神を輓きずりし者達よ   作:Y-Romi | 和井 火戸見

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引き伸ばしすぎた感、ある。読み直すとやはりいろいろ分かるものですねぇ。


第十四話 「成長してるのは何も主人公だけじゃない」

「あー、今頃2人は海辺でキャッキャウフフしてるんだろうなぁ・・・」

 

見渡す限りの山、山、山。青々とした緑と、石が転がっている斜面。青春溢れる夏休みは何処だろうか。

 

「おーい、ウェルー! ペース落ちてるよー!」

 

「はいはい! 了解しましたよ!」

 

夏合宿in十勝岳

 

「え、山なんですか?」

 

「うん。山だよ」

 

夏合宿の2週間前、早川トレーナーは私に言った。

 

「スハイルとサドルは海なのに」

 

「よそはよそ、うちはうちです。我々チームエニフは十勝岳への合宿」

 

すさまじくガッカリしたアピールをするも、トレーナーは足早に行ってしまった。

 

「・・・そんなに気を落とすことでもない」

 

「あ、エゾ会長。お疲れ様です」

 

後ろに立っていたのはエゾオウ会長。ジャージ姿だ。こんな風に来るのは珍しい。

 

「トレーニングの見回りですか?」

 

「いや、暇だったから」

 

なんとも言えない返事をされて私が返答に困っていると、会長は苦笑いを浮かべながら言った。

 

「合宿、十勝岳だってね。良いじゃないか」

 

「会長は山派ですか?」

 

私は大きく伸びをしながら聞いた。タイヤ付のベルトがカチャカチャとなる。

 

「ああ。山派というよりも、私は泳げないんだ。経験がないのではなく、練習した上で泳げなかった」

 

そんな悲し気に言う程の事でもないだろう。別に珍しい事でもない。

 

「まあでも山も良いですよね。空気がきれいだし」

 

「ああ、羨ましいな、十勝岳に登山か・・・」

 

エゾ会長は腕を組み、考えるそぶりを見せている。何を思っているのだろうか。

 

「あの、会長?」

 

「・・・よし、決めた。その合宿、私も同行しよう」

 

「!?」

 

急すぎる。もっと段取りとかはないのか。

 

「いや、え、その。ありがたいんですけど」

 

私が返事をする間もなく、会長は早川トレーナーの方に走っていった。

 

「早川トレーナー! 少しお話が!」

 

 

——こんな事があって今に至る。

 


 

「あの会長、何で私なんかに構ってくれるんですか?」

 

「え、君を気に入ったから」

 

もうちょっと詳しく聞きたい。この人はいつも言葉が一言少ない。

 

「そうだなぁ、昔の私に似てるってのが一番の理由だが。まあ縁と言うやつだよ。たぶん」

 

「・・・そうですか」

 

真面目できっちりした人に見せかけて、この人は実はいろいろと雑なのだ。業務は鬼神の如き速度でこなすそうなのだが。

 

「フフ、君も変わったな」

 

会長は水を飲みながら言う。

 

「そうですか、筋肉はついてきたつもりですけど」

 

会長は笑いながらそれを否定した。

 

「心の話さ。前、初めて君と会った時。君の心はセメントのような、無機質で、不定形だった。今は良い感じに余裕が出来ている。良い笑顔で笑うようになったじゃないか」

 

「へへ、ありがとうございます」

 

急にこういうことを言い出すから、この人は。

私は大きく伸びをして、カロリーメイトを胃に収めた。

 

「さて、ウェルミングス。あと少しで頂上だ。頑張ろう」

 

「あ、はい」

 

私はアンクルウェイトを足にしっかりと付け、土を踏みしめる。残り300mといったところだ。

 

「・・・きれいだな」

 

澄んだ空気、一面の青空。会長の背中が見える。

 

私は鮮やか過ぎるその景色を、しっかりと目に刻み込んだ。

 

1じかんご

 

「やっと着いた。頂上」

 

「いやあ、奇麗だね。どこまでも山だ」

 

息は上がっていないが、とにかく汗をかいた。喉は凄い乾くし、足は少しずつ重くなる。

でも、山の頂上はそれらを吹き飛ばしてくれる。ある種の魔法だろう。

 

「山も良いだろう?」

 

「・・・ですね。海にも負けない感じです」

 

少し遅れて、早川トレーナーが到着する。

 

「み、みんな元気だね・・・」

 

先輩の一人がトレーナーに水を渡し、声をかける。

 

「ほら、景色。きれいですよ」

 

「おお、すごい。絶景だね」

 

トレーナーは息を整え、スマホを構える。

 

「あ、写真。忘れてた」

 

私はバッグから1眼レフカメラを取り出す。

広い広い北海道の中でもトップで美しいであろう場所だ。撮っておくに越したことはない。

 

「・・・会長、写ってください」

 

「ええ? 何で?」

 

「後で私と会長のツーショットも撮ります」

 

「ええ・・・?」

 


 

「で、これがその時の写真」

 

「すごい! めっちゃきれい!」

 

食堂で、二人に写真を見せる。良い反応だ。

 

「にしても、会長の笑顔って初めて見たかも」

 

「ああ、確かに」

 

「え、そうなの?」

 

私は普段からあの人の笑った顔をよく見てるから分からないが、そんな物なのだろうか。

確かに一見すると気難しそうな人かもしれない。関わってみないと分からないことも結構あるのか。

 

「・・・で、二人の合宿はどうだった?」

 

私がそう聞くと、二人はブルブルと震え始めた。

 

「え、どうしたの?」

 

カエデがゆっくりと、スマホの画面を見せてきた。

 

「・・・これ、夜の写真」

 

畳の部屋の中で、暗い廊下の写る画面、布団に籠るメンバーと、ウッキウキで画面に食らいつくメンバー。

 

「どういう状況?」

 

ゴッドがゆっくりと口を開いた。

 

「毎日毎日寝るまえにホラー映画を一本・・・。洋画も邦画も韓国映画も、余すことなく全部見せられた」

 

私が困惑しながらスマホを返し、緑茶をすする。

 

「・・・練習とかの話が聞きたかったんだけど」

 

「ああ、そっちね。良かった」

 

普通そっちだろう、私はそんなことを思いながら二人の話を聞いた。

新しいライバルのこと、何となく吹っ切れたこと、青雲賞のこと。

 

「あ、そうだ。聞きたかったんだけどさ。二人にとってプライドって何?」

 

ゴッドがおもむろに言う。私とカエデは無言のまま少し考えた。

 

「私は「誇り」かなぁ。尊厳と言うか。何というか」

 

カエデがゆっくりと口を開いた。彼女らしいと言えば彼女らしい。こう見えてすさまじく負けず嫌いなのだ。

 

「私は・・・、言い方は悪いけど「思い上がり」かな」

 

「それはどういう?」

 

ストローで紅茶をすすりながらカエデが聞く。私は少し考えた後に続けた。

 

「自分の力はもっと上のはずって決めつけられる思い上がりと、それ故の自信。勝負に勝つ上でプライドが無いと、自信なんて持てないよね」

 

私の答えを聞いた二人は「なるほど」と呟いた。

 

「あ、もう時間だ。じゃあまた」

 

「あ、またねー」

 

「ばいばーい」

 

 

—私のいなくなった食堂で、二人は言う。

 

「・・・ウェル、少し変わったよね」

 

「・・・うん。あんなに柔らかく笑うの初めて見た」

 




設定紹介Q&A

Q.ウェルミングスについて教えて

A.いいでしょう。

「ウェルミングス」
誕生日:5月5日
身長:204cm
中等部ジュニア級
好きな漫画「ドリフターズ」
好きな映画「小さな独裁者」
好きな食べ物「揚げ餃子」
好きな人のタイプ「かっこいい人、ガタイがいいと尚良し」

メモ:幼い時、中央のレース見たさにひとりで札幌競馬場に行ってブチ切れられたことがある。オーバーワーク常習犯。こぞって背が高いばんえいウマ娘の中でも、抜けてデカい。いろいろデカい。
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