幻想郷食堂   作:storyblade

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番外編 ねこやの忘年会

わいわいガヤガヤ…

 

~~♪

 

「こんにちはー!!」

 

「いらっしゃいませレイムさん!」

 

「おお霊夢か。遅かったな~、もうとっくに後半だぜ~?」

 

「扉を全然見つけられなかったのよ!アレッタ、取り合えずビ」

 

(どうぞ)

 

「ールお願い…って相変わらず早いわねクロ。まぁ今はいいわ!」

 

そして霊夢はエプロン姿の魔理沙が何やら調理しているテーブルに座る。

 

「発案者のひとりのお前が中々来ないからどうしようかと思ったぜ」

 

「ゴクゴク…ぷはー!私だってこんな急に仕事が入るなんて思わなかったわよ!…あ〜ん結構無くなっちゃってる〜」

 

「私やアリスやパチュリーはもう来てるから自力で扉見つけるしかないもんなぁ。ほら」

 

「いただきま~す!」(モグモグ)「結構来たわね〜。店主さんもあいつらも忙しそうだし」

 

「オッサンは普段の飯も作らなきゃならないしな。でもどうやら持ち込んだ材料は無事全部使い切りそうだぜ。企画成功だな♪」

 

 

…………

 

「ご馳走様でした~♪」

 

「ご馳走さん♪」

 

その二週間前、つまり14日前のねこや。今日も霊夢と魔理沙のふたりが魔理沙が召喚した扉からねこやにやって来ていた。今しがた食事を終えた所である。因みにランチタイムを少し超えているためか今は彼女ら以外客はいない。

 

「おみやげの方も直ぐにご用意しますね」

 

「おうありがとうだぜ。ビールもお願いな」

 

「…そういえばもうすぐ年の瀬だけど、年の瀬も食堂やるの?」

 

「ええやりますよ。向こうにはあまり関係ありませんから」

 

「ふ~んオッサンも大変だな」

 

そこに尋ねてきたのはアレッタ。

 

「あの〜トシノセってなんですか?」

 

「え?アレッタ知らねぇのか?…あ、もしかして名前が違うのかな」

 

「年の終わり頃の日の事を年の瀬って言うのよ」

 

「へ~そうなんですか~」

 

(…何かやるんですか?トシノセって)

 

「う~ん本当に祝うのは年越してからなんだが私達はいつもこいつの神社で忘年会するぜ?」

 

「…ボウネンカイ?」

 

「あ、それも知らない?その年一年お疲れ様でした~っていう意味でやる宴会なのよ。てか思い出したわ!それに向けて神社掃除しとかないと」

 

「へ~そうなんですか(二回目)」

 

するとそれを聞いていた店主は顎に手をあてて、

 

「……忘年会か。……よし」

 

「どうしましたマスター?」

 

「折角だ。異世界食堂ももう随分長くなったし、いっそここで宴会というかそういうイベントをやってみるのもいいかもと思ってな」

 

「わ~それはとてもいいアイデアだと思います!ねぇクロさん!」

 

(…良くわからないけどそんなにアレッタが喜ぶ事なら私も賛成)

 

アレッタとクロは賛成した様だ。

 

「お、ここで宴会するの?だったら私も参加させてもらうわ♪」

 

「私もだぜ♪」

 

そして霊夢と魔理沙も喜ぶ。参加する気満々の様だ。

 

「でもそのボウネンカイってどうやるんですか?何か特別な料理でも?」

 

「う~ん特別って訳でもないがまぁ良く食べられるものは…やっぱり「鍋」だろうな」

 

(…ナベ?ナベをそのまま食べるの?)

 

「いやいや、鍋の中に色々な食材を入れて煮て食べるってもんなんだ。温まるし、大勢で食べるにはうってつけだ」

 

「シチューみたいなものですか?」

 

「いやそういうもんでもない。まぁまた後で説明するさ。…さて、となると鍋や材料は仕入れればいいとして勿論普段の飯も作らないとだし、当日はきっといつもよりも忙しくなるな。悪いがふたり共宜しく頼むぞ」

 

「わ、わかりました!沢山頑張ります!」

 

(任せて)

 

するとここで魔理沙がちょっとした事を言い出す。

 

「なぁなぁオッサン。面白そうだから私達にも手伝わせてくれよ♪」

 

「え?」

 

「何言ってんのよ魔理沙?」

 

「私達もねこやに通う様になってそれなりになるだろ?でも今まで飯に関しては向こうの連中に教えてもらってばかりじゃないか。鍋に関してはうちらの方が良く知ってる筈だ♪それに当日はいつも以上に人が来るぜきっと」

 

「う~ん…でも手伝うって言ってもどうするのよ?」

 

「大丈夫大丈夫。こういう時に役立つっつーか乗ってきそうな連中がいる♪霊夢ちょっと耳貸せ」(ごにょごにょ…)

 

(…ほうほう。それは面白そうね)

 

「…なんですかね?」

 

「う~ん…」

 

(……)

 

霊夢と魔理沙が何やらひそひそ話をしているがこうしてねこやと霊夢達?の合同宴会が開催される事になった。

 

 

…………

 

そして二週間後当日。時刻は昼過ぎ。この日は一週間前、常連客に「夜からちょっとしたイベントをやるから」と伝えていた事もあり、客数は控えめだった。

 

~~~~♪

 

「おっす♪」

 

「あっ!こんにちはマリサさん。今日は宜しくお願いします!…あれ、レイムさんは御一緒じゃないんですか?一緒に来られるって聞きましたけど」

 

「霊夢なら急な仕事が入って夜になりそうなんだ。でもそれまでにアリスやパチュリーが主だった奴先に連れてくるからあいつはどっかで扉を見つけないとだな。まぁなんとかなるさ♪それより約束通り助っ人を連れて来たぜ!」

 

妖夢・咲夜・早苗・ミスティア

「「「こんにちは~」」」

 

そう言う魔理沙が連れてきたのは妖夢、咲夜、早苗、ミスティアの四人。其々何か荷物まで持ってきている。

 

「皆さんもこんにちは!今日は宜しくお願いします!」

 

(宜しくお願いします)

 

「あと私もやるぜ。これでも料理、特に鍋はキノコが欠かせないから任せとけ!美宵とネムノは自分の店が忙しいって無理だってさ」

 

すると奥から店主も出てきた。

 

「ようこそ皆さん。…でも今更ですが本当に宜しいんですか?バイト代は紫さんから頂いているお金からちゃんとお出ししますが…」

 

「大丈夫大丈夫気にすんな♪ちゃんと許可を得ているから。オッサンはまた美味い飯食わせてくれればいいさ」

 

「…それ魔理沙が言う事じゃないでしょう。でも聞いて吃驚しましたよ、ねこやで一日働いてくれないかって幽々子様から聞いた時は」

 

「まさかお嬢様や妹様を懐柔するなんてね…」

 

「私も神奈子様と諏訪子様から行ってこいって言われました。おみやげ頼まれましたけどね」

 

二週間前、霊夢と魔理沙は幻想郷の主なメンバーにとある相談をしていた。

 

「今年は博麗神社とあとねこやでも忘年会やるから手伝ってくれない(か)?」

 

この話に乗ってきたのが彼女らの主である幽々子やレミリア、守矢の神々であった。そして料理上手な妖夢や咲夜、早苗らに白羽の矢が立ったのである。ミスティアは面白そうだからと自主的に参加した。

 

「まぁですが決まったのでしたら手は抜きませんよ。不肖魂魄妖夢、精一杯頑張ります!」

 

「紅魔館メイド長として最善を尽くしますのでお任せください」

 

「私も頑張ります!」

 

「屋台経営してる位だから期待してね♪」

 

「わかりました。では皆さん宜しくお願いします。あああとわからない事があったらこのふたりに聞いてください」

 

「「「はい!」」」

 

「「「お~!」」」

 

 

…………

 

そして…、

 

 

(マスター、注文頂きました)

 

「はいよ!」

 

「マリサさんサナエさん、こっちの材料が切れそうです!あとこちらの鍋に新しいスープの追加を!」

 

「はいちょっと待ってくださいね~!」

 

「ふぃ~!手を止めてられないぜ!」

 

「…はい、もう食べ頃ですよ」

 

「熱いから気をつけてね!」

 

時刻は夕方を過ぎた頃、店内は異世界の者達と幻想郷の者達で溢れていた。繋ぎ合わせたテーブルにはいくつものカセットコンロと鍋があり、其々幻想郷とねこやの者が交代で担当に付いて鍋を調理している。勿論店主の料理も並んでいる。因みに鍋を直接自分の箸でつつくのは抵抗があるだろうからと担当が頼まれた具を菜箸やお玉で取ったりしている。これなら口を付ける心配も無い。

 

「ヨウム、肉とシュンギクとやらを頼む」

 

「ああ儂には肉とトーフを貰えるかな?」

 

「肉のおかわり頼むぜ!」

 

「は〜いどうぞ!」

 

妖夢が作っているのは「すき焼き」。砂糖と醤油を利かした甘辛いタレで煮焼きされた牛肉や焼き豆腐、しらたきや春菊や葱といった具材が何ともいいにおいを放つ。普段肉料理を食べている者や濃いめの味が好きな者に好まれていた。あと彼女の主の幽々子もいる。というより一番多く食べているのも彼女である。

 

「いやいやまさか、ゲンソウキョウという世界の者達の飯が食えるとはのぅ」

 

「全くだ。拙者の国でも鍋物はあるがこの「スキヤキ」というものは初めて見るな。テリヤキみたいに甘辛くて中々美味いぞヨウム」

 

「ありがとうございます!」

 

「ただ生卵には驚いたがな。儂らの世界の卵では考えられんわい」

 

「卵に付けると熱いのを和らげるのと濃い味をまろやかにするのよ~。あ、妖夢ちゃん私もお肉と白菜と豆腐とお葱とえのきとお麩お願いね♪」

 

「は~い。生卵が苦手でしたらこちらの大根おろしでもどうぞ。あっさりして食べやすいですよ」

 

「で、では私はそのダイコンオロシで食べるとしよう」

 

「人間てのは難儀だな。俺らは火が通ってない卵なんざ全然平気だぜ」

 

「じゃあ生卵が食べれるアタイは異世界の人間より強いって訳だな♪」

 

「チルノちゃん、それは意味が違う気がする」

 

「このとても柔らかいお肉と卵の組み合わせが何ともいえませんわね。エミリオ様、そのダイコンオロシとやらはどうですか?」

 

「は、はい。食べた事無い野菜でちょっとだけ辛いですけどあっさりしてて食べやすいです」

 

「美味しいですわねロメロ」

 

「本当だねジュリエッタ。ビフテキといい異世界の牛は本当に美味いね」

 

「お肉もお野菜も沢山ありますからどんどん食べてくださいね〜」

 

 

 

「あ、あの~ファルダニアさん、お箸を咥えたままどうしたんですか?もしかして美味しくないとか…」

 

「違うよ。この「トウニュウナベ」っていう料理の作り方を考えているんだよきっと。ねぇファル~早く食べないと冷めちゃうよ?」

 

「……シチューじゃなくこういう調理法もあるのか。トウニュウ以外にミソでもできるかしら…。あとクズキリ…シラタキ…オフ…ゴマダレ…。また私の知らないものばかり…」

 

「駄~目だこりゃ。あ、おかわりお願いします♪」

 

「私もお願いね♪」

 

「私も入れてよね」

 

「はいどうぞアリスさん、姫様。あとほらてゐ。てかアンタは自分で取りなさいよね」

 

「あ~差別差別~」

 

妖夢のすき焼きの横で作られているのは「豆乳鍋」。エルフでも食べられる様に昆布で取った出汁に真っ白な豆乳を加え、そこに野菜やキノコを中心とした具材を入れている。肉や魚等が入っていないヘルシー重視だが女性客に好かれている様だ。因みに担当は里への往診後にアリスに連れてきてもらった鈴仙であり、アリスや永遠亭の者達もいる。

 

「このトウニュウナベという料理は身体が温まるだけじゃなく、ホッとする味ですね」

 

「そうね。身体にとても優しい気がするわ」

 

「まぁ間違ってはいないわ。豆乳には血の流れを良くして身体を温めるだけじゃなく内臓を強くしたり美肌効果もあるのよ。他にもタンパクを含んでいるから肉等の変わりにもなるし」

 

「あとこのユバというのは見た目も歯ごたえも不思議なものですね」

 

「熱した豆乳のタンパク質という栄養素が変性して表面のそれが固まったものよ。因みに熱した豆乳ににがりを加えると豆腐になるの」

 

「ニガリ?」

 

「そうなのですか。流石は八意様。お詳しいですわ」

 

「そりゃ何てったってお師匠様は月の頭脳であり月一の薬師ですからね!身体に良いものは全て知ってますよ」

 

「どっかの短気な兎とは大違いだよね〜」

 

「余計な事言わないてゐ!」

 

 

 

「…く~~美味ぇ!やっぱり寒い季節に暖かい場所で食うこいつと熱燗は格別だぜ♪」

 

「ほんとだねぇ。ミスティアだっけか?アンタのこのダシもここの店主に負けない位美味いよ」

 

「「全くじゃ!」」

 

「ありがとうございます♪」

 

ミスティアが調理しているのは自分の屋台でもやっている「おでん」。八目鰻と並ぶ人気メニュー。自慢の出汁と具材、そしてねこやから貰った具材も合わせた共同作である。ここにはやはりというか異世界・幻想郷の酒好きと言える者達が集まっている。

 

「こいつの飯も地底から食いに来る位美味いからねぇ。私に大根と牛すじ頼むよ」

 

「ミスティ~私にも大根、あとこんにゃくと卵~」

 

「はいよ~」

 

そしておでんといえば一部の具材にも注目が集まる。

 

「しかしこのハンペンとかチクワとかいうの、美味いがこれが魚から作られているというのは俄かに信じられんのぉ」

 

「歯応えも全然そうは思えないしね。でも噛めばちゃんと魚の風味と塩気を感じるよ」

 

「そいつは練り物って言うんだよ。おでんには欠かせないもんさ」

 

「お、おい…もしかしてこいつは…」

 

「ん?ああそれはタコですね。それも店主さんから分けてもらったんです」

 

「た、タコ?そ、そうか。初めて聞く名前じゃがよく似てるからてっきりクラーケンと思ったわい」

 

「あとこのプルプルしたものはなんだろうねぇ?コリコリしてて美味いけど」

 

「それはコロっていうんですよ。えっと確か」

 

「なんだっていいじゃねえか。美味いんだし♪」

 

「そうそう~細かい事は言いっこなし言いっこなし~♪」

 

 

 

「はいどうぞ、ラナ様」

 

「ありがとサクヤさん。それにしてもこのスープ、美味しいねぇ!」

 

「はい。本当に美味しいですね」

 

「そうね。ただ美味しいだけじゃない、とてもとても深い味わいだわ。どうすれば作れるのか研究したい位」

 

「ありがとうございますアーデルハイド様。ヴィクトリア様」

 

「柚子胡椒や七味も合いますよ」

 

「咲夜の料理を食べられるなんて異世界の貴方達には本来あり得無い事なんだからありがたくいただきなさい」

 

「咲夜張り切ってたもんね~」

 

「い、妹様」

 

紅魔館のメイド長咲夜が担当しているのは「水炊き」という鍋。シンプルな材料で鶏をじっくり煮込んで作る真っ白い白濁なスープで鶏肉やら野菜が煮込まれている。水炊きのスープは彼女が紅魔館の仕事の合間に準備していたものである。こちらはシャリーフ一家やヴィクトリア、紅魔館組といった者達が食している。

 

「この具のどれもが美味だがアディやラナの言う通り本当に美味なスープだ。これが本当に鶏を煮込んだだけとは思えん」

 

「本当だよね~。鶏肉も噛まなくていい位ほろほろって崩れていくし。どれ位煮込んでるの?」

 

「はい。じっくりじっくり二日ほど煮込んでいます」

 

「それは大変なのですね…。私達のためにありがとうございます。サクヤさんもお忙しいでしょうに」

 

「気にされる事はありません。この程度いつもの事ですから」

 

「な~んか棘がある言い方ね咲夜?」

 

「気のせいですわお嬢様、フフ。あ、アーデルハイド様もおかわり如何ですか?」

 

「あ……はい、お願いします」

 

おかわりが恥ずかしいのかそっと器を差し出すアーデルハイド。すると、

 

「アディ、私がよそおう」

 

「い、いえシャリー。そんなご無礼を」

 

「構わないさ。聞くとナベというのはそういう物らしいからな。サクヤ殿、箸とオタマとやらを貸してもらえるかな?」

 

 

 

その横ではエプロン姿のアレッタが早苗と交代で先程から同じく鍋を調理していた。店主からこの日に備えて作り方を教わっていたのだ。彼女が作っているのはいわゆる「寄せ鍋」。鰹節や昆布、茸などで取った店主自慢の出汁に豚肉や魚介、野菜やキノコなどが一緒に煮込まれている。ここはやはりか和風の味を好む者達が集まっている。あとアレッタの主のサラ、そして古明地姉妹もいた。

 

「ど、どうでしょうか?」

 

「そんなに心配しなくていいわよアレッタ。とても美味しいわ」

 

「とっても美味しいよアレッタお姉ちゃん!ね、さとりお姉ちゃん」

 

「はい」

 

「よ、良かった~。スープはマスターが作ってくださったんですけど具がちゃんとできているか心配で」

 

「う~む美味い。拙者らが知っている鍋とは違う」

 

「やはり醤油が無い以上、この味はまだ私達の国では出せないでしょうね」

 

「それだけではないと思いますよ。沢山の具材が一緒に煮られている事でこの複雑な味が出ているのだと思います」

 

「別々のものが混ざり合ってこそ得られる味わい。…いわば融和、かしら」

 

「多くの種族が集まってこの鍋を食べたら仲良くなれるのかしらね」

 

「それを言うならこの異世界食堂そのものがいわば大きな鍋なのかもね~」

 

「な、なんか凄く大げさな事になってる様な…」

 

「其方達も毎回言い合わないで笑って挨拶位したらどうじゃ?」

 

「お言葉ですが姫様。私は友好的に話したいのですがこの方が中々固くて」

 

「ふん!それはお主だろう?…ああアレッタ殿、今度は魚と海老を」

 

「私には豚肉と野菜をお願いします」

 

「アレッタ。私にもおかわり貰えるかしら♪」

 

「は、は~い!」

 

 

 

「うん!このカレーナベとやらも美味い!」

 

「いつもカレーのおっちゃんが食ってるの見て興味あったけどカレーってのも美味いな!」

 

「さ、流石に失礼ですよジャック」

 

「これとても美味しいよ父ちゃん母ちゃん!」

 

「バカ、ここの料理はなんでも美味ぇんだよ」

 

「まさか月一でたまたま入った日にこんなご馳走が食べれるなんてねぇ」

 

「いつもはお昼に入るのに父ちゃんがぎっくり腰になっちゃったせいで遅れたおかげだね」

 

「父ちゃんに感謝しろい♪」

 

「お姉ちゃん、お肉とキャベットってお野菜ちょうだい!」

 

(承知しました)

 

そしてこちらの方ではアレッタと同じく自分もやってみたいと言ったクロが調理している鍋が。彼女やカレーことアルフォンスが好きなカレーを鍋にしたいわゆる「カレー鍋」だ。と言ってもそこまで辛くはなく旨味が強い和風出汁を利かせた濃い茶色のカレースープに肉やら人参(カリュート)やらキャベツ(キャベット)やらブロッコリー(フォレス)等の他の鍋にはあまり無い野菜等も煮込まれている。チゲ鍋と悩んだがこちらの方が好まれるだろうと店主が用意したのだ。その狙い通り子供連れ、そしてアルフォンスがいる。

 

「1000回以上食ってきた私もこの様なカレーは初めてだ!やはりカレーの可能性は無限大だな。わっはっは」

 

「これはライスと合いそうだな♪クロさん、ライスをお願いできますか?」

 

(畏まりました)

 

「お姉ちゃんおかわり~」

 

(あ、はい。少々お待ちを)

 

「クロよ、私が引き受けよう。どれがいいのかなお嬢さん?」

 

「うんとね~」

 

「い、いやいや!将軍様にそんな事させられないよあたしが」

 

「気にするな。儂もやってみたくなった。それにカレーの具なれば食べ頃も見極められる程度にはなっているからな」

 

「お爺ちゃん鍋奉行みたいだね~」

 

「なんだいそれは?」

 

そんな感じで異世界組と幻想郷組の常連達による賑やかな鍋パーティーは続いた。

 

 

…………

 

そして時刻はまた過ぎ、霊夢が来て間もなくの頃に戻る。異世界や幻想郷の者達も少しずつ帰ってはいるが一部の者はまだ残っている。次に出されたのは綺麗に濾した鍋のスープを使って作ったいわばシメのメニュー。

 

すき焼きは肉の旨味がしみ込んだタレで煮焼きした焼うどん。

 

「…うむ!この肉の旨味が染み込んだタレを纏った麺もまた美味いな」

 

「すき焼きのシメと言ったらやっぱりうどんよね〜♪」

 

「霊夢がっつきすぎだぜ」

 

「あまり食べてないんだからこれ位良いでしょ」(ずるずる)

 

豆乳鍋は鍋の豆乳スープにトマトソースと茹でたパスタを合わせたクリームパスタ。

 

「味を濃くしたい方はこちらの粉チーズをどうぞ。コクが増しますよ」

 

「これも身体が温まりますわ。この細いものがスープとよく絡んで」

 

「私はチーズはいらないわ。…このパスタというものはエルフでも食べれるし作れそうね」

 

おでんは予め茹でておいた素麺を出汁で煮込んだにゅう麺。

 

「おほ!最後にこんなもんを残してたとはな!」

 

「これは酒飲んだシメには丁度良いねぇ」

 

水炊きはそのスープでライスをことこと煮込んだおじや。

 

「鍋も美味かったがこれも美味いな。最後まで残さず食べられるのは食べ物を無駄にしない意味ではとても感心する」

 

「ふーふー」

 

「はいどうぞ。熱いから気をつけてくださいね」

 

「ありがとうございますサナエさん」

 

寄せ鍋は醤油風味の出汁で生麺を煮込み、葱を入れたラーメン風。

 

「…おおこれは、この細い麺とこのスープが何とも合うではないか」

 

「シメというよりこれで一品の料理みたいですね」

 

そしてカレー鍋はライスとチーズを入れてじっくり煮込んだチーズカレーリゾット。

 

「カレーナベはカレーライスにもなるのか。うむ、美味い!」

 

「は〜もうお腹いっぱい!」

 

「こんだけ食やぁ3日は保つぞ」

 

「おや、じゃあアンタの食費は浮くね♪」

 

「そりゃねぇってばよ〜」

 

皆それぞれ鍋を心行くまで楽しむのであった。

 

 

…………

 

「「「お疲れ様でした〜」」」

 

そして鍋パーティーの後、異世界や幻想郷の者達が帰り、残ったのは調理に参加していた者達や一部の者達のみとなって打ち上げ会をする事になった。

彼女らが囲むのは店主が用意したひとつの鍋。野菜が浮かんだスープに牛肉やら豚肉をさっとくぐらせて食べる「しゃぶしゃぶ」である。

 

「皆さん今日は本当にお疲れ様でした。労いという訳ではありませんが食べて行ってください。異世界食堂初の忘年会なんで最後まで大盤振る舞いさせてもらいますよ」

 

「よ、オッサン太っ腹♪」

 

「胡麻ダレでもポン酢でも幾らでも入るわね♪」

 

「それにしても疲れましたね〜」

 

「こんなに調理したのは間欠泉異変のお詫びの宴会以来です〜」

 

「そういえばそんな事もあったわね」

 

「でも楽しかったよね。鍋もおでんもすんなり受け入れられたし」

 

「美味しいものはやっぱり誰が食べても美味しいって事よ。ほら、アレッタもクロも一緒に食べなさいよ」

 

「そうだぜ。鍋ってのは皆でひとつの鍋をつつく、ってのがセオリーなんだからさ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「クロさんはチキンカレーの方が良いか?」

 

(…ううん。皆と一緒のものがいい)

 

「それにしても今年ももう終わりなのね」

 

「来年は今年以上にいい年になると良いですね」

 

「そうね。どんなに色々あってもその気持ちは忘れてはいけないわ」

 

「来年もご贔屓にお願いしますね。皆さん」

 

「おう!あ、でも霊夢はその前に家掃除しとけよ?もう一回神社でやるんだからな」

 

「…あ、そうだった忘れてた」

 

夜遅くまで賑やかなパーティーは続いた。

 

 

…………

 

そして閉店後、店内には店主とあの人物の姿が。

 

「遅くなりまして申し訳ありませんでした」

 

「構わぬ。何か特別な集まりだったのであろう。…そういえば娘とクロはどうした?」

 

「ふたりは先に休ませました。明日の朝の片付けも手伝ってくれるそうなんで。クロさんはお客さんが来るまで待ってると言ったんですが。…さて、お待たせしました、ビーフシチューとこちら、本日限定メニューのすき焼きです。濃い味ですので気にいられるかと」

 

出されたのはビーフシチューと一人用の小鍋で調理されたすき焼き。それと赤ワイン。

 

「…おい店主。一杯付き合え」

 

「え?いやしかし」

 

「もう客は来ぬのだろう?カタヅケとやらは明日に行うのだし、付き合え」

 

「…わかりました。でも俺は下戸なんでお茶にさせて頂きますね」

 

言われて店主も湯呑に茶を注ぎ、赤の正面に座る。

 

「そういえば先代のあれもお主と同じで酒が飲めんかったな」

 

「婆ちゃんは飲めるんですけどね。どうやら俺は爺さんに似た様です」

 

「違いない。そのおかげであれが死んだ今でもこうしてビーフシチューを食える」

 

「ふたりがこのねこやを開いて50年。異世界食堂ができて30年。そして爺さんがぽっくり逝っちまって10年。…あっという間ですね本当に」

 

「妾からすればたったの数十年じゃがな」

 

「はは。まぁお客さんからすればそうでしょうね。でも人間からすれば長いもんですよ。俺も老けました」

 

「わかっていると思うがまだ店を畳むでないぞ。まだまだ食い足らんからな」

 

「前に婆ちゃんにも言われましたよ。マスターキーも預かりました。…でもご安心を。前に爺さんが生きていた時、言ってたんです」

 

 

(もし俺に何かあったらお前に全部任せる。続けてくれてもいいし畳んでもいい。でも、できれば続けてくれや。ここは俺とあいつにとって、特別な場所なんだ)

 

 

「だから俺が健康なうちは店を続けます。それに最近、本気かどうかわかりませんが姪がここの跡を継ぎたいって平日の営業時に働いてるんです。何れは特別営業も教えるつもりです」

 

「ほう。それは楽しみじゃ。まだ当分ビーフシチューを味わえるという訳じゃな♪」

 

伝説の竜も好きな料理の前では単なるひとりの女性と変わらないなと苦笑いを浮かべる店主。

 

「来年も御贔屓にお願いしますね」

 

「いらぬ心配だ」

 

古い付き合いのふたりの会話と共に夜は老けていった…。

 

 

…………

 

一方こちらは幻想郷の博麗神社。ねこやでの件から二日後、ここでは毎年同じみの宴会が繰り広げられていた。紅魔館白玉楼妖怪の山、地霊殿に魔法の森、その他の妖怪やそれに関わる者達が酒を酌み交わしながらその年の疲れをねぎらい合っている。

 

わいわいガヤガヤ…

 

「毎度言ってる気がするけどここほんと妖怪神社と化してるよな~」

 

「はぁ、また参拝客が減るわ」

 

「まぁでもそういうのがお前の宿命みたいなもんだから諦めも肝心だぜ霊夢♪」

 

「そんな宿命お断りよ!たく、ねこやの扉ならいつでも歓迎なのに」

 

「…そういやあの扉が出てくる様になってもうそれなりになるな。まだ原因はわからないままか?」

 

「まぁね。でも来年も一応注意は向けていくわ。まだ色々な場所に出てくるだろうし」

 

「そうだな~。天界や月とか、地獄や冥界にも出るかもな」

 

「やめてよ考えたくもないわ…。ま、私の御守りがある以上あそこも私の見張りの範疇だから悪どい真似はさせないわ」

 

「お~頼もしいねぇ♪」

 

茶化し合う霊夢と魔理沙。こちらも夜が老けていった…。




こんにちは。storybladeです。

番外編如何でしたでしょうか?異世界組と幻想郷組が宴会したらきっと楽しそうですよね。魔理沙やアリスが扉召喚の魔法陣が使えるのは番外編という事で時系列に関係なく考えて頂ければと思います。アリスはパチュリーから教えてもらえるとして魔理沙はどうでしょうかね汗。あとキャベツとブロッコリーの呼び方はオリジナルです。

来年はまた色々なキャラや交流を書けたらと思います。来年も「幻想郷食堂」を宜しくお願い致します。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
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