常夜のロストラボのみんなにも幸せになってほしかったお話。

アナザーエデンの小説がめちゃめちゃ少なかったので書いてみました。
初投稿ですがよろしくお願いいたします。

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はじめまして。

アナザーエデンの小説が読みたかったので自分で書きました。
よろしければお付き合いください。


”お父様”の決意

 もしもの話をしよう。

 

 手足の爪をすべて剥がす代わりに、自由に空を飛べるようにしてあげよう……そう言われたら、貴方はどうする? 

 この質問ならその程度でいいなら! と言う人も、冗談じゃないという人も、どちらもいるのではないだろうか。

 ひょっとすると、この内容ならば前者のほうが多いかもしれない。

 

 

 

 絶対にやめたほうがいい、と断言しよう。

 なぜ断言できるのか? 

 それはもちろん”実際に体験したから”、である。

 

 

 

 少し、話を変えよう。

 

 

 私は転生者、というやつだ。

 3つくらいの時にそのことを認識し、同時に自分がアナザーエデンの世界にいることを理解した。

 アナザーエデンの世界であると確信したのは、私の暮らす施設を管理しているのが『KMS社』であったことと、今の年が”AD1020年”であるということである。

 技術だってやけに発展していた。毎日行う身体情報の管理はよくわからない光を一瞬当てられるだけで完了するし、いつも寝ているベットなんて常に空中に浮いている浮遊式のものだ。

 流石にこれだけ要素が揃えば、アナザーエデンの世界であることは間違いないと確信できるだろう。 

 そのときは非常に興奮したし、喜んだものだ。監視ビットが極度の興奮を察知して警報をならす程度には喜んだ。

 しかしながら、非常にかつ致命的に残念なことがあった。それは今がAD1020年ということである。

 アルドたちが冒険をするのはAD1100年からだ。だから不思議な格好をした剣士の噂はエルジオンでは全く聞かない。エルジオンの司政官はあのおじさんではなかったし、イシャール堂なんて存在もしていなかった。

 80年も過去の割には自分が知っているAD1100年よりも技術が発展しているのだろうか、と思わなくもなかったが自分の気の所為だとその時は流すことにした。

 そんなことよりも、このままだと私はアルドたちに会う前に死んでしまう。死にはせずともヨボヨボのお爺さんである。それでは困る。私はアルドと共に冒険してみたい。過去の世界で恐竜を見てみたい。AD300年の東方で猫神神社で参拝だってしたい。そのためにはあと100年後でも最低限戦えるくらいでなくては困るのだ。

 

 はて、どうしたものかと困り果てた。いくら技術が発展したエルジオンであっても寿命を何倍にもしろ、だなんて都合の良いことはができる訳がないだろう。

 

 ほとほと困り果てた私は施設の管理長に相談した。少しだけ驚かれて、その後しぶしぶといった様子で提案された。

 

『ちょうどそういう実験があるのだけれど……、あなたにはおすすめしないわよ、C-2003?』

 

 ああ、なるほどと理解した。

 どうやら相当に成功率の低い実験らしい。

 C-2003と呼ばれた私は、自分で言うのもなんだがこの施設でも相当優秀な部類らしく扱いが非常に良かった。管理長としては比較的成功する可能性が高いプロジェクトの被検体としたほうが自分の成果になると考えているのだろう。しかし、”C-2003”なんて名前をつけるKMS社にもとってつけたような人道はあるのか、本人からの志願は聞き入れなければならない仕組みらしい。好きな地獄は選ばさせてくれるようだ。

 

 

 

 結局、私はそのプロジェクトに参加した。

 管理長からは相当説得されたが、最後には数え切れない程の罵倒と共に許可してくれる事となった。

 今思えば、応じるべきだった。

 

 

 

 

 そこから先は本当に地獄だった。いや、地獄なんて生ぬるいものではなかった。

 一週間もたたないうちにネームドに会いたいなんて思いは消し飛んで、やめてくれと殺してくれと泣きわめいた。もちろんやめてくれるわけなどなく、ただただ自分を呪った。転生した自分は特別なんだと、どうにかなると安易に考えていた自分を心の底から呪った。

 

 

 

 結果としてC-2003改め”セフィロト”が完成したのはAD1054年のことである。その半分以上は昏睡していたり気絶していたりで、記憶などほとんどないのだが。……実験開始から2ヶ月目に一年以上昏睡状態になった時に廃棄してでもしてくれればよかったのに。後々になって知ったのだか、本来は3日で死ぬ予定だったらしい。ふざけた話である。

 

 地獄の成果というべきか、私はKMS社の最高傑作と呼ばれるモノになった。

 はじめの10年は兵器として利用されるばかりだったが、研究面でも成果を残していくうちに少しずつ社内での地位を上げていった。その道中で研究対象風情がと妬まれ、消してやろうという動きも多々あった。

 しかし誰のお陰かわからないが、この世界に私に1対1で適うものなど存在しない。20代後半の全盛期から年もとらない不老の身体である。暗殺などされるはずもなかった。

 

 その結果、AD1090年の今ではKMS社でも5本の指に入る地位におり、あるプロジェクトの総責任者をする程にまで至ったのだ。

 

 

 さて、唐突に自分の人生について振り返ったわけだが、人はどのような時に自分を振り返りたくなるのだろう? 

 

 例えば学校を卒業するときだったり。

 結婚するときだったり。

 子供が生まれたときだったり。

 人生を大きく変える出来事が訪れたときに自身を振り返るものではないだろうか。

 

 つまり私にも、100年近く生きている私にも人生の分岐点がやってきた。

 

「……セフィロト様! セフィロト様!」

「そう叫ぶな」

 

 現実逃避は終わりにしよう。

 目前で私の名を呼ぶ部下に小さく返事をする。

 

「すまん。少し、呆けた」

「いえ、仕方のないことです」

 

 部下の声は、幾分震えているように聞こえた。

 当然かもしれない。ある日唐突に余命宣言をされたようなものなのだ。

 恐怖しないほうがおかしいだろう。

 

「……ふー」

 

 一つ、大きくため息をする。

 薄々、そうではないかと思っていたのだ。

 具体的には数年前から始まったKMS社と枢機院の戦争のあたりからもしかしたら、と。

 

「可能性がある……ではないんだな? 確実なのだな?」

「……はい」

 

 

 話は変わるが、パラレルワールドというものをご存知だろうか? 平行世界、とも呼ばれるモノだ。

 自分が生きている現実とは別のもう一つの現実があるという考えだ。

 その別の現実では自分が生きている現実とは様々な違いがある。たとえば、自分が生きている世界の総理大臣がパラレルワールドだと大犯罪者だったりする。逆に自分の世界の犯罪者がパラレルでは英雄になっている可能性だってある。似てはいるが確かに違う世界。それがパラレルワールドなのだ。

 

 そのパラレルワールドがアナザーエデンにはある法則で存在している。

 その法則は”一本の木”に例えるとわかりやすいだろう。

 

 まず一つすべての基準となる世界がある。木の部位で表現するならば、幹の部分だ。

 その幹の世界を元として葉っぱのようにパラレルワールドが存在する。幹に近いほど世界の違いは小さい。先程の例であげるならば、幹の世界では総理大臣の男が、葉の世界ではどこかの県知事だったくらいの僅かな違いだ。逆に、幹から離れれば離れるほど違いは大きくなっていく。

 

 ここで極端な例を出すが2022年に宇宙人が急にやってきて、人類が滅ぼされてしまった葉の世界があるとしよう。その世界はもはや幹の世界のパラレル(平行)と言えるのだろうか? 似ている部分など一つもなくない。

 このような幹の世界から離れすぎた葉の世界はどうなるのだろう? 

 

 

 

 ──消える……否、消されるのだ。新たな幹の世界になることはない。

 葉の世界として正しくない、と。剪定されるともいえる。

 

 このパラレルワールドのことを時層と言い……私のいるこの世界は幹の時層ではない。

 幹の時層はアナザーエデンの主人公、アルドが存在する世界だ。

 

 私の時層にはクロノス博士は存在したが、彼に子供は生まれなかった。

 フィーネもエデンも、キロスもいなかったのだ。故に、葉の世界であることは理解していたが……

 無数にある時層のなかで寄りにも寄って”常夜の時層””……原作で消滅した時層に生まれるとは。

 全く、流石に運がなさすぎるのではないだろうか。

 

「消えるのだな。この世界は」

「はい……我々の時層は間違いなく、剪定の対象となります」

「……そうか」

 

 少しの、沈黙。

 

 正直な話、私一人ならばどうだって良いと思っていた。

 もう十分に生きた。この世界はKMS社が枢機院に勝利する世界だが、そもそもKMS社が支配する世界など碌なものではない。技術の進歩に取り憑かれて、非人道的な研究に溺れていくのは目に見えている。

 そして最後には自滅するだろう。上層部が反発しあい、それぞれの”最高傑作”での殺し合いのスタートである。

 

 それを防ぐため……いや、少し緩和する程度しか出来てはいないが、そのためにこの地位まで上り詰めたのだ。

 しかし、全て消えるのならばそれはそれで良いのかもしれないと思った。ゼロになってもマイナスにはならないのだから。

 

「……いかが、いたしますか」

「最上層部に招集を。場所は私の私邸、一週間後の正午だ。絶対に参加するようにと念押ししてくれ。レオの欠席も許さん。渋るようならば私の名を使え」

「一週間後? 流石に長すぎではありませんか?」

「その期間で私の方である程度の見立てと対策をつける。そのほうが話を広がりが早いだろう」

「承知いたしました」

 

「この事案を知っている者は?」

「私と私の助手の3名のみです」

「良し。決してその情報は公開するな。もし漏れた場合、全員極刑になると心得よ」

「はい」

 

 だが、私はもう一人ではないのだ。

 愛すべき、守るべき子ども達がいる。

 

 彼らは報われるべきだ。

 幹の世界の彼らのように、幸せな生活を送る権利がある。

 

「……心配するな。この世界を消滅などさせん」

「……はっ! よろしくお願いいたします!!」

 

 私の言葉を聞いた部下が勢いよく扉から出ていった。君にむけて言ったわけではないのだが……幾分元気が出たのならば良しとしよう。

 

 

 

 残された時間は、10年。

 この期間で我々の時層が生き残ることができるシナリオを考え、時相を超えられる装置を作り、実行に移す。枢機院とのケリもつけなくてはならない。

 ……足りない。あまりにも。

 

 だが、やる。

 やってみせる。

 そう、やるしかない。

 

「……大丈夫だ」

 

 彼らがラヴィアン・ローズのホールケーキを笑って囲める世界を目指して。

 そのために、私は生まれてきたのだろうから。

 

 

 

 




あんまり需要ないかもしれませんが…

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