【助け】悪の組織の人質にならない方法【求む】   作:鷲野高山

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悪の組織の人質にならない方法

1:名無しの人質

というわけでヘルプミー

 

2:名無しの一般人

というわけで、じゃないが

 

3:名無しの一般人

あー、最近色々な組織が活発だもんねー

不安になるのもわかるわかる

 

4:名無しの一般人

そんなもんあるんなら、むしろこっちが教えてほしいわ

 

5:名無しの一般人

家から出るな

 

6:名無しの一般人

一生引き篭もってればいい

俺みたいに

 

7:名無しの一般人

よし、解決だな!

終わり!!

 

8:名無しの一般人

ニート最強?

 

9:名無しの一般人

俺は最強だった…?

 

10:名無しの人質

>>5

>>6

そういう現実的じゃないのは無しで

 

11:名無しの一般人

ほぅ……家から出ないのは現実的じゃないと?

 

12:名無しの一般人

これはやっちまいましたねぇ

 

13:名無しの一般人

イッチは俺を怒らせた

 

14:名無しの一般人

ニートさん、チッスチッス

 

15:名無しの一般人

働け

 

16:名無しの一般人

自宅警備員も立派な仕事だ

いつ悪の組織が家に来るかも分からないからな

 

17:名無しの一般人

俺はニートじゃない

引き篭もりだ

 

18:名無しの一般人

買い物で外出する機会のある俺には関係ない話だな!

 

19:名無しの一般人

違う、俺は奴らに見つからないために隠れているだけだ!

 

20:名無しの一般人

中二病が紛れてて草

 

21:名無しの一般人

一応話を戻すと、現実問題、そんな方法なくないか?

それこそ、気を付けるくらいしかできないぞ

 

22:名無しの一般人

諦めろ、ただそれだけだ

 

23:名無しの一般人

あ、でも、悪の組織でも「ブラック・マーベラス」のアンフェア様の人質にならなってもいい

むしろなりたい

 

24:名無しの一般人

わかるわー

是非ともあのおみ足で拘束されたい

踏みつけられたい

 

25:名無しの一般人

下僕になりたい悪の組織の幹部、女性部門ランキングの常連だからな、アンフェア様は!

 

26:名無しの一般人

「ブラック・マーベラス」なら、俺は断然ディザスター様だ

女性ながらあの腹筋、たまらんですたい

 

27:名無しの一般人

禿同

あの筋肉で締められたい

 

28:名無しの人質

ドMになれと言ってるなら、それもNGで

 

29:名無しの一般人

なんだよ、文句ばっかりだなイッチは

 

30:名無しの一般人

そうだよ

 

31:名無しの人質

今日も捕まってる身としては、そろそろ本当にどうにかしたい

 

32:名無しの一般人

ん?

 

33:名無しの一般人

んん?

 

34:名無しの一般人

はい?

 

35:名無しの一般人

え、今人質になってるってこと?

現在進行形で?

 

36:名無しの人質

はい

 

37:名無しの一般人

 

38:名無しの一般人

いや、はい、じゃないでしょそこは

 

39:名無しの一般人

ヤバすぎワロタ

 

40:名無しの一般人

嘘乙

 

41:名無しの一般人

本当に人質になってるなら、ここに書き込めるわけねーだろ

 

42:名無しの一般人

まじなら、証拠ハラデイ

書き込めるなら写真もとれるでしょ

 

43:名無しの一般人

そうだな、画像があるなら信じてやろう

そして真面目に考えてやる

 

44:名無しの人質

うーん、ちょっと聞いてみる

 

45:名無しの一般人

うん?

 

46:名無しの一般人

聞くって、誰に?

 

47:名無しの一般人

バカスwww

 

48:名無しの一般人

往生際が悪いぞ、諦めろイッチ

 

49:名無しの一般人

そうだ、そして俺を怒らせたことを謝罪しろ

 

50:名無しの一般人

ニートは黙ってろ

 

51:名無しの一般人

今北産業

 

52:名無しの一般人

イッチ

現在

人質の身?

 

53:名無しの一般人

おk、把握

 

54:名無しの一般人

ええ……

仮にもうなってるんだとしたら、ならない方法は意味なくないか

 

55:名無しの一般人

まあまあ

本当なら、ヒーロー組織に連絡してあげないと

 

56:名無しの人質

許可とれた

『XXX_XX1.jpg』

 

57:名無しの一般人

は?

 

58:名無しの一般人

ふぁっ!?

 

59:名無しの一般人

あらー

 

60:名無しの一般人

綺麗でえちちな衣装の女の人だこと

でもなんか、見たことあるような……

 

61:名無しの一般人

はぁーっ!?

お前これ、「ブラック・マーベラス」のアンフェア様じゃねーか!!

 

62:名無しの一般人

ブロマイド?

でも、こんなアングルの見たことないぞ

しかも超接写だし

 

63:名無しの一般人

待て待て、これ本当の本当にアンフェア様か?

 

64:名無しの一般人

ふっ、イッチよ

凡愚共の目はごまかせても、この俺の目はごまかせんぞ!

なぜなら、アンフェア様は常に、ゾクゾクとさせる氷のように冷たく笑う御方

こんな風に、満面の笑みを浮かべるなど有り得ぬっ!!

 

……でもコスプレだとしてもこれはこれでいい

本当にありがとうございます

 

65:名無しの一般人

なんだ、やっぱコスプレか

でもレベルが高いことには同意

 

66:名無しの一般人

ということは?

 

67:名無しの一般人

やっぱ釣りってことか

 

68:名無しの一般人

騙されかけたわ

でも、綺麗だからよしっ!

 

69:名無しの一般人

いや、待った

俺はイッチを信じるぞ

というか信じざるを得ん

 

70:名無しの一般人

どゆこと?

 

71:名無しの一般人

今入ってきた情報によると、悪の組織の一つである「ブラック・マーベラス」が動いているみたいですね

そして出てきたのは、幹部の一人であるアンフェア

 

72:名無しの一般人

>>71

様をつけろ、様を

 

73:名無しの一般人

た、たまたまでは……?

 

74:名無しの一般人

いや、俺は見た、というか今見てるぞ

商店街でアンフェアが一人の男子――中学生? いや、小学校高学年か?

を人質にしてて、その人質が携帯をいじってるのを

 

『XXX_XX2.jpg』

 

75:名無しの一般人

おおー、まじだ

 

76:名無しの一般人

人……質?

あれ、おかしいな

俺にはアンフェア様が後ろから抱きしめてるように見えるんだが

 

77:名無しの一般人

同じく

これは人質なのか?

 

78:名無しの人質

>>74

高校生です

 

79:名無しの一般人

そんなことはどうでもいい

イッチ、至急そこを代わるんだ!

その役目、引き受けてやるっ!!

 

80:名無しの一般人

そうだ、イッチはその場所を俺に譲ることだけを気にすればいい

恐いが、本当に恐いが人質としてこの身を差し出そう

 

81:名無しの人質

どうでもよくない

 

あ、ヒーローが来た

落ちます

 

82:名無しの一般人

待て、俺は見逃さなかったぞ!

さっき、今日もと言ったな!?

答えろ、イッチ!!

 

答えろぉぉおおっっ!!!!

 

 

 ――――

 

 

「――そこまでだっ!!」

 

 勇壮さを纏った、若い男の声が場に響き渡る。

 夕焼けに煌めく白銀のマントをはためかせ、同じく白を基調としたボディスーツと顔半分を覆うマスクを身につけたその出で立ちは――端的に表すのであれば、さながらヒーローのよう。

 業腹ながら、露出している口元と目だけでも、所謂恰好いい部類の顔立ちであると分かる。つまりなんちゃってイケメンヒーローである。

 いやまあ、ぶっちゃけると一応本物のヒーローであったりする。

 ヒーロー名を、ハートビート。ヒーロー組織『スターライト』に所属するヒーローの一人だ。

 

「ふんっ、現れましたわね」

 

 それに相対するは、露出度の高い漆黒の鎧のようなものを纏った女。

 こちらは、一応目元を隠すようなアクセサリーがあるものの、ほぼ顔は丸見え。

 吐き捨てるような声色と同じく冷笑を湛え、数十歩ほど先に立つ男――ヒーローを見やっている。

 業腹ながら、こちらもこちらでその容姿に関しては美しいものであると認めざるをえない。

 例えその中身が、ぶっとんでいると知っていようとも。

 

「…………」

 

 そして、そんな彼女に後ろから抱きつかれるように拘束されているのが、無言の僕である。

 恐らくは、生気のないような、死んだ目をしていることだろう。

 

 取り敢えず、この後に続く展開を予想し、先程まで書き込んでいた掲示板の画面を消して携帯端末をポケットの中にしまう。

 

「悪の組織ブラック・マーベラスの幹部、アンフェア。シュウ――い、いや、その人質を今すぐ解放するんだっ!!」

「お生憎様。解放しろと言われて、そうするとでも?」

「くっ、卑怯だぞ!」

「なんとでも喚きなさいな」

 

 ここまでは、まだまともな言葉の応酬だった。

 人質をとる悪の組織と、それを救出しようとするヒーロー。

 なんだったら、人質たる僕は震えて声が出ないか、諦めた絶望の表情を浮かべているか。或いは必死にヒーローに助けを求めるようにすれば、場面に一花添えられるのかもしれない。

 

 が、残念なことに僕は恐怖に震えるわけでも、生を諦めるわけでも、助けを懇願するわけでもない。

 なんでかって? なにせ、そんな状況にならないことを知っているから。

 加えて言うなら、そんなことをすればこの変態共に更なる燃料を与えかねない。

 いや、諦めているといえば諦めてはいる。ただし、それは――。

 

「だいたい、何度同じ人質をとれば気が済むんだ、この年増が! その人質の少年の気を引こうとしても、無駄だといい加減に気付くんだな。醜い執着は見苦しいぞ!」

「はぁ? わたくしのような、美しく年若い女を、言うに事欠いて年増と? ……大体、アナタの方こそ、毎度毎度わたくしの邪魔をして。同時に他に起きている事件には見向きもせず、率先してこの子を助けに来ているじゃありませんか。醜い執着を抱いているのはどちら?」

「そんなの、決まっている。その子には、お前のような年増ではなく、俺の方こそ相応しいっ!!」

「あらあら、無様ですわね。一般的に考えれば、男のアナタをこの子が受け入れることは到底ありえないのではなくて? ……そして、また年増呼ばわりしましたわね」

 

 この馬鹿みたいな流れにだが。

 

「「……潰すっ!!」」

 

 互いに煽り煽られ、激高してぶつかり合う二人を一瞥だけして、ようやく解放された僕は彼等に背中を向ける。

 激しい戦闘音が繰り広げられているが、そんなのは無視に限る。

 

「よぉ、坊主。また今回も(・・・)ご苦労なこったな」

「一般戦闘員の皆さんも、まあ……毎度毎度お疲れ様です」

 

 すると後ろにいるのは、ズラリと並んでいる黒スーツの集団。

 ブラック・マーベラスの一般戦闘員、幹部であるアンフェアの部下の皆さんだ。

 近くにいた、渋みがありつつも朗らかな声の男――ただし顔も黒い覆面で見えないが――と軽く言葉を交わし、ふぅと息を吐く。

 

「ご苦労だと思うなら、アンフェア(あの人)に、毎度毎度僕を人質にとるなって言ってくれませんかね?」

「わははは、悪いな。坊主を人質にしてる時のあの方は機嫌がいいんだ。大人しく人身御供になってくれや」

「せめて考える素振りぐらいしてくださいよ」

 

 ちくり、と言ってみるがにべもない即答。

 もっとも、はなから期待はしてなかったが。

 ちなみに、何度も人質になっているため彼等とはもはや顔馴染みであるともいえる。まあ、スーツで顔も覆ってるから顔は知らないんだけどね。

 

「それじゃあ、僕はこれで……」

「まあ、ちょいと待ちな」

 

 僕を人質としていた悪の組織の女幹部(アンフェア)は、まだヒーローと戦っている。

 つまりここにいる必要もないので、家に帰ろうとしたところ、呼び止められた。

 

 ガサガサッと音がしたかと思えば、百までとはいかなくもかなり数の多い彼等、アンフェア配下の一般戦闘員達が、その両手にビニール袋を提げている。

 

「……今回の作戦は成功したわけですか」

 

 見せつけられるようなその光景に、思わず僕は恨み節を放つ。

 悪の組織である彼等、ブラック・マーベラス。その幹部であるアンフェア及びその配下がこの商店街にいる理由。その作戦とはつまり――。

 

 ――商店街の全ての店の夕方の値引き品を買い占めること。

 

 それこそが悪の組織であるブラック・マーベラスの作戦にして。同時に、僕がこの商店街に来た目的でもある。

 とはいえ結局目的の物は買えず、加えて人質にされたという踏んだり蹴ったりな結果だ。

 後者はともかく、前者の部分には、あっちの方で遠巻きに見ている商店街の皆さん及び野次馬の一部にも僕と同種の恨みをもっている人間がいることは間違いない。だってほら、皆一様に憤りを浮かべて……。

 

 ……いや、よく見たら手を合わせて拝んでいる人もいるな。

 お店の制服を着ており、いくつか見覚えのある顔の彼らは、店員だったり店主だったり店の関係者の皆さんだ。

 よく考えれば、値引き品が売り切れたのだから殊、店主にとっては迎合すべきことに違いない。

 くっ、まさか商店街の皆さんも敵に回るとは。

 

 地味だが、非常に効果的な嫌がらせだ。流石悪の組織、やることがえげつない。人道に背いている。ちゃんとお金を払っているとはいえ、こんなことがあっていいのか。

 くそぅ、値引きの弁当や惣菜が……。

 

「で、作戦の成果を僕に見せつけて、なんなんです? 喧嘩売ってます?」

「まあ、落ち着けや。見てみろ、肉に魚に野菜、選り取り見取りだ」

「やっぱ喧嘩売ってるんですね? 一般人だからって舐めてると――」

「いや、好きなやつ選んで持って帰っていいぞ」

「……ブラック・マーベラス、最高っ!!」

 

 戦闘員さん達がどうぞどうぞと袋を差し出してきて、僕は狂喜してそれに飛びつくのだった。

 

 え? 悪の組織にしては、やることがバカげてる?

 本当に悪の組織がそんなことしているのかだって?

 

 残念ながら、誠に残念ながらこれは小芝居でも意味不明な劇でもなく、正真正銘、現実のできごと。

 悪の組織は一つ二つだけでなく全国各地に存在し、それに対抗するヒーロー組織も一つ二つどころではない。

 

 それはそうだろう。

 だって、この世界は、そんなバカみたいなゲームの世界の中なのだから。




掲示板形式の作品を書く練習も兼ねて投稿してみます。
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