幻想郷食堂   作:storyblade

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とある日のねこやの朝…。

「マスター。今日の日替わりは何を出すんですか?」

「ああ。今日はこいつを出す」

そう言って店主はある料理を出す。

(……魚?)

「焼き魚ですか?」

「いや、ちょっと違うな」

そう言って店主がそれに包丁を入れる。すると、

「…わぁ、中は生なんですね」

「ああ。生のこいつをたっぷりの藁を燃やした火で焙るんだ。するとこんな感じになる。知り合いの漁師から毎年この時期作りたてを真空パックで送ってもらってるのさ」

(…シンクウパック?)

「流石にここじゃ藁を燃やすのは無理だからな。でも作り立てそのままだから美味いぜ」

「へ~、これはなんて料理なんですか?」

「これは…」


メニュー37「二日酔いのリクエストとマイペースな店主」

香霖堂

 

 

時刻は午の刻の午後13時を回った頃。人里から離れた魔法の森の入り口近くにあるとある一軒屋。古道具屋「香霖堂」。

 

〜〜♪

 

「ありがとうございました。またのお越しを」

 

客が買い物を済ませて出ていった。対応したのは店主である森近霖之助。以前も述べたがこの店のものは基本的に彼の集めた物や拾ってきた物で埋め尽くされている。中には奇抜な物や外の世界から流れてきた物も。人には理解できない物も多く、お世辞抜きでもあまり繁盛しているとは言えない。しかし全く来ない訳でもなく、中には物珍しい物や外の世界の道具や食器を欲しいという者もいる。先程の客もそんな感じで「変わった食器でお茶を飲みたい」という理由で最近拾ってきたティーカップ(箱もあった事から多分外で売れ残った物だろう)を買って帰った。

 

「ふぅ…買い物してくれたのはありがたいけど話好きな客だったな。久々に長話して疲れた」

 

店が繁盛するに越した事は無いが基本的には儲けに無頓着な霖之助。売れる時は売れる、売れない時は売れない。数えきれないツケ(主に霊夢と魔理沙)をされても回収のために帳簿には全て取ってあるが、こちらから無理に取りに行く気はあまり無い。それどころか服やマジックアイテムを幾つも提供したり補修したりしている位である。最もそれを断れない自分の性格もわかっているのだが、だからといって変えるつもりもないのはなんだかんだ言って彼ら彼女らとの関係がうまくやれているからだろう。

 

「では読書に戻るとしようか」

 

とにもかくにも早速いつもの席に座り、読みかけの本を再び手に取る。季節は春真っ盛り。気温も快適湿度も快適。天気も上々。こんな日はゆっくり店内で読書をするに限る。

 

 

〜〜♪

 

 

……だがそんな彼のところに不幸というか、気の毒というか、自業自得というか、そんな客が来た。

 

「いらっしゃ…おや?」

 

「こんにちは霖之助さん…」

 

「うぃ〜っす…」

 

控えめに扉を開ける音が聞こえ、霖之助が対応しようとすると声が止まる。入ってきたのは霊夢と魔理沙。その表情は少し疲れている様に見える。

 

「なんだふたりか。……!魔理沙、遂に扉を丁寧に扱ってくれる気になったのかい!?」

 

「ちげーっつーの…」

 

そう言いながら霊夢と魔理沙は近くの売り物の椅子に座る。これも今更である。そして霊夢は突然こんな事を言い出す。

 

「霖之助さんお薬無い?」

 

「……何を言い出すかと思ったら、お茶の次は薬もねだる様になったのかい。そう言えばふたり共何というか気分すぐれ無さそうだね。いまさら風邪?」

 

「そんなんじゃねぇよ。二日酔いだ二日酔い。連日連夜花見で飲み過ぎたのさ…」

 

「なんだただの二日酔いか。意外だね、君達結構お酒強い方なのに」

 

「今年の春は桜がいつも以上に咲いてるせいで他の奴等が毎日来てんのよ。それに毎回巻き込まれてんの…」

 

「いい事じゃないか」

 

「どこがよ!私も飲める方だけど鬼や天狗と同じにすんじゃ…う~気分悪い」

 

「うおえっぷ…」

 

「お、おいおい厠に行ってくれよ」

 

「てかこーりん私前から言ってるけど一回位来いよな~」

 

「僕も前から言っているけれどああいう場所は苦手なんだよ。そんなに辛いのならここよりも永遠亭に行って来たらどうだい?或いは魔理沙に薬を調合してもらうとか」

 

「ここに来る前に行ってきたわよ…。でも里に往診に行ってたから薬だけでもと言ったらあの御姫さん「そっちのお薬なら今永琳が全部持って行ってるわ。里の人間も貴女達みたいにお酒に負けてるのね~」だって。魔理沙の薬を飲むのは御免よ。下手すれば悪化するわ」

 

「どういう意味だおい」

 

「成程…まぁでも確かに今年の桜は見事だからね。その気持ちは分からなくもないけれど」

 

「おい突っ込まないのかこーりん。って、お前もどっかで花見したのか?」

 

「桜をゆっくり見ていただけだよ。…それで、永遠亭がダメで僕の所に来たのはどうしてだい?」

 

「霖之助さんのとこなら外の薬が流れたりしてないかなって思ったのよ。…でも期待外れだった様ね。そうとわかれば…」

 

そう言いながら霊夢は立ち上がり、

 

「居間の方で少し横にならせてもらうわ…」

 

「私も少し寝かせてもらうぜ…」

 

魔理沙もそう言いながら立ち上がる。ならば家に帰ればいいのに、と思う霖之助。図々しいにも程がある様だがこれも慣れているのか何も言わない。

 

ガラッ

 

「あら!」

 

「あー!」

 

すると居間の畳の上に…あのねこやの扉が出現していた。

 

「お、おいこーりん!ねこやの扉があるぞ!」

 

「ああそうらしいね。さっき出てきてたんだよ。お昼の営業がある程度終わったら行こうと思ってたんだけど……まぁ丁度いい時間だし、久しぶりに行こうかな。この時間なら多分忙しい時間からちょっとずれてるだろうしね。ふたりはどうする?」

 

「当り前でしょ…って言いたいけど…」

 

「ああいつもなら直ぐに行くって言いたいんだが…どうするかな~」

 

「こんなんじゃご飯も美味しく食べれなさそうだものね…。お酒も今は飲みたくないし…」

 

二日酔いでしんどいのか霊夢と魔理沙はどうするべきか悩んでいる様だ。そんなふたりに霖之助は、

 

「だったら店主さんに「二日酔いでも食べられる、もしくは二日酔いに効く料理」を聞いてみたらどうかな?あともしかしたら薬を分けてもらえるかもしれないよ」

 

それを聞いてふたりは表情を一変させた。

 

「霖之助さん頭いい♪」

 

「たまにはいい事言うじゃないかこーりん♪伊達に歳はとってねぇな」

 

「少なくとも君達よりはいい事言っていると思うんだけど…」

 

「早速行きましょ♪」

 

「おう♪」

 

「…まぁいいか。ちょっと待っててよ。閉店の看板出して来るから」

 

そして霖之助と二日酔いの霊夢と魔理沙という最初の来店メンバーは再び扉を開けた。

 

 

…………

 

~~~~♪

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

「やぁこんにちは。アレッタさん、クロさん」

 

(はい。いらっしゃいませ)

 

「リンノスケさんにレイムさんにマリサさんお久しぶりです!」

 

「お~…」

 

「ええこんにちは…」

 

来たのはいいが霊夢と魔理沙はまだ辛そうだ。

 

「あ、あの~リンノスケさん。レイムさんとマリサさんどうされたんですか?」

 

「ああ心配しなくていいよアレッタさん。この子達の自業自得みたいなものだからね」

 

「ひっでー…」

 

するとそこに店主が顔を出す。

 

「お、皆さんいらっしゃい」

 

「あ、こんにちは」

 

「店主さん、早速で悪いんだけどお薬分けてくれないかしら~?」

 

「私の分も頼む~。薬代は紫の金から払っておいてくれ~」

 

「え、薬、ですか?」

 

「ああ店主さん。彼女ら実は酷い二日酔いでね。店主さんが良かったらでいいんだけど、薬を分けてもらえないかな?」

 

「え、ええそれ位ならいいですよ。ちょっと待っててください。アレッタさん、上から薬箱持ってきてくれるか?」

 

「はい!」

 

 

…………

 

「お水とメニュー、そしてあとお薬です」

 

アレッタが持ってきた酔い止めの薬を水で流し込む霊夢と魔理沙。

 

「あんがと…」

 

「お~さんきゅ~…」

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫さ。彼女らはこんな事日常茶飯事だからね」

 

「酷いわね~霖之助さん。博麗の巫女としての威厳が崩れたらどうするつもりよ?」

 

「こーりんは薄情だよな~」

 

「失礼だな君達は。数えきれない位の額のツケを許してあげているのに」

 

「私は過去を振り返りかえらない女よ」

 

「私は今しか生きていない女だぜ」

 

「それは当たり前だよ魔理沙。それにそんな事言ってたら霧雨の親父さんいつか泣くよ?」

 

「いいんだよ。帰る気なんてサラサラねぇし」

 

「…え?マリサさん、家出されてるんですか?」

 

「ああ。私親父と絶縁中なのさ。もうずっと帰ってないんだ」

 

「魔理沙は里にある古道具屋の生まれなの」

 

「でも親父さんと大喧嘩して勘当されてね。今の店兼物置小屋を開いたって訳さ」

 

「おい店はともかく物置小屋とはなんだ物置小屋とは」

 

「そうなんですか…」

 

「ま、あんな親父の事はどうでもいいって。それよりも…」

 

「アレッタ、悪いんだけどちょっとまた店主さん呼んでもらっていい?相談があるの」

 

「あ、はい。畏まりました!」

 

アレッタは店主を呼びに行くとほんの少しして店主が三人の所に来た。

 

「お呼びですか?」

 

「店主さん、ちょっと相談なんだけど…ここのメニューで何か二日酔いに効くお料理ってないかしら?」

 

「二日酔いですか…」

 

「ここんとこずっと花見が続いてて二日酔いが酷いのよ…」

 

「僕はまた日替わり定食でお願いできるかな?あと今日はおススメの御酒も頂くよ」

 

「え~お前だけ飲むつもりかよこーりん!」

 

「僕は何ともないからね。ふたりは肝休日にしなさい」

 

「チェ~…あ、私はできれば「消化がいいもの」で頼むぜおっさん」

 

「私はできれば肉がいいんだけど…」

 

「また肉かよ霊夢?」

 

「これだけは変えたくないのよ。あ、あとできれば幻想郷では食べれない様な物がいいわ。店主さんなら変なもの出さないだろうし、お料理は任せるわ」

 

「「消化がいい」…「肉を使った洋食」……わかりました。少々お待ちくださいね」

 

暫し考える様なそぶりの後、そう言うと店主は厨房に戻っていった。

 

~~♪

 

髭を生やした老人

「ほっほ!久しぶりに来れたぞい」

 

霊夢らが料理を待っている間にも客は扉を開けて来店してくる。白い立派な髭を生やした和装の老人。

 

「いらっしゃいませ!」

 

「今日も世話になるぞい」

 

「いらっしゃいソウジュンさん。今日もいつもので?」

 

「うむ。熱々のを頼む!」

 

~~♪

 

小刀を差した和装の男

「たのもう!」

 

次にやってきたのはタツゴロウに似た風貌と恰好をし、長刀ではなく脇差、小太刀程の長さの刀を持った男。

 

(いらっしゃいませ)

 

「お、いらっしゃい。久しぶりですね?」

 

「今日は懐が温かいから久々に美味い魚を食わせてもらいに来たんだ!おススメはあるかい?」

 

「はいよ。取り合えず席にどうぞ」

 

昼を過ぎてもねこやは今日も賑やかだ。

 

 

 

 

……店主調理中……

 

 

 

 

…………

 

そして暫くして、店主とクロが料理を運んできた。

 

「お待たせしました。お料理をできたのでお持ちできますが…大丈夫ですか?」

 

「ええちょっとマシになったから問題無いわ」

 

「二日酔いでも食欲があるのは人体の不思議なとこだよな~」

 

「わかりました。それではお出ししますね。まず霊夢さんにはこちら「鶏肉のソテーおろしソース」です」

 

店主が霊夢の前に出したのは大きな鶏モモ肉をこんがりと焼き目がつくまで焼いた料理。鶏肉の上には大根おろしが入った茶色いソースが掛けられている。傍には細かく切られた梅干しの梅肉、そして細切りにされた紫蘇が添えられている。他は白米と味噌汁。そして漬物は大根の糠漬けだ。

 

「鶏肉には二日酔いの原因になる物質の分解と肝臓のダメージを和らげる効果があるんです。脂には良質なアミノ酸も含まれてますからね。もも肉を香辛料を少なくしてあっさり目に焼き上げています。味付けは胃腸に優しい大根おろしを入れたポン酢ベースのソースです。回復機能が高い梅干し、紫蘇の葉と一緒に食べてください。あと本日の味噌汁はしじみの味噌汁です。しじみにも肝臓の回復効果がありますしね。漬物は大根のぬか漬けですよ」

 

「鶏はここでは初めてだわね。これまた美味しそうじゃない。病院食みたいな物だったらって心配だったけどこれなら全然ありね♪」

 

「思いつきにしてはどれも身体に優しい料理だね」

 

「はは。実はこちらでも今花見のシーズンですから同じ様なお客さんが多くて、それに合わせたメニューをお出ししてるんです」

 

「成る程なぁ〜。で、私のは?」

 

(お待たせしました。「中華粥」です)

 

クロが魔理沙の前に出したのはひとり用の小さい土鍋に入った料理。中には普通の白いお粥と違い、出汁で炊いているのか少し色味が付いたお粥で具には貝柱や小海老、椎茸と言った具も入っている。付け合わせは一口サイズに切られた焼かれたパンだが中には海老が見られる、そしてザーサイの漬物。

 

「普通のお粥とちょっと違うな?においも違うし」

 

「水で炊くお粥と違って中華粥は鳥ガラ出汁で煮込んだものです。消化にも良いだけじゃなく鳥の旨味や栄養もたっぷりで二日酔いにはいいですよ。中に入ってるのは戻した干し貝柱や干し海老で、アラニンって栄養が二日酔いで傷ついた肝臓の回復を助けてくれます。一緒に添えてるのはパンに海老を塗って作った海老パンです。普通は揚げるんですが今回はちょっとアレンジして焼いて作ってみました。良ければ食べてください」

 

「へ~わざわざありがとうな」

 

「そして霖之助さんご注文の本日の日替わり「初鰹のたたき」です。合わせるのはおススメの清酒の冷やです」

 

霖之助の前に出されたメニューは鰹という魚を使った、節に切られた一見刺身の様で縁が炙られた魚料理。ほんのり炙られたにおいがする。その横には葱や生姜、大葉やミョウガと言ったたっぷりの薬味が置かれている。あとは日替わりらしく白米と味噌汁、そして同じく漬物と、硝子の器に入れられた透明な酒。今回は冷酒で出された。

 

「ほほう、これが鰹のたたきだね」

 

「なんか燃えた様なにおいね」

 

「たっぷりの藁を燃やして炙ってますからそれのにおいですね」

 

「藁で炙る?」

 

「ええ。元々塩をまぶして馴染ませるために叩いて作ってた漁師料理って言われてるんですが、それがいつの間にか生の魚が禁止されてた時代に生の魚をどうにかして食べたいと考えた人々が藁を燃やした火で表面を炙って雑菌や虫を殺す方法として考え出された調理法だそうです。中を見なければ焼き魚に見えるでしょう?」

 

「ああ確かに」

 

「まぁ他にも説はあるんですがね。それは置いといて今はこの鰹が丁度旬なんで美味いですよ。薬味をたっぷり付けて生姜醤油で食べてください」

 

「わかったよ。ありがとう」

 

「それではごゆっくり」

 

(ごゆっくりどうぞ)

 

店主とクロは下がっていった。

 

「さぁ~早速食べるわよ♪」

 

「霊夢お前もう薬効いたのか?」

 

「美味しそうな料理を前にしたら食欲が湧いてきたわ。頂きます!」

 

霊夢は早速鶏肉の一切れに取り掛かる。噛むと適度に押し返す弾力の後にサクリと噛み切れ、そこから鶏モモの味と甘い良い脂、肉に染み込んでいるソースの旨味が口に広がる。ほんのり酸味があるポン酢ベースのソースは鶏の脂と大根おろしの甘みと交わってより美味く感じる。

 

「う~んやっぱりここのお肉は美味しいわね~。二日酔いで弱った身体に肉の美味しさと栄養が染みわたるわ~♪」

 

「いやいや枯れ木じゃないんだから…」

 

大根おろしやポン酢が効果的となって店主の言う通り肉料理なのにあっさりしている。梅干しの酸味や紫蘇のほろ苦さが加わるとよりさっぱりする。

 

「梅干しをお肉と合わせるのは初めてだけどこれもいいわね~。さっぱりして幾らでも食べれそうだわ♪」

 

「私も食べよっと」

 

二日酔いを忘れたかの様に笑う霊夢。魔理沙は土鍋から小さいお椀に何杯かお粥を取り、ふーふーと息を吹きかけて冷ましてから口に運ぶ。出汁で炊かれている中華粥は塩味と鳥の出汁、そして一緒に炊かれている乾物からの旨味が米にたっぷりと吸われ、混ざり合う。それが一口食べるたびにスープの温かさと共に安心感を与える。

 

「は~…これも美味いなぁ。お粥というより雑炊だけど雑炊より柔らかいし食べやすいぜ」

 

具に入っている貝柱や小エビや椎茸の食感、そして細かく切られた鶏肉と鳥皮、それらも存在感がちゃんとあって絶妙な風味を生み出している。更に、

 

「このパンも一緒に食べると良いって言ってたけど」

 

魔理沙は海老パンを手に取り、一口サイズに切ったそれをお粥のスープにつけて食べてみる。スープをじんわりしみ込んだパンはサクサク感の軽い食感と海老のプリプリ感を残しつつ、また変わった風味を味わえた。

 

「これも中々面白いな。このザーサイっていう漬物ともよく合うぞ♪」

 

「それは良かったね。では僕も魚にとりかかるとしよう」

 

中華粥の味を気に入ったらしい魔理沙を横目に霖之助も自らの料理に手を付ける事にする。鰹の一切れを取り、それを言われた通りまずはたっぷりの葱と一緒に生姜を溶かした生姜醤油で食べる事にする。口に入れた瞬間、強い火で炙られたかおりをより強く感じる。そして次に川魚よりもしっかりとした海の魚の歯ごたえと濃厚な味。焼かれているためか生臭さもそれ程なくて食べやすい。葱、そして生姜醤油との相性も言わずもがなである。

 

「…うん美味しい。海の魚を食べる機会は滅多にないけど鰹ってこんな味がするんだね。何より生姜との相性が凄く合ってるよ」

 

葱やミョウガのシャキシャキ感がより面白い歯ごたえとなり、大葉や大根おろしの辛さも合っている。そして、

 

「ここでこれだな」

 

鰹の風味がまだ残っている間に冷酒の盃を取り、飲む。冷たく冷やされたそれは常温で飲むよりも酒精と果実の様な爽やかさをより強く感じる気がする。

 

「清酒は冷やして飲んでも中々美味いね」

 

「「……」」

 

そんな風に酒を飲む霖之助をジト目で見ているのは酒を飲めないふたり。そんな霊夢と魔理沙を尻目にマイペースに酒と魚を楽しむ霖之助。

 

「そんな顔してもあげないよ。今日は我慢しなさい」

 

「「ケチ!」」

 

「ケチで結構」

 

仲良くケンカする三人。

 

ソウジュン(中華粥)

「…うむ、うむ美味い!やっぱりこいつは酒で口を濁らさずに食うのが一番じゃ!」

 

コヘイジ(秋刀魚の塩焼き)

「か〜うめぇ!やっぱり魚はここのに限るな。焼いたサンマってのにはちょいと敵わねぇけどこいつも酒に合うぜ!」

 

別の席でも食事が進んでいた…。

 

 

 

 

……少女食事中……

 

 

 

 

…………

 

「ご馳走様!悪かったわね店主さん、おみやげとは別にお薬まで貰っちゃって」

 

「いえいえ。それより…いいんですか?何時もみたいなおみやげで」

 

「大丈夫大丈夫。こーりんが酒を飲ませてくれなかったからな!明日にでも飲まなきゃやってられないんだぜ」

 

「…ふたり共病み上がりなのわかってるかい?」

 

するとアレッタが、

 

「…あの、マリサさん」

 

「ん?どうしたアレッタ?」

 

「私が言うのは勝手だと思うんですけど…何時か、お父さんと仲直りしてくださいね?」

 

(アレッタ?)

 

「今が無理なら今度でいいんです!でなきゃ絶対後悔します!何時、何時会えなくなるか分からないんですから…」

 

何やら思う事がある様な表情を見せるアレッタ。そんな彼女を魔理沙は暫く眺めた後、

 

「……へ〜へ〜、わかったよ。ま、あのクソ親父がくたばるとは思えねぇけど、気が向いたらな。じゃ、ご馳走さんおっさん」

 

照れ隠しなのか、魔理沙は先に扉を出ていってしまった。

 

「……」

 

「大丈夫だよアレッタさん。ああ見えて魔理沙、ちゃんと考えているから。ありがとうね」

 

「全くあの子ったら。じゃあまたね、皆♪」

 

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 

〜〜♪

 

霖之助と霊夢も帰って行った…。

 

「…私、勝手な事したでしょうか?」

 

「ん〜まぁ客のプライベートに首を突っ込むのはあまり褒められた事じゃないかもしれないけどな」

 

「す、すいません」

 

謝るアレッタだが店主はポンと肩を置く。表情は軟らかい。

 

「まぁでも時と場合によりけりだ。感謝されたんなら良かったじゃないか。さ、仕事だ」

 

店主は厨房に戻る。彼もまた照れ隠しが見える。

 

(大丈夫?アレッタ)

 

「はい!ありがとうございますクロさん」

 

(ううん。アレッタが元気ならそれでいい)

 

今日もねこやは変わらない。

 

 

…………

 

香霖堂

 

 

またまたとある日の香霖堂…。

 

ーー!♪

 

「おーすこ…っていねぇのか?全く不用心だな」

 

「誰が不用心だって?」

 

扉を蹴破ったのは魔理沙。そのすぐ後ろに霖之助がいた。

 

「うお!い、いたのか」

 

「いたのかじゃなくて今帰って来たんだよ。でも扉には鍵をかけておいた筈だけど」

 

「いやいやこんな鍵なんて私の開錠魔法で簡単だぜ。全く危ない奴だな」

 

「…一番危ないのは魔理沙だと思うがね」

 

「で、どこ行ってたんだ?」

 

「ああ霧雨の親父さんに会ってきたのさ。ちょっと仕事の話でね。久々に顔を見に行くというのもあったんだけど」

 

「…ふ~んそうなのか。…まだくたばってなかったか?」

 

「それどころかぴんぴんしていたよ。…気になるかい?」

 

「はっ!ちげーよちょいと思っただけさ。元気だったならそれでいいさ」

 

「……ふふ」

 

「笑うな!」

 

その後、何年後かは不明だが里のとある古道具屋にひとりの金髪の少女が訪れた事があったのはあまり知られていない確かな記録である。




メニュー38

「ふたりの賢者の食事」

皆さんこんにちは、storybladeです。
またまた遅くなりました。理由は以前書いた通りです。暫く続きますがご容赦いただければ幸いです。
皆さん二日酔いの時に食べるものってありますか?自分は今回ジャンルが違うので出なかったのですが断然「肉うどん」です。数年前二日酔いでどうしようも無くなった時に肉うどんを知って某チェーン店で食べた所、数時間後嘘の様に楽になりました。二日酔いには肉うどんおススメです。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
  • 不安なので読みたくない
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