神を輓きずりし者達よ   作:Y-Romi | 和井 火戸見

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どんな素晴らしい設定のキャラでも、出しどころというのは見誤ると途端に印象が悪くなったり、変に目立ったり目立たなかったり。そういうのは慎重に考えていかないといけないんですよね。
・・・前書きにこんなことを書くということは、ねぇ?

あとこの回シンプルに出来が悪い。要修正。


第十一話 「洗練されし敗北」

7月も終わり、灼熱の8月がやってきた。夏本番、といった感じだ。

 

「お、思ったよりでかいかも。」

 

それにしても、なぜ花火なのだろう。しかもトレセンで。

 

「毎年やってるからねぇ。レース勝利おめでとうついでに、風物詩だから。」

 

銀製のライターをかっこよく回しながら、西高トレーナーは言った。花火でたばこの匂いがかき消される。

 

「んじゃあ、これ。」

 

「…ドラゴン花火。」

 

ノリノリだ。ばれたら怒られるのではないか、という恐怖に襲われながらも、私はドラゴン花火に火をつける。

煙の臭いとともに、目も眩むようなまばゆい光があたり一帯に広がる。きれいだ。

 

「にしても、ゴッド。調子いいじゃねぇか。」

 

「そうですかね?、いや、そうか。そうですね。」

 

あの後、2回協賛レースに出た。どちらも2着で、滑り出しは上々だった。勝てなかったのは少し悔しいが。

 

「ゴッドはこれからも協賛レースガンガン出るとして、ココロとサイレス。お前らはばんえい大賞典だ。」

 

ねずみ花火を5つ同時着火していたココロさんがこっちに来る。サイレスさんも手持ち花火をバケツに投げ込み来た。

 

「ばんえい大賞典、三冠の一角かー。燃えるよね。」

 

ココロさんはいつも通りだ。三冠だろうと臆さず進みそうだ。

 

「私は緊張するな。結構不安かも。」

 

「大丈夫だ我が妹よ。」

 

花火の燃えカスを処理しながら先輩が言う。

 

「自信を持ち、己を信頼し、決して侮らない。お前もいつも言ってるじゃないか。」

 

気合の入った声を聴いてサイレス先輩は笑う。大賞典は今月末。泣き言を言ってる場合ではないのだろう。

それにしても、今の3つ。さりげなく言ったが、結構大事なことなんじゃないか。

 

「…なるほど。」

 


 

「2周年記念協賛 カキツバタ杯。」

 

小雨の降る帯広。少し冷たい雨が肩にあたる。

西高トレーナーの作戦を一通り頭に叩き込んだ後、私は聞いた。

 

「あの、今日の1番人気のゼッケン3番の子って、何か知ってたりします?」

 

「ああ、エルドラドファクト。スハイルにカエデちゃんと同じタイミングで入ったらしいね。」

 

エルドラド、ファクト。かっこいい名前だ。中二心がくすぐられる。

 

「で、何か感じ取っちゃった感じ?」

 

「そうですね…、たぶん、油断は良くないです。」

 

カエデとはまた違う。今までの感覚だと、ウェルに近いか。「相手に勝ちたい」という感情ではなく、「レースに勝ちたい」という勝利の欲求。

 

「じゃあ、行ってきます。」

 

きっと私なら勝てる。羽織っていたジャージを脱ぎ捨て、私はパドックに向かった。

 


 

「さあ帯広レース場第6R、水分量は2.8%ということで、だいぶ走りやすくなっています。」

 

「これだけ湿っていると、レースの展開も早そうですね。仕掛けどころが注目になりそうです。」

 

ゲートに入り、少し横を見る。ゼッケン3番、1番人気、エルドラドファクト。目つきが鋭い。睨まれたら固まってしまいそうだ。

 

「さあ、2周年記念協賛カキツバタ杯、今、スタートを切りました!」

 

そりの重量が重くなった。たった10キロだが、結構な差だ。しんどい。

 

「さあゼッケン5番ビオラビーズ先行したぞ!、そうとう速いペースだ!」

 

前に出るのも悪手ではない。だが、周りを警戒して少し様子を見る必要がある。だとしたら

 

「3番手っ‼」

 

全力を十分に出しながら、直線に入る。

霧雨が顔にあたり思わず目をつむる。風が変わった。

 

「さあ第二障害、続々と後続のウマ娘が追いついていく!」

 

横一線に並んだ。エルドラドとやらもいる。誰が最初だ。

 

「おおっと!エルドラドファクト突っ込んだぞ!」

 

早っ、そして速っ!?

何だこいつ、あの溜め時間でここまで行くか。

 

「だが負けてない‼」

 

私が声をあげながら障害を上ると、そいつはこっちを見た。

 

「……、っは」

 

笑った。鼻で笑ったぞこいつ。

途端に、足ががくんと下がるのを感じる。エネルギー切れか。

 

いや、まだ。まだ残っている。

 

「エルドラドファクト!ゼッケン3番エルドラドファクトだ!」

 

悠々と障害を越え、そいつの背中は遠ざかっていく。

 

「ちくしょう…、ちくしょうっ。」

 

障害は越えられる。だが、このままいって追いつける気がしない。

もう残っていない。負けるのか。私が。

 

「諦めんなよゴッドー‼‼」

 

トレーナーの声が耳に入る。

…だが、気持ちは変わらない。

 

「…ッチ。」

 

心が折れる、とはこういうことなのか。体のエネルギーが溶けていく感覚。

必死に足を前に出そうとするが、いつものように動かない。

 

「ゴール!エルドラドファクト今ゴールイン!、2着はビオラビーズ、3着は———」

 

頬を伝っているのは、雨か。私の涙か。

 


 

「…負けました」

 

「ああ、見たらわかる。」

 

6着。目も当てられないほどの惨敗だ。

 

「…今日の敗因を言ってみろ。」

 

トレーナーはまったく笑わず、紙たばこを咥えている。

 

「障害を登るときに焦りまし「違う。」

 

途中で遮られ、私は思わず言葉をつぐむ。体が硬直するのを感じる。

 

「お前、諦めたろ。」

 

「…ッ。」

 

表情とかで分かるものだろうか。こんなにもばれていたとは。

 

「敗因は2つ。自分の力を正しく理解しなかったこと。自分の実力を信用しなかったこと。」

 

トレーナーはタバコを灰皿に入れ、私の目をじっと見て言った。

 

「…苦汁を飲み、自分で考え、二度と負けないと誓う。私の言っていることが分かるな?」

 

「…はい。」

 

二度と負けたくない。吐くほどに悔しいこの感情を、もう二度と味わいたくない。

 

西高トレーナーは私をもう一度見た後、少し笑い、言った。

 

「帰るぞ。」

 


 

「いっつも思うけど西高―。お前負けたやつに対して冷たくないか?」

 

「あ、それ思います。さっきゴッドさんすごい落ち込んでました。」

 

トレーナー室に入るなり文句を言われる。何でこいつらここを自分の部屋みたいに使ってるんだ。

 

「もっとこう、労わってやれよ。お前らしくないぜ?」

 

バレットの言葉を聞きながら、私は椅子に座る。

 

「…『よく戦った』とか『良いレースだった』とか言って負けた記憶を和らげることは簡単。だけど、よく戦おうと負けた事実は変わらないし、良いレースだったとしても自分が負けたレースに違いはない。」

 

メンバーは私の話を無言で聞いている。

 

「私たちトレーナーの役目は心のケアじゃなくて、「勝たせる」ことなんだ。二度と負けないように、具体的なアドバイスと、負けた事実を心に刻み込ませなきゃいけない。それができない奴は、人としては及第点かもしれないが、ウマ娘のトレーナーとしては失格だ。」

 

恩師の教え。今まで幾度となく敗北したウマ娘を見てきた。敗北を心に刻み込み、二度と負けないと強く願うものと、敗北を忘れるために勝利を求める者には大きく、決定的な差が存在する。だからこそ、敗北時にかけるべき言葉は甘い言葉ではなく、激励なのだ。

 

「なるほどなぁ。まあ考えがあってならいいか。」

 

バレットが言う。周りもなんとなく納得した感じだ。

 

「まあ、ゴッドなら大丈夫。アイツは強いから。」

 

私の言葉にみんな頷く。きっとアイツなら立ち直るということを全員信じている。

 


 

夏本番。さすがに暑い。ダートのコースに汗が落ちる。

 

「おーい、休憩ー。」

 

あのレース以降、少し調子が悪い。なにかやってしまっただろうか。どうにも集中できないのだ。

ラルバが私にお茶を渡しながら言う。

 

「あ、そういえば。夏合宿だね。」

 

「え、ああ。そういえばそうだね。」

 

海か山どっちがいい?と聞かれた。なぜ選択式なのかと疑問がわいたが、とりあえず海と答えておいた。

 

「海で泳ぐのかなぁ。でもこの学校プールないよね。」

 

「配管凍るから、仕方ないんじゃない?」

 

私たちは泳ぎの経験が少ないから海に行ってどうするのだろうか。

そんなことを思っているとトレーナーがこっちに来た。

 

「今週末の合宿、スハイルと合同になった。」

 

周りから驚きの声が上がる。

 

「ど、どうしてそうなったんですか?」

 

「りっちゃんがうちらも行っていい?って言ったから。」

 

ちくしょう、特に何も考えず言いやがったな。

私が嘆いていると、西高トレーナーは言った。

 

「きっと驚くぞー。いい刺激になるさ。」

 

…不安だ。すさまじく不安だ。私はため息をつきながら、空を見上げた。

雲は相変わらず、ゆっくりと動いている、雨が降るのはまだ先だろう。

 




設定紹介Q&A

Q.登場するウマ娘の名前ってどこから決めてるの?

A.由来ありの適当

リアルのばんえい馬の名前も比較的いろいろあるので(チョコレートリリーとかモンスターキングとか)なにがあってもいいだろう、と思い決めてます。特にチームのメンバー。語呂で決めてる節がある。ただ面倒になったので、今後出てくるキャラクターは十中八九、現実のばんえい馬の名前をアレンジして作ってます。つっても出てくるのは40話より後ですが。
ただジュニア3人衆にはそれぞれ由来があったり。「ドラフター」ではなく「ドラッガー」なのにもちゃんと理由があるんですよ?
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