兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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180 炎のゴブレット編終了!

 

 

 それからシリウスとリーマスの扱いについての話が終わったあと、ちょうど終業のチャイムがなった。

 バタバタと走りくる足音が聞こえ、医務室を出ていくダンブルドアと入れ替わりに入ってきたのはハリーであり、ハリーは俺が起きている事に気づくと「起きたんだね!」と声を弾ませ駆け寄った。

 

 その後にセドリックやフレッドとジョージ、ドラコ、ハーマイオニーとロンが順番に現れ嬉しそうに俺のベッド周りに集まった。

 

 

 あの日、あの時、何があったのかは、次の日の朝食でダンブルドアから皆に説明があったらしい。ハリーと俺は辛い試練を乗り越えたから、その事には触れないようにそっとしておくように。と、諭したようだ。

 そのため、大多数の生徒はハリーと廊下で会ってもあの墓場で本当は何があったのか、ムーディに化ていたクラウチはどんな人物だったのか、など興味本位で聞く事はなかった。

 

 ただ、ハリーが何度も聞かれたのは「ノアはいつ目覚めるのか」という事だったようだ。

 

 

 俺が退院する時には、セドリックから周りの状況や変化を聞いていて「覚悟してね」と、割と真剣な顔で言われた。

 

 

 実際、退院したけど──セドリックと廊下を歩いていると、すれ違った生徒たちはみな献身的な教徒のように指を組み目を伏せていた。

 

 

「……デジャビュを感じる……ってか前よりも酷い気がする……」

「そりゃあ……この学校での元々の人気と、あの奇跡を見たらみんな陶酔するでしょ。ノア教の信者、倍増したみたいだよ」

 

 

 ファンクラブよりやばい、俺の狂信者ばかりのアレか。……まあ、俺を神と崇めるだけで悪いことしないなら、別にいいんだけど。

 

 

「ノア様」「歩いてらっしゃる……」「以前より、神々しい……」とかいう囁きを聞きながら、寮へ戻る。

 うーん、やっぱ体はダル重い。あの命の水──特性賢者の石、もっと作らなきゃだなぁ。

 

 

 部屋に入れば、俺のベッドや机の上に医務室を思い出させる貢物の山ができていた。はた、と固まり「そうだった」とダンブルドアが言っていた事を思い出す。

 

 

「ここにあるのは、殆ど僕たちからのだよ。僕のはこれ、新作のチョコが出てたから」

 

 

 セドリックは机の上にある煌びやかな包装紙に包まれた箱を手に取り、軽く振った。よく見てみれば、差出人のカードの名前は見慣れた物ばかりで、そういうのを選り分けてくれたんだろう。

 

 

「ありがとう。一個食べようかなー」

 

 

 ベッドに腰掛ければ、セドリックはすぐに俺に渡してくれた。包装紙をやぶり、箱を開ければ中はチョコ──というより、ビー玉みたいなものがたくさん並んでる。魔法界のお菓子ってどうやって作ってるのかわからないものが多いよな……透明度高いチョコなんて初めて見た。

 

 口の中に赤いビー玉に似たチョコを放り込む。……うん、チョコだ。カカオの味がしっかりするし、中からベリーっぽいジャムがとろりと出ておいしい。

 

 

「それで……大丈夫なの?」

 

 

 セドリックは俺の隣に座り、箱の中から水色のビー玉チョコを掴んで食べながら聞いた。

 なんのことかわからず、「んー?」と首を傾げれば、セドリックは眉を寄せ口をもごもごと動かしながら「死の呪文」と短く答える。

 

 

「その……ダンブルドアは死を支払ったって……」

 

 

 セドリックは真剣な目で俺を見る。 

 うーん、まあ、セドリックには伝えてもいいか。無闇に広める奴じゃないし、セブルスと魔法の研究してる事は、セドリックは知ってるし……内容までは伝えてないけど。

 

 

「レイブンクローの魔導書に、魂を分離する方法が書いてあったんだ」

「……魂?」

 

 

 セドリックは無意識か、自分の胸の辺りの服を掴んだ。魂なんて分離できるのか、とその目が訴えている。

 

 

「そう、魂。セブルスとの研究で、魂の輪郭や形は掴めてたんだ。だから魂分離して、大元の部分に保護魔法かけておいた。そうしたら、死の呪文を喰らったとしても分離した方が消滅するだけで、死ぬことはない」

 

 

 簡潔に説明する。

 セドリックは数秒沈黙していたけれど、みるみるうちに目を見開き、「それ、大丈夫なの?」と囁いた。

 

 

「何回もするのはキツいかもな」

「……ち、違う。その、そんなことして……代償とか、後遺症とか──」

「疲れやすくなったかな、多分。今も眠い」

 

 

 チョコをもう一つ食べながら深刻になりすぎないように伝える。

 セドリックは不安そうに俺の顔を覗き込み、頭の先から足先まで視線でなぞった後「そういえば、顔色がいつもより悪いね」と心配そうに囁き、俺のいつもより血色の悪い手に触れた。

 

 

「うわ! つ、冷た──これも、後遺症?」

「そんな感じ」

 

 

 セドリックの手がかなり熱く感じる。

 この前のダンスパーティで踊った時は、俺たちの体温に差はなかったはずだけど、こうして対象相手があると俺の手の冷えが際立つ。

 

 

「まあ、でも大丈夫。疲れとか眠気は、夏休み中にどうにかできるはずだし」

「……あの、クィレルが飲ませていた薬?」

「そうそれ。素材がなかなか用意できなくて、今手元にないんだよ」

 

 

 セドリックは納得したように頷く。

 そして、一瞬怪訝な顔をして目を伏せる。俺の手を両手で包み込み、手を見ながらじっと考え込んでいた。

 数秒後、セドリックは視線を上げる。

 

 

「……でも、どうしてクィレルはそんな薬を用意していたんだい? あの時、ノアが魔力切れになるってわかっていたみたいだ──そうだ、リーマスとシリウスはペティグリューが空に映ったとき、すぐにいなくなった、混乱もしないで……あの後、すぐにペティグリューの学生時代の写真とか、鼠のアニメーガスとかの情報が出回って、リーマスは、医務室に来なかった──」

 

 

 言葉尻が窄んでいく。

 最後、セドリックはぱくぱくと声もなく口を開閉させる。多分、俺の表情を見て言葉を出せなくなったんだろう。

 

 

「──まさか、ノア、きみは……どこまで?」

 

 

 “どこまで読んでいたのか”──その言葉は最後まで続かない。

 俺はセドリックの暖かい手を握り返す。

 

 セドリックが生きている。

 生きて、俺の隣にいる。

 

 終わるはずだった運命が続き、世界が変わった。

 

 

「……さあ?」

 

 

 セドリックは驚愕と、呆気に取られたような顔をした。色んなことを考えたのだろう。ほんの少しだけ、息を呑んで。

 

 

「生きていたんだ、それで十分だろ?」

「それは──そう、だけど……」

 

 

 セドリックが生きている。

 そのためになら、どんな代償だって払うつもりだ。

 

 セドリックは、「みんな生きていたんだから」と捉えたんだろうけど、その勘違いを訂正する気はなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 学年末パーティは、例年通りハッフルパフが優勝だった。——それに便乗して、俺の三校対抗試合の優勝にもきっちり触れられたせいか、いつもの宴より料理が明らかに豪華で、テーブルの上がやたら盛り上がっていた。

 

 そういえば、席にカルカロフとバグマンの姿がない。カルカロフは死喰い人で、ヴォルデモートの復活を察して逃げたんだっけ。バグマンは……何だったっけな。まあ、深刻な話じゃなかった気がする。たぶん。

 

 本物のムーディも大広間にはいたけれど、見るからに居心地が悪そうだった。誰かが声を掛けるたびに肩を跳ねさせ、視線だけが落ち着かない。十ヶ月近くトランクケースに監禁されていたから、神経が磨り減ったまま過敏になっていても、仕方がないかもな。

 

 

 宴が始まる前、ダンブルドアはいつもより低い声で生徒たちに「闇の脅威に気をつけよ。これからわれわれは困難な時を迎えようとしている。一丸となり、絆を持って立ち向かわなければ」と、忠告した。

 

 でも、それを何人が本気で受け取ったのかは、わからない。新聞をきちんと読み、魔法省の動向に気を配っている生徒は「もしかして」と察しているような複雑な表情をしていたが、大多数はそれほど深刻に捉えていなさそうだった。

 

 

 

 

 

 

 数日後。ホグワーツ特急に揺られながら、窓の向こうで遠ざかっていく城を眺めた。コンパートメントは俺とセドリックの二人きりで、俺たちは第三課題の事件にも、死喰い人にも触れず、取り留めのない話だけを選んで過ごした。

 

 キングズ・クロス駅に着くと、通路は降りる生徒たちの熱気と騒音で賑わっ似た。俺たちは人波が引くのを待ち、ゆっくりホームへ降りる。

 

 

 柵の向こう──人混みの向こうに、セドリックの両親がいた。

 セドリックを見つけた瞬間、二人の表情がふっとほどけ、手が上がる。セドリックも嬉しそうに笑って、大きく振り返した。

 

 

「ノア、夏休みに手紙送るね!」

「うん。そうだな。待ってる」

 

 

 セドリックは満足そうに頷いて、俺の肩をぽん、と叩いた。

 

 

「じゃあね!」

 

 

 そう言って手を振り、両親のほうへ駆けていく。

 

 俺は、その背中を見送った。

 セドリックを、両親の元に帰すことができた。

 

 そこでようやく、肩の奥に居座っていた力が抜けるのがわかった。

 この日を、どれだけ待っていて、どんなに昔から備えていたか──セドリックは知らない。知らないままで、いいと思う。

 

 これから先、セドリックが生きていることがどんな影響を呼ぶのかは、正直わからない。

 でも、クィレルが生きていても世界は普通に、俺の予想通り続いた。──なら、きっと大丈夫だろう。そう思うことにした。

 

 俺は、柵の向こう側に静かに佇んでいるクィレルを見つけて、ゆっくりと歩き出した。

 

 

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