収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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5週目の世界 偽りの千年王国 その24

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その24

 

 

アルカディアに向かう前にキングフロストとコカトリス達に滅ぼされかけていたホーリータウンの様子を見に寄ることにした。俺達にキングフロストとコカトリス達の情報を流してくれたホーリータウンのデビルバスターの長官から俺とリーナに渡したい物があるとのことだっらからだ。

 

「……ゴミ?」

 

「いやゴミではないと思うんだが、どうだろうか? 長久。俺の勘では禄でもない代物だと思っているんだが……」

 

机の上に置かれた水色と金色の手の平サイズの石柱は確かにリーナの言うとおり一見ゴミにしか見えないが、邪悪なMAGが渦巻いているのが一目で分かった……。

 

「確かに厄物だな。それでこれを俺に預かって欲しいのか?」

 

「あんたなら封印なり何なり出来ると思ってな、駄目だろうか?」

 

ホーリータウンは復興途中だ。こんな厄介な代物は確かに無い方が良いだろう。

 

「構わない預かるよ」

 

「すまん、恩に着る」

 

深く頭を下げる長官に気にするなよと声を掛け、念の為に封印する為の札を貼り付けてから鞄の中にピラーを2つともしまう事にする。

 

「それとなんだが、大教会で魔界へ続く扉を開こうとしているという噂が流れているんだが……調査は出来るだろうか?」

 

「悪い、俺とリーナはセンターからアルカディアに行くように言われてるんだ。それが終わるまで調査は待ってくれ」

 

行きたくは無いが、それでも情報収集の為とセンターの言う理想郷を見る為にに一度だけアルカディアに行く必要がある。

 

「そう……か、無理を言った。急ぎではないから時間があったらよろしく頼む、それまでは大教会には踏み入らせないようにしておく」

 

長官にそうしておいたほうが良いだろうと助言し、リーナと共にデビルバスターの司令部を後にする。

 

「ホーリータウンを救ったメシア様の為の募金を募っております、皆様無理のない範囲での募金を」

 

「メシアに救われたホーリータウンはセンターの外では1番安全な場所と言えるでしょう」

 

熱心にメシア教を布教している神父を見てリーナが眉を顰めるので、軽く肩を叩く。

 

「顔に出すな。面倒なことになる」

 

「……でも」

 

「気持ちは分かるが、面倒ごとは避けるぞ」

 

ここまで熱心に布教しているのはファクトリーエリアの住人が纏めてセンターから離反したからだろう。とりあえずは葛葉式の結界を張ってあるから今は手を出せないと思うが、それでもファクトリーエリアはヴァルハラエリアの次にセンターから目を付けられている。

 

「面倒ごとは早く済ませるに限り、行くぞ」

 

「……うん」

 

メシア教の布教に絡まれるのも面倒だし、厄種と分りきっているアルカディアも早く済ませて次に備えたいという気持ちもあり、ホーリータウンの通路を歩き始める。

 

「なぁ知ってるか?」

 

「あれだろ? ストーカーの連中があちこちを荒らしまわってるって話だろ?」

 

「メシア様の名前は知ってる? ダレス様っていうのよ」

 

「そうなんだ、私姉を助けてもらったからきっと格好良い男の」

 

「ふふ、違うわよ。黒髪ですらっとした美人のお姉様よ!」

 

「ええ!? 女の人なの!?」

 

通路を歩いているとあちこちから聞こえて来る噂話の数々、だがその中でもメシアと呼ばれているダレスという女については気になった。

 

「……どう思う?」

 

「五分五分。ダレスってやつに会ってから考えよう」

 

テンプルナイトか、それとも人造メシアか……どちらにせよ、センターの権威を高める為だけにメシアの役を与えられた誰かと言う可能性が高いが、どちらにせよ会ってから考えるのが一番だ。今ここでアーダーこーだと話をした所で結論なんて出るわけがないのだから。

 

「……これ1000%罠だと思う」

 

「わん」

 

「うん、俺もそう思う」

 

ホーリータウンを抜けアルカディアエリアの前に来た俺とリーナを待ち構えていたのはVR装置であり、アームターミナルを接続しろと言われ、これは1000%存在しない都市と確信しながらも俺とリーナはアームターミナルに接続するためのコードを手に取る。

 

「パスカル。護衛を頼むぞ」

 

「……よろしく、パスカル」

 

「わん!」

 

俺とリーナの意識がないうちに何かされては困るとパスカルに護衛を頼み、俺とリーナはアームターミナルにコードを繋いだ瞬間どこかに引っ張られる感覚と共に意識を失うのだった……。

 

 

 

アームターミナルにコードを接続した瞬間に意識を失ったが、すぐに私と長久は意識を取り戻した。この感覚は良く覚えている悪魔と戦う為に何時間も篭もっていたヴァーチャルバトラーと同じ感じだった。

 

「……ここVRだと思う」

 

「俺もそう思う。とりあえず外に出てみるか」

 

豪華な装飾が施された神殿から長久と共に外に出たのだが、私達を真っ先に迎えてくれたのは巨大なテレビモニターだった。

 

『ミレニアムニュースネットワークのお時間です。ミレニアムの最新情報をお伝えします。ホーリータウンに異教の神殿を建てようとした

ガイア教徒13名が勇敢なるテンプルナイトに倒されました。ミレニアムの平和を乱す、異教徒を絶対に許してはなりません、続きまして……』

 

ミレニアムとテンプルナイトを讃えるニュースを聞いても何の情報も得られないのでテレビモニターの前からすぐに離れる。

 

「む? 長久! 長久じゃないか! 久しぶりだな!」

 

「あんたは……キングマッスルじゃないか、久しぶりだな」

 

キングマッスルと呼ばれた男は暑苦しいポージングをしながら私と長久に近づいて来て、私に気付いたようだ。

 

「なんだ、長久。お前の女か? 女っ気がないと思っていたが、なんだちゃんと性欲はあったんだな」

 

「やかましいッ!」

 

私を長久の女と呼んでくれたので私の中でキングマッスルの株が大きく上がった。

 

「……リーナです。長久の弟子をしています」

 

「弟子に手を出したか! 「ちがうわッ!」」

 

長久がブーツの爪先でキングマッスルの脛を蹴るが、キングマッスルは照れるな照れるなと豪快に笑い、長久の背中をバシバシと叩いた。

 

「俺の強さを認めたミレニアムは俺をアルカディアの住民に選ばれたのだ。この美しい肉体と強さ! 俺のような人間こそアルカディアにいるのが相応しいのだ! どうだ、長久。俺が案内してやろうか?」

 

「いや、俺とリーナで見て回る。ありがとな、キングマッスル」

 

「そうか! また声を掛けてくれ! じゃあな!」」

 

キングマッスルに見送られて歩き出す長久は小声であいつはもう駄目だなと呟いた。

 

「……長久、どういう意味?」

 

「ここはVRだろ? あいつはここを現実だと思ってる。それに脛を蹴ってみたが反応が殆ど無かったのを見ると、VRに接続されて衰弱しきってるのかもな、ここは理想郷を謳う地獄だな」

 

理想郷と謳う地獄だなと言う長久が歩き出し、私もその後を追って歩き出す。

 

「我々アルカディアに住む民はこの世の全ての災いを気にせずに生きていける。ただ死のみは避けられない……不死の技さえ見つかれば恐れる物は何も無いのだがな……君達もここで暮らすようになれば私と同じ様にそう思うはずさ」

 

「僕らの救世主ギメル様のおかげで何一つ不自由無く暮らせるよ。なのに不死まで欲しがる人がいるよ人間って欲が深いよね、死を避けられなくても僕は十分幸せだけどね!」

 

「私達が平和に暮らせるのは全てギメル様のおかげです。ギメル様こそ、真の救世主です。貴方達も早くギメル様に挨拶をなされると良いですわ。ギメル様は木々の間を通りぬけた奥の館におられますよ」

 

聞いてないのにアルカディアの素晴しさをべらべらと喋る住民だが、ギメルの居場所を教えてくれたことには感謝だ。教えられた通りに木々の間を抜けると美しい館が私と長久を出迎えた。

 

「……行くの?」

 

「行くしかないだろ、警戒は緩めるなよ」

 

「……分った」

 

警戒を緩めるなという長久に頷き、私と長久はギメルが住んでいるという館の扉を開いた。

 

「ようこそおいでなさいました。こちらへ、ギメル様がお待ちになっています」

 

メイドに出迎えられた私と長久はそのままギメルが待っているという部屋へと案内された。

 

「久しぶりだね、リーナ。そして初めまして長久、僕の名前はギメル。ミレニアムからアルカディアの統治を任されたテンプルナイトだよ」

 

月桂冠を被った柔和な笑みを浮かべる男性……ギメルが親しげに声を掛けてくるが、その目は全く笑っておらず。改めてここが敵地だったと再認識した私は気を引き締め、警戒心を強めながらも私も笑みを浮かべて手を差し出してくるギメルの手を握り返すのだった……。

 

 

 

柔和な笑みを浮かべ、穏やかな雰囲気をしているギメルだが、それが自身を偽ってる姿というのは一目で分かった。

 

(俺を敵視してるな、まぁ分からないでもないが……)

 

メシアに仕立てるつもりのリーナの離反、ミズキとべスの離脱にホーリータウン、ファクトリーをセンターの思惑とは違う方法で救った俺の存在はセンターにとっては邪魔者以外の何者でもないからだ。

 

「リーナ。君が行方不明の間に僕はこのエリアを理想の世界に作り上げたんだ」

 

アルカディアエリアがどれだけ素晴しいかを語るギメルの顔は誇らしさに満ちていた。確かにセンターの思想に共感し、そしてその方針に従っていたとしても、アルカディアエリアを誇らしく思うのはギメル自身の感情だろう。

 

(こういうところは悪い印象は受けないんだがな)

 

アルカディアエリアがヴァーチャルだとしても、自分の統治しているエリアを良くしたいという気持ちは分からない訳ではないんだが、理想郷という甘い毒で人間を躍らせているのをどう思っているのか問いただしたいと思ったが、その言葉をグッと飲み込んだ。

 

「君達も知っていると思うけど、ミレニアムが千年王国の実現を目指しているのは知ってるよね? このアルカディアエリアは千年王国が実現した後どんな世界ができるかのテストケースなんだよ」

 

美しい自然に悪魔も出現しない……確かにそれが現実で、人間達の手で作り上げる事が出来ればそれはきっと素晴しい物だと思う。だがそれは支配している者ありきの箱庭にしか俺には思えなかった。

 

「誰かが支配し、コントロールしている世界っていうのは俺は理想郷とは思えないな」

 

「……へえ? それはどうして?」

 

敵意が強くなるギメルにリーナが臨戦態勢に入るが、膝の上に手を乗せてそれを制する。

 

「このアルカディアエリアは確かに美しくて平和な世界だ、ギメル。お前の努力がひしひしと伝わってくる」

 

「そうでしょう、そうでしょう。では何故アルカデイアエリアを否定するのですか」

 

「否定はしてない、だがな。俺もリーナもここに来るまでに貧困や悪魔に教われて怪我をしてる人間を見てきてな。アルカディアエリアが本当に理想郷ならなんで住人が限られるんだ?」

 

俺の言葉にギメルは何の反応も見せなかった。それを見て俺はギメルの評価を改めた……救いようのない外道だと……。

 

「確かに今のアルカディアエリアに暮らせる住民は限られる、だけどそれは仕方のないことなんだ。信仰心を持たない人間を受け入れる訳には行かない、ここはセンターに従がう人達の為の理想郷だ。センターに抗う異教徒を招き入れるわけには行かないんだ。だけど僕も外の人間をもっと招きいれ、この平和な理想郷を、千年王国で暮らして欲しいと願っているよ」

 

ギメルにとってはアルカディアエリアさえ良ければ良いのだ、アルカディアエリアという入れ物だけが重要で、入れ物の中身はどうでも良い典型的なメシア教の人間の考え方だった。

 

「今は理解できなくともいつかは僕の考えに共感してくれると思うよ。君達2人ならいつでも歓迎するから気軽に尋ねて来て欲しい、このアルカディアエリアを良くする為の意見を聞かせてくれると嬉しいよ」

 

だからいつでも尋ねて来てくれというギメルに見送られ、俺とリーナは館を後にした。

 

「……酷い場所だね」

 

「そうだな」

 

この蒼く済んだ空も、美しい花も、何もかもが偽物。偽りの理想郷であるアルカディアエリアに引きこむためだけの偽りの楽園、そしてそんな偽りの楽園を褒め称える人間。それを理想郷として統治し、自分の素晴しさに酔いしれるギメル……ここには全てがあるが、それと同時に何も無く、だがそれに満たされている者もいる。ここは確かに理想郷かもしれないが、理想郷という名の地獄にも等しい酷い物だった。

 

「次来る時は悪名を背負うことになるかもな」

 

「……それなら私も背負うよ」

 

再びアルカデイアエリアに足を踏み入れる事があれば、それはこのエリアを滅ぼしギメルと対峙する事を意味しており、俺とリーナはなんとも言えない表情でアルカディアエリアを後にした。

 

『長久か!? やっと通じたか! 悪いが早くヴァルハラエリアに来てくれ! 悪魔の大群が出て俺らだけじゃ凌ぎきれん!』

 

ヴァーチャル空間から出るなり岡本さんからの悲鳴にも似た救難要請に俺とリーナ、そしてパスカルは大急ぎでヴァルハラエリアへと走り出すのだった……。

 

 

 

 

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その25へ続く

 

 

 




アルカディアエリアとギメルはデストラップ。長久さんからしてギメルは完全アウト判定でした。本来はザインからの連絡でしたが、今回は岡本さんからの救難要請となりました。ここは半分オリジナルで行こうと思いますので、次回の更新を楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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