「こらー待ちなさーい!!」
「へっへ~ん♪」
とある日の紅魔館。この日ひとつの追いかけっこが繰り広げられていた。追いかけているのは小悪魔。逃げているのは魔理沙。その魔理沙の手にはひとつの本が。
「返しなさーい!それはパチュリー様からお預かりした大事な本なんだからー!」
「知ってるぜ~?だから今日はこれしか借りてねぇじゃないか♪」
「魔理沙の場合は盗んでるんでしょうがー!」
「ひでぇな~、死ぬまで借りてるだけだぜ~」
脱出寸前の魔理沙。そんな魔理沙の前に紅魔館の門番、美鈴が立ちはだかる。
「今日こそは通しませんよ!大人しくしてください!」
「美鈴か。悪いけど今日はスマートに行かせてもらうぜ!恋符…」
「そうはいきません!」
魔理沙はミニ八卦路を突き出す。美鈴は自身の気によるエネルギーを回避と防御に回す。
ポンッ!
…しかし、八卦路からはほんの少しの煙が出ただけ。
「…?あ、あれ。不発ですか?」ギュアアアアアア!!「きゃあぁぁぁぁぁ~」
するとなんと数秒後に高出力のレーザーが飛び出してきた。思わぬ奇襲に美鈴は巻き込まれた。
「あっはっは!これぞ恋符「裏をかくマスタースパーク」!霊夢との勝負のためのとっときさ♪じゃ~な~♪」
そう言うと魔理沙は今のマスタースパークで空いた穴から飛び出していった…。
「あ~んも~!」
「………はぁ、全く。私がほんの少し離れた間に」
「!ぱ、パチュリ~様ぁ。申し訳ありませ~ん。パチュリー様からお預かりしていた大事な本が~…」
「……」
パチュリーは魔理沙が飛び立っていった方向を見ていたが…妙に落ち着いてた様子だった。
…………
霧雨魔法店
翌日、霧雨魔法店には住人兼店主である魔理沙、そして霊夢が来ていた。
「てな訳で借りてきたのがこの本て訳なんだ♪」
「思い切り盗んで来た様にしか聞こえないんだけど」
「いやいや。てかパチュリーも悪いんだぜ〜?アリスには教えて私には教えないなんて不平等だよ。魔法陣を残した本なんて残してないって言ってたのに!酷いよな~嘘つきは泥棒の始まりなんだぜ!ろくな大人にならないぜきっと」
「……私には関係無いからまぁいいわ。とにかくこの魔法陣が?」
「ああねこやの扉を召喚する魔法陣だ。小悪魔が何より大事に持ってた本はこれ一冊だけだったからな。間違い無いぜ!昨日も試してみたんだが七日に一回という条件は変わらないのか無理だったんだよな〜」
「それで今日出る日だからもう一回試してみようって訳ね。早速やってみましょ♪」
言われてふたりは家の前に出る。そして魔理沙はチョークで魔法陣を地面に書いた。
「それじゃあ始めるぜ!結構魔力使うから集中させてくれな。~~~~」
魔理沙は集中する。霊夢はその横で様子を見続けていると…、
カッ!!!
「さぁ出てこい!」
陣が光を放ち始めた。……そして少しして光が収まってくる。しかし、
「………………あれ?」
そこには予想に反し、何も現れていなかった。
「…あ、あれ?なんでだ?」
「書き間違えてるんじゃないの?」
「い、いやそんな事はないぜ。昨日もやったしその際この本の図と一緒に合わせたんだから。お~い?」
しかしやはり何も現れない…。
「あれ~おかしいな~?」
「アンタには使えないって事じゃない?或いは魔力が足りないとか?」
「え~私のせいだっていうのか~?それを言うならパチュリーだろ~?」
「あ~あ。ちょっと期待しちゃったけど無駄足だったわね。気が抜けたらお腹空いちゃったわ。扉を探しに行くのも面倒だし、里に行ってなんか食べましょ」
「あ、お~い霊夢待ってくれ~私も行くよ~!」
扉召喚を諦めたふたりはそのまま飛んでいった…。
…………
魔法の森の中
そのほんの少し前、場所は変わって魔理沙の家から結構離れた魔法の森のとある場所。こちらでもふたつの動く影が。
女苑
「……だ〜も〜疲れた〜!」
紫苑
「文句言わない。さっさと山菜とキノコ探す」
それは紫苑と女苑の依神姉妹。どうやら山菜採りをしているらしかった。
「大体今冬なんだからキノコなんてあんまり生えてないわよ〜!おまけに雪に隠れて余計に見つからないし~!」
「そんな事は無い。秋に比べれば少ないけどよ〜く見ればわかる筈。それにこんな事してるのは女苑の無駄遣いのせい。香霖堂でバカ高い鞄なんて買ったせい」
「う~〜し、仕方ないじゃない!外から流れてきた、しかも有名ブランドの限定ものなんて聞いたら買うっきゃないじゃない~!」
「でもそのせいで私達のお小遣い使い切っちゃった。私怒ってる。朝と夜は出してもらえるけどお昼はなんとかしないといけない」
どうやら女苑が紫苑の所持金も使って香霖堂で高い買い物をしてしまい、それが原因でまた無一文になってしまったらしかった。そのため、昼食のためにここ魔法の森に以前みたいに食料を取りに来たらしい。
「でもキノコなんて下手したら危ないじゃないの」
「大丈夫。こういう時に備えて魔理沙から貰った「魔理沙ちゃん直伝魔法の森キノコ大全集」でしっかり予習したから」
「い、いつの間に…。あ〜あ、こういう時」
ズドーーーン!!
とその時、彼女らの目の前に勢いよく何かが落ちてきた。周囲に少し砂埃が立つ。
「!!」
「な、なな何!?」
桃の飾りが付いた帽子を被った少女
「はっはっは!久しぶりだなお前達!」
収まった砂煙の中から少し甲高い声で笑いながらひとりの少女が現れた。桃の飾りがついた黒い縁の帽子を被った青い髪と赤い目を持つ少女。白い服と青いスカート、そしてブーツという恰好である。
「あ、貴女は天子様!」
「げ~アンタか…」
「紫苑の奴はともかく女苑、お前の失礼っぷりは相変わらずだな。少しは目上に対して敬意を持ったらどうだ?」
「アンタに言われたくないっての。姉さんが勝手に言ってるだけで別に上司でもないでしょ。てか何しに来たのよ?吃驚したわよもう」
「ちょっと探し物があってな。だからひとつ位無くなっても気づかれない様な極小サイズの要石でやって来たのだ!というかお前達はここで何をしているんだ?まさか落ちてきた所で出くわすとは」
「私達はお昼ご飯のキノコや山菜を探しているんです。お金が無くて…」
「は~、やれやれお前達らしいな」
「所で天子様、探し物って?」
思い出したように天子と言われるその少女は手を叩き、
「お~そうだったそうだった。お前達、「外の世界の食堂に繋がる扉」を知らないか?」
「外の世界の食堂の扉ってそれ…」
「…うん。「ねこや」の事だよね絶対」
「ほお、お前達も知っていたか」
「私達もこの前行って来たからね」
「うん」
「なんだと〜!何故私も誘わなかったんだ!」
「いやどうやって知らせるってのよ。というか、ねこやの扉を探しに来たの?」
「うむ。天界でもあの天狗の新聞のそれが流れてきたからな♪随分な話題になっているらしいじゃないか。そんな面白そうなものを今まで教えなかったなんて酷いぞ!」
「いやそんな事うちらに言われても…。あ、てか確か今日が扉が出る日じゃない!あ〜あ、ねこやに行けたらうちらの今日の食糧問題も解決なんだけどね~」
「…そう言えばその扉とやらはどこに出るかわからんらしいな。因みにある程度予測はできないのか?」
「それができたらわざわざこんなとこで雪掘ってキノコ探しなんてしないわよ」
「因みに前来た時は魔法の森の中に出た扉から来たんだよね…」
「ふ〜む、このみょうちくりんな森も広いからな。探せばどこかに」ドゥンドゥンドゥン!「わーー!」
とその時、天子の真下から何かが飛び出してきた。某配管工が土管から出てくる様な音を立てて。思わぬ出来事に情けない声を上げながら彼女はそれに押し上げられ、バランスを崩して豪快に落ちたがそっちはあまり気にならないのか自分に何が起こったのかに困惑している。
「ななな何だ!何が起こった一体!?」
「…!」
「あー!」
依神姉妹はそんな天子よりも飛び出てきたそれに吃驚している。見ればそれは…ねこやの扉だった。
「と、扉だと?隠岐奈の奴か?ケンカ売ってくるなら買ってやるぞ!」
「いやいや違うわよ。これがねこやの扉よ。やったじゃん♪なんか前と随分出方が違うけど」
「…(じゅるり)」
「ほほうこれが例の扉か!そう言う事なら丁度いい。早速行ってみようではないか♪」
「牛丼牛丼牛丼…」
「姉さんどっかの漫画キャラじゃないんだから」
扉の出方や怒りもどこ吹く風と言った感じで天子は扉を開け、異世界食堂に足を踏み入れた。
「……む、自動で開かないのか」
「自動ドアな訳ないでしょ」
…………
〜〜〜〜♪
ワイワイガヤガヤ…
昼時という事もあって中々盛り上がっているねこや。
「ここが外の世界の食堂とやらか。ふむ、人里の茶屋や居酒屋に比べれば中々小綺麗にしているではないか。そしてあれが異世界の奴らとやらか。確かに幻想郷では見たことの無い者達ばかりだな」
「順応早いわね?」
「我は心が広いからな♪」
そんな会話をしているとアレッタが気づいて近づいて来た。
「いらっしゃいませー!あ、ジョオンさんとシオンさん!お久しぶりです」
「アレッタ、牛丼大盛り」
「こらこら挨拶もしないでがっつかないの姉さん。ええ久々ねアレッタ」
「紫苑、この娘は誰だ?」
「この子はアレッタって言ってここの給仕ですよ」
「ほほうそうか。何やら頭に変な山羊の角が付いてるが」
「あ、はい。私は魔族なので。初めまして。ようこそ洋食のねこやへ!私はここで働いている、アレッタです!」
「ほ~マゾクか。なんかよくわからんが直ぐに挨拶してきたのは褒めてやろうではないか。私は幻想郷の天人、比那名居天子だ。しかと覚えておくがいいぞ♪」
天人とは幻想郷の異界ともされる「天界」に住む者達の事である。天界は厳しい修業を積み、「天人」となった人間達が暮らす世界であり、危険などは一切無く、歌って踊って遊んで暮らすだけという正に理想郷である反面、それ故非常に退屈な場所とも言われている。
「て、天使様ですか!?でも…翼生えてませんよね?」
「あー違う違うそっちじゃなくて天の子と書いて天子だ。あと私は高貴な天人だからな、一応しいて敬え」
「な、なんかよくわからないけど凄い方なんですね!私達の世界でいう神様みたいな方なんでしょうか…」
「あ〜そんなに畏まらなくていいと思うわよ。確かに一応凄い人ではあるんだけどあんまり凄く無いから。天人くずれだし」
「…??」
天子の一族である比那名居は元々「名居」という一族に仕える神官の一族。名居家は嘗てそれまでの功績を認められて天人に昇格された経歴があるが、その際いわばオマケのような形で比那名居の一族も天界に住む事を許された。いわば棚から牡丹餅を得た形であり、天人としての格を備える修行をしたわけではないので、比那名居の一族は周りの天人からは「不良天人」「天人くずれ」等と呼ばれており、あまり畏敬の念は持たれていない。中でも天子は比那名居の一族の中でも特に自分勝手でやんちゃな性格で他の天人にも迷惑がられている。昔秘宝を持ち出して退屈な天界を飛び出し、幻想郷に攻め入り、博麗神社を破壊したという冗談では済まない程の異変「緋想天の異変」を起こした過去もある程に。だがそんな天子はというと、
「はっはっは!天人くずれで大いに結構!私が私であるならば、呼び方等ささいな問題に過ぎんわ♪」
こんな調子であまり反省している様子は見られない様だ。
「と、取り合えずお席に!おしぼりとお水をお持ちしますので!」
言われて三人はとあるテーブルに着く。そこに既に待ち構えていたクロがおしぼりと水を差しだす。その際クロのテレパシーにも反応するが紫苑達からそういう喋り方と教わって穏便に済ました。
「…人間の他に妙な奴らも大勢いるな。しかし誰も気にしていない様だ」
「貧乏神の私達も全然気にされて無かったもんね」
「誰もが出されている料理に満足している様に見えるが…。そんなに美味いのかここの料理は?」
「少なくとも幻想郷では食べれない様なものを食べさせてもらえるわね」
「ほ~そうなのか。私達は普段」
「ねぇねぇ早く注文しようよ~お腹減ったよ~」
「わかったわよ姉さん」
「…そう言えばお前達は何食ったんだ?何かおすすめの料理はあるのか?」
「天子様。おススメは牛丼です!安くて美味しくてお腹一杯になるお肉料理です!」
「私は海鮮丼かしらね~。豪華で食べた事無い新鮮な魚が沢山食べれるわ。今日も食べるつもりよ」
「ふむ、肉に魚か…。お、そうだ♪」
すると天子はアレッタを呼んで、
「おいえっと…アレッタだっけか?すまんがここの店主を呼んでくれるか?話があるんだが」
「アレッタ、私牛丼お願い」
「私は海鮮丼ね♪」
「あ、はい畏まりました!」
言われてアレッタは店主を呼びに行き、数秒後に店主がやって来る。
「いらっしゃいませ。お呼びでしょうか?」
「おおお主がここの店主か。こいつらから聞いたが、ここの料理はとても美味いらしいな?」
「はは、ありがとうございます」
「そこでひとつリクエストがあるんだが…」
すると天子は帽子に手を入れて中から何かを取り出した。出してきたのは少し大きめな桃。一瞬きょとんとする店主。
「…桃、ですか?」
「おおそうだ。私達天人は普段この桃しか食っておらん。たまには違う物を食いたいと思ってるんだが天人の奴等は食に対する欲が薄く、全然その気を起こさんのだ!」
「はぁ」
桃源郷と言われる故か天界では何故か原産品が桃であり、天子をはじめとする天人は基本桃しか食べない。この桃は凄く美味で食べ続けていると強い身体を得る事ができるとされている。厳しい修業をした天人達はそれでも不満は無いらしいのだが、そうでない天子はそれに不満があり、少し飽きが来ているらしい。
「そこでな、桃を具として使った料理ならば少しは考えを改めるのではないかと思うのだ」
「桃を使った料理、ですか?」
「うむ!そこで店主、お前に「桃を使った魚料理と肉料理、それと米か麺を使った料理」を頼みたい!」
大きめな声でそう頼む天子。それを聞こえたのか一瞬周りの客も「え?」という顔を見せる。
「な、何を馬鹿な事言ってんのよ!」
「そうですよ天子様〜!そんな料理あるわけ」
「……少しお時間を頂きますが宜しいでしょうか?」
「「できるの!?」」
当然心配になる顔を見せるが店主は腕を組み、答えた。
「ええ。下拵えとかもありますが」
「ほおできるというか。中々勇気のある料理人の様だ♪ではその礼としてこの桃を使ってくれて構わんぞ。そのために態々隠して持ってきたのだ」
「い、いえそんな」
「遠慮するな。どうも下界の桃は口に合わんからな。有り難く使うがいい♪」
「…はぁ、わかりました。それでは少々お待ち下さいね」
「ゆっくりで構わんぞ。コイツラのも合わせて出してくれれば良い」
「ええ!」
「ちょ、ちょっと天子様~私お腹空いて」
「なに~お前達だけ先に食べるなんて寂しいじゃないか!いいから待ってろ、すぐに終わる」
そして天子は周りに向かってこう発言した。
「異世界の民よ!私は比那名居天子!幻想郷の天界に住む偉大な天人である!つまり幻想郷で最も賢い者と言っても良い!今日の私は機嫌がいい。いつもならこんな事しないが今ならお前達が聞きたい事についてなんでも答えてやるぞ♪」
するとこれに反応してきたのが異世界組の中でも知恵者で通っている者や天と少なからず関りがある者達。
「へ~それは凄いや!僕はイルゼカントっていうエルフ。空飛ぶ島に住んでるんだけど宇治金時以外の研究が中々見つからなくて困ってたんだ。良かったら教えてくれないかな?」
「私はクリスティアンという。発酵について研究しているのだけれどよければほんの少し知恵を貸してほしい」
「私セイレーンのアーリウス!天人というのはあんまり興味ないけど天界ってどんな場所なの?」
「慌てるでないひとりずつだひとりずつ!という訳で店主よ!こいつらの相手をしているから料理はほんの少し待ってくれ!全てカタが付いたら持ってきてくれて構わんからゆっくり考えるのだ!」
「はぁ」
こういう時いつもの店主からしたら止めるのだが一部の人間、ひとりずつ、しかもケンカでは無い事などからまぁいいかと止めるのをやめた。
~~いつもより長めの店主調理中~~
…………
60分後…、
「じゃあご馳走様ー!天子さんありがとねー♪」~~♪
「ありがとうございましたー!」
「つ……疲れた…」
全て終わった後、天子はダラーっと崩れていた。先程天子が自分に聞きたい者はなんでも訪ねてくるが良いと言った直後、多くの者達から質問責めを受けていた。その数は相当で異世界の高名な魔術師のヴィクトリア、最高の賢者でもあるアルトリウスさえも幻想郷の知恵を少しでも受けたいと聞いてきたのだ。因みにその間幻想郷からの客もいたのだが彼女らは揃って無視してた。最初は余裕綽々な天子も喋りっぱなしだった事もあってか体力と喉が相当に疲れている様子。
「あ、あの~大丈夫ですか?」
「う、うむ。これ位は何ともない。…ってお前らはどうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも…アンタがご飯後回しでいいなんて言ったからお腹ペコペコなのよ。姉さん見なさいよ?あまりに空腹でスライムみたいになっちゃってるじゃないの」
「……」
流石にスライムそのものとはいかないが確かにうつ伏せででろんとなった紫苑。喋る気力もない様だ。そんな紫苑に再び話しかけるアレッタ。
「えっと…もう、お料理お出ししていいんですかね?」
シャキンッ!!「今すぐ出して!牛丼大盛り5人前位で出して!早く!」
(お待たせしました)
既に牛丼(大盛り)と海鮮丼をスタンバイしていたクロのトレーからガシッと丼鉢を奪い、紫苑は「いただきます!!」と宣言して早速がっつき始める。
「も~姉さん気持ちはわかるけど下品よ」
(はいジョオン様。海鮮丼です。本日の魚はマグロの赤身、中トロ、大トロ、イカ、アジ、ウニ、甘えびです」
「あんがと♪いただきまーす!」
紫苑程ではないが彼女もお腹が空いているのだろう。海鮮丼にとりかかる女苑。
「おい、私の料理はまだか?」
続いて店主が天子に料理を持ってきた。
「大変お待たせ致しました」
「構わん構わん。そう言ったのは私だからな」
「こちら、お客様から頂いた桃と魚を使ったお料理、「桃と白身魚のカルパッチョ」。そしてこちらが桃と肉のお料理で「牛肉のステーキ桃のソース」になります」
店主はそう言って天子の前に二つの皿を出した。まずは魚料理。綺麗に並べられている薄切りにされた魚の刺身の上にざく切りにされた桃が乗せられている。
もうひとつはビフテキ。焼いたロース肉の上に桃のソースが掛けられているもの。量がそれぞれほんの少し少な目なのは沢山注文されたのでお腹が一杯になりにくい様店主が配慮したものだろう。
「ほ、ほんとに桃と肉と魚が一緒になってる…」
「カルパッチョは鯛を使用しております。こちらのオリーブオイルベースのソースに、ビフテキも桃のソースに付けてお召し上がりください。もうひとつも直ぐにお持ちしますので」
「うむ。では店主の手並み拝見といくか。そうだな、まずは魚からだな」
天子はまずカルパッチョからとりかかる。言われた通り魚の切り身とざく切りの桃を少し、それを黄色いオリーブオイルというものに付けて一口食べると、
「…ほぉ、この鯛という魚。ただ切っただけと思いきや下処理がちゃんとされていて臭みも殆ど無い。オリーブオイルという聞き慣れないこの黄色いやつ…ほんの少し酢と塩や胡椒も入ってるな。初めての味だがなかなかだ。そして桃の香りが良い具合に効いている。中々美味い」
「へ~」
カルパッチョをニ、三口味わった次にビフテキに取り掛かる。ナイフで切ると焼き加減はほんのり赤身が残ったミディアム。その上に言われた通り桃のソースを付けて食べる。
「ふむ、柔らかくて中々美味い肉だ。そしてこの桃のソース、甘さが消え切っていないだけでなくほんのりだがニンニクと蜂蜜を加えている。これも初めての感覚だ。自分で注文しておいてなんだが桃と肉とはなんとも奇妙な組み合わせだがこれもなかなかいけるな」
「て、天子様、私にもひとくち」
「駄目だ」
「お待たせしました。こちら桃を使った麺料理。「桃と生ハムの冷製パスタ」になります」
最後に店主が持ってきたのはパスタの上に豚肉の生ハム、そして薄切りにされた桃がきれいに添えられた一皿。
「こっちは殆どそのままだね」
「冷製パスタとはなんだ?」
「はい。パスタといえば多くは温かい料理なんですが、それを夏場みたいな暑い時でも食べやすくしようとあえて冷たくしている料理です。今はまぁ寒いんですけどね」
「部屋が暖かいから別に気にせんぞ。それじゃ食べてみよう」
パスタをほんの少し、生ハムを一切れ、そして薄切りの桃を一緒に箸でつかむ。少々お行儀が悪い食べ方に思えるがそんな事を気にする天子ではない。
「…ほぉ。この生ハムというの、中々塩気が強いな。そしてこの桃、ほんの少し香り酒にくぐらせているのか」
「ええ。ミントの風味を生かしたお酒に」
「桃と肉が互いにそれぞれの良さを引き立たせている。この麺ももちもちしてて美味い。見事だ♪」
「ありがとうございます」
「下界の人間も中々やるではないか!どうだ?お前私と一緒に…!!」
「…どうしました?」
「い、いやいい気にしないでくれ!」
(…なんだ今のほんの一瞬の強烈な寒気は…?)
何故か酷くおびえた様子の天子だった。
「モグモグ」
「ておい紫苑何こっそり食ってる!それは私の肉だぞ!」
(……)
……少女食事中……
…………
~~~~♪
食事を終え、ねこやから帰って来た天子と依神姉妹。
「は~食べた食べた、おみやげも貰ったし言う事無しね♪」
「命蓮寺に持って帰ったら皆喜ぶ」
「やや時間は経ってしまったが確かに中々面白い店だったな♪来た甲斐はあった」
「もとを言うならアンタがあんな事言ったからよ。…それより大丈夫なの?こっそり出てきたらしいけど」
「大丈夫だ。私の考えに気づく者等」
?
「いないとお思いですか?総領事娘様」
すると木の陰からひとりの女性が顔を出した。帽子を被った青い髪、羽衣の様な服にロングスカートを履いた女性。
「!!い、衣玖!?なんでここに!?」
「総領事娘様の姿が見えないので探しておりました」
「し、しかし要石の結界は」
「ああそれでしたら私が予めどこに行っても直ぐにわかる様に全てのそれに仕掛けを施しておきました。ですから下界に降りてこられている事は直ぐにわかりましたよ。最も要石だけでお姿が見られなかったので必ず戻ってこられると思って待っていたのです」
にっこりと笑ってはいるがその帽子の赤いリボン?と羽衣はどこかゆらゆらと動いている様に見える。天子は少し汗を流している。
「さぁ帰りましょうか。大殿様がお呼びです。月に一度の家庭教師の日ですのにどこにいったのかって」
「え!き、今日だったか!?」
「何も言わなくて結構です。さぁさぁ早く帰りましょう」
「まま待って衣玖!ほら!外の世界のご飯屋からおみやげ持って帰って来た!これ全部あげるから見逃して」
「まぁそれは良いですね。ではそれをお茶菓子にして大殿様や御父上様と一緒にゆ~っくり語りましょうか。フフフ…」
「い、嫌だ~!」
こうして無理やり抑えられた半泣きの天子は天界に連れて帰られたのであった…。残ったのは紫苑と女苑だけ。
「……なんだったのかしら一体?」
(ジー…)
「て駄目よ姉さん!これは命蓮寺の皆へのおみやげでしょ!」
…………
おまけ
その頃、紅魔館では、
「えーじゃああの本ってそんな大したものじゃなかったんですかー?」
「…ええそうよ。あの本は前に私がやってしまった「失敗した魔法陣」を描いた本だから大したものじゃない。いわば魔理沙ホイホイ」
「ご、ゴ〇〇リじゃないんですから」
「酷いですよ~それなら最初から言ってくれたらいいじゃないですか~」
「敵を騙すにはなんたらよ」
そんな会話が繰り広げられていたのだった。余談ではあるが魔法陣の秘密に魔理沙が気づき、その修正をパチュリーにお願いした所「取ってった本200冊」と言われ、土下座して50冊までまけてもらった本と交換して直してもらったのはそれから三ヶ月後だったという。
メニュー34
「スコッチエッグ」
投稿が遅れてすみませんでした。繰り返し今後もまた遅れがちになりますがご了承ください。毎日や毎週投稿している人は凄いなぁ…。
こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。
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あれば読んでみたい
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不安なので読みたくない