幻想郷食堂   作:storyblade

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~~♪


「おはようございまーす!」

「おお、おはよう」

「マスター!明けましておめでとうございます!」

「ああそうだったな。おめでとうさん。今年も宜しくな」

今日はねこや、いや異世界食堂の新年最初の営業日。ふたつの世界、正確にはアレッタの住む国とこちらの世界は幸い時間の流れも同じらしく、どちらも同じ時間に新年を迎える。新年の挨拶もマスターから教わっていたアレッタだった。

「いい初夢見たか?」

「……ハツユメ、ですか?」

「ああそういやそれは教えてなかったな。初夢ってのは年を越して初めて見る夢の事さ。因みに一富士二鷹三茄子…っつってな?それが夢に出て来ると良い一年になるって言われてんだ」

「へ~…イチフジニタカ…。マスターはその…ハツユメでしたっけ?何を見られたんですか?」

「俺?う~ん……忘れちまった」

「でもマスターなら夢の中でも食堂開いてそうですね!」

「いやいや俺もそこまで……う~ん思い出せねぇな」


番外編「夢の食べ物」

幻想郷「人里」

 

 

そして時はやや遡り、ここ幻想郷では大晦日を迎えていた。里や山々はすっかり雪化粧になり、年始に向けての準備で大忙し。もう数時間もすれば命蓮寺の除夜の鐘が鳴り響くことだろう。

 

小鈴

「もう今年も終わりなのねぇ…」

阿求

「早いわねぇ…」

 

そんな里の一画で外向け衣装に身を包んだ小鈴と阿求が歩いている。どうやら今年の御礼回りをしている様子だった。

 

「来年の準備は大丈夫なのアンタの家?」

 

「今年は大丈夫!しっかり用意してから出てきたから。そういうアンタは…って家の人がやるから大丈夫か」

 

「失礼ね。私だって自分でやる事はやるわよ。幾ら稗田家当主とはいっても皆に任せっぱなしはしないわ」

 

「ふ~ん。ああそういえば」

 

そう言いつつペコリと頭を下げる小鈴。

 

「今年一年ありがとうございました。鈴奈庵店主として、そして友人として御礼申し上げます」

 

「……こちらこそ、ありがとうございました。稗田家当主として、そして友人としてこちらこそ御礼申し上げます。そして」ペコリ

 

「「来年も宜しく申し上げます」」

 

互いに頭を下げるふたりの友情は来年も変わらない様だ。

 

 

…………

 

ワイワイがやがや…

 

 

そして暫く歩くと里の一画で人だかりが、

 

「何かしらこの人だかり?」

 

「…あ!」

 

青い髪と目の少女

「はいはい落ち着いて落ち着いて~!急がなくても枕は逃げはしませんからね~」

 

見ると人だかりの先にひとりの少女がいる。青い髪と青い目の少女で頭にまるでサンタクロースの様な赤い帽子を被り、白黒のポンポンが付いた白黒のワンピースを着ている。

 

「…あれはドレミーさんじゃない?何やってるんだろう」

 

「いらっしゃ…ああ小鈴ちゃんに阿求ちゃんじゃない~!久しぶりね」

 

「何してるんですか?…凄い人ですけど」

 

「これよ♪」

 

ドレミーと呼ばれた名前の少女はそう言うと手に枕を持っていた。

 

「…枕?」

 

「そ~!明日は元旦でしょ?そして元旦といえば初夢じゃない?初夢はいい夢みたいじゃない?」

 

「いや初夢は元旦限定じゃない様な気もしますけど…」

 

「そしてこれこそ前に私が発明したスイート安眠枕をさらに改造した最新枕!これで眠れば間違いなくいい安眠と初夢が見れる!名付けて「スイート安眠枕弐式」!…の試作型。ふたりもどう?お代はただで良いわよ~」

 

「えっ、無料なんですか?」

 

「そっ、これはあくまで見本。一回夢みたら効果が切れちゃうの。使い心地が良かったら製品版を買ってもらったらいいわ。てなわけでどう?数に限りがあるわよ~」

 

「ふ~ん…まぁただでくれるっていうなら一回使ってみよっかな♪アンタも貰ったら阿求」

 

「アンタねぇ…はぁ、まぁいいわ。試してみましょうか。私達今お礼参りしてるから取り置きしておいてもらっていいかしら?」

 

「流石にこれ持ったままあちこち歩くのはきついわよね。私も宜しくお願いします」

 

「はいは~い♪」

 

 

…………

 

???

 

 

嘗ての古代人曰く、「夢は眠っている間に肉体から抜け出た魂が過去の出来事を見せている」

 

嘗てのトマス・アクィナス曰く、「夢は精神的な理由、肉体的な理由、外界の影響、神の啓示の4つがある」

 

嘗てのアルテミドロス曰く、「夢は神託であり、夢の意味に解釈等必要としないのだ」

 

「夢」を巡るこれらの説は古代ギリシャの時代当時広く流布し、特に神や悪魔のお告げであるという説は広く信じられていた。これの名残かは不明だがネイティブアメリカンの一部種族はひとりひとりが見た夢について話し合う習慣が今も残っているらしい。夢占いや夢診断の始まりの様な物だろう。また時代が進んで科学技術が発達すると多くの学者が夢について科学的に分析・研究する様になった。それによると夢は精神的または肉体的な理由によるものが大きく、無意識の願望が現れたもの、脳にとって不要な記憶を消去している過程と多くの説が提唱された。現在これらは世界の大部分で信じられているが今も夢の正体について確信的なものは無い。ただ確かなのはこの世の生き物は夢を見て、夢は眠っている間に見る事。

そしてもうひとつ、夢に関与できる存在もまたこの世、正確には幻想郷に存在するという事…。

 

「ふっふ~ん♪皆ちゃんとあの枕を使ってくれてるみたいね!」

 

そんな事を言っているのは昼に里でスイート安眠枕とやらを売っていた少女だった。彼女の周囲には様々な風景光景が無数に浮かんでいる。様子からして不思議な空間であるらしい。そんな様子を怪しくも実に楽しそうに少女は眺めている。

 

「今はただただ眠りなさい 貴方達の槐安は今まさに作られているのだから」

 

彼女の名前はドレミー・スイート。

夢見がちな性格にして夢の世界に住んでいる妖怪。その正体は伝説の動物「獏」である。獏は中国から日本に伝わった存在であり、熊や虎、牛などの動物達が融合した様な見た目をしている。鉄や銅などの鉱物を食べるとされているが、それ程の悪食ならば悪夢も食べてくれるだろうと日本内だけで独自に広がった。それ故室町時代には獏は縁起物として用いられ、正月に良い初夢を見るために枕の下に宝船の絵を敷く事があったが、その際悪夢を見てしまわない様船の帆に獏と書く風習もあったという。

 

「あれは無数の本に囲まれている小鈴ちゃんね…。そしてあっちは…珍しいキノコを栽培している魔理沙かしら」

 

そんな獏の妖怪にして夢の世界に住むドレミー。彼女曰く、全ての夢は根底で繋がっており、夢の中で全く知らない人に出会ったり知らない場所に行ったりしているのはそのためであるという。

そして彼女は自身の「夢を喰い、夢を創る程度の能力」によって夢を消す事も作る事もでき、更には夢と夢を入れ替える事も出来る。夢の世界に限れば何処にでも行く事が可能であり、自分の姿を変える事も出来るなど、正に夢を支配する者なのである。以前ある者の依頼で彼女はこの能力を使い、幻想郷の者達を夢の世界に閉じ込める異変を起こした事があったが、紆余曲折あってその異変は解決され、以降は夢の世界の監視を行いつつ、現実と夢の世界を行き来しながら暮らしている。

 

「あの金貨一杯の賽銭箱を担いでいるのは間違いなく霊夢ね。…こっちは鈴仙ちゃんとてゐが追いかけっこしてるわ。全く夢の中まであんな事してるのね。あっちは………」

 

一瞬口をつぐんだ。見ると美しい老年の女性が子供や孫だろうか、そんな人物達と楽しく過ごしているのが見られる。女性は昼間会ったとある少女にどこか面影があった。

 

「さて次は……?」

 

次にドレミーは不思議なものを見た。夢の世界にはそんなものは今まである筈の無かったもの。気になった彼女はゆっくりとそれに近づいていくと…、

 

「…扉?」

 

それは木の扉の様だった。丁寧にいくつもの木材を組み合わせて作った洋風の扉。金縁のノブがあり、そして猫を象った看板が掛けられていた。看板にはこう書かれていた。

 

「…洋食のねこや…?…ってまさか!」

 

里にいる時に聞いた事があった。幻想郷に突如、七日に一度現れる様になった扉。扉の先は外の世界のとある食堂に繋がっているとされ、様々な姿をした者達が揃って食事を楽しんでいるという噂を。

 

「もしかして…この扉の事!?こんな所にまで現れるなんて…」

 

ドレミーは内心かなり動揺していた。夢は正に自分の支配する世界。この世界で自分にわからないものは無いと自負している程に。そんな世界で且つ、自分が気づかないままこんなものが現れるなんて…しかし今、この扉の正体を知れるのもまた自分しかいない様な気がする。何より夢の世界の管理者として放置しておくことはできない気もする。

 

「…………………行ってみる?」

 

誰か、自分への問いかけだったのか、ドレミーはノブに手を伸ばしていた…。

 

 

…………

 

~~~~♪

 

 

ドレミーが扉を開けると…そこには幻想郷で見る事はとても珍しい風景が広がっていた。木造りの温かい雰囲気の部屋、並んでいる同じく木造りの立派なテーブルと椅子、インテリアの小物の数々。そして…見た事無い人々。

 

「これは…」

 

「いらっしゃいませ」

 

呆然としているドレミーに声をかけたのはひとりの髭が生えた黒髪の男性。白い帽子に白い服を着ている事からどうやら料理人の様だった。

 

「ようこそ、異世界食堂へ」

 

「…異世界…食堂。…ねぇ、ここって洋食のねこ屋って言うお店?」

 

「ええ、本当の店名はそうですね」

 

「やっぱりそうなのね…。ねぇ、ここに幻想郷ってとこから色んな人が来たりしてない?」

 

ドレミーは店主らしき男にそう尋ねるが…その返事は予想とは少し違っていた。

 

「ゲンソウキョウ、ですか?…いえ、聞いた事ありませんね」

 

「…え?聞いた事無い?博麗霊夢とか霧雨魔理沙とか来た事あるでしょ?」

 

「……う~んすいません、ちょっと存じ上げませんね」

 

表情からしてどうやら本当に知らない様だ。

 

(どういう事?…もしかして、ここが夢の世界に出た扉だから?現実の扉とは少し違うのかもしれないわ…)

 

取り合えずドレミーはそう考える事にした。

 

「もしかしたら来られた事あるのかもしれませんが…。まぁどちらから来られたお客さんでもうちは気にしませんけどね」

 

「中々豪胆な性格の人間ね。まあ一応自己紹介だけしておこうかしら。私は夢の支配者、妖怪獏のドレミー・スイートっていうの。初めまして」

 

「これはご丁寧に。私は洋食のねこや、異世界食堂の店主です」

 

「宜しくね。…自分で言っといてなんだけど一応私夢の支配者なんだけど怖くないの?」

 

「少し驚きはしましたが、特に怖くはありませんよ。ここには色々な方がいらっしゃいますから」

 

「あ、そう。それはそうとここって別の世界の人にもご飯食べさせてくれるって聞いたけど本当?」

 

「ええ。ここはご覧の通り、異世界の方々にも様々なお料理をお出ししてます」

 

それを聞いたドレミーはこんな注文をした。

 

「だったらさ?「夢の様な食べ物」食べさせてよ♪」

 

「…夢の様な食べ物、ですか?」

 

「そ!こんなの一度は食べてみたかった、夢みたいな食べ物っていうのかな。何かない?」

 

すると店主は顎に手をあてて暫しう~んと考え、

 

「夢の様な食べ物……お客さん、甘いものは平気ですか?」

 

「全然大丈夫よ?」

 

「…よし。畏まりました。少々お待ちください」

 

頭の上で電球が光る如く自信ありげにそう言われてドレミーはテーブルに着いて待つ事にした。出されたレモン入りの冷水で口を潤しながら周りに目をやる。

 

(…ほんと色々なお客さんがいるのね)

 

茶色い何かが白米にかけられたものを豪快に食べる白髪白髭の大男

揚げられた肉?をナイフとフォークで丁寧に食べる栗色の髪の女性

白い甘味みたいなものをじっくりと食べる猫耳の女性

豆腐?を鉄板で焼いたものをこちらもじっくり味わう様に食べる耳長の女性等々…

 

(私に興味を持たないのはここが夢の世界だからかしら…。それとも単純に料理に夢中なだけ?)

 

確かに周りの者達は誰もドレミーの方に気を留めない様だ。中には談笑している者もいるが基本的には自らの注文した料理を楽しんでいる。

 

(つい夢の様な食べ物なんてイタズラっぽい注文しちゃったけどどんなお料理が出て来るかしらね…)

 

言いながらドレミーはある料理で目を止める。長く美しい白髪と赤いドレスの少女が食べている甘味らしい食べ物。

 

(…美味しそうね)

 

そう言いながらドレミーは自分の注文を待った。

 

 

 

 

……店主調理中……

 

 

 

 

…………

 

「お待たせしました。ご注文の「夢の様な食べ物」です」

 

暫くして店主が運んできた料理をドレミーの前に出した。

 

「こちら「フルーツパンケーキ」です」

 

薄くきつね色に焼かれた厚みがありながらも柔らかそうなパンケーキというものが三枚。その上から赤、紫、黄、緑、白色等の様々な果物が細かく切られたものが盛り沢山とかけられ、その上から更に茶色いソース(カラメルシロップ)がかけられている。横には白い雲を思わすホイップクリームが添えられている。

 

「わぁ…」

 

「フルーツやホイップクリームをたっぷり付けて食べて下さい。あとこちらはセットの紅茶です。こちらの瓶のお砂糖はご自由にお使いくださいね。それではごゆっくり」

 

店主は下がり、ドレミーは目の前の色鮮やかなフルーツパンケーキと向き合う。先程自分がちょっと良いなと思ったものとよく似た雰囲気のものがまさか出て来るとは、と驚きつつも食事を始める事にする。

 

「…頂きます」

 

手にナイフとフォークを持ち、パンケーキのひとつにナイフを入れる。ほんの少しの弾力がありつつも「サクリ」という感触と共に刃がすんなり入り、一口サイズに切り分け、それをまずはそのまま食べると、口の中にほんのりとした温かさと卵の甘さが広がり、ふわふわな噛み応えが楽しめた。

 

「優しい甘さだわ。成程、クリームや果物がたっぷりだからこれは甘さ控えめなのね」

 

次は言われた通りまた一口に切ったケーキを白いクリームといくつかの果物と一緒に食べてみる事に。ケーキの味と一緒に広がるのは見た目通りふわふわとして口の中で乳のこれまた優しい甘さを持つホイップクリーム。果物は甘いながらもちょっとした甘酸っぱさを持つ赤い苺と緑のキウィ。それに少しかかっているちょっとした苦みがアクセントになっているキャラメルソース。

 

「全部が甘い甘いになってしまうかと思ったけど見た目よりずっと食べやすいわ」

 

噛んだ瞬間にプチッとした食感で甘酸っぱさとほんのちょっとの渋さもある紫のブルーベリー、まろやかな甘さとねっとりとした食感の黄色いバナナもこのケーキやクリームとよく合っている。優しい甘さのパンケーキとホイップクリーム、様々な甘さを持つ果物たち、キャラメルソース、それらが口の中で複雑に組み合わさって絶妙な味わいになる。

それに組合す飲み物は香りがよく渋みがある温かい紅茶。口の中に残る甘みをゆるりと流してくれる。そしてまたケーキへ。

 

(見た目も楽しいし、食べる場所によっていろいろな味がして、しかも甘い。これは確かに「一度は食べてみたいと思うような料理」ね♪)

 

そんな事を思いながらドレミーはフルーツパンケーキを楽しんでいた。夢の中の店ではあるが、その味は彼女の頭にしっかり刻みつけられた様だった。因みに食事のお代は初めての来店な訳か何故か支払わなくても良かった。

 

 

 

 

……少女食事中……

 

 

 

 

…………

 

後日とある日のねこや…

 

~~~~♪

 

「いらっしゃいませー!ようこそ洋食のねこやへ!」

 

「いらっしゃい」

 

「こんにちは~。あの~ここってフルーツパンケーキ?ってあるかしら?」

 

「はい、ありますよ!」

 

「じゃあそれと紅茶をお願いするわ♪あ、こちらでは初対面だったわね。ドレミー・スイートって言うの。宜しくね」

 

「ドレミーさんですね!私はアレッタって言います!」

 

そう言いながら現実の世界に現れた扉からやってきたのは勿論ドレミー。頼むのは夢の世界のねこやで注文したフルーツパンケーキ。案内する初対面のアレッタ。

 

「……あの人、どっかで会った様な気がすんだけどな」

 

(マスター。注文頂きました)

 

「お、はいよ。……気のせいかな」

 

そんな事を店主は思いながら調理を進めるのだった。




メニュー41

「お姫様のパフェ」

パンケーキと山盛りのフルーツとホイップクリームのフルーツパンケーキは子供にとっては正に夢の様な食べ物かなと思って今回出しました。皆さんは「夢の様な食べ物」ってありますか?
次回は女子会回。久しぶりのキャラがやっと登場予定です。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
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