないわよ」
本を盗みに行くついでにその本の主に話を聞くなんて、と思うアリスだが彼女らしいと突っ込まない事にし、「いただきます」をしてからケーキにフォークを入れる。固すぎず柔らかぎない位の固さのそれを一口サイズに切って口に運ぶ。外側はほんの少し香ばしく、中はしっとりとした食感に優しい甘さで牛酪の風味を強く感じる生地。
「美味い♪」
「ええそうね。それにこの歯応えと甘みは干した果物かしら?」
生地と一緒に混ぜ込まれていたのは様々な色のドライフルーツで噛むと強い甘さを感じる。更に漬け込んでいるのかほんのり酒精の香りもする。食べた事ある味もあるが味わった事が無い果物もある。幻想郷では珍しい果物なのだろう。
「紅茶にも合うぜ♪」
「そうね。あとねこやって行くたびにこのケーキの味付けを変えてるらしいわよ」
「そりゃ楽しみだ。今度行った時も食べてみるか」
「フォンダンショコラといい外の世界のお菓子のレベルは高いのね」
「なんだ?そのホンダンソコラって」
「…貴女って手癖だけじゃなく耳も悪いの?」
「にゃにお〜!」
騒がしくも嫌な雰囲気は無い茶会は続いた。
…………
おみやげ4「チーズケーキ」
「元々の原因は落とし穴を掘ったてゐだし、直ぐ助けを呼びにいかなかったのもてゐが悪い。それは陳情するべき所は無いわ。…でも優曇華、貴女も落ちた直後にもっと冷静になってまずその場でできる対処を模索するべきではなくて?結果何があるかわからない扉に入り、ましてやその先にしばらく滞在してしまうなんて」
「…すいません、扉の先にいけば何か方法があるかと思って…。安全な場所というのは聞いてましたし…」
「幾ら八雲紫や博麗の巫女がそう言っても簡単に入るのはちょっとどうかと思うわね。仮にそうだったとしても向こうに事情を説明し、本来の目的である落とし穴から出る手段を探すべきではないかしら?食事する暇なんてない筈よ」
「仰る通りです…」
「ぷくく…私より怒られてる」
「あら、今は貴女じゃないだけよてゐ?笑っている余裕があるならこの後もっとやってあげようかしら?」
「御免なさい…」
鈴仙が永遠亭に戻ってきて数刻後、永琳から彼女とてゐはかるーく軽~くお説教を受けていた。その横で、
「う~ん、美味しいわ~♪」
「…はぁ、お前良くこの雰囲気でそんな笑顔できるな」
「気にしてないわよ~私達の喧嘩位しょっちゅうだから。それよりねぇ、妹紅はどのケーキが好き?」
「どれと言ってもこれしか食べてないって。この…なんだっけ「ベイクドチーズケーキ」だっけ。食べた事無い味だけど美味いね。適度な固さもあって濃厚で」
「私はそれよりこの「スフレチーズケーキ」と「レアチーズケーキ」っていうのが気に入ったわ♪柔らかくてほんのちょっぴり酸味もあるけどでもそれがこの甘さを引き立ててるわね~♪あとこの「ショートケーキ」っていうのも生地とクリームと苺の組み合わせが抜群ね♪」
「おい、全部食べようとするなよ。永琳とてゐにも残しといてやれ」
「わかってるわよ~。ちゃーんと一個ずつ残しておくから♪」
「…要するに種類は全部食うんだな。太るぞ?」
「大丈夫大丈夫。その時は貴女に焼かれて脂肪燃焼するから♪」
「…私の炎は蒸し風呂じゃないんだが?」
永琳の軽~いお説教は二時間に及んだという…。
…………
おみやげ5「ミートソースパスタパン&ナポリタンドッグ」
鈴奈庵の店内に現れたねこやの扉から戻って来た小鈴達。霖之助と慧音、朱鷺子は帰り、臨時休業している鈴奈庵の中には店主である彼女と、
「それで次の作品はどういった感じにするつもりなの阿」
「違うでしょ、私は」
「は~いそうでした。小説家のアガサクリスQ」
何やら店内で執筆活動に勤しむアガサクリスQという小説家がいた。ただその容姿は誰かに似ている様な気も。
「それでアガサクリスQ。今度の作品はどういうジャンルで行くの?」
「そうね〜…ファンタジーもので行こうと思ってるわ。詳しくはできてからだけど、今まで住んでいた世界から突如全く別の世界に来てしまった若者がその世界で様々な困難に会いながらも運命に立ち向かうって感じかしらね」
「ほうほう」
ガラガラ〜
とそんな会話をしているところに玄関の扉を開けて入って来たひとりの人物がいた。
赤い眼鏡を付けた少女
「お邪魔しま〜す♪」
黒い帽子と赤い眼鏡を付けた茶髪の少女。表地は黒、裏地は変わった模様の赤のマントを羽織い、その下には同じ柄のベストとスカート、白シャツにソックスと変わった格好をしている。
「!菫子さんじゃないですか。今日は臨時休業ですよ?」
「あ、そうだったんだ。でもまぁ開けてしまったししょうがないしょうがない♪あれ、貴女もいたの阿」
「ゴホン」
「ああそうだったそうだったアガサクリスQ♪」
「…貴女また寝てるの?この時間は確か学校なんじゃないの?」
「つまらないからサボっちゃったテヘペロ♪…あれ?今日は天狗の新聞は売り切れ?」
「売り切れじゃなくて盗まれたの!久々の爆売れだったのにー!」
小鈴は菫子という少女に今日起こった事を話した。新聞の事、そして異世界食堂の事を。
「なんと…そんな事があったのね」
「信じてくれるんですか?」
「勿論よ~♪ただ私があんだけ苦労したのにそんなあっさり繋がる場所ができちゃうなんてな~んか面白くないわねブツブツ…」
「いつも繋がってる訳ではないし厳格な制約はあるらしいけどね。…言っとくけど悪用しないでしょうね?まぁ無理だろうけど」
「わかってますって。もうあんな目はこりごり」
「あ、そうだ。ねこやでおみやげ貰って来たんです。丁度おやつ時ですし一緒にどうですか?阿…アガサクリスQもちょっと一休みしたら?」
「…そうね。頭をよく動かすには糖分が必要だわ」
「えっ本当?ラッキー♪」
言われてふたりは店内のテーブル席に着く。小鈴はねこやから貰って来たおみやげの箱を取り出す。出したのはミートソーススパゲッティ、そしてスパゲッティナポリタンをコッペパンに挟んだもの。
「おお確かにこれは幻想郷ではまず見ない食べ物!」
「菫子さんは知ってるんですか?」
「売店やパン屋の定番中の定番だからね」
「ナポリタンは朱鷺子ちゃんが殆ど独り占めしてたから食べれなかったんだよね~」
菫子は「ミートソースパスタパン」を、小鈴とアガサクリスQは「ナポリタンドッグ」を手にし、それぞれそのままかぶりつく。ミートソースの肉や野菜の甘み、ナポリタンのケチャップの甘みとちょっとした酸味、もちっとしたパスタ、それを受け止める柔らかいパン。
「う~ん最近食べてなかったから懐かしいこの感じ〜。肉の味が強いミートソースとその中にこれはチーズかな?それがパスタの熱で僅かに溶けてて絡んで美味しいわね~」
「ナポリタンドッグも美味しいわ!」
「少し味が濃いのが良いわね。このパンというものに負けない様この赤いものの味付けを濃くしてるのか」
「それはケチャップというものでこの国の洋食の発展を支えた調味料よ。因みにこのコッペパンは日本独自のパン」
「流石菫子さん詳しいですね」
「現役の女子高生を舐めないでもらいましょうか」
「友達いないけどね」
「それは言わないお約束!」
(……それにしても洋食のねこや、ねぇ。……な〜んか聞いた事ある様な…。気のせいかな~)
そんな会話をしながら彼女らはおやつを楽しんだ。
…………
おみやげ6「カレーパン」
幽々子がねこやから戻ってきてとりあえず白玉楼の居間に移動した彼女と霊夢、妖夢。
「それで幽々子。アンタが貰って来たおみやげって何よ?なんかかいだ事無いにおいだけど」
「ええ箱を閉じててもここまでにおいがしますね」
「うふふ、それじゃあ開けるわね」
幽々子が箱を開けると中にはこんがりと揚げられた楕円形の食べ物があった。開けると更ににおいが強くなる。
「さっきも言ったけどこれは「カレーパン」っていうらしいわ」
「かれぇ?変な名前ね」
補足としてカレーことアルフォンス・フリューゲルはこの日3ヶ月振りの来店であり、霊夢らがカレーを知るのは初めてである。
「でも何か凄く食欲そそるにおいですね」
「でしょ~?食べれば食べるほど食欲が湧いちゃって私も30杯以上お代わりしちゃったわ♪さあ温かいうちに頂きましょ」
「…つくづく一体その細い身体の何処に入ってるんだか全く。…わ~揚げてるだけあってまだ温かいじゃない!じゃ遠慮なくいただきま~す」
口に運ぶとサクリッという音とカリカリの食感。表面の揚げられたパン粉が香ばしい。そして中から流れてきたのは幽々子がねこやで食べたのと同じカレー…ではなくカレーパンのためにこしらえたカレー。カレーの独特かつ食欲を刺激する香りと味。ひき肉とみじん切りにされた野菜も一緒にたっぷり含んでいる。今まで味わった事無い風味と辛さにちょっと驚く霊夢と妖夢。
「なんか辛!」
「確かに辛いですけど…でも後を引く辛さですね」
「確かに…不思議と食べたくなるわね」
「私が食べたのはこの中身とお米と一緒だったけどこういう食べ方も美味しいわね〜♪」
「このままご飯に乗っけようかしら?」
「霊夢それはお行儀が悪いですよ」
おみやげのカレーパンは三人(幽々子5霊夢4妖夢1)のお腹にキレイに収まった。因みに一時間後、夕食の鍋も残さず平らげた。
…………
おみやげ7「ミルクレープ」
時刻は夜。博麗神社の周りにある深い森。そんな森の中に他と比べて特に大きい一本の木がある。
「…という訳でおみやげとして貰って来たって訳よ♪」
「本当は「クレープ」っていうのを持ってきたかったけどおみやげならこっちの「ミルクレープ」方が、って言われたのよね」
「でも幽香さんも凄く美味しいって言ってたからこれも美味しいわよきっと」
その木の中にいたのは光の三妖精ことサニーミルク、スターサファイア、ルナチャイルド。彼女らはこの大木の中に住処を置いているのだ。自分達の個室やリビングまであり、装飾までされている。三妖精は住んでいる事を一応隠しているけども霊夢は既に知っていて鬱陶しいと思っているが積極的に追い出す様な事はしておらず放っておいている。夕食を終え、デザートを食べようとしている様だが今日は彼女らとは別にもうひとり。
水玉の帽子を被った金髪の妖精
「ふ~ん、人間や妖怪でも行ける外の世界のご飯屋さんか…なんか嘘くさいわね~」
水玉模様が描かれた紫色の帽子、青い地に白い星模様と赤白のストライプ柄というピエロを思わせる様な服を着た長い金髪の少女、というより妖精。
「…ま、確かに見た事無いものだしこんなしゃれた物が人里にある訳ないか」
「他にも色々な食べ物や甘いものもあったし、私達が知らない様な色々な人間や妖怪もいたのよ~」
「アンタらそんなお店なのになんもイタズラしなかったの?」
「そうしたかったんだけど幽香さんもいたし、何より…なんか滅茶苦茶怖かったのよね~。なんでかわからないんだけど」
「情けないわね~。ま、今回は招待してくれた事もあるしイタズラの師匠として許してあげるわ」
「いやアンタに許される意味はないんだけどクラウンピース」
「そうよ、あと師匠って何よ失礼しちゃうわ」
「はいはいそこまでにして早く食べましょ。折角氷室に冷やしてたんだから」
「まぁそうね。いただきま~す♪」
目の前のミルクレープにフォークを入れる三妖精とクラウンピース。紙の様に薄い生地が何層も積み重なり、その間に白い雲を思わせる生クリーム。食べてみるとこんなに薄い生地なのにその味はしっかりと感じ取れ、クリームの乳の風味も負けていない。凄くしっとりとしていて舌の上で滑らかに溶けていく。
「!…これは…確かに中々美味しいわね」
「見た目シンプルだけどそれが良いのかしらね。あっさりしてて幾らでも食べれそう♪」
「クレープは中の具を食べるものって感じだったけどこれは生地を食べるって感じだわ。同じクレープでもこんなに違うのね」
「幽香さんがおススメするのも納得だわ~。でも私はどっちかと言ったら果物と一緒に食べれるクレープの方が好きかな~」
「ふ~ん外の世界のお菓子もやるじゃない」
「ケチ言う割にアンタ凄く積極的に食べてるじゃない?」
「う、うっさいわね。美味しいって事だから別にいいじゃないの」
(それにしてもこんなものを出す扉が出始めたのか…。これはヘカーティア様にもお伝えしないといけないわね♪)
そして暫くの後、クラウンピースはねこ屋に訪れる事になる。彼女の主と一緒に…。
…………
おみやげ8「スイートパンプキン&スイートポテト」
「しょぼ~ん…」
写真が撮れなかったはたては相変わらず落ち込んでいた。
「も~元気出しなさいよ、はたて」
「そうそう。全く映らなかったわけじゃないんだから次また撮影すればいいじゃない」
「そうだけど~…」
「でもやっぱりおかしいですよね。他は大丈夫なのに異世界の皆さんが写った写真だけ失敗するなんて」
「そうなのよ!一番写したかったものだけ真っ暗なんてある!?」
「一眼レフと違って携帯電話のカメラは画質が悪いし高速連続撮影は不向きですからね~。次は気を付けましょうねはたて♪」
「むむむ~」
「まあまあ今はお茶にしましょう。昨日貰ったおみやげがあったんだ。皆手伝って」
そう言って出されたのは小さい小判型をした上部分だけほんの少し焼色がついた黄色い食べ物。下には銀色の紙みたいのが敷かれている。
「こっちのが「スイートポテト」で少し黄色が濃いのが「スイートパンプキン」って言うんだって」
「確か…スイートポテトは金時で、パンプキンとやらは南瓜でしたと思います」
「食べる直前に軽〜く温めてって言ってたからそうしてあるよ。ああ後下の銀の紙は食べないでねって言ってたから気をつけて」
「は〜い。取り敢えず食べよ♪緑茶も入れたし」
そう言って其々好きな方をとる。見た目の割に重さはある様で紙を避けつつ口に運ぶと、ほんのり温か、しっとりとした食感の次に甘さが広がる。スイートポテトはさつま芋を、パンプキンは南瓜をすり潰して固めたものらしい。しかしただそうしたのではなく砂糖や牛酪や牛の乳の風味もある。
「昨日食べたグラタンってやつも美味しかったけどこれも美味しいね♪」
「えぇ、牛酪や砂糖も混ざっている様ですが素材の味がちゃんとしています。この表面のつやは卵を塗ってるんですね」
「甘くて温かくて緑茶ともよく合うわ。金時や南京を使ってるからかしら」
「てことは和菓子なのかな?見た感じ洋菓子っぽいけど」
「まぁ美味しいからいいじゃない。それよりも次は絶対取材成功してやるわ!」
「何言ってるんですかはたて!今度は私が行きますよ!引き続き扉の捜索令を出さないと!」
そんな文が行けるのはまだ当分先になる事はこの頃の彼女は知る由もない…。
…………
おみやげ9「クッキーアソート」
???
幻想郷の賢者、八雲紫。彼女の住処は博麗神社と反対側に位置すると言われているが誰も姿を見た事がない。幻想郷のどこかであるとも外にあるとも言われており、真実を知るのは彼女とその従者である藍と橙のみである。
「紫様、お茶が入りました。ほら橙もどうぞ」
「ありがとう藍」
「ありがとうございます藍様~♪」
「あと茶菓子としてこちらも」
藍がお茶と一緒に持ってきたのは何やらブリキでできた缶。蓋を開けると中には…沢山の色々な焼き菓子のクッキーが収められていた。因みに一番大きいサイズ。
「わ~いクッキーだ~♪」
「言っていただければそのままでなくお皿に取り分けますのに」
「いいのいいの。こういうのは何を食べるか選ぶのがいいのよ」
「どれにしようかな~。あ、じゃあこれにしよっと」
「私はこれにしようかしら」
橙が取ったのは木の葉の形をしたパイ生地のクッキー。噛むと何層もの薄い生地がサクサクッという歯ごたえがして面白い。甘さは控えめだが牛酪の風味が強く、いい香りが口に広がる。
紫のは動物の形の、干し葡萄が散りばめられたもの。こちらもサクッとした歯ごたえとお酒に漬けられているらしい干し葡萄のほんのりの苦みと同時に強い甘さが味わえる。
「美味しいです~♪」
「ええほんとね。渋めのお茶に合うわ。ほら藍も食べなさいよ」
「は、はぁ…ではこれを」
藍はクッキーの真ん中に橙色のジャムがあるクッキーでロシアケーキというもの。二度焼きされているのが特徴のそれは歯ごたえがやや強く、ジャムは爽やかで甘酸っぱい。
「…美味しいです。果実の甘露煮がいいですね」
「ねぇ藍様~このクッキー作れませんか~?もし出来るならクッキーがいつでも食べれます~♪」
「まぁそれはいいアイデアね♪」
「ええ!…う~ん、全部は無理ですがいくつかならできなくもないかもしれませんね」
「ほんとですか?やったー!」
「良かったわね橙」
「はぁ…。我ながら何故私は橙にこうも甘いのでしょうか…」
それは誰にも分かる様な気も、分からない様な気もしないでもない…。
…………
おみやげ10「プリン&フルーツゼリー」
ここは妖怪の山の中にある華扇の屋敷。外での修行から戻り、取り合えず一息つこうとしていた時だった。
「やっぱり疲れた時はお酒もいいけど甘いものに限るわね~♪」
前日ねこやに行ってきた彼女だがその時も食事の後に沢山の甘味を注文していた。どうやら相当の甘党であるらしい。たった今まで氷室で冷やしていたものを食べようとしているらしかった。すると、
赤い髪と瞳の女性
「邪魔するよ~」
そんな華扇の元に訪れたひとりの女性。赤い髪をツインテールにし、ロングスカートのドレスの様な着物の様な変わった形の洋服を纏い、手には死神を思わす大鎌を持っている。
「また来たの小町。今日もサボり?」
「今日も、とは心外な。お生憎様、ついさっきまでしっかり仕事してきたところさ。これから昼寝だよ」
「ふ~ん貴女が真面目に仕事するなんて明日は野分かしらね。てか昼寝ならなんでここに来たのよ?」
「ここは余計な奴もあまり来ないから静かでいいからね。…おや?なんだいそれは」
「これは昨日行ったねこやのおみやげよ。貴女も知ってるでしょう?七日毎に外の食事処に繋がる扉を」
「お~実際行ってきたのか!で、どうだった?」
「…そうね。悪い場所じゃなかったとだけは言えるかしら。折角だから貴女もどう?甘味だけど」
「本当かい?ありがたいねぇ♪」
小町という女性は中華風のテーブルに着き、華扇は箱からそれぞれガラスの容器に入ったふたつの物を取り出す。ひとつは濃い黄色をしている柔らかそうな物が入った物。もうひとつは透明な柔らかそうな何かの中に色々な果物が入った物。
「こっちが「プリン」でこっちが「フルーツゼリー」っていうものよ。味は昨日食べたから保証するわ」
「変わった名前だねぇ。じゃあ取り合えずこっちから頂こうか。……!おおこんな簡単に匙が入った。豆腐より柔らかいな」
木の匙がすんなりと入ったプリンを掬い、そのまま口に運ぶ。卵の風味がするそれはなんとも滑らかな舌触りがし、強い甘みがする。更に一番下に沈んでいるカラメルという甘くもありほろ苦くもあり、香ばしくもある黒いものと一緒に食べる事で絶妙な味わいになる。
「美味いもんだねぇ♪特にこの黒いものは…砂糖を煮詰めたものか。黄色いやつだけならちょっと単調な甘さだけどこれと混ぜる事でもっと良い味わいにしてるよ」
華扇が食べているのはフルーツゼリー。ゼリーという透明で柔らかく僅かに甘い、プリンにも負けない位の滑らかさのそれの中を漂う様に浮いているいくつもの果物。柑橘の果肉や林檎を小さく賽の目に切ったもの、サクランボ、そして僅かに歯ごたえを持つパンナコッタという物が口の中を楽しませる。
「あっさりとした甘さでいくつもの味わいや歯ごたえがしていいわね。夏とか涼し気そうだわ」
「なぁ、その店には珍しい酒とかもあるかい?」
「ええあるわよ。おみやげで頂いたけど昨日知り合いと飲んでしまったわ」
「あちゃ~それは残念。ま、私が行った時のお楽しみにしておくさ」
幻想郷からねこやへ来店する客は今後もまだ増えそうだ。
次回は年末、今年最終話を投稿します。お楽しみに。
こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。
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あれば読んでみたい
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不安なので読みたくない