二番煎じの茶は甘い 作:不可思議可思議
高校生活を振り返って 2年F組
高校生といえば恋愛。
恋愛といえば高校生。
社会に出ればもう出会いは無いと、皆無であるとすら言われる現代社会において、最も恋愛を謳歌できるのは学生のうち。中でもやはり高校、大学時代は人生における恋愛の全盛期、最盛期と言えよう。
朝っぱらから恋人が家まで迎えに来て、手を繋いで通学路を歩いたり。お昼休みにお弁当をあーんして食べさせあったり。授業中にこっそり手紙でやりとりしたり。放課後は喫茶店で甘いものでも一緒に食べたり飲んだりなんかして。
そんなキラキラ、ピカピカした煌びやかな、匂い付きの蛍光ペンやラメ入りのペンで書かれた読み難い見目麗しい作文の一枚や二枚でも書きたいところだけれど、しかし生憎と私にそのような相手は一人しかいないし、ペンの持ち合わせもない。されど、それでも私とて夢見る乙女。人並みに恋焦がれたく思い、月並みに焼け爛れたくもなる。
ひとまず、蛍光ペンの一本でも買ってみようかしら。
我が校の誇る国語教師――平塚静は、私が片手間に書き上げたレポート課題を読み上げ、仕上げと言わんばかりに深い溜め息を吐き出した。
はて、さて。一体どうして、私は職員室に呼び出され、こんな辱めを受けているのかしら。課題を未提出のまま放置したわけでもなく、何か誰かに迷惑を掛けたわけでも、まだないというのに。
「なぁ、
「何よ。もしかして違ったの? 聴き間違えたかしら。あなたへのラブレターでも書けば良かったのかしら」
「私は授業でラブレターの書き方講座なんてしていない。高校生活を振り返って、というテーマの課題を私は出したはずだぞ」
「そうね。そのはずよね。だから書いたじゃない」
「そうだな。それでなぜ、君は買い物メモを書いているんだ? うっかりさんか? それともシンプルに馬鹿なのか?」
静はもう四度目になる、深ーい溜め息を吐き出し、悩ましそうにしながら髪を掻き上げた。
それにしてもかっこいいわ。見惚れちゃう。その気だるげな仕草一つとっても綺麗。なんでモテないのかしら。
「真面目に聞け」
「聞いているわ」
一言一句とて聞き逃すはずがない。
「君の口はあれだな。その長ったらしい髪のように出鱈目で混沌としているな」
「あら、ひどいわ。傷ついた。日本語を玩具とする私の全てを否定された気分だわ」
溜め息、七度目。ラッキーセブンね。今のうちにガチャを引いたら微妙な性能の最高レアリティが当たりそう。
「で、だ。この戯けた作文はなんだ? 言い訳くらいは聞かないでもないぞ」
ギロリと睨まれ、私の心臓がキュンと高鳴り、一瞬息が詰まる。けれど聞かれたからには答えねば、それは私の流儀に反する。
「高校生活とやらを振り返ったのよ、だから。生憎と私は模範生らしいキャラクターをしていないし、なのだからこそ、私の人生を振り返って飛び出るエピソードが模範的でなくとも、何一つとて不自然は無いじゃない」
「普通こういう時は、人に語れる己が過去とそれから得られた教訓でも書いておくものだ」
「たかが一年前から
「なら何だと言うんだ」
「
「君は創作物の住人なのか!?」
「人の子は皆、
「屁理屈を言うな。そして未婚は余計だ。しまいには殴るぞ」
溜め息、八度目。次いですぐに九度目。そんなペースで幸せを逃してたら、そりゃ、結婚なんて出来るはずも無いわよね。
「レポートは書き直せ。真っ当に、それらしい高校生活を振り返り直せ」
「善処するわ」
ついに二桁に達する溜め息の後、静は半ば諦めたように小さく頷いた。
さて、これでひとまずの要件は終わりかしらね。大好きな静とのおしゃべりも、それこそファミレスでドリンクバーでも嗜みながらなら幾らでも望むところなのだけれど。だけど、流石に立ちっぱなしは些かしんどいものがある。
「時に七五三、君は部活には入っていなかったな?」
「いいえ、小説同好会に入っているわ」
何だか長くなりそうな話題が振られて、つい反射的に、ありもしない事実を答えてしまった。
「我が校にそんな部活も同好会も存在していない」
しかも一瞬でバレた。十一回目のため息を吐くのは私だった。
「友達は、いるのか?」
「共に富士山を登る程度の仲を友達と言うのなら、百人ほどいるわね」
「名簿を見なくてもわかるぞ。嘘だな?」
「交友を名簿に纏めてるの?」
「…………」
地雷か逆鱗でも踏みつけてしまったのか、突如として口を閉ざしてしまった。
「静?」
「教師を名前で呼ぶな。呼び捨てるな。あと忘れていたが敬語を使え」
「あら、本当に本当なの? そんな呪いのノートみたいな産物が、その散らかった引き出しの奥にあるの?」
「ありもしない容疑をかけるな! 私はそんなデスノートなんて持ち合わせていないし、私の引き出しはそれほど散らかってもいない!」
必死ね。その顔も愛らしいわ。狂犬みたいで。
「そう。ちなみに私の名簿はまだ空欄ばかりよ」
「それを私に伝えてどうするんだ」
「あなたが聞いたんじゃない。私のお友達リストは概ね白紙と言えるわ」
「そんな悲しいことをよくもまぁ、堂々と言えるな……」
「それ以外のリストが埋まっているから問題ないのよ」
「……一応聞くぞ。それはなんのリストだ?」
「逆恨みリスト」
「デスノートじゃないか!」
冗談よ。無いわけじゃ無いけど。
「七五三、君に部活を紹介しよう。一年遅れだが、来年こそはしっかりと高校生らしい作文が書けるようになっているはずだ」
静はそう言って、私の手をとって職員室を連れ出した。
「ナンパなら望むところだけど、その前に自販機に寄らせなさい。少しばかり喋り疲れたわ」
「君なぁ……」
自販機でペットボトルのメロンソーダを買ってからというもの、首根っこを掴まれ、踵を引きずりながら連れてこられ、特別棟にあるただの教室へとやって来た。何室と言うわけでもない、空き教室とでも呼ぶべき部屋の前だった。
「着いたぞ。いい加減、自分の足で立ちたまえ」
「あなたの足が速いのよ」
「君の足が短いんだ」
言いながら、静はその教室の扉を勢いよく開けた。
教室の奥には机と椅子が、テトリスのように隙間なく積み上げられている。倉庫として使われているらしい内装以外に目新しいものはない――否。知らぬ顔が一人。随分と端正で偉そうな顔をした、高校生らしからぬ女子高生が一人。
「平塚先生。入る時にはノックを、とお願いしたはずですが」
椅子に座り、読書をしていたらしい彼女は、不機嫌そうな顔で視線と文句を送った。
「ノックをしても君が返事をした試しがないじゃないか」
「返事よりも先に先生が入ってくるんですよ」
言いながら。彼女もまた、幸せを吐き出すのだった。
「……それで、……その、『髪は女の命』という言葉のアンチテーゼの擬人化みたいな人は?」
……ええ、まぁ、髪が女の命であるのなら、私は間違いなく重病だけれども。黒、茶、金でグチャグチャだけれども。
「彼女は
静に腕を引っ張られ、彼女の前に私は立たされた。
「七五三七子よ。……入部?」
なんの話よ。そういえば、部活を紹介するとか何とか言っていた気がするけども。
「七五三、君にはここでの部活動を命じる」
「やだ」
「異論反論抗議質問口答えは一切認めない」
ひどい。私からそれらをとったら何も残らないじゃない。
「見てわかる通りだ。七五三の人格はこの髪のように醜く澱んでいて、おかげでいつも孤独の哀れな奴だ」
「静、あなただって大して変わらないじゃない」
「……こういうところを一から構成し直し更生する。これが私の依頼だ」
そう言って涙ぐみながら、ゆっくりと、静は教室を出ていってしまった。
「言いすぎたかしら」
「……とりあえず、座ったら?」
まぁ、待ってればそのうち戻ってくるかしらね。
私は彼女の対面の位置に置かれた椅子に腰掛けた。
「新入部員ということなら、まあ歓迎するわ。私は2年J組の雪ノ下雪乃よ。七五三七子さん」
まあ。まぁ、ね。静が顧問の部活とはいえ、望んでの入部じゃないし、歓迎も求めないし、だから私をしても、まぁ別にいいのだけれど。
そんなことよりも。
「で、ここは何部なのよ。静が顧問ということは、やっぱり漫画同好会かしら。それとも総合格闘部?」
「あなたが平塚先生をどう思っているのか気になってきたけれど……」
彼女は不思議そうな顔で言いつつ、したりと薄く笑って続ける。
「では。一つゲームをしましょう」
「ゲーム」
「そう。ここが何部か当てるゲーム」
他にすることもないし、好みのタイプじゃないとはいえ美少女のお誘いとあればやぶさかではないけれど。
ひとまず、あらためて教室を見渡してみる。
とはいえ、何もないわね。机と椅子だけ。まぁ、そうでなきゃゲームにならないか。ラケットとかバッドでも置いてあったらそれこそ興醒めだもの。
それ以外の情報で推察してみましょう。
私と静が来た時、雪乃は読書をしていた。本の種類は分かりにくいけれど、覗き見える文章を見るに、堅めのミステリー小説の類だと思われる。
「他に部員は?」
「残念、あなたで二人目ね」
……それ、つまり昨日までは一人だったってことじゃない。それ部活って言っていいのかしら。
「文芸部かしら」
ひとまず、無難なところから答えてみると、雪乃は「へぇ」と、興味深げな目を見せ、「その心は?」と問いかえしてくる。
「部活動中にしていることが読書であること。単なる休憩中か空き時間とも取れるし、我ながら半信半疑以下だけれどね」
「そう。残念ながら、ハズレね」
ま、でしょうね。バッドだろうとラケットだろうと本だろうと、持ち物だけで判別できるんじゃゲームにならないもの。
ならそれ以外。外見とかかしら。美少女というのはそれだけで一つ要点であるわけだし。
「じゃあ、カウンセリング部」
言うだけ言ってみただけである。雪乃もキョトンとした目をさせた。
「……一応聞いておくわ。その心は?」
「美少女はその存在だけでありとあらゆるを駆逐するのよ」
「…………その理屈はひとまず置いておくとして、カウンセリング――相談という意味なら、かろうじて及第点といったところね」
「なら答え合わせを聞かせてもらえるかしら」
言うと、雪乃は愉快そうに笑みを浮かべた。
「七五三さん。同年代と話すのは何年振り?」
「失礼ね。今朝だってそれなりに話したわよ」
「へぇ。ちなみに、お相手は?」
「妹。歳は二つ下」
「なんて悲しい……」
嘆くように言いながら、ため息を吐かれてしまった。別にいいじゃない。妹だって十分に同年代の範疇よ。
「ここは奉仕部。活動内容は一重にボランティア。ホームレスには炊き出しを。モテない男子には女子との会話を。困っている人に手を差し伸べるのがこの部の活動よ」
雪乃は背の低い私を、わざわざ立ち上がって見下ろしながら言った。
「ようこそ奉仕部へ。七五三さん、改めて歓迎するわ」
気高く、冷徹であらんと冷ますような哀れみの目。
けれど生憎と、私の目は鏡ではないし、私が同じ目をすることもない。
「私は文脈を綴ることと、狂言を回す以外に大した能の無い、ひ弱で虚弱で貧弱な人間。では確かにあるけれど、それでも哀れまれる覚えはないわ」
私は日本語を玩具とし、物語を人生とする畑の住人。しかして、それを不幸とも悲劇とも思ったことはない。誇りとも別に思わないけど。
「哀れんだ覚えはないのだけれど。でも聞けば聞くほど、あなたのそれは致命的に見えるのだけど」
「それはお互い様よ」
「あなた、私を哀れんでいるの?」
「儚んであげてもいいわね」
話してみても、雪乃は薄氷のような性格をしているのがよく分かる。人道を外れたような性格の私であっても、丁重に扱ってやろうとくらいは思える。
まぁ、哀れもうが儚もうが、静の言うところの更生にはむしろ遠ざかるばかりなのでしょうけど。
少しばかり話していると、ノックもなく扉が開き、目元を薄からず赤らめた静が戻ってきた。
「どうやら、更生に手間取っているようだな」
「本人に危機感が無いせいです」
「だろうな」
酷い言われようである。人をそんな、末期の厨二病患者みたいに。
「更生だか再構成だか知らないけれど、私の名は七五三七子というの。改革も革命も変貌も変身も変換も、求めてはいないわ」
私がメロンソーダを飲んでから言うと、静は「ほう?」と小首を傾げる。
「数分会話しただけで分かったけれど、あなたは変わらなきゃ社会的に不味いレベルよ?」
「知ったことじゃないわね。私が原因で全人類が豚のように肥えようと、全人類がサイヤ人のような戦闘種族に至ろうと、人類が唯一の個になろうとも、私の名は七五三七子よ」
私を構成しているありとあらゆるが、私を私たらしめている。そんな大切なものが、会って数分の人間に変えられてはたまったものじゃないわ。
「変わるなんて、自殺と同じだわ」
「あなたの言うそれは変化ではなくただの逃げよ」
雪乃はまるで、自分の口が真実の口であると確信しているような口振りで言う。
「あなたは目を逸らしているだけ。視点を逸らし、論点を逸らし、自分を客観的に見切れていないだけよ」
「主観こそ最大の客観よ。頂点は一つで底辺が無限。そんな限りなく直線に近い、酷く平たい三角形こそが人の視界の構造であり、底辺から下は測れない」
人間は結局、他と比較して幸せを実感する生き物だもの。
自分を客観視して生きる人生は、他者より劣り続ける人生は、それは地獄そのものだと確信している。
「……それじゃあ、悩みは解決しないし、誰も救われないじゃない」
「人に人は救えないわ。救われた人間というのはみんな自分で自分を救っているの。人生の主人公は
「あなたねぇ……!」
「あら、私の減らず口に敵わないと知って、次は暴力? それはとっても素敵ね。嫌いじゃないわ」
私と雪乃が席を立とうとして、しかし同時に席へと叩き戻された。
「二人とも落ち着きたまえ」
私達を止めたのは、静の両手。その顔は孫悟空を発見したベジータのような、不敵な笑みを浮かべていた。
「古来より、正義と正義がぶつかり合ったときは拳を交え、決着をつけ、雌雄を決めるのが少年漫画の習わしだ」
「だから今、殴ったり殴られたりしようとしてたんじゃない」
「校内で殴ったり殴られたりしようとする教え子を止めない教師がいてたまるか」
……結構いそうなものだけれどね。言っても聞いてもらえないだろうから言わないけど。
「でもだからこそ、こうしよう。これから君たちの下に悩める子羊を導く。彼らを君たちなりに救ってみたまえ。そしてお互いの正しさを存分に証明するがいい」
「教師が教え子を殴るのもどうかと思うわよ?」
「誰がいつ悩める子羊を暴力的に生産すると言った? ん?」
その口は随分と暴力的なようだけどね。こわいこわい。
「オーキードーキー。それが部活であり、静の命令と言うのであれば是非も無し。いつ職員室にキメラが襲い来るかわからない、不穏な放課後を、マックスコーヒーの蜂蜜漬けでも噛み締めて優雅に楽しんでいるがいいわ」
「新たな子羊を作れとも言っていない」
「教師たるもの、教え子の努力はなんであれ応援すべきよ」
「私の教え子にボスを裏切るクズはいない!」
「私の人生にボスはいないわ。リーダーはいるけど」
「それはもう裏切った後の台詞じゃないか!?」
「あら、口車に乗せられてしまったわね。それとも火車かしら」
「それは死んだ後に乗せられる……いやもうこの話はいいんだよ」
口車に静を乗せて遊んでいたら、勝手に下車されてしまった。雪乃駅に途中下車されてしまった。
「死力を尽くして戦ってもらうために、君たちにもメリットを用意しよう。勝った方が負けた方に、なんでも命令できると言うのはどうだ?」
「静、結婚しましょう」
「断る! 勝った気になるのが早すぎるだろうが! 私への命令権じゃない! 十文字もない台詞にツッコミどころを幾つ作る気だ!」
七子駅行きを途中下車した恨みは根深いのよ。私にゴールインしてもらうためなら悩める子羊でジンギスカンだって辞さないわ。
「……いいでしょう。その愉快な挑発に乗るのは癪ですが、受けて立ちます」
雪乃は私のプロポーズを挑発と受け取ったらしい。……いや、にしてもちょろすぎないかしら。
「クククッ、いい度胸をしているわね。そのいい面に免じて、式にはちゃんと呼んであげるわ」
「君、私のことが好きすぎるだろう……」
同性だろうと年上だろうと禁断だろうと、初恋だもの。銃で頭脳を撃ち抜かれようと、刀で性を断ち切られようと、薬で心を止められようとも止まらない。
「いいえ、平塚先生にはきちんと誠実な男性と結婚してもらうわ」
「言っておくが! 私の結婚事情と君たちの勝負は全く関係ないからな!? 勝敗の裁定は私が独断と偏見で下す!! 少しは私への態度も考えることだ!」
「あら、言われているわよ、雪乃」
「何を言っているの? 七五三さんのことに決まっているでしょう」
「君たち二人に言っているんだよ……」
静がそう言いながら項垂れる。それと同時に、いかにも合成音声らしいチャイムが、まるで話のオチをつけるように鳴る。妹に持たされている腕時計を見るに、完全下校時刻を告げるチャイムのようだった。
めでたし、めでたし。そう言ってしまいたくなるくらい、今日という日は愉悦に満ちていた。
後書き。というか、キャラ解説。
総武高校、2年F組。
京都で生まれ、埼玉で数年過ごし、今は千葉に在住。割としょうもない訳があって妹と二人暮らし。
京都時代からの親友が一人いる以外、友達の類はいない(と、自称している)。
友達という関係性へのハードル、イメージが異常に高く、多少仲が良い程度では友達という枠に入れられないだけで、基準をノーマルな人間に合わせるとむしろ友達は多い方の人間。
重度の活字中毒者であり、最近は不可思議可思議というペンネームで自ら小説を書くようになった。読書時間は減ったが、家の本の量が増えるペースはむしろ増したとか。
自他ともに認めるバイセクシャルで、好みのタイプは『男らしい女性』『女々しい男』と、小賢しい趣味をしている。
髪を黒、茶、金で小汚い縞模様のように染めていて、お世辞にも綺麗とは言えない。そんな有様にしたのは、本人曰く、モテ防止。実際、中学時代はモテたらしいが、当時の彼女を知る人間に惚れていたものはいない。
かなりの方向音痴で、よく行方不明になることから、妹にはGPS機能が付いていて追跡のできる腕時計をつけての外出を厳しく言い付けられている。
総武高等学校 2年F組
――あなたの信条を教えてください。
生涯不変。
――卒業アルバム、将来の夢なんて書いた?
卒アル黒塗り出禁の刑に処されてたから、聖人君子って書いて塗り潰させたわね、たしか。小学生の時はアイアンマンだったはず。
――将来のために今努力していることは?
婚活。
――先生からのコメント。
あなたらしい不敵で無敵で素敵な信条、私はとっても心配です。
中学生の時にあなたは一体何をしたんですか? 何をしたらそんな残酷なペナルティを課せられるのですか?
平塚先生はノーマルです。彼女の人生の幸福を祈るなら、速やかに諦めましょう。それがきっとあなたのためにもなりますから。