幻想郷食堂   作:storyblade

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メニュー30「ホットチョコレート」

……ゴト

 

「よし。ここがいいかな」

 

洋食のねこやの早朝。今日も異世界食堂の開店日。相変わらず一番先に店主が料理の準備。

……と思いきや、今日はいつもとちょっと違う事をしていた。

 

~~♪

 

「おはようございまーす!」

 

「ああ、おはようさん。今日も元気だな」

 

「えへへ!」

 

~~♪

 

「おはようございます」

 

「おおおはよう。クロさんも来たか」

 

続けて出勤してきたアレッタとクロ。因みにクロは朝の挨拶は念話ではなく直接声に出して言っている。

 

「…?何されてるんですかマスター?」

 

店主は店の脇にある台の前にいた。台の上にあるのは…ガラスケースに入った一体の和装人形。

 

(…ドール?)

 

「わ~綺麗なお人形ですね!どうしたんですか?」

 

「ああ。これは……」

 

 

…………

 

魔法の森 アリスの家

 

 

「……」

 

時刻は進んで場所は変わり、魔法の森の中にあるアリスの家。季節はもう冬となり、幻想郷もあちらこちらで雪景色。この魔法の森にも地面を覆い尽くす程ではない程ではないがほんの少し雪は降った。氷の妖精や里の子供達は今頃喜んでいるだろうがしかしそんな事に関係なく、家の主であるアリスは今日も暖炉の前でひとり人形作りに勤しむ。まぁこれが彼女の日課で仕事なのだから特に不自然は無いのだが。

 

「…ふぅ、お茶でも入れて少し落ち着きましょうか」

 

そう言ってアリスはお茶を入れて一息つこうとする。しかし、

 

「…あら?私としたことが葉のストックが無いわ。昨日のお茶会で使い切ったのね。お気に入りだったんだけどパチュリーも魔理沙も気に入ってつい沢山飲んでしまってたから。どうしようかしら」

 

~~♪

 

人形を連れた金髪の少女

「…こんにちは」

 

とその時、アリスの家の扉が開かれてひとりの少女が入って来た。肩までのショートボブな金髪、腰に白い大きなリボンが付いた黒と赤を基調としたロングスカートのドレス姿の少女。そしてすぐ傍にはアリスの人形位の大きさの人形が浮いている。

 

「あら?メディスンじゃない。珍しいわねこんな日に。どうしたの?」

 

「うん。ちょっとアリスにお願いがあって…。スーさんのお洋服が破れちゃったの」

 

少女の名はメディスンと言った。アリスがスーさんというらしい人形の服を見ると、確かにスカートの部分が少し破れている。

 

「あらあら、わかったわ。これ位なら大した時間もかけずに直せるから、その間うちのお人形のお洋服を着せてあげてね。今お茶を入れるから貴女はゆっくりしてて。緑茶だけどいいかしら?」

 

「大丈夫」

 

 

…………

 

アリスが人形の服の修繕をし、メディスンはその様子を見ている。

 

「…そう言えばメディスン貴女、この前里の子供達と一緒に遊んでたらしいじゃない。チルノ達から聞いたわよ?」

 

「…遊びたくて遊んだわけじゃない。人間と言っても子供だし…チルノもしつこくって。スーさんの服もそれで破れたの」

 

「それでも良かったわね。お洋服が破れる程なんて結構楽しかったんじゃない。貴女も少しずつ人に慣れてきたんじゃない?」

 

「…わからない。でも人間の事を好きになった訳じゃない。まだ嫌い」

 

メディスンは人間を基本嫌っている。それは彼女の生まれが関係していた。幻想郷妖怪の山とは反対方向にある「無名の丘」。春頃になると鈴蘭が一面に咲き誇る草原。そこでメディスンは生まれた。しかし鈴蘭の妖怪という訳ではない。無名の丘に捨てられていた一体の古い人形が長い年月を経て妖怪化したもの。それがメディスンであった。捨てられた人形の無念か、彼女は生まれた頃から人間に対して恨みを持っていた。故に彼女は人間達からの解放と人形の地位向上を目指す「人形開放」を実現しようとしたが、とある者から「貴女は幼過ぎる。世の中をまだまだ知らなすぎる」と言われた事から取り合えず自分の考えは抑え、少しずつ見聞を広げる事にしたのだった。それ以降妖怪や妖精、霊夢や魔理沙をはじめとした者達とは何とか付き合える事ができたが、それ以外の者とはまだまだという様子である。

 

「…まあ、アリスみたいに人形に優しくしてくれる人間ならまだほんのちょっと話せると思うけど」

 

「私は見た目はこんなだけど「元」人間よ。……はい、できた。これで終わりね」

 

「ありがとう」

 

修繕が済んだ服をスーさんに着せなおすメディスン。するとその横でアリスはある事を思いついた。

 

(…そうだわ。昨日魔理沙が帰った後でパチュリーが教えてくれたものを使ってみましょう)

「ねぇメディスン、これから予定あるかしら?」

 

「え?ううん何も」

 

「じゃあこれからある場所に行ってみない?」

 

「ある場所?」

 

「ええ。ちょっと変わった場所で人間もいるけど、それ以上に色々な人、あ、人じゃないか。色々な種族がいるところよ。危ない事も無いわ」

 

「人間もいるの?…でも色々な種族って…妖怪や妖精じゃないの?」

 

「それは見てのお楽しみよ」

 

そして家の前に出てきたふたり。どこかへ行こうと言ったはいいが家の前に止まったままアリスは歩き出さない。

 

「どうしたの?行かないの?」

 

「まぁ慌てないでってば。じゃあ皆お願いね」

 

言われて多くの意志ある人形達が動き出し、何やら作業をしている。見ると皆手に書くための道具を持っていて地面に何か書いている。そしてほんの一分程で立派な魔法陣が出来上がる。

 

「…魔法陣?」

 

「ありがとう。じゃあ始めるわよ」

 

そしてアリスは何やら呪文を唱え始め…、

 

 

カッ!!

 

 

魔法陣が光始め、そして…暫くして光が収まるとそこには扉が現れていた。猫の看板がかかった扉が。

 

「…え、ええ!?」

 

「ふぅ…どうやら成功ね。パチュリーの言う通り、思ったより魔力使うのね」

 

「あ、アリス…これは?」

 

「ふふ、行ってみたらわかるわよ。行きましょメディスン」

 

不安がるメディスンを連れてアリスは扉を開けた…。

 

 

…………

 

~~~~♪

 

 

扉を開けるとそこには数ヶ月前に初めて来た時と殆ど変わらないねこやの風景があった。昼を超えている事もあってか客はちょっと少な目である。

 

「ここも久しぶりね」

 

「あ、アリス…これって」

 

「ふふ、驚いた?ここは外の世界のご飯屋さん。ねこやよ」

 

「いらっしゃいませ~(ませ)!ようこそ洋食のねこやへ!…あ、アリスさんお久しぶりです!」

 

「ええこんにちはアレッタ、クロ。今日も来させてもらったわ。いいかしら?」

 

「勿論です!ありがとうございます!…あ、そちらの方はお連れ様ですか?」

 

「ええそうよ。ほら、挨拶しなさいメディスン。大丈夫だから」

 

「…う、うん。…メ、メディスン・メランコリー。…よく見ると貴女、人間じゃないのね。それと…その耳の形からして貴女も」

 

「あ、はい。私は魔族なんです。宜しくお願いしますメディスンさん!」

 

(クロと申します)

 

メディスンは頭に響いた言葉に「え?」という表情を見せる。それに対してアリスが説明する。もうこれも幻想郷組のいつもの光景になりつつある。すると今度は厨房から店主が顔をのぞかせた。

 

「ああ、いらっしゃいアリスさん」

 

「ええこんにちは店主さん」

 

「!…人間…」

 

アレッタとクロと違い、人間である店主を見て少し警戒心を見せるメディスンだったがアリスがそれを制し、問題を起こさない様さりげなくフォローする。しかし店主は大して気にしていない様な表情を見せる。

 

「こ~ら。ごめんなさいね。この子少し人が苦手で」

 

「いえいえ、全然気にしてませんよ。仏頂面なのは自覚してるんで。俺もどっちかと言えば人付き合いは苦手な方で」

 

「…貴方も人間が嫌いなの?」

 

「嫌いって訳じゃないですよ。でもどっちかというと料理作ってたりしてる方が好きですしね。…ああすみません、取り合えずお席にお座りください」

 

「お好きなお席にどうぞ!」

 

「ええありがとう。ほら座りましょう」

 

言われてアリスとメディスンはひとつのテーブルに着こうとすると、

 

~~♪

 

「こんにちは~」

 

「こんにちは」

 

再び扉が開いて入って来たのは以前アリスが知り合った砂の国の皇太子妃アーデルハイド、そして王女ラナーのふたりだった。向こうも冬なのか涼し気な恰好ではなく少し暖かめな服装である。

 

「いらっしゃいませー!」

 

「いらっしゃい」

 

「本日もお世話になります、皆さん。…まぁ!アリスさんじゃないですか」

 

「ほんとだ。久しぶりだね!」

 

「アーデルハイドとラナーだったわね。ええ久しぶりねふたり共」

 

「覚えていてくださったんですね」

 

再会を喜ぶアリス達。

 

「あれ?可愛らしい子だね。アリスの妹さん?」

 

「いいえ違うわ。彼女も幻想郷のお友達よ。メディスンっていうの。良かったら仲良くしてあげてね。メディスン。こちらアーデルハイドとラナーよ。前に来た時に知り合ったの」

 

「まぁそうなのですか。どうも初めまして。アーデルハイドと申します」

 

「義妹のラナーだよ。宜しく!」

 

「……」ペコ

 

「良かったら一緒に座らない?いいでしょ?」

 

特に断る理由も全然無いのでアリスとメディスン、アーデルハイドとラナーの四人は同じテーブルに座る。

 

「お水とおしぼりです。お決まりになりましたらお呼びください!」

 

「ありがとうございます」

 

「そういえば今日は彼は、シャリーフはどうしたの?あ、彼なんて言ったら失礼かしら?」

 

「全然気にしなくていいよ。兄上なら今公務で帝国に行ってるんだよ。だから今日は女だけで来たって訳さ。男抜きでたまにはこういうのもいいじゃん♪」

 

「ふふ、そうですね。後でシャリーに怒られそうだけど」

 

「相変わらず仲良さそうで何よりだわ」

 

「ところでメディスンさんでしたか?貴女もアリスさんと一緒にいらっしゃったお人形さんをお連れしてるんですね。可愛らしいですわ。なんというお名前なんですか?」

 

「……」

 

メディスンはやはり微妙な表情を崩さない。

 

「…ねぇアリス。もしかして私達、この子に嫌われてるかな?」

 

「いいえ、そんなのじゃないわ。ちょっと事情があってね、人に慣れてないの。こうして一緒にテーブルに座るのだけでも大分慣れてきた方なのよ。だから許してあげて」

 

アリスはメディスンが注目を浴びすぎない様気遣って彼女が人形である事だけは隠しておく事にした。

 

「そうなんだ。御免ね」

 

「…謝る必要はないわ。私の方も…なんか御免なさい」

 

「いえいえ。…メディスンさんのお気持ちも少しわかります。私もほんの少し前まで他の方が苦手だったりしましたから」

 

「…貴女も?」

 

「それは以前聞いた病気の頃の時?」

 

「はい…。仕方がないという事はよくわかっていたのですが…あの頃は病に侵された私を周囲の方々がまるで別の何かの様に見られて、そして避けられておりました。お話する時は殆ど扉越し、お食事の時は必ずひとり、外へはお出かけどころかお散歩する事もできにくい生活が続く中で、ハンナ、彼女以外周りを信じられなくなっていたのです…。あ、ハンナとは私の側仕えです」

 

「義姉上…」

 

「そんなある時、このお店の温かさや昔の思い出が私の心を覆っていた雲に光を差し込んでくれたんです。救われた様な気持ちがしました。それからはここに来る事が楽しみで、シャリーやラナーに会う事も楽しみで、いつの間にか心の雲はすっかり晴れていました。宮の方々とも打ち解けられましたし」

 

「それは良かったわね」

 

「はい。ですからメディスンさんも決して焦られる必要はないと思いますよ?ゆっくり慣れていけばいいと思います」

 

「……」

 

メディスンは昔の事を少し思い出していた。自分の元の持ち主の事は覚えていない。なんとなく覚えていたのは自分が捨てられた人形であった事だけ。自分を捨てた人間が憎かった。自分以外にも不幸な目に合っている人形のためにも自分が立ち上がらなければと思っていた。でも今はこうして人間や他の妖怪と一緒にいる。それが不思議にも思える反面…以前に比べて悪く無いともいう気分もあった。

 

「さぁさぁ取り敢えず注文しようよ!何にする?私は今日はグレープサイダーのクリームソーダにしよっかな~」

 

「そうですね。チョコレィトパフェでも良いですが、以前頂きましたフォンダンショコラも食べたいですし」

 

「ふふ、本当にチョコレートが好きなのね。あ、そうだわ。ねぇアレッタ。今日も何かオススメのものはあるかしら?」

 

「でしたらこちらはどうでしょうか?マスターの新作です」

 

そう言うとアレッタはスィーツ欄からひとつのメニューを指差す。

 

「「ホットチョコレート」?ココアとは違うの?」

 

「はい!ちょっと変わったチョコレートの食べ方なんですが新しい感覚でとても美味しいですよ!オススメのお菓子もお付けします」

 

「へぇ。じゃあ私はそれにしようかしら」

 

「新しいチョコレイト…私も凄く興味がありますから私もそれにしますわ」

 

「メディスンはどうする?ご飯物もあるわよ」

 

「ううん、お腹はあまり空いていないから私もアリスと同じものでいい」

 

「あ、じゃあ今日は私もそれにしよっと。ひとりだけ違うなんて寂しいじゃん」

 

「畏まりました。少々お待ちください!」

 

アレッタは店主に注文を伝えに行く。厨房から「はいよ」との声が響くのも見慣れた光景である。そんな時、メディスンがあるもの気づく。

 

「…あら」

 

言うと立ち上がってそれに近づく。それは今日の朝に店主が飾り付けていたガラスケースに入った和装人形。目を細めた白い肌の女性で頭に簪を付けて手には金色の扇子。赤や桃色、白等の花柄が描かれた華やかな赤い着物を着ているそれはまるで舞を披露している様に見える。それを黙って見つめるメディスン。やがてアリス達も気づく。

 

「……」

 

「まぁ!こちらもなんて素敵なお人形でしょうか」

 

「キレイな恰好だね。メンチカツさんやお好み焼きさんみたいな服に近いかな?」

 

「この前来た時は無かったわね。どうしたのこのお人形?」

 

「ふふ、やっぱり気になりますか?さっきから女性のお客さんは皆さん見られてますからね。それは…」

 

 

…………

 

(わー綺麗なお人形ですね!どうされたんですか?)

 

(ああ…これは俺の爺さんが婆ちゃんに誕生日プレゼントに贈ったものなんだ)

 

(プレゼント?)

 

(ああ。ある時どこかの店でこれが飾られてるのを見かけたみたいでな。気になったのか婆ちゃんがずっと見てたんだとさ。あんまり見てるから爺さんが買おうか?って聞いたんだけど、そん時は店を開いて直ぐだった事もあって下手にお金を使ったらいけないって、婆ちゃん断ってな。まぁ幸い店は一年経たずに軌道に乗ったんだが、今度は旅行にも行けない位忙しくなって)

 

(そうなんですか)

 

(そんで婆ちゃんの誕生日、ああ正確には出会った日を誕生日にしてるんだ。あっちは年月日がこっちと違うみたいだから。そん時に贈ったのがこっそり買っていたこの人形なんだ。びっくりさせるつもりだったんだが、婆ちゃんよっぽど嬉しかったらしくて思わず泣いちまったらしくて逆に驚いてたって聞いたよ。おっとこれは婆ちゃんには内緒な。バレたら恐ろしいし)

 

(わ、わかりました!それでどうしてそのお人形がここに?)

 

(婆ちゃんが他のお客さんや異世界食堂が始まってからも多くの人に見てほしいって最初はここに飾ってたんだ。ただ…爺さんが亡くなっちまった後は家にしまったままになってたんだ。見ると思い出しちゃうかもしれないってな。そしたら昨日ここに送って来たんだよ。しかも元々あった店の人に頼んで綺麗にしてもらって。なんでかって聞いたら…)

 

(また新しい世界に繋がったって聞いたわ。だから…また昔みたいに色々な人に見てもらって。その方がその子も喜ぶ。私はもう大丈夫だから。大樹との思い出はいつまでも…私の中にある)

 

 

…………

 

「…という訳らしいんです」

 

「成程ね」

 

「素敵なお話ですね。先代の御主人も奥様もお互いをどれだけ愛されてたか目に浮かびますわ」

 

「そうだね~。聞いててなんか暖かい気持ちになれるよ。兄上ももうちょっと義姉上に気を使ってくれたらなぁ。何気に欲しい物言ってみたら?」

 

「わ、私はシャリーと一緒に居られればそれだけで十分です」

 

「…そう言えば義姉上の曾御祖母様は確かひとり身だったって言ってたっけ?」

 

「ええ。曽祖父様については何もわからないんです。お墓にも名前が刻まれておりません。きっと何かしらの事情がおありなのかもしれませんが…お祖父様も何もご存知無いご様子でしたし。多分、曽祖父様の事はあまり良く思われて無かったのかもしれません」

 

「そうなのね。ならその分、貴女が幸せになりなさいよアーデルハイド」

 

「ありがとうございます。アリスさん」

 

「……」

 

そんな会話をしている間もメディスンはひとり人形を見つめていた。

 

 

 

 

……店主調理中……

 

 

 

 

…………

 

「お待たせしました~!ご注文のホットチョコレートです!」

 

そして暫くしてアリス達の席に注文のものが運ばれてきた。白いちょっと大きめのマグカップの中にココアよりもほんのちょっと濃い色をしたチョコレート色の飲み物がほんわりと湯気を立てている。中央には白い柔らかそうなものが浮かんでいる。

 

「真ん中の白い物はマシュマロというお菓子です。チョコレートと合いますのでゆっくり溶かしながらお飲みください。あとこちらはマスターよりサービスのクッキーです。一緒にお召し上がりください!それではごゆっくり!」

 

「ありがとうございます」

 

「…温かそう」

 

「いつも食べてるチョコレートとは全く違うんだね~。見た目まるでカッファみたい」

 

「でも香りは間違いなくチョコレートね。早速食べてみましょうか」

 

アリスの声で全員が頷き、カップに息を吹きかけながら口を付ける。

飲んでみるとチョコレートの濃厚な甘みが口の中一杯に広がる。チョコレートパフェで食べているそれよりほんの少し甘さ控えめだがそれでも十分甘い。温かさも加わって安心感というか、飲んでほっとする感じがする。

 

「…甘い」

 

「はぁ~甘いねぇ~。それに何この安心感…」

 

「…わかります。飲んでいるとなにかほっとする気持ちになります」

 

「紅茶とも、確かにココアともまた違うわね。このマシュマロは溶かしたらどうなるかしら」

 

言われた通りマシュマロをスプーンでゆっくりかき混ぜる。すると熱で溶けた分とろみが出てより濃厚な味わいになった。

 

「口の中にまた優しい甘さが広がりますね」

 

「このクッキーたちとの相性もばっちりだねぇ♪」

 

「そのまま飲むのとはまた違う感じがするわね。どうメディスン?美味しい?」

 

「…うん」

 

調子を崩さないメディスンだが、どこか嬉し気な感じがあるのをアリスは気づいた。

 

「なんか女の子だけでこういう集まりって楽しいねぇ♪次からは兄上を置いてって私達だけで来ようよ義姉上?」

 

「うふふ、それは確かに楽しそうですね。ですけれど…でもやっぱり私はシャリーも一緒が良いです」

 

「はいはい熱々で。このホットチョコレートがもっと甘くなった気がするよ」

 

そんな笑いある会話をしながらの女子会は続いた…。

 

 

 

 

……少女食事中……

 

 

 

 

…………

 

「ありがとうございましたー!(した)」

 

「はい。おみやげのシュークリームとクッキーアソート缶です」

 

「ありがとう♪」

 

「今日はお会いできて嬉しかったです。アリスさん、メディスンさん」

 

「また一緒にお茶しようねふたり共」

 

「ええそうね」

 

「……」

 

相変わらず返事をしないメディスンだが嫌な顔はしていない。すると彼女の方から店主に話しかけた。

 

「…ねぇ」

 

「?はい」

 

「…あの人形。…大事にしてあげて。大事にしてくれるなら…またここに来てあげてもいい」

 

「ええ勿論です。何時でもお待ちしています」

 

店主の返事に頷くメディスンだった。

 

 

~~~~♪

 

 

…………

 

ねこやから戻って来たふたりは取り合えずアリスの家に入った。

 

「どうメディスン?危ない場所じゃなかったでしょう?」

 

「…うん、まぁね」

 

「そういえば最後に店主さんに話しかけてたわね。ちょっと驚いちゃったわ」

 

「別にあの人間が好きになった訳じゃない。ただ…あの人形」

 

「あの和装人形の事?」

 

「とてもいい表情をしていたの。造られた顔だからじゃない。なんて言ったらいいのかわからないけど…。でも持ち主と、あのお店は決してあの子を不幸にしないし、これからもしない。そんな確信があったから。…あのお店なら…また行ってもいいと思う。ひとりじゃ無理だけど」

 

「…ふふ、じゃあまた一緒に行きましょうか」

 

聞かれたメディスンの表情はどこか嬉しそうだった。

 

 

…………

 

おまけ

 

 

とある日のアリスの家

 

「…ふ~ん。あの魔法陣使ったの?」

 

「ええ。思ったより魔力を使うからちょっと心配だったけど無事にねこやに行けたわ。ありがとう」

 

「…別に。減るものじゃないし」

 

「魔理沙には教えてあげないの?」

 

「…あの泥棒猫に教えると思う?図書館から取ってった本の50冊位返してくれたら毛先位考えてあげてもいいけど」

 

「でもまた盗まれるんじゃない?」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「…なんでもない。大丈夫よ。あの魔法陣が書かれている本は小悪魔に預けてあるから。まさかそんな大事な本を手元じゃなくあの子に預けてるなんて思わないでしょ」

 

そう言いながらお茶を飲むパチュリーとアリスだった。……しかし、そんなふたりを覗き込む者がいた。

 

「あんにゃろ~……」




メニュー31

「餃子」

果たして最後に聞いていたのは誰なのか?(まぁ丸わかりですけど汗)
次回はまた新たなキャラ予定ですので彼女の登場はちょっと先になります。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
  • 不安なので読みたくない
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