幻想郷食堂   作:storyblade

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お気に入りが1200を突破していました。ありがとうございます!

同時に、

投稿が遅れすみませんでした…。


メニュー44「ミートソースと潜入捜査」

とある日のねこや

 

 

~~~♪

 

 

「おはようございます!」

 

「おお、おはよう早紀」

 

この日はいつも通り通常営業日の朝。店主がこの日の仕込みをしているほかに誰もいない厨房。そこにひとりの少女が出勤してきた。見た目まだ二十代といったところ。

 

「今日も宜しくな。にしても早いな?まだ5時だぞ」

 

「そういう叔父さんだって早い時は4時前には起きてるじゃない。だから私も手伝おうって訳。叔父さんもひとりよりふたりの方がいいでしょ?朝一誰もいないんだし」

 

「…まぁ確かに」

 

「叔父さんももう歳って訳だね~。そのうちお爺ちゃんみたいに白くなるんじゃない?」

 

「まだ白髪白髭には早いって。それにまだ店を閉じる訳にはいかねぇからな」

 

「あたり前だよ。ここのレシピ全部教えてもらう迄引退はさせないからね」

 

名前を早紀という少女は店主を叔父と呼んだ。彼女は店主の姉の娘、姪である。将来は料理人になるのが夢でその勉強とアルバイトも兼ねてこの洋食のねこやで料理人兼スタッフとして働いている。異世界食堂やアレッタやクロの事も知っており、最初は勿論酷く驚いたものだが今は受け入れている。最初は土曜のみ働いていたが最近は勉学が忙しくなった事もあって働ける時間帯限定でシフトに入る事になった。勤務可能な日はこうして誰よりも早く来て店主の仕事を手伝っている。

 

「あ、そうだ叔父さん。急なんだけど来週の土曜学校の予定変更で私空いてるの。シフトじゃないけど久しぶりに来ていい?」

 

「まぁお前がそれでいいなら助かるが」

 

「ほんと?やったぁ。アレッタちゃんやクロちゃんは元気?」

 

「ああ元気だよ」

 

「良かった。私ももっと土曜に働きたいんだけど全然スケジュールが合わないのよ」

 

「気にすんな、その気持ちが嬉しいよ。さぁさぁ話はここまでにして手伝ってもらうぞ」

 

 

…………

 

同日昼、ねこやの前

 

 

眼鏡をかけた女子高生

「ここが…「洋食のねこや」」

 

そこにひとりの少女がいた。やや癖のついた茶色い髪と瞳、赤の眼鏡をかけている少女。

 

「ついに見つけたわ…前に小鈴ちゃん達が言ってた洋食のねこや!どこかで聞いた名前だと思った私の記憶に狂いは無かったわね!……随分前に同じクラスの子が「お姉ちゃんの友達がこういう名前の店で働いている」って聞こえただけなんだけど。まぁそれはともかく、まさかこんな近くにあそこと繋がっているかもしれない場所があったなんて!」

 

…ぐ~~

 

「う~お腹減った…。学校昼からズル休みしてお弁当も持ってこなかったから」

 

~~♪

 

そうしている間にも別のお客が扉を開けて入って行く。中から良いにおいが漂ってくる。

 

…ぐ~~

 

「は、早く入ろ!」

 

 

…………

 

~~~~♪

 

 

少女が扉を開けるとランチタイムという事もあってか、店内は非常に繁盛している。

 

「いらっしゃいませー♪おひとり様ですか?カウンター席でも宜しいですか?」

 

「は、はい」

 

言われて少女はカウンター席に座る。両隣は食事中のサラリーマン。周りを見ても仕事関係の者達や家族らしい者が殆どで女子高生ひとりがなんだか浮いて見えなくもない。

 

(…見た目普通の食堂って感じね…)

 

「お水とおしぼりです。メニューがお決まりでしたらお呼びくださいね?」

 

そう言われて少女はひとつのメニューを思い出した。

 

「あ…じゃあ「スパゲッティミートソース」ください」

 

「ミートソースですね。畏まりました!」

 

言われてメイドらしき女性はオーダーを伝えるために厨房に向かう。厨房から「はいよ。早紀、パスタ茹でといてくれ」「は~い!」といった会話が微かに聞こえる。ひとりは年配に差し掛かった様な男性。もうひとりは自分より少し年上位の女性か。取り合えずオーダーを終え、水を一飲みして一息ついた少女は周りを見渡す。

 

(……見た感じ普通の、おしゃれな洋食屋さんって感じね。小鈴ちゃん達の言う通り、本当にここが幻想郷と繋がってるのかしら?)

 

 

…………

 

(洋食のねこや?)

 

(はい、外の世界のご飯屋さんなんですけどそこがどういう訳か最近幻想郷と繋がったみたいなんです)

 

(まぁずっとって訳じゃなくて七日に一日だけみたいだけどね)

 

(あああとねこやは別の世界とも繋がってるんですよ!)

 

(別の世界……って?)

 

(外の世界でも幻想郷でもない、全く別の異世界なんですよ!でっかい妖精とかトカゲみたいな人とか獣人とか、あと見た事無い字の古文書とかもあったんです!)

 

(小説でいえばファンタジーものって感じかしらね)

 

(なんと…そんな事があったのね)

 

(信じてくれるんですか?)

 

(勿論よ~♪ただ私があんだけ苦労したのにそんなあっさり繋がる場所ができちゃうなんてな~んか面白くないわねブツブツ…)

 

(言っとくけどまた悪用しないでしょうね?まぁ無理だろうけど)

 

(わかってますって。もうあんな目はこりごりよ)

 

 

…………

 

(…あの時はそう言ったけど外の世界でも幻想郷でもない、全く別の異世界に繋がってるかもしれない食堂…そんな事聞かされたら潜入捜査してみたくなるのがこの宇佐見菫子ってもんよ!)

 

幻想郷、そしてそこの住人である小鈴達の事を知っている。果たして菫子と名乗った彼女は何者だろうか?

 

「お待たせしましたー!ご注文の「スパゲッティミートソース」です!」

 

そんな事を考えていると、少女が頼んだミートソースを給仕のメイドが運んできた。

大きめの皿の上にひき肉多め、トマトベースの赤いミートソースがかけられた小麦色のパスタがたっぷり乗せられている。見るからに美味しそうな見た目と漂ってくる湯気を鼻で感じた途端またお腹が鳴った。

 

「ごゆっくりどうぞ!」

 

…ぐ~~

 

「い、頂きます!」

 

空腹もブーストとなって生唾を飲み込んだ少女は目の前のスパゲッティにフォークを入れる。ゆっくりとかき混ぜて、ソースとパスタを絡め、口に含むと柔らかくもしっかり歯応えも残る牛と豚の合い挽き肉の味がまず口の中に広がる。どちらか片方だけではない2つの肉を合わせる事による強い味がする。

それを包み込むのはミートソースの旨味の根幹であるトマトの味。甘さと適度な酸味、そして塩味が肉、そして同じく細かく切られた人参や玉ねぎ等の野菜の甘さと交わり、味を引き立てる。それがモチモチの細めのパスタとよく絡みあう。

 

「う~ん美味しい♪お肉の味強めのソースね。パスタともとてもよく合うし!」

 

よほど空腹だったのか少女のフォークは止まらない。一方、頭の中でこんな事を考えていた。

 

(そしてこの味、間違いない。あの時食べたミートソースパスタパンと一緒だわ!小鈴ちゃん達が言ってた通り。これは一度行ってみないといけないわ!)

 

 

~~早めの少女食事中~~

 

 

…………

 

その日の夜、ねこや。本人の強い希望で早紀が作った賄を従業員皆で食べ終えた後、最後のチェックまで店主に早紀が付き合う。

 

「最後までやらなくていいんだぞ?」

 

「いいのいいの明日は午後からだし。ここの手順も覚えないと」

 

「本気でこの店継ごうとしてんだな」

 

「そりゃね。お爺ちゃんとお婆ちゃんが開いたとこだし、働いてる間に愛着も沸いたからさ。あと特別営業も」

 

「…そうかい」

 

ぶっきらぼうな返事だが内心は嬉しい店主。

 

「そう言えば今日昼に女子高生がひとり来てたなぁ。珍しい」

 

「カウンターに座ってたよね~。あの制服私の母校だよ。まだ授業中だと思うんだけど…もしかしてサボりかな?」

 

「いやだったらこんなとこ来ずにもっと違うとこ行くだろ?」

 

「あはは、確かに」

 

 

…………

 

幻想郷 某林

 

 

それから4日後の幻想郷。本日は土曜日。ねこやの扉が現れる日である。場所はとある雑木林。今日も木々に隠れる様にねこやの扉がここにひとつ出現していた。

 

マジシャンの様な恰好の少女

「フッフッフ…見つけたわ。洋食のねこやの扉!」

 

そこには既に扉を見つけていたひとりの少女がいた。

赤い眼鏡と黒い幅広の帽子を被り、表黒で裏は赤のマントに白手袋。マントの下は黒系のチェック柄の制服でベスト、プリーツスカート、白の長袖のシャツ。加えてリボンが付いた白のスクールハイソックスと茶色い靴。一見女子高生の様。

 

「この扉の形、この猫の看板。確かにあのお店のもの!」

 

そして驚くべきことにその顔はねこやでミートソースを食べた女子高生、宇佐見菫子であった。何故彼女が幻想郷にいる事ができるのか。それは幻想郷、更に外の世界まで巻き込みかけた大異変が関係していた。

ある日、子供達の間で「人間の顔をした犬が堆肥を漁っていた」「足を売っている老婆を見た」等といった奇妙な噂が目立つようになる。一見なんらかの妖怪の話に思えるが特に実害等は無かったため、子供の見間違いや外の都市伝説程度に捕らえられていた。この伝説には続きがあった。噂が変わると怪異もその通りに変化していくというのだ。それを聞いた幻想郷の住人達は自分達にとって都合がいい様に噂を操ろうとした。

そしてやがてある日、オカルトボールという不思議な石が幻想郷に現れる様になった。「全てのオカルトボールを集めると願いが叶う」という噂と共に。当然そんなものを幻想郷の人間や妖怪が放っておく訳はなく、皆ボールを集める事になる。だがそれはボールと噂を流した者の策略だった…。

 

「今ならわかる…この扉が強い魔力を纏っている事に。外のものでありながらも確かにここに存在している。この目で見るまで半信半疑だったけど…まさかこんな事が。こんなものがあるなら私が苦労してオカルトボールなんて用意する必要なかったのにな~ぶつぶつ」

 

そう、それこそ彼女、宇佐見菫子である。ある日、なんらかの理由で幻想郷の存在を知った彼女はどうにかして行きたいと考えた。しかしどうやってもそれは不可能な事。そこで元々オカルトや超能力といったものに傾倒していた彼女は外の世界の聖地にあったパワーストーンをオカルトボールに加工し、外の世界の物質が幻想郷に流れるのを利用して同じく送り込んだのだ。噂と共に。目的は幻想郷の者達にボールを集めさせ、外の世界と幻想郷を隔てる博麗大結界を破壊して繋がりを生み出す事。だがそれは幻想郷の賢者達によって防がれ、逆に菫子は守護者である霊夢や魔理沙といった者達と戦わなければならない事になってしまった。幻想郷に少なからず恐れを抱いた菫子だったがそれでも諦めきれなかった。そしてある日気づいた、自分が寝ている時だけ幻想郷に行く事ができる事に。これは「夢幻病」と呼ばれ、この状態での彼女は幻想郷と外の世界の記憶を両方とも認識しており、片方が傷つけばもう片方も傷ついてしまうという非常に不安定な状態になる。悪化すれば外の世界と幻想郷に菫子という存在が別々にできる可能性もある。危険性は重々承知しているがそれでも幻想郷を捨てきれない彼女はこうして賢者や霊夢達の監視を受けつつも頻繁に姿を現す様になったのだった。

 

「じゃあ早速」

 

「あ~菫子お姉ちゃんだ~」

 

扉に手をかけようとしたその時、菫子の背後から突如声がかかった。思わず振り向くとそこには、

 

「こ、こいしさん!」

 

地霊殿の住人にしてサトリである古明地こいしがいた。

 

「なんでここにこいしさんがいるの!?」

 

「私はお昼ご飯前のお散歩中なの~…あ~ねこやの扉だ~!」

 

「こいしさんも知ってるのこの扉?」

 

「うん知ってるよ!菫子お姉ちゃん行こうとしてた?」

 

「う、うんまぁ」

 

「ふ~ん…ねぇ、こいしも行っていい?」

 

「え、えっと…」

(う~ん…困ったわね。本当なら私ひとりで行くのが一番いいんだけど…)

 

ひとりでねこやに来店(潜入捜査)に行こうと思っていたのによりにもよってサトリで無意識を操るこいしに出くわすとは…と菫子は思ったが…、

 

(でもここで無暗に断ったら霊夢さん達に不信がられてしまうかもしれないし…はぁ、しかたないわね。まぁこいしさんはさとりさんと違って読心術もできないし)

「…わかりました。一緒に行きましょうこいしさん」

 

「ほんと?やった~!」

 

悩んだ結果、菫子はこいしの御願いを聞く事にし、一緒に来店するのだった。

 

 

…………

 

~~~~♪

 

 

ワイワイがやがや…

 

菫子が先導して扉を開けるとそこは数日前に自分が見たインテリアの店内があったが…全く違う客層、現実世界では決して見た事が無い人物達で埋め尽くされていた。

 

「お、お~~!こ、これは」

 

「こんにちは~!」

 

「いらっしゃ…あーこいしちゃん!」

 

「こんにちはアレッタお姉ちゃん!」

 

前来れた時は会えなかったのもあってか、アレッタとこいしは再会を喜び合った。

 

「前は御免ね、私が風邪なんて引いちゃったために迷惑かけちゃって」

 

「ううん大丈夫だよ。皆でお手伝い楽しかったし!」

 

「こ、こちらはヤギの角の女の子!あの~貴女は言わゆる獣人とかそんな感じですか?」

 

「よ、ようこそ洋食のねこやへ!あと私は獣人じゃなくて魔族なんです」

 

「ま、魔族!魔族ってゲームやアニメでもおなじみのあの魔族ですか!?まさか現実の、いや正確には現実ではないんですけどもこの目でお会いできるとは!」

 

またも興奮さめやらぬ菫子。そんな彼女にこいしが、

 

「菫子お姉ちゃん、初めて会うんだから挨拶しなきゃ駄目だよ」

 

「あ、そ、そうだねこいしちゃん。オホン!私は宇佐見菫子。秘封倶楽部会長にして稀代のサイキッカーよ♪」

 

「私はアレッタといいます。宜しくお願いします!」

 

すると厨房から店主とクロも顔を出す。

 

「いらっしゃい。お~こいしさん。久しぶりですね。お隣は初めましてかな?」

 

(お久しぶりです)

 

「おじちゃんもクロお姉ちゃんもこんにちは!」

 

「あ、この前はお世話にゴホゴホ!す、すみません失礼しました。私は宇佐見菫子といいます!貴方がこちらの店主さんですか?是非色々お伺」

 

「カレーライス大盛りでお代わり頼む!」

 

「カツ丼お代わり!」

 

「はいよ!すみませんお客さん、取りあえずお席にどうぞ」

 

そう言うと店主は下がる。

 

「それじゃあお席ご案内しますね!」

 

「は~い♪」

 

 

…………

 

取りあえず席についたこいし達だったがそうしている間にまだまだ客は増えてくる。

 

「オムライスオオモリ、オムレツサンコモチカエリ」

 

「いつものレアチーズケーキと紅茶ね」

 

「本日はフルーツミックスのクレープにストロベリーとレアチーズを所望するぞ」

 

「(は~い)!少々お待ちください」

 

「わ~!わ~!なんですかあの人達は!頭がライオンの人やトカゲの人の他に同じく獣耳が生えた人!おまけに妖精さんまで!獣人ぽい人なら椛さんとか美天さんとか慧ノ子さんとかいるけどあれだけむき出しなのは見た事ないですよ!」

 

「かっこいいよね~」

 

「こんな世界とも繋がるなんて一体どんな力がこのお店に…これは是非ともその真相を…」

 

(メニューとお水、そしておしぼりです)

 

「ありがとうクロお姉ちゃん」

 

「…え?え?い、今頭の中に声が響いて」

 

「クロお姉ちゃんはこうしてお話するんだよ」

 

(ご注文がお決まりになりましたらお呼びください)トコトコ…

 

「なんだろう…あの人どこか神秘的というかなんというか…」

 

「何食べよっかな~スフレパンケーキやフレンチトーストも美味しいけど……あ」

 

「…ふむ、ミートソースの新しい食べ方と聞いて注文してみましたがこれもとても美味いな。チーズともよく合う」

 

「そうですね坊ちゃん。こちらも肉の味が強くて食べ応えがあります」

 

「やれやれ、どれだけ近づいても直ぐに離される気がしてならないな。あのエルフ殿のいう事もわかる」

 

こいしの視線の先にはアルフェイド商会のシリウスとジョナサンが何やらパスタでもピザでもないものを食する姿があった。

 

「あれ美味しそう…あ、ねぇアレッタお姉ちゃん。あれ何あれ何?」

 

「あれは「ラザニア」っていうお料理だよ。あ、ジョナサンさんが食べてるのは「ミートボール」っていうんだよ」

 

「こちらのミートソース美味しいですもんね~」

 

「え?菫子お姉ちゃん来た事あるの?」

 

「え!い、いいえ無いですよ!食べなくても美味しいってわかるな~って!考えたら食べたくなってましたね~!あれ貰っていいですか?」

 

「じゃあこいしも!」

 

「はい。少々お待ちください!」

 

 

 

 

……店主調理中……

 

 

 

 

…………

 

そして…、

 

「アレッタさん頼む」

 

「はい!」

 

「アレッタちゃ~ん注文お願~い」

 

「あ、はーい!少々」

 

「いやいいよアレッタさんはそちらをお願い。…クロさんも対応してるか。俺が」

 

「叔父さんは調理進行中でしょ?私が運ぶよ」

 

「すまんな」

 

そう言ってこの日、特別出勤の早紀が料理を菫子とこいしの所に運んでいく。

 

「お待たせしました!」

 

「もうお腹ぺこぺこ!」

 

「御注文の「ラザニア」と「ミートボールのチーズ焼き」です」

 

ふたりのテーブルに置かれたのは黒い耐熱皿に詰められた料理。

ひとつはたっぷりと入れられたミートソースとホワイトソースの上に粉チーズが降りかけられてこんがりと焼かれた料理「ラザニア」。もうひとつは大きめの団子状に成型された肉の塊「ミートボール」を詰め込んだ上に同じくチーズとミートソースがあり、こちらもラザニアと同じく焼かれていてチーズ焼きというらしい。どちらもぐつぐつと音を立てていてたった今火から取り出したのがわかる。加えてパンも出された。

 

「わ~熱そう~」

 

「ぐつぐつ言ってるね。まるで旧地獄みたい!」

 

「旧地獄…まぁいっか。見ての通りとても熱いですのでお皿に触れない様お気を付けください。こちらの取り皿にお取りいただいて、パンと一緒にお召し上がりくださいね」

 

「ありがとうございます。…あの~ところでちょっと店主さんにお話しがあるんですが、この後お時間とか大丈夫な時ってありますかね?」

 

「え?ん~と…ちょっと位なら大丈夫だと思います。ランチの時間も終わる頃ですし」

 

「よかった!では是非に!」

 

「は、はい。わかりました。……?それではごゆっくり」

 

そう言って早紀は厨房に戻っていった。

 

「じゃあ食べよっか。熱いから気を付けてねこいしさん」

 

「いただきま~す!どっちから食べようかな~…じゃあこっちのお団子にしよっと♪」

 

こいしが手を伸ばしたのはミートボールのチーズ焼き。添えられた大きめのスプーンで彼女の一口よりはほんの少し大きめのミートボールのひとつを取る。かけられているミートソースと一面に敷かれているチーズと一緒に掬う様に取ると溶けたチーズがの尾を引く様に伸びていく。

 

「わわ、ナニコレ不思議~」

 

自分の小皿にとったこいしはそれをフォークよりも使い慣れている箸で割る。ふわっとした感触のそれを割ると中から透明な肉汁と脂を含む湯気、そしてボールに染み込んでいるソースが溢れ出てくる。まだまだ熱そうなそれの一片を息でつかみ、息を吹きかけながら口に運ぶ。

まだ少し熱いそれは噛むと口の中で更に肉汁が溢れ出てくる。ねこやのミートボールは玉ねぎを使わない牛と豚の合い挽き肉100%で肉感が強い牛と脂が甘い豚のふたつの旨味が感じられる。そんなミートボールを一層強めるのはトマトをベースにひき肉やみじん切りにされた玉ねぎや人参等多くの野菜の旨味が溶けこんでいるねこや特製ミートソース。ミートボールとよく絡んでチーズの強い塩味も加わり、口の中が旨味で一杯になる。

 

「あっふあっふ!」モグモグ…「でも美味しいよコレ〜!」

 

「ミートボールは逃げないから気を付けてねこいしさん」

 

「だっておにぎりが食べられたくなくて逃げる童話が外の世界にあるんでしょ?」

 

(…おむすびころりんの事かな?)

 

熱いながらもこいしはミートボールを満喫している様子。そんな彼女の様子に自分もお腹が空いてきた菫子はラザニアにとりかかる。スプーンを入れるとミートソースとホワイトソース、更にそれらの中で平たいシート状のパスタが何層にも重ねられていたのが見えた。纏めて自分の小皿に取り分け、菫子はフォークで一口サイズに切り取って食し始める。

口の中で野菜の甘さとひき肉の旨味たっぷりミートソースと滑らかな口当たりのホワイトソース。僅かな量でも塩味と乳の風味をしっかりと感じるチーズ。そして素朴な味わいながらもそれらの中でしっかりとした歯ごたえで主張してくるシートのパスタ。それら全てが揃ってラザニアという料理が完成している。

 

「…うん、やっぱり美味しい。間違いなくあのソースてす」

 

「このパン凄くふわふわしてて、お料理ともとても良く合ってるよ〜♪」

 

(…見たところ異世界から来たという人達は皆こちらのお料理に満足されてるみたいですね…。でも人間やエルフらしい人達はともかく先程のライオンの頭の人やトカゲの人?いやリザードマンっていうのかな?人種とか食べるものが違いそうなのにどういう事なんでしょうか?店主さんとかあちらのメイドさんに聞けばわかるのかな?)

 

「ね〜菫子お姉ちゃんどうしたの〜?」

 

「え?ああいえなんでもないわよ〜」

 

「変なの〜」

 

こいしは料理を存分に堪能している様だが…その一方で菫子はこの店と異世界の事を知りたいという気持で一杯の様子だった。

 

 

 

 

……少女食事中……

 

 

 

 

…………

 

「……ふむふむ、成程成程。あのドアベルにそんな力が」

 

「俺も詳しくは知らないんですがね」

 

そして食後、ランチの時間帯が終わって人も少なくなり、注文が途切れた合間合間に菫子は店主、もしくは休憩時間にアレッタ等からこの店の事や異世界について聞いていた。因みにこいしは食後のアイスクリームを堪能した後、おみやげをさとり達に早く持って帰りたいと先に帰っていた。そんな中菫子がこんな事を切り出す。

 

「あの〜因みになんですけど、あのドアベルって…このお店がお休みの時に1日だけ借りたりとかって…?」

 

「え?ああ…う〜んそいつはちょっと」

 

「ですよねですよね!いえいえ大変失礼しました!」

 

勿論了承を貰えるわけもなく、平謝りする菫子。その後他の連中と同じく、おみやげを貰って帰っていくのだった…。

 

 

…………

 

そしてその日の賄いの時間、

 

「今日はありがとうな早紀」

 

「ううん全然。アレッタちゃんやクロちゃんにも会いたかったし」

 

「私も嬉しかったです」

 

(コクコク)

 

「アレッタちゃんもクロちゃんも前よりいい顔になったね。仕事もよりスムーズになってたし、私も負けてられないわ」

 

「そ、そうですか?実はリサさんから計算とか教わってるんです」

 

「ほ〜そうなのか。通りで……どうした早紀?」

 

「…今日さ、眼鏡にマント付けた女の子のお客さんいたでしょ?なんか見たことある様な…」

 

「スミレコさんですか?う〜ん私は知りませんよ?」

 

「彼女は幻想郷っていう世界から来たっていうし、気のせいじゃないか?」

 

「……そうよね、気のせいよね」

 

 

…………

 

…そしてそれから数週間後、

 

「ふっふっふ、またまた見つけちゃいました♪こんなにすぐ見つけるなんてやっぱり私は天才だわ!」

 

再び幻想郷にやって来た菫子は幻想郷のとある場所にて、ねこやの扉を再び見つけていた。彼女には目的があった。

 

「前はこいしちゃんがいたために思う様に動けなかったけど今回は私一人!異世界の人達と交流してあのドアベルの事がわかる人を見つけ出すわ。あのお店のベルは無理でも作り方さえ分かれば私でも。オカルトボールを作ったこの私ならきっと楽勝よ♪」

 

そう今回の目的はねこやのドアベルを造ったもの、つまりエルフとの接触。ベルの詳細は店主は知らなかったがあのベルが昔のエルフが造ったものである事は聞いていた。そこで異世界のエルフならば何か分かるかもしれないと思ったのだ。

 

「ではでは行くわよ!」

 

菫子は金色のドアノブに触れた………筈だったが、

 

「…………………あ、あれ?」

 

不思議な事が起こった。ドアノブを握ろうとした菫子の手が……文字通り空を切る様に貫通した。何度手に取ろうと思っても掴めない。

 

「え、え?あれれ?なんで~どうして~!?」

 

菫子は知らなかったのだ。この扉はねこや、そしてそれに関わる者達に危険が及ぶ、もしくは不利益をもたらそうとする者を強制的に入店禁止にするという事を…。それから暫くしてここに霊夢と魔理沙が来、彼女らの手によって何とか入店できたが面白がった彼女らは扉の仕掛けを伝える事はなかった。




メニュー45

「カニクリームコロッケ」

今更ながら東方人気ランキング1位の彼女を追加登場させました。
異世界組は今回出ませんでしたが次回はコロッケに関する人、幻想郷からは…あの女神です。


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