幻想郷食堂   作:storyblade

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メニュー5「コンポート」

それはレミリアと咲夜がロメロ・ジュリエッタ夫妻と出会う前の事…。

 

「…レミィ。悪いけどちょっとここ離れていいかしら?」

 

「パチュリー様?」

 

「どうしたのよパチェ?」

 

「ちょっと、ね。出ていったりはしないから安心して」

 

そう言ってパチュリーはレミリア達から離れてゆっくりと歩きだし、とあるテーブルの前で足を止めた。

 

「……」

 

そのテーブルにはひとりの女性がいた。前髪を切り揃え、後ろで纏めた銀色の髪。緑色の上品なドレスを纏い、同じ色のリボンと花の髪飾り、そしてイヤリングを付けている。大きな特徴は人にはない尖った耳。そんな風貌の女性がソーサーを横に立てかけ、ひとり本を読んでいる。どうやらパチュリーの事には気づいていない様だ。

 

「……」

 

そんな女性をこれまた黙って見つめるパチュリー。すると

 

「……?御免なさい。本を読んでいて気づかなかったわ。何か用?」

 

やがて自分を見つめる視線に気づいた女性がパチュリーに尋ねた。

 

「貴女、魔法使い?」

 

その質問に対して女性は目を細める。

 

「…どうしてわかったの?」

 

「その杖。そして貴女から人間よりもずっと強い魔力を感じた」

 

「…そう言う貴女からも、とても強い力を感じる」

 

パチュリーの答えに女性は肯定の意味を含む返事で返した。

 

「…相席いい?」

 

「…どうぞ」

 

了承を受けてパチュリーは女性に向かいの席に座る。

 

「「………」」

 

ふたりは何も言わない。互いにどう言ったら良いのか探っている様子だったが、やがて本から視線を離した女性から話し始めた。

 

「ごめんなさい。普段あまり人の前に出ないから、こんな時どうしたらよいのかわからなくて。家族や師匠なら平気なんだけど」

 

「気にしなくてもいい。私も貴女と同じ。外になんて滅多に出ない」

 

「そうなの?」

 

「ええ。…私はパチュリー・ノーレッジ。貴女と同じ、魔法使いよ」

 

ヴィクトリア(プリンアラモード)

「初めまして、ノーレッジ。…私はサマナーク公国第一王女、ヴィクトリア・サマナーク。ここではプリンアラモードで通っている」

 

女性の名はヴィクトリアと言った。

 

「…貴女王女なの?そんな者まで来るのこの店は?」

 

「ええ。一国の女王や皇帝が来た事もあるわ。……ところで、私からもひとつ聞いてもいいかしら?」

 

「…何?」

 

するとヴィクトリアは目を細めて尋ねた。

 

「…私はこれまで多くの魔術に関する文献や資料を読んできた。その中で多くの知識を得てきた。……でも貴女から感じる力は…そのどれとも何か違う。貴女は…一体?」

 

「……それは多分、私が貴女とは違う世界で住んでいる者だからだと思うわ」

 

ヴィクトリアからの質問に、パチュリーは自分達の事情を説明した。

 

 

…………

 

「…幻想郷…。私達の世界とは違う…別の世界。……成程、道理で」

 

ヴィクトリアはやや驚いた様子だが、顎に手を当ててそう頷いた程度だ。

 

「…もっと驚かないの?」

 

「少し驚いたけど…でも私はもう既にこの異世界食堂を知っているから。ファンタジー小説の様に、他にも別の世界があってもおかしくない。ならば…そこに魔法やそれを使う者がいても」

 

「理解が早くて助かるわ。…ところで貴女のその耳、人間とは思えないわね。私は見た事無いけど、…もしかして、エルフという種族?」

 

「ええそうよ。最も私は…ハーフエルフだけど…」

 

それからヴィクトリアもまた自身の事を話した。

 

サマナーク公国王女、ヴィクトリア・サマナーク。大賢者アルトリウスの弟子であり、天才と言えるほどの類まれ無い魔術の才能の持ち主であるが、彼女は人間ではない。純粋な人間でもエルフでもないハーフエルフと呼ばれる種族である。しかし彼女の両親は純粋な人間であり、エルフでもない。隔世遺伝によってそれが彼女に現れた可能性もあるが真相はわからないとの事。彼女の住む世界では人間の生命力とエルフの魔力の両方を併せ持つハーフエルフは奇異な存在とも言われており、人間に嫌われる傾向が多く、大々的に世に出る事は殆どない。実際に彼女は弟の妻からは好ましく思われていない。そういう事もあってヴィクトリアも王女でありながら国の政治に関わる事を放棄し、独身を貫くつもりである。

 

「…どこの世界にもあるのね。そういうの」

 

「でも私は辛いと思ってない。弟や甥、姪は良くしてくれるし、世界の喧騒に悩まされず、魔術の研究にも没頭できているし…それに」

 

とその時、クロが料理を運んできた。

 

(お待たせしました。デザートのプリンアラモードです)

 

「このプリンアラモードに出会えたから」

 

嬉しそうな表情を浮かべるヴィクトリア。広めの器に飾り付けられた赤、黄、緑と様々な果実。白い雲を思わせるホイップクリームとアイスクリーム。それらのまとめ役の様に中央に鎮座しているのは黄色と黒が鮮やかなプリン。プリンアラモード。これが彼女がこの店で一番愛している料理である。完全な人間では魔術の道は選ばず普通の王族としての人生だったろうし、動物性の食べ物を嫌うエルフでは食べる気が起きなかっただろう。だからヴィクトリアは自分がハーフエルフである事を決して後悔していなかった。

 

「……」

 

「寧ろ貴女は私が怖くないの?」

 

「…怖い?何故?寧ろ興味深いわ」

 

「興味深い?」

 

「貴女の事、エルフの事、異世界の魔術の事…。私の知らない事ばかり。実に興味深い」

 

それはパチュリーの素直な意見だった。

 

「それに…」

 

「それに?」

 

「私はもっともっと、もーーっと!厄介でいいかげんなバカ女を知ってる」

 

ここだけやや興奮気味に言い放つパチュリー。誰の事かわかる人にはわかるだろう。ヴィクトリアはその言葉に一瞬きょとんとし、

 

「……ふふ」

 

嬉しかったのか一瞬笑った。

 

「あと貴女の持っているその本、…気になるわね」

 

すると次にパチュリーはヴィクトリアが持ってきた本に目が行った。

 

「これはただの魔法の教本よ。珍しいものでは無いわ」

 

そう言ってヴィクトリアは本を差し出す。

 

「見てもいいの?」

 

ヴィクトリアは頷く。パチュリーはそれを手に取り、しばし目を通す。

 

「………実に興味深いわ」

 

「そう?」

 

「ええ。…全く読めない」

 

「…?それが興味深いの?」

 

「私の住んでいる場所には図書館がある。…そこにはありとあらゆる本が収められている。一生かけても数えきれない程の。私はそこで一日、本を読んで過ごしている」

 

パチュリーの住む場所、紅魔館の地下には巨大な図書館があり、そこには生涯全てをかけても読み切れない程の様々なジャンルの本が収められている。中には外の世界から流れてきた本もある。

 

「それはとても楽しそうね」

 

「これまで多くの本の読んできた。私は読んだ本を全て覚えている。…でもここに書かれている文字は…私が今まで見てきた文字のどれにも当てはまらない。絵も見た事が無い」

 

ヴィクトリアの本は彼女が住む地域の公用語である東大陸語という言語で書かれており、それは外の世界にも幻想郷にもない物であった。

 

「住む世界が違えば存在する文字も違うのは仕方ないとして…解読できそう?」

 

「…わからない。でも…やってみたい」

(鈴奈庵の店主とかならわかるのかしら…?)

 

会話中もパチュリーは本から目を離さない。とその時アレッタが近づいてきた。

 

「あの~…パチュリーさん、でしたでしょうか?ご注文はお決まりですか?」

 

「……」

 

しかしパチュリーは読書に集中しているのか、アレッタの声に気づかない。

 

「ノーレッジ?」

 

「……え?…ああ、そうだったわね。とはいっても、私は食べるものにあまりこだわりは無いんだけど…」

 

するとヴィクトリアがパチュリーに提案した

 

「…じゃあ私に任せてもらってもいいかしら?貴女の注文」

 

「ええ、任せるわ」

 

パチュリーの言葉を聞いて、ヴィクトリアは何かメモを取る。そしてそれをアレッタに渡す。

 

「マスターにお渡しして。それでわかるから」

 

「…はい!かしこまりました!」

 

アレッタはメモを店主に渡しに行った。パチュリーは読書を続け、ヴィクトリアは紅茶を飲むが、プリンアラモードにはまだ手を付けなかった。

 

「…私の事は気にせず食べたら?」

 

「気にしないで。折角相席したのだから一緒に食べたいわ」

 

「…そ」

 

するとそこにクロが、

 

(ではこちら、冷蔵庫にお入れしておきます)

 

そう言ってヴィクトリアのプリンを一旦下げた。何も言ってないのにまるで分っていたかの様に動いたクロにきょとんとするパチュリー。

 

「あの給仕さん、中々気遣いがいいの」

 

「……」

 

 

 

 

……店主調理中……

 

 

 

 

…………

 

…そして少し経ってから、店主が冷蔵庫で保管していたヴィクトリアのプリンとパチュリーの料理を運んできた。

 

「お待たせしました。…あ、そういや聞き忘れてた。お客さん、甘いものは大丈夫でしょうか?」

 

「ええ、平気よ」

 

「良かった。ではこちらヴィクトリアさんのプリンと…」

 

パチュリーは本から自分の前に出された料理に目を移した。

 

「梨のコンポートです」

 

店主がパチュリーの前に出したのは紅茶が入ったカップ、薄いクラッカーが数枚乗った小皿、そしてとある一皿。白い幅広の陶器の器に注がれているのはほんのり黄色いスープ。まだ温かいのかほんの少し湯気を立てている。そのスープに浮かんでいるのは薄くスライスされた梨の実と、ぷるぷるとした感触の透明な柔らかい何か。その上には小さい赤い実がちょこんと飾り付けられている。

 

「…何故これを私に?」

 

「ああすいません。これはこちらのヴィクトリアさんからのご相談から考えたものなんですが…」

 

するとヴィクトリアが話を継ぐ。

 

「私の勘違いならそれでいいのだけれど…貴女、ずっと小さい声で喋っていたり時々小さい咳をしていたわ。少し喋りにくそうにも見える。もしかして喉か、或いは肺が悪いのかと思って…。熱がありそうには見えないから風邪とかの類じゃないと思うのだけれど…」

 

相席していたヴィクトリアは彼女のちょっとした様子の違いを気にしていた。

 

「……ええ。重度じゃないけど…ちょっと喘息の気が。埃が多い場所とか…苦手」

 

実際パチュリーはこの店にいる間、僅かであるが時々掠める様な咳をしていたのだ。声も普通の人よりも小さい。あの一時でそこまでヴィクトリアが気づいていた事にパチュリーはやや驚いている。

 

「ヴィクトリアさんから何かお客さんの身体にぴったりな料理は無いかとご相談を受けまして、これをお持ちしました。こちらの木の実は梨といって今丁度旬なので…ああ、お客さんは私と同じ世界の方みたいですからきっとご存じですよね。温めた梨は咳や喘息に良いと言われていますので。それを水と蜂蜜、それと柚子の果汁のシロップで煮たものです。蜂蜜と柚子も喉に優しい食材ですから。あとこの赤い実はクコの実です。いわゆる薬膳デザート、というやつですね。こちらのクラッカーと一緒にお召し上がりください」

 

「この透明なのは…キノコかしら?」

 

「ええ白きくらげという茸です。こちらも同じシロップで煮ています。癖もないですし、柔らかくて美味しいですよ。それではごゆっくり」

 

そう言って店主は席を離れた。

 

「……」

 

パチュリーはそれを黙って見つめる。そんな彼女にヴィクトリアが話しかけた。

 

「ねぇ。ひとつ提案があるんだけどいいかしら?」

 

「…何?」

 

「このお店の扉は世界を違えて人は通れないけど物は通る事はできるわ。ここの給仕がマスターから何度か物を借りているみたいだし、他に以前ここに剣を置いていった私達の世界の騎士がいて、3年後に返せるまでずっとこのお店で保管していた事があるってマスターが言ってた」

 

「剣を置いていったって…随分だらしない騎士ね」

 

本当はある事情があるのだがそれについては余談である。

 

「貴女は、私達の世界の魔導書に興味があると言った。そして私も…貴女の持つ魔導書に興味がある。それでなんだけど…私の本を貴女に貸してあげてもいい」

 

「…本当?」

 

「ええ。その代わり、次に貴女が来た時、貴女の本を私に貸していただけないかしら?」

 

「……」

 

つまりはねこやの扉を通じて世界を跨いだ本の交換である。パチュリーはややきょとんとしている。おそらくその様な事を言われたのは初めてだからであろう。

 

「貴女が読み飽きたものだけで良い。……どう?」

 

パチュリーは顎に手を当てて少しばかり考え、

 

「………わかった」

 

そして了承した。

 

「本当?」

 

声のトーンは変わらないが、ヴィクトリアの表情には喜びが出ていた。

 

「でも重要なものは貸し出せないわよ?」

 

「構わないわ。私も読み飽きたものを貸すから」

 

「あと、私はあの扉を初めて見た。だからいつ返せるかもわからない」

 

「返すのはいつでもいいから十分よ。…ありがとうノーレッジ」

 

「パチュリーでいい。皆そう呼んでる」

 

「では私もヴィクトリアって呼んで。あとその本は挨拶代わりとして、あげるわ」

 

「…いいの?」

 

「ええ。私はまた新しく買えばいいから」

 

そんな話をしつつ、ふたりはスプーンを取り、自らの前に置かれたデザートに取り掛かる。梨は短い時間で煮える様に細かく切られており、それを少量の黄色いスープと一緒に口に運ぶ。シャクシャクとした歯ごたえと、梨と蜂蜜の甘さと柚子の香りが染み込んだスープは見た目、甘さが強そうに思えるが意外とあっさりとしていた。

 

「…優しい味ね。…あと温かいのもいいわ」

 

梨の次は店主が言っていた白きくらげという茸を取る。これも白い半透明なものだが、スープの色を十分にしみ込んでいる。口に入れるときくらげらしいコリコリした食感がなんか面白い。

 

「……美味しい」

(キノコってなんとなく魔理沙を思い出すけど…まぁいいわ)

 

頭に浮かんだとある人物に一瞬心中苦笑いしたが、直ぐに忘れ、料理を楽しむパチュリー。店主の言った通りクラッカーにつけて食べてみる。柔らかく煮込まれた梨がサクサクのクラッカーともこれまたよく合う。

 

「今日はいい日ね」

 

「…そう?」

 

「ええ。異世界の方と、貴女とこうして知り合えたんだもの。だから今日はいい日」

 

「……」

 

するとパチュリーはポケットから何かを取り出し、テーブルの上に置いた。それは様々な色を放つ一円玉位の小さな石達。

 

「ただ借りるだけじゃ悪いし…本のお礼」

 

「それは?」

 

「賢者の石という魔石。小さいものだから大した力は無いけど」

 

その名を聞いてヴィクトリアは目を見開く。賢者の石と言えば世界中の魔法使いが生涯をかけて追い求めるほどの伝説の石。師であるアルトリウスでさえも生み出すのは簡単でないとされ、過去一度だけ見せてもらった事がある。ヴィクトリアは思わず石に手を伸ばし、じっくりと観察する。

 

「…いいの?」

 

「気にしないで。この程度の大きさのものならまた作れる」

 

そしてパチュリーは紅茶のカップを手にしてこう言った。

 

「貴女とならたまにこうして、お茶するのもいいかもね…」

 

自分で内心不思議に思っていた。初めて来た場所で、初めて会った者にこんな事を言うとは。ましてや自分の本を貸す事を了承するなんて。この店の居心地の良さ、そして似た様な者同士だからこそなのか。でも不思議と嫌な感じは無かった。そしてそれはヴィクトリアも思っていたようで。

 

「…私達、似たもの同士かもしれないわね」

 

「…そうかも」

 

そう言って微笑み合うパチュリーとヴィクトリア。違う世界に住む魔女と魔女の交流であった。

 

 

…………

 

「という事があったの。…店主さんだったかしら?あれ、中々いい味だったわ」

 

「喜んでいただけたなら良かったです」

 

「紅茶の味はまだまだだけど、あのデザートと貴方の気配りは気に入ったわね」

 

「はは、紅茶ももっと勉強しておきますね」

 

「……」

 

そんな彼女を見てレミリアが驚いた様な表情をしている。アレッタが気づいて声をかけた。

 

「…どうしました?レミリアさん」

 

「…パチェが私達以外に、しかも今日会ったばかりの人とそんな交流をするなんて…」

 

「アリスや魔理沙は長い付き合いでそうなりましたからね」

 

「あら、そんなに驚く事?私がそういった事が少ないのはレミィや咲夜、貴女達みたいな気軽に接する知り合いがあんまりいないからよ。気が合えば…普通にお茶位するわ」

 

そう言うパチュリーの右手には先程ヴィクトリアが持っていた本があった。

 

 

…………

 

「皆さんどうもご馳走になりました。おみやげも有難く頂きますわ」

 

「また来てくださいね!扉は七日に一度現れます!」

 

「ええ。また見かけたら来てあげてもいいわよ。その時は妹達も連れてくるわ」

 

「…またね」

 

(お気をつけて)

 

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」

 

 

~~~~♪

 

 

…………

 

扉を閉めると…扉は煙の様に跡形もなく消えてしまった。

 

「…アレッタさんの言う通り、本当に七日に一回だけ扉が開くみたいですね。不思議ですわ」

 

「私としてはあの様なものがいつもあっては困るから普段はこの方が助かるわよ。妖精達も困るだろうし。でも多分次はここには現れないだろうから、もしまた行くなら探さないと駄目ね」

 

「…あの扉を何時でも召喚できる魔法なんて研究しようかしら?」

 

三人がそれまでいた異世界食堂にそれぞれ感想を言っていた…その時、

 

 

ギュンッ!!…ドカーンッ!!

 

 

突然三人の所に光弾が降りかかり、床に着弾して爆発した。レミリアと咲夜は素早くそれを避け、ふたりより動きが遅いパチュリーは結界を張って攻撃を防ぐ。床にはぽっかりと大穴が開いている。

 

「…何なのいきなり…」

 

「危ない危ない…」

 

「…やれやれ全く」

 

しかし突然の攻撃にも関わらず、三人は至って冷静だった。まるでこの攻撃の正体がわかっているかの様だ。

 

金髪の少女

「お姉様!!」

 

そしてそんな三人を見下ろすかの様に、エントランス上空にひとりの少女がいた。

髪は金髪で赤いリボンが付いた白い帽子を被り、赤色の少女らしい服と靴。そして背中からは…様々な色がついた結晶の様な羽根が生えた翼がある。レミリアに向かってお姉様と叫んだその少女の赤い目は狂気を含んだものをしており、酷く怒っている事が誰の目にも明らかだった。

 

「お、お嬢様!咲夜さん!パチュリー様!」

 

するとそこに半泣きで慌てふためいて飛んできたのは小悪魔。

 

「…はぁ。また掃除が大変ね」

 

「どういう事かしら小悪魔?」

 

「す、すみませんお嬢様!あの後妹様が起きられまして、私達何があったか説明したんですけど!そしたら酷く不機嫌になられてるんです~!」

 

そして地面にはよく見ると…美鈴がボロボロで大の字に倒れていた。どうやら少女をなんとか抑え込もうとしてやられた様だった。

 

「…どういうつもりかしら、フラン?」

 

レミリアは少女をフランと言った。彼女はフランドール・スカーレット。小悪魔の言った通り、レミリアの妹、彼女も吸血鬼である。

 

「美鈴とこあに聞いたわ!お姉様!私に黙って面白そうなところに行ってたって本当!?ひどいわ!なんでフランも連れてってくれなかったのよ!」

 

どうやらフランドールは自分が仲間外れにされたと思っているらしく、そのために激高しているらしかった。そんな彼女にレミリアは、

 

「…ああ。全然起きそうになかったから、置いていってもいいって思って」

 

「お嬢様!?」

 

本当は危険な場所かどうかわからなかったので連れて行って行かなかったのだが、レミリアはそれをあえて隠した。理由は…単純に悪戯心である。笑いながら言っているのがその証明だろう。小悪魔はそれを聞いてますますおたおたする。その言葉に目の色変えてますます怒ったフランドールは自身の力である「禁忌レーヴァテイン」を生み出し構えた。

 

「お姉様はいっつもそうなんだから!お礼にきゅっとしてあげるわ!」

 

「…どうやらお仕置きが必要の様ね。食後の運動には丁度いいわ」

 

するとレミリアもまた「神槍スピア・ザ・グングニル」を出し、ふたり一緒に窓から空高く飛翔していった。

 

「…では私は妹様方のお食事の用意をしてきます」

 

咲夜はこれまたいつも通りという感じで焦りもせず、おみやげのシュークリームを持って自分の仕事をしに行った。

 

「ほ、ほっといていいんですか?」

 

「…どうせフランはお腹が空いて先に止めるわよ。それよりこあ、この本を私の部屋の書庫に保管しておいて。あそこなら魔理沙も手を出せないわ」

 

「え?あ、はい。…どうされたんですかこの本?」

 

「…貰ったの」

 

小悪魔に本を預けたパチュリーはそれだけ言うと倒れている美鈴を魔法で浮かせ、治療するために運んで行った。そんなやりとりが地上でされている中、

 

「今夜はとことん遊びましょ!お姉さま!」

 

「面白い場所も知れたし、今夜は楽しい夜になりそうね。こんなにも月が紅いのだから!」

 

上空では赤い月が浮かぶ夜を背に、不気味に笑うふたつの光が暫し激突していた。

 

 

…………

 

それより少し前、こちらでは、

 

(……よし、プリンはこれで大丈夫)

 

ヴィクトリアがおみやげのプリンを自身作成の冷却魔法が付いた箱に保管していた。日持ちしないプリンを何とか自分の世界でも楽しみたいと彼女が生み出したものである。これで次の七日後までに二日に一回プリンが楽しめる。

 

(…さて、今日からまた研究で忙しくなるわね。異世界の物だとすると師匠も知らないものだし、解析には時間がかかるかもしれないけど、でも必ずやり遂げて見せる。本を借りる時が来たら解読も頑張らなきゃ)

 

そう思うヴィクトリアの机の上にはパチュリーがくれた賢者の石があった。




メニュー6

「スフレパンケーキ」


今回のデザートですが正式には銀耳雪梨糖水という名前らしいです。読み方はわかりません。

こんにちは、storybladeです。幻想郷食堂をお読み頂きありがとうございます。突然ですがアンケートです。先代博麗の巫女や魂魄妖忌の回があれば読んでみたいと思いますか?公式設定が少ないのでオリジナル要素を含んでしまいますがどうでしょうか?ご意見お願いします。期限は今月一杯です。

  • あれば読んでみたい
  • 不安なので読みたくない
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