悪の組織の総帥じゃが質問ある?
1:名無しの悪の総帥
なんでも聞くがよいぞ!!
■このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
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その日、悪の組織『肉壁☆お兄ちゃんズ』及びその下部組織である『萌壁☆お姉ちゃんズ』に所属する戦闘員達は困惑していた。
「……むぅ」
何故なら、組織の総帥たる男児がこれ以上ないほど不機嫌だったからである。
だが、朝から不機嫌だったわけではなかったのだ。
むしろ午前はうきうきとしていて、逆に機嫌がよかったのである。
しかし時間が経ち、あるタイミングを境に一気に急降下した。目に見えるほどに。
とはいえ、である。
今まで総帥が不機嫌になったことがないわけではなかった。
むしろそれなりにあった。
例えばそれは、組織の作戦が失敗したり、ヒーローが攻めてきたり。
招集に幹部が集まらなかったり、眠かったり、好物のシュークリームが売り切れだったり。
理由は、それはもう多岐にわたる。
しかし、昼寝をしたり、ジュースやお菓子を口にすればたちまち機嫌は回復し、戦闘員達の癒しとなる天真爛漫な笑顔を見せていた。
だが、今日はどうしたことか。
なにやら先程から携帯端末の画面を見つめて、むすっと顔を顰め。
いくらジュースやお菓子を勧められても、首を横に振り口にしない。
それはそれで素敵、と陶酔する
総帥と幹部の笑顔を日々活力の源とする大半にとっては、衝撃的であったのである。
「――総帥ちゃま、ご気分が悪いのですか?」
最側近たる男がおずおずと問いかけるが。
総帥である男児は、無言のまま首を振り、答えを返さない。
だからこそ、戦闘員達は困惑しているのであり。そして都合数度、これが繰り返されているのであった。
「もう下がってよいぞ」
心配ではあったが、直々に命令を下されては、側近の男も従わざるを得ない。
男児一人を残し、失礼します、と静かに彼は部屋を後にする。
「…………」
豪華絢爛な部屋である。
黄金に輝くキッズチェアがあり、天井からはシャンデリアの如く吊り下がる玩具の数々。部屋の隅にはプールが設置され、温かい季節には冷水が、寒い季節には温水が常時流れている。無論底は浅い。
壁際には巨大な冷蔵庫があり、中には大量のジュース。お菓子も山のように積み上げられ、多種多様なパッケージが顔を覗かせている。
男児は、この部屋の主であった。
「……何故、誰も反応せぬのじゃ」
一人となった部屋で、ポツリと男児は呟く。その言葉を聞く者は、声を発した自身以外にない。
本日、彼はとある一つのスレを立てた。
それが『悪の組織の総帥じゃが質問ある?』のスレである。
きっかけは先日、悪の組織の人質となった者が立てていたスレ。当初はふとしたきっかけで辿り着き、興味本位で書き込んでみただけであったが。
端的に言えば、盛り上がった。もしかしたら糞スレに成り得た未来もあったかもしれないが、まさかのテレビ中継されるというのに加え、
イッチが現場からの逃走を試み、それを察知したその場の全勢力が彼を手中に収めようと追いかけ、勇敢なリポーターもまたそれに続き、掲示板でもその模様を実況。
最終的にイッチが逃げ切って全勢力を振り切ったという大金星で幕を閉じた。
楽しかった。今まで経験したことのない楽しみであった。
ついでに言えば、罵倒の安価はこの男児である。
だから今度は自分が主役になりたいと、男児は喜々としてスレを立てた。
午前に機嫌がよかったのはそのためである。
しかし、しかしだ。
何でも聞いていいとしたのに、反応はなかった。
嘘偽りなく対応するつもりであったのに、興味を持たれなかった。
その結果。
――Dat落ち。
一定期間に書き込みがないと、書き込みや閲覧が不可になることである。
過去ログ倉庫に格納されたという物悲しいシステム的な文言を以て、男児のスレは終わりを告げた。否、始まりすらしなかった。
つまり、これが男児――もとい『肉壁☆お兄ちゃんズ』の総帥たる彼が不機嫌な理由であった。
仮に、その事実を側近の男に伝えていたら、きっと彼はこう答えただろう。
もう一回やってみましょう、と。今度は必ずや誰かが反応してくれるでしょう、と。
けれども、想像するまでもなかった。そうなれば、側近を初め組織の戦闘員達がスレを盛り上げようと書き込むだろうと。人数を考えるに、それこそ余裕で次スレが立つかもしれない。
だが、それでは意味がない。
求めているのは、そんな茶番ではない。
男児は、人気者になりたかった。あのスレのイッチのように、見も知らぬ者達から。
しかし、誰ぞ思おうか。
よもや本物の悪の組織の総帥がスレを立てるなど。
きっと釣り、騙りに違いないと。相手にしなかったわけである。
「……むぅ」
口を尖らせるのは、本日もはや何度目か。
悲しいかな、いくら画面を見返そうと、Dat落ちはDat落ち。
この先書き込まれない未来が確定した、虚しく憐れなスレ。
「――よいじゃろう。主らがそのつもりであるなら、我にも考えがある」
それは、子供らしからぬ覇気のある声であった。
男児はその瞳に鋭い光を灯らせて、手中の携帯端末を、その映し出された画面を見る。
刹那。
グシャッ、と男児の手にあった携帯端末が粉砕された。
液晶が四散し、跡形もなく塵となる。
子供では――否、一般の成人男性でも有り得ない握力。
いや、そもそもそれは本当に、物理的な力が加わったものなのだろうか。
「――待っておれ」
メラメラ、とその声色に熱が宿った。
もしも、もしもだ。何も知らぬ一般人が、第三者がこの場所にいたとして。
先程までであれば、確実に侮っていただろう。
贔屓目に見ても、いいところのお坊ちゃん。親が権力を持つ悪ガキ。
その正体が悪の組織の総帥だと知らされたところで、不機嫌そうな男児を前に鼻で笑ったに違いない。
だが、今の男児を前にしたとすれば、どうか。
恐らくは――。
――皆一様に震えあがり、機嫌を損ねまいと頭を垂れたことだろう。
それほどまでの、威圧感。
空間が軋み、悲鳴を上げる。
パァンッ!! と、天井に吊り下げられていた玩具達が、触れることなく一斉に爆ぜた。
「――待っておれ」
金色に光るキッズチェアから立ち上がる。
間を置かず、一歩。また一歩。ゆっくりと歩む。
踏み出す毎に、気炎が高まる。
その胸中を満たすは果たして、いかなる感情、激情か。
異変に気付いた側近の男が、不測の事態が起きたかとノックも忘れて慌てて部屋に飛び込んできて。
彼はしかし、男児の顔を見てその口を噤む。
「待っておれよ――イッチ!!」
紡がれるは、総帥にとっての怨敵の名。彼にとっての先人であり、ライバルの名。
その容姿を知っている。
テレビに出ていた。声も聞いたし、どんな人物なのかも雰囲気を理解している。
その容姿を覚えている。
高校生ながらも、小学生と間違えられることのある幼さ。
凡庸凡人ならいざ知らず、映像越しながらもそのある意味特徴的な存在は滅多に忘れられるものではない。
「人気者になるのは、この我じゃあっ!!」
対抗心を燃やす。
立ち塞がる壁として、或いは超えるべき壁として。
まずはその素性を詳らかにし、接触する。
なんなら、こちらとて悪の組織。あのスレのように人質にしてもよい。
そうすれば、主役ではないが準主役として楽しめる。
そこから秘訣を探り、盗み、追い抜いてみせるとも。
頑張れ総帥、負けるな総帥!
人気者への道は、まだまだ先だ!
その頃、当のイッチこと僕はそんな事は露知らず。
「
「HAHAHA! いいともいいとも、何せ僕は、高・校・生! だからね。存分に頼るがいいさ!!」
謎のおじさん二人組に追われていたこれまた謎の美幼女を助け、すっかり懐かれてたりしていた。
なお、その幼女の正体は――。
(チョロいな~、お兄ちゃん。これからは、
次回!
追われていた謎の美幼女を助け、仲良くなった少年。
そんな彼の近所に、
身長2mに届かんばかりの金髪美人外国人と、
同じく高身長にして腹筋バキバキの褐色肌の美人が引っ越してくる。
引っ越しの挨拶として自宅を訪れてきた彼女達に。
少年は、瞳に涙を湛えて言った。
「――僕、貴方の子供になりたかった」
刹那、鮮血が、宙に舞う。
※次はすぐ更新できるか分からないので取り敢えず予告だけしときます。
GWが終わるー。。