幻想郷食堂   作:storyblade

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「おはようございまーす!パンお届けに上がりましたー!」

その日の営業開始前のねこや。今日もいつもの様に「ベーカリーキムラ」のショータがパンを届けにきた。

「おはようございますショータさん!」

「は、はいアレッタさん!」

「おはよう。今日もご苦労さん」

「いえ!…ああそうだったおじさん。今日のサンドイッチ用の食パン、俺も作ったものなんすけど、味は許可貰ってるんで大丈夫です」

「へ~そうなのか。腕を上げたな」

「いや、まだまだっす。あああと…これどうぞ!」

「わ~ツナマヨコーンパンとカレーパン!嬉しいです!ありがとうございます!」

「い、いえ!じゃ、じゃあ俺はこれで!」ガラガラガラガラ!!

アレッタが笑顔でお礼すると颯爽とショータは帰っていった。

「…パンの腕は上げたがあっちはまだまだだなぁ」

(何が?)

「いや別に。さて、それじゃこいつで最近作った新しいメニューを作るとするか」


メニュー39「サンドイッチ」

紫と隠岐奈が暦と会話しているその頃…、

 

 

妖怪の山 守矢神社

 

 

ワイワイがやがや…

 

「はい、御祈祷ありがとうございます!守矢の加護がありますように!」

 

「たく…なんで私がここの手伝いなんてしなけりゃなんないのよ…」

 

「まぁまぁいいじゃねぇか。給金はずむって言ってんだし、どうせ暇だろ?」

 

「暇も何もそもそも商売敵に頼むなんて間違ってるでしょ!」

 

「そういいながら霊夢さんもしょっちゅう早苗さんに留守番頼んでるじゃないですか」

 

「わ、私は博麗の巫女として色々あちこち見回らないといけないし~あうんに任せきりなのも悪いし~」

 

「ほらほら、喋ってばかりいないで手を動かして」

 

春も中頃を迎え、ここ妖怪の山でも春の花たちが満開を迎えていたそんな中、守矢神社はいつも以上に盛大に賑わっていた。見ると巫女の早苗が忙しく動き回ったり、霊夢や魔理沙、妖夢等が手伝ったり、様々な屋台が開かれている。今日はここ守矢神社での縁日なのだ。博麗神社と違い守矢神社の縁日は人だけでなく人にまぎれた妖怪も来たりしていつも忙しい。因みに本尊である神奈子と諏訪子はそんな賑わう様子を誰にも見つからない場所で酒を飲みながら見守っている。そして、

 

弁々・八橋

「~~~♪」

 

桃色の髪の少女&烏帽子の少女ふたり

「「「……」」」

 

祭の真ん中に設置された舞台で三人の少女が楽器の音色に合わせて舞をしている。

真ん中で踊るのは腰まで伸びた長い桃色の髪で青いチェックの服、そしてバルーンスカートを着た少女。華麗に舞っているがその顔はどこかしら無表情である。

その少女の左右で舞うのは頭に烏帽子をかぶったふたりの少女でひとりは海松色の髪をサイドヘアにし、緑の服の上に白い襟と前掛けを付けている。もうひとりは茶色の髪を同じくサイドヘアにし、紅色の服の上に同じく白い襟と前掛けという姿格好がよく似た少女だ。因みに楽器を弾いているのは琵琶の付喪神、弁々とその妹である琴の付喪神の八橋の九十九姉妹で楽器は彼女らの力でなく本物を使用している。

 

赤い髪の少女

「~~~♪」

 

そしてもうひとり、離れた所でそれを眺めるひとりの少女がいた。赤い短めの髪の少女で黒い生地に赤いチェックが入った上着の上に白いジャケットとスカート。一見幻想郷では珍しい洋服である。そんな彼女は複数の太鼓を叩いて音調整をしている。どうやら自分の演奏の順番を待っているらしかった。そして当たり前と言えるかもしれないが彼女も勿論人間では無い。しかし見た目が人間なので里の人にも気づかれていない様子。とにもかくにも彼女らの演奏と舞台の踊り子達で存分に盛り上がった。

 

 

…………

 

「おつかれ三人共!」

 

「よく頑張ったわ」

 

「うん、お客さんも喜んでたよ」

 

「ありがとう~…」

 

「疲れた~…」

 

「…同じく」

 

その後、彼女らの踊りと舞と演奏が終わり、互いに労い合っていた。労うのは楽器組の三人。踊りを披露していたふたりの少女は少し疲れた顔だ。もうひとりの桃色の髪の少女も疲れている筈だが顔に表情の変化はない。しかしよく見ると彼女に寄り添うようにひとつのお面があり、そのお面が代わりに泣いている様に見える。

 

「雷鼓の単独ライブも盛り上がってたね」

 

「もっと激しく始原のビートを響かせたかったけどね~」

 

「まぁまぁ。次があるからいいじゃない」

 

少し消化不良な様子の赤髪の少女。

彼女の名は堀川雷鼓。九十九姉妹と同じく楽器、元太鼓の付喪神である。彼女の始まりは針妙丸や正邪が起こした輝針城異変。打出の小槌の力を感じて危機感を持った彼女は依代である和太鼓と魔力の源である太鼓奏者を切り捨て、新たな依代として外の世界の楽器と奏者を手に入れた。その後、彼女は他の道具の付喪神(九十九姉妹もである)にも同じ方法を教えた。身体を持ったために外の世界に出る事ができなくなってしまったが、しかし元来明るい性格の彼女は暴れる事をやめ、今は気楽に演奏を楽しむ生活を送っている。

 

「それにしても練習って言ってたのにいきなり本番って思わなかったな」

 

「そうだよこころ~。酷くないかしら?」

 

「私はどこで練習するとは言ってないぞ。踊りの上達は他の評価を得てこそだ」

 

そう言いつつ今度は彼女の面が先程の泣いている面から今度は涼しい顔の女性の面になった。まるで面が彼女の気持ちの代弁をしている様である。

それもその筈。こころと呼ばれた彼女もまた雷鼓と同じくお面の付喪神、いわゆる面霊気なのである。複数の面(希望の面のみ嘗て失われた)が彼女の感情を表すが自身は表情も声も変わる事が無い。周りからすれば感情が無いと思われる事もしばしば。しかし彼女を深く知る者は以前に比べれば明るくなったと言う(但し反面少し馬鹿になったとも。実際自分は面霊気でなく口裂け女なんて思った事もある)。特技は能楽をはじめとする舞で人を選ぶが評判も高い。

 

「最近舞も里乃も練習頑張ってるみたいだね」

 

「そうそう。ルナサ達が言ってたよ?自分達のところにも来たって」

 

「だってお師匠様にもっと褒めてほしいじゃない」

 

「お師匠様の童子としてもっと御力になれる様頑張らなきゃ!」

 

「相変わらず隠岐奈が好きだねぇ。あの引きこもりのどこがいいのか」

 

「こら。隠岐奈様と言ってよ」

 

「お師匠様の悪口は許さないぞ」

 

隠岐奈の名前が出てきた事で気づく人も多いだろう。舞、そして里乃、彼女らこそ前話にて紫と隠岐奈が話していた隠岐奈の弟子にして童子である。童子とは主に貴族に使え、身の回りの世話をする幼い子供の事。他にも菩薩やそれに仕える従者という意味も含んでいる。舞と里乃は元々は普通の人間であったがある時、隠岐奈に人でない存在にされ、力を与えられた。何故彼女らを選ばれたのかはわからない。その際人であった時の記憶は完全に失われたらしく、以降ふたりは彼女に付き従う存在となった。

 

「そういえば最近あの子達も頑張ってるよね~」

 

「うんうん、この間一緒にライブした時に新曲とか披露しててお客さんにも好評だったよ」

 

「前聞いた所だと少し悩んでたみたいじゃない。…何かあったのかな?」

 

「なんでも新しい場所とお客さんに応援と新しい刺激をもらって創作意欲が湧いたとか言ってた様な…」

 

「新しい場所?」

 

八橋や雷鼓がそんな会話をする。ルナサ・メルラン・リリカのプリズムリバー三姉妹。今日はここには来ていないが彼女らもまた、以前にもまして音楽活動を頑張っているらしい。すると弁々が、

 

「……それってもしかして、「異世界食堂」の事かしら?」

 

「あ~かもしれないね!」

 

「…異世界食堂?」

 

「あれ?こころしらない?今妖怪達の間で話題になってる外の世界のご飯屋さんの事だよ。この前私達も行って来たんだ」

 

「あ~あの里でも少し話題になってたとこ?てアンタ達行ってきたの?」

 

「うん。わかさぎ達やにとり達とね。見た事無い場所だけどいいとこだったよ。あとご飯が凄く美味しかった!」

 

「へ~そうなんだ。私も行ってみたいな」

 

「私も美味しいもの食べたい…」(姥)

 

「ねぇ舞。そういえばお師匠様も言ってたっけ」

 

「うん。そのお店について出来る限りでいいから調べてくれって言われたよね」

 

「へ~なんで?」

 

「だって外の世界と繋がる扉だよ?下手したら何があるかわからないじゃない」

 

「霊夢や紫様が調べているみたいだけどよくわかってないって言うし…」

 

「店主さん達は大丈夫って言ってたけどなぁ。そんなに気になるなら行ってみたら?」

 

「でもその扉、どこに出るかわからないって」

 

 

ヴゥゥゥゥゥゥンッ!

 

 

……すると彼女らの前にあるものが。それは今まさに彼女らが話していた…ねこやの扉だった。それがまるで地面から生えてきたかのようにゆっくりと現れた。そんな光景に一瞬全員が黙った後…、

 

「出たーー!」

 

「え、ええぇ!?」

 

「う、嘘!?」

 

「…お~」(大飛出)

 

「へ~凄いね!ほんと突然出てくるんだ」

 

「そうね。私達の時は既に出ていたから」

 

「こりゃラッキーだね♪それじゃ早速うちらも行ってみようか!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ雷鼓。僕達だけじゃ危なくない?」

 

「そ、そうだよ。ここはお師匠様達に相談してからの方が…」

 

「え~そうしている間に他の人に行かれちゃうよ~。それにこころはもう行く気満々みたいだし」

 

こころの前に笑顔の福の神の面があった。

 

「ふたり共大丈夫よ。最初は驚くだろうけど危険な場所じゃないから。あとは私と八橋で片付けとかやっとくからゆっくりしてきて?」

 

「よし!じゃあ行くよ♪」

 

「お~♪」(火男)

 

「あ、お土産宜しくね~♪」

 

「「ちょっと~!?」」

 

 

…………

 

~~~~♪

 

 

「お〜…わ〜…」(大飛出の驚)

 

「わ〜ナニコレナニコレ〜!」

 

「弁々達の言った通り…ほんとに来ちゃった」

 

「でもコンサートやるにはちょっと狭いかしらね〜」

 

目の前に飛び込んできた光景に驚いたり言葉を失ったり様々な反応を見せる四人。

 

「あ、いらっしゃいませー!四名様ですか?」

 

「ええ。あの~知り合いから聞いたんだけど、ここって異世界のご飯屋さんって本当?」

 

「はい!ここは異世界にある料理屋で…あ、もしかして皆さんも幻想郷の方ですか?」

 

「ええそうよ。私は堀川雷鼓。太鼓の付喪神よ。宜しくね!」

 

「僕は丁礼田舞!お師匠様に仕える童子さ」

 

「わ、私は爾子田里乃。舞と同じでお師匠様に仕える童子。よ、宜しく」

 

舞は実際来た事で少し慣れた様だが里乃はまだ緊張している様子。

 

「私はアレッタといいます!皆さん宜しくお願いします!」

 

(クロと申します)

 

「あ、あれ?今なんか頭に声が」

 

「あ、こちらのクロさんはこういう喋り方なんです」

 

「へ~不思議な力だね。あ、そういえばもうひとりいた。こころ」

 

「……お面の付喪神。面霊気。秦こころだ。宜しく」(女)

 

「は、はい…宜しくお願いします」

 

「…?どうしたの?」

 

「い、いえなんか怒られてるみたいな気がして」

 

「ああ大丈夫大丈夫。この子筋金入りの無表情娘なもんで何を言ってもこんな顔なんだ」

 

「そうそう。なんならこの子の顔じゃなくお面を見てね」

 

「はぁ。あの、ツクモガミってなんですか?前に来ていただいたルナサさん達もそう言われていた様な…」

 

「付喪神を知らないの?付喪神ってのは道具に宿る霊魂の事よ。それが妖怪化して動き出すのが私達って訳」

 

「ルナサだけじゃなくメルランやリリカ言ってたよ。ここで随分お世話になったとか、新しい刺激をもらったとか」

 

「いえいえ!寧ろこちらの方が素敵な音楽を聞かせて頂きましたし!ね、クロさん?」

 

(うん)

 

「ねぇ~それよりご飯食べさせてもらっていい~?」

 

「お腹空いたぞ~」

 

「あ、はい勿論です!どうぞお席に!」

 

 

…………

 

(お水とおしぼりです。ご注文が決まりましたらお呼びください)

 

「ありがと~」

 

「このお水、何かちょっと酸味があってさっぱりする」(女)

 

「この黄色い果実なんじゃない?」

 

「う~ん…どれも美味しそうなんだけど、わかる料理もあるけどわからない料理も多いね」

 

「折角だから食べた事無いの食べたいね。弁々やルナサ達が何食べたのか聞いて来れば良かった」

 

何を食べるか選んでいる四人。

 

「うん?貴女達、今ルナサって言った?」

 

「君達、彼女達の知り合いかい?」

 

すると彼女らのテーブルの隣から声をかけてくる者がいた。それは有翼人、セイレーンのイリス・アーリウスのふたりであった。

 

「あ、貴女達は?」

 

「ていうか、ルナサ達の知り合いかい?」

 

「ああ突然ごめんね。僕達は…」

 

まさかの異世界人からの接触だったが声をかけられたので無視する訳にもいかないので返事をし、話し始めるのであった。

 

 

…………

 

暫しお互いの自己紹介をしつつ、境遇について話し終わる。

 

「…ふ~んそっか。あの子達上手くやってるのね」

 

「そして君達も精霊というか、ちょっと変わった存在なんだね。太鼓の精霊に、君なんてお面の精霊だなんて」

 

「精霊じゃない。面霊気だ」(女)

 

「まぁどっちでもあんまり変わらないさ。私からしたら君達の方が不思議よ」

 

「うんうん。セイレーンなんて初めて見たよ」

 

「烏天狗や天界人はいるけどね」

 

雷鼓達は最初に来た時よりも結構リラックスしている様子。扉をくぐるまではやはり緊張が勝っていたがねこやの雰囲気といい匂いに安心させられた様だ。

 

「ねぇねぇ、ところで早く注文決めようよ。踊ってお腹すいちゃってるんだし~」

 

「そうだ。早く何か食べたいぞ!」(般若)

 

「もう舞もこころも…」

 

「まぁまぁ。イリスにアーリウスだっけ?何かここでのおススメってないかな?」

 

「それなら魚かしらね。ここのお魚は美味しいから」

 

「うん。生の魚がそのまま食べるよりもより美味しく食べれるからね。特に僕らが食べてる「カルパッチョ」とか「タルタル」もおススメだよ」

 

「変わった名前だね」

 

「でも海のお魚が食べれるならいいね。幻想郷じゃ基本食べられないし」

 

するとイリスが追加する。

 

「あああと「サンドイッチ」の新メニューもおススメね♪」

 

「…サンドイッチ?」

 

「新メニュー?」

 

「そ、まるでカルパッチョを挟んだ様なものなんだけどそれも是非食べてみると良いわよ。今さっき私達も食べたから」

 

「あとおみやげとしてもここのサンドイッチは人気だよ。ほら」

 

「お待たせしましたーメンチカツサンドと海老カツサンドです!」

 

「ありがと。この後ダンジョンに潜るからね♪」

 

「ありがたく頂こう!」

 

こちらではクロが、

 

(焼きそばパンをお持ちしました)

 

「ありがとうございます」

 

「お主と被るのは面白くないが、合間の腹ごしらえにはこれが一番だからな」

 

そしてカウンターでは店主がカツサンドを出す。

 

「お待たせしました。今日のパンはうちにパンを卸してくれてるとこの息子さんが作ったものなんですが、味は保証しますよ」

 

「ほぅそうか。ありがたく頂こうかの」

 

「…結構人気なんだね」

 

「貴女達も食べてったら?じゃあ私達は帰るわね。行きましょアーリウス」

 

「そうだね。じゃあまたね、皆」

 

そう言ってふたりは席を離れていった…。

 

「行っちゃったね」

 

「折角だから食べてみる?」

 

「そうしよっか」

 

「へ~サンドイッチって結構色々なものがあるね。あ、新メニューはこれの事かな?」

 

「折角だし、色々頼んで食べ比べしてみるのはどうだ?」

 

「それがいいね♪皆どれがいい?」

 

そう言って食べるもの選び、四人はアレッタを呼ぶ。

 

「アレッタだっけ?えっと、ここにあるサンドイッチってのお願い」

 

「畏まりました!お飲み物は何がいいですか?」

 

「何が合うの?」

 

聞かれてアレッタはいくつかの飲み物を紹介し、それも四人其々選ぶ。注文を受け取ったアレッタは店主に伝えにいくのであった。

 

 

 

 

……店主調理中……

 

 

 

 

…………

 

そして暫くした後、アレッタが注文した料理を四人の所に運んできた。

 

「お待たせしましたー!お料理をお持ちしました!」

 

「あ、来た来た」

 

「ありがとう」

 

「先にお飲み物からお出ししますね」

 

そう言ってまず飲み物からテーブルに運ぶ。雷鼓はアイスコーヒー。こころはコーヒーにミルクとほんの少しの砂糖を入れたカフェオレ。舞と里乃は100%のオレンジジュース。どれも透明なガラスに入れられ、氷が浮かんでいる。

 

「アイスコーヒーはお好みでシロップとミルクを入れて飲んでください」

 

「ありがと。へ~真っ黒な飲み物だね」

 

「私のは最初から乳が入っているのか」(女)

 

「このにおい、みかんと凄く似てるけど柑橘系かな」

 

「キレイな色だね」

 

「続いてテーブルの真ん中失礼しますね」

 

そう言ってテーブルの真ん中に大皿に乗せられたサンドイッチが並べられていく。

 

「卵のサンドイッチ、カツサンド、野菜サンド、フルーツサンド、そしてスモークサーモンのサンドイッチです!」

 

「わ~見た事無いけど美味しそう」

 

「色が鮮やかだね」

 

「それではごゆっくり!」

 

「ありがとう」

 

「早く食べよ。早く」(真剣な狐の面)

 

「待った待った。先に乾杯しようよ」

 

雷鼓の言葉に皆頷き、グラスを持つ。

 

「それじゃあお疲れ様皆!」

 

「「「「カンパ~イ!」」」」カチンッ

 

「(ゴク)…へ~これは初めての感覚ね。甘くも無いし…どっちかというと苦くて、香ばしい。でも不思議といけるね」

 

「私のはちょっと苦みもあるけど甘みと乳の風味がちゃんとあるぞ。湯浴みの後とか良さそう」(火男)

 

「ねぇねぇ里乃!これ凄く甘酸っぱいね」

 

「うん。まるで果物をそのまま飲んでるみたい」

 

「うんうん。じゃあ喉も潤ったし、早速食べてみよ、いただきます♪」

 

オレンジジュースで上機嫌な舞が最初にとったのは幻想郷ではあまり見ない白いふわふわなパンに挟まれた細かく潰されたゆで卵とたっぷりの特製マヨネーズというものを合わせて作った「卵サラダのサンドイッチ」。口に含むととにかく柔らかい黄身と白身、マヨネーズの濃厚な味と風味が口の中に広がる。舌触りが何とも滑らかである。一緒に挟まれている薄切りキュウリの歯ごたえもちゃんとあり、いいアクセントになっている。

 

「…すっごく美味しい!こんな濃い味の卵食べた事無いよ!」

 

「お、落ち着いて舞」

 

「そ~なのか~。じゃあ私も食べるぞ」(女)

 

こころが選んだのはボリュームある「カツサンド」。挟まれているのは分厚いロース肉をこんがりと揚げたロースカツにたっぷりのソースを纏わせたもの。そして薄く塗られたマスタードという黄色いもの。シンプルにそれだけ。噛むと濃いソースとほんの少し残る「ザクッ」という衣の食感と弾力あるロース肉、そしてそこから出てくる脂がパンに染み込み、とても美味である。マスタードの辛味も味を引き締める。

 

「………」(満面な福の神)

 

「うん。わかりにくいけど凄くわかりやすい感想だ」

 

「そんなに美味しいんだね。じゃあ私はこれにしよっと」

 

里乃は「野菜サンド」を取る。挟まれているのはたっぷりの薄緑色の葉野菜と赤い野菜。そしてピンク色の薄切りの肉みたいなもの。品書きによると緑はレタス、赤いのはトマトという野菜。そして肉はハムというものらしい。第一に感じたのは野菜の新鮮さ。シャキシャキ感が強く、水気たっぷりなレタス。果汁みたいに甘いトマト。そしてほんのり塩気が効いているハム。そしてそれをまとめている白いドレッシングというもの。

 

「野菜が凄く新鮮で美味しい!こんな味のお野菜初めて」

 

「へ~見事に三者三様だね。じゃあ私は…イリス達が教えてくれたの食べてみよっと♪」

 

「こっちは食事というより甘味って感じだねモグモグ」

 

そう言っている間に舞は「フルーツサンド」を食していた。

挟まれている果物は甘酸っぱい苺やキウイ、柔らかいパパイヤやまろやかなバナナ等。それをふわふわ甘さ控えめな生クリームと一緒にふわふわなパンで挟まれていてなんとも柔らかい。舞に釣られて最初は緊張していた里乃も食べている。

 

「同じ果物だからこのジュースとも合うね」

 

「そうだね♪」

 

「ちょっ、ふたり共もうふたつ目食べてるのかい。こりゃうかうかしてられないや!」

 

雷鼓が手を伸ばすのは先程イリス達が食べていたという「スモークサーモンサンドイッチ」。品書きによると挟まれているのは分厚く鮮やかなサーモンという鱒に近い魚を燻製したスモークサーモン、細かく切られたアボカドいう緑色の野菜、そしてクリームチーズというものらしい。雷鼓がかぶりつくとスモークサーモンから感じる燻製の強い香りと、海の魚らしい強い脂と味付けのドレッシングの甘みを含んだ味。アボカドという見た目によらずさっぱり、それでいて濃くもある味の野菜。そしてねっとりとした柔らかくも強い乳の風味あるクリームチーズ。パンと一緒に口の中で混ざり合う。

 

「こりゃ美味いね!こんなもの初めて食べたよ!」

 

「……うん、美味しい」(満面な福の神)

 

「このカツサンドっていうのもお肉が分厚くて美味しいよ!」

 

「舞の言う通り、こんな卵食べた事無いね♪」

 

「こりゃあ確かに新しい刺激だね♪…それにしてもよく食べるね~三人共」

 

「モグモグゴクゴク…踊ったからお腹空くのは当たり前」(暫く続く満面福の神)

 

「「うんうん♪」」

 

「それを言ったら私も沢山叩いてたんだけど~。もう少しおかわりが必要かなぁハハハ」

 

そんな会話をしながら彼女らは働いた後の食事を楽しんでいた。

 

 

 

 

……少女食事中……

 

 

 

 

…………

 

「「ご馳走様でしたー!」」

 

「ご馳走様。美味しかったぞ♪」(腹が膨れたのでご機嫌の火男)

 

「こころの言う通りだ。とても美味しかったよ♪」

 

「ありがとうございました!(ました)。て言っても、お料理を作ってるのはマスターなんですけどね」

 

「皆が気に入ったのも納得だよ。お礼として私も演奏したかったけど、ここだと私のドラムは流石に煩いしなぁ」

 

「またいつか聞かせてください!」

 

「…はい。おみやげお待ち~」

 

店主がいつもの様におみやげを渡す。店主が人間であることもすっかり慣れた。

 

「ああありがとね。弁々達も喜ぶよ」

 

「僕達は頼んでないけど?」

 

「初めてですし、サービスで構いませんよ」

 

「良かったなふたり共。隠岐奈のやつも喜ぶぞ」(女の面)

 

「「………あーーーー!!」」

 

店内に舞と里乃の声が響いた。

 

 

…………

 

「後戸の国」

 

 

「……」

 

隠岐奈はひとり、いつもの椅子に座っ頬杖をつき、目を閉じていた。するとそこへ、

 

「お師匠様ー!!」

 

「只今戻りましたー!!」

 

「…む、おお戻ったかお前達。遅かったな」

 

「「申し訳ありませんでしたー!!」」

 

帰って来たと思ったら大きく謝る舞と里乃に隠岐奈も少々たじろぐ。

 

「い、いやそれは別に構わんのだが…どうしたそんなに必死に」

 

「わ、私達、お師匠様に謝らなければいけない事がありまして!」

 

「謝る事?」

 

「ぼ、僕達、以前お師匠様より教えてもらったあのお店の扉を見つけたんですけど…お師匠様の許可なく行ってしまったんです~!」

 

「直ぐに帰れば良かったんですけど…そこのお店のご飯が美味しくて、とってもいい場所で、今の今まで…」

 

隠岐奈が見ると彼女らの手元にはねこやのおみやげの袋がある。どうやらほんとの様だと隠岐奈は感じた。

 

「勝手な事してすみませんでした!」

 

「ですがお店にいる間私達なりに色々見てきましたので、詳しくお話させて頂けたら…」

 

「その必要は無いぞ」

 

「「……へ?」」

 

予想外の言葉に戸惑う舞と里乃。見ると隠岐奈はニヤニヤしながら…自分もある袋を出す。ねこやのおみやげの袋。

 

「「あっ!」」

 

「ふふ、お前達のみやげとして貰って来たのだが…まさかお前達も行ってきたとはな。この後の夕餉にするか」

 

呆然とする舞と里乃は隠岐奈のその一言で緊張が溶けて崩れ落ちたのは言うまでもない。そしてその後、仲良くおみやげのメンチカツサンド、テリヤキサンド、そしてスモークサーモンサンドで夕餉を取ったのも言うまでもない。因みに一説では隠岐奈、舞、里乃は三柱揃ってひとつの存在とも言われている。つまり、考える事もよく似ているのであった。




メニュー40

「クッパ・ビビンバ」

皆さんこんにちは、storybladeです。
先月出せず、申し訳ありませんでした。自分のする事がどんどん増えてきてしまい、最初の頃よりも随分遅くなってしまいました…。ですがこれまでと同じく引き続き書いていきますので、お楽しみいただければ幸いです。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
  • 不安なので読みたくない
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