収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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5週目の世界 偽りの千年王国 その26

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その26

 

 

なんとかヴァルハラエリアへの襲撃を凌いだはいいが、周囲の視線がとても痛かった。

 

「わふッ!」

 

あのパスカルでさえもどういうことだと言わんばかりな態度で足を甘噛みしてきている。だがどういうことか知りたいのかは俺自身だ。

 

「……あの女誰? どうして私と同じ顔なの?」

 

リーナと同じ顔だが、リーナよりも背が高く、少し大人びていたが、リーナよりも胸の小さい女はダレスと名乗っていたが……少なくとも俺の知り合いではないと断言出来る。

 

「知らん。本当に知らない……ただ」

 

「……ただ?」

 

「あの女と俺が相容れることはないと断言出来る」

 

ジト目でどういうことかと尋ねてくるリーナと興味津々という感じで身を乗り出している岡本さん達に何をしてるんだよと思いながら口を開いた。

 

「あいつは俺を殺そうとした連中と同じ腕章をしてたからな」

 

見せ付けるようにダレスは腕にジャック部隊の腕章を巻いていた。その意味を知っているのか、知らないのかは定かでは無いが……間違いなくジャックの手が掛かっている人物の筈だ。

 

「お前を殺そうと? どういうことだ長久」

 

きょとんとしていたリーナや、どういうことか理解しようと噛み砕こうとしていた羽田さん達の中で1番最初に再起動した岡本さんがどういうことかと尋ねて来た。

 

「俺には葛葉以外に人前にあんまり出したくない切札ってもんがあるんですよ。それをダレスの裏にいる奴は知ってる。俺の術をあいつらは取り込みたいんですよ」

 

嘘は言っていない、葛葉の術も全部出しているわけではないし、峰津院の技も少ししか使っていないのも事実だ。

 

「じゃああのダレスって子は利用されてるだけっていう線もあるわね。どうするの?」

 

「あいつの後にいる奴は邪悪な奴です羽田さん。ダレスが利用されているとしても俺は殺すしかないと思います」

 

ダレスが後天的に俺への好意を植え付けられたのか、そもそも俺に好意を持つように作られたのかは定かでは無い。利用され、記憶を操作れているとしても俺は殺すしかないと思っている。

 

「そこまでか? 長久、殺すしかねえとはお前にしては珍しいじゃねぇか。そんなにやべえのか? あのダレスっていう小娘の後にいる奴は?」

 

「悪魔人間」

 

「は?」

 

「悪魔と人間を合体させて悪魔の能力を持った人間を作り出す術を持った破壊工作に秀でた男です。そしてその男自身も破壊神や、魔神と

自身を合体させて桁違いに強力な悪魔人間となっています」

 

「待って、待ってください。そんな事が可能なのですか?」

 

アマネが信じられないという様子で尋ねてくる。前の世界で出来たのだ、もっと悪魔に関しての情報が揃ってるこの世界で悪魔人間が作れないわけがない。武だって独学で悪魔合体装置を起動させて悪魔と合体して悪魔人間になっているのだ。そのデータを元に悪魔人間の研究が進んでいればかなり強力な悪魔人間が生み出される可能性も十分にある。

 

「今回の耐性持ちの悪魔もその研究の一環という可能性もありますね。疲れてもいますし1度街へ戻って身体を休めませんか?」

 

疲れは確かにあるが、タカヤはこの話を切り上げたいという様子が感じられた。

 

「確かにそうだね。1度戻って休んでからこれからどうするか話し合いましょう。ここで立って話していても何も変わりませんし」

 

幾月は元々怪しいと思っていたが、畳み掛けるように戻ろうという幾月はかなり怪しいように思えた。

 

「そうだな、デビルバスターの連中もボロボロだし、1度帰るか。長久、悪いがミズキ達をヴァルハラタウンに呼び戻してくれ」

 

「そうね。ちょっと今回は大分やばかったし、1度対策を練る必要があるかもね」

 

もう少しこの周囲を調べて置きたかったが俺1人残る訳にも行かない。本来なら残って調べても良いのだが強化悪魔にジャックの関係者がいることを考えれば単独行動は危険だから岡本さん達と一緒にヴァルハラタウンへと戻ったのだが……。

 

「あの長久さん、戻ってくる途中にリーナという泥棒猫を殺すと言ってた少女にあったんですけど……」

 

「長久。お前あの少女に何かしたのか?」

 

「……」

 

「俺は無実だッ!」

 

ファクトリーから戻ってきたアオイ達に軽蔑の眼差しを向けられ、俺は心の底から無罪だと叫ぶのだった……。

 

 

 

 

ヴァルハラエリアに戻ってくるなり出会ったリーナ少女は強い敵意を見せ、コロシアムで待っていると言っていた。

 

「どちらが長久の隣に立つのに相応しいか勝負……なぜ俺を引き合いに出すんだよ」

 

さっきまでの幾月さんとの話に加えて、リーナとダレスについてどういうことだと問いかけられていた長久さんはかなり疲れた様子でそう呟いていた。実際長久さんからすれば顔見知りでもない相手にそんな事を言われても困惑しかないでしょうし、これからどうするかよりも長久さんの術を知りたいという様子の幾月さんとの話し合いもかなり疲労を呼んだのは間違いないだろう。

 

(やっぱりあの人は怪しいですね)

 

幾月さんとタカヤの2人はどこか怪しい、岡本さんが折角呼んでくれた助っ人だがヘタに情報を与えたくないという気持が強かった。長久さんもスパイを疑っているようですし、あの2人には今後も警戒しておかなければならないだろう。

 

「……大丈夫。私は勝てる」

 

「わん!」

 

「そりゃパスカルと一緒なら勝てるとは思うけどな。ヴァルハラエリアへの攻撃を防いだ事でパスカルを見られてる」

 

「対抗策が準備されている可能性がありますね」

 

センターが関係しているのならば物理と火炎対策をしてくる可能性がある。パスカルはケルベロスの変異種なのでケルベロスと同じ対策がそのまま通用してしまう。

 

「ミズキ、べス。悪いがリーナと一緒に悪魔の交渉に行ってくれないか?」

 

「仲魔を増やして悪魔合体するのか、分った」

 

「分りました。リーナさん、行きましょうか?」

 

「……うん」

 

ダレスという自分と瓜2つの顔を持った少女が長久さんに言い寄っているのを見て敵意とやる気を見せているリーナさん達が戦力強化に出て行ったのを見送り、私は改めて長久さんに向き直った。

 

「内緒話はなんですか?」

 

岡本さん達とリーナさん達を追い出したのは何か内密な話がある筈だと思ってそう尋ねる。

 

「……俺の前の死因になった男がセンターにいる」

 

「それは不味い……ですよね?」

 

長久さんの死因となった男の話となれば他の相手に聞かせるわけには行かない話題だ。

 

「どんな相手ですか?」

 

「戦闘力と軍略に秀でていて悪魔人間を作り出す術を持っている。それと僅かながらだが葛葉の術を習得していると思う」

 

長久さんの死因となった相手だけあってかなり強い相手のようだ。そんな相手がセンターの裏にいて司祭に協力しているというのはかなり厄介な問題だ。

 

「私や長久さんのようにこの時代の自分に憑依しているのでしょうか?」

 

「もしかすると本人の可能性もある」

 

本人の可能性があると言う長久さんに何を馬鹿なと言いかけたが、長久さんがそんな事を言うと言う事は何か根拠がある筈だ。

 

「何を持ってるんですか?」

 

「次世代の万能戦艦……ライトニング号と呼ばれる物だ。時空間移動にプラズマによるバリアに飛行能力に圧倒的な火力を持ち合わせた巨大戦艦だ。それを何らかの方法でこの世界に持ち込んでいるかもしれない……いや、濁さずに言おう。俺に死ねない運命を与えた相手がいうには桁違いに強力な悪魔がいて、そいつが世界を滅ぼそうとしている。あの男……ジャックがその悪魔の配下になった可能性があると俺は考えている」

 

「よほど高位の……大天使か魔王級の最上級が関わっています?」

 

「ルシファーが関わっているとだけ言って置こう、ついでにベリアルとネビロスはルイさんの部下だ」

 

「……なるほど、分かりました。それだけの悪魔が動いているのならばその可能性もありますか……どうします?」

 

「予定を繰り上げて地下へ向かおうと思ってはいるんだが……」

 

「ダレスが問題というわけですね」

 

ダレスを送り込んできた目的を考えれば地下にいっても帰る場所が無くなる可能性を考えればダレスの問題も解決しておかなければならない。

 

「岡本さんが呼んだ協力者にも怪しいやつらがいる、慎重に俺達が何を考えているのか悟られないように動く必要がある」

 

「ですね」

 

私とゴトウ陸佐が準備をしてきたようにセンターもまた私達がしていたように何らかの準備をしていた。黒幕がセンターに力を貸している可能性もある。今まで以上に慎重にそして、こちらの手の内を知られないように動く必要がでて来た。

 

「厳しいですね」

 

「ああ、厳しいな」

 

出来る限りの準備をして来たし、長久さんも全力を尽くしている。だがそれでもなお状況は悪化の一途を辿っているのだった……。

 

 

 

コロシアムで武器と防具の確認をしていると視界に影が落ちた。誰も入れないようにと頼んでいたのに何故と思いながら顔を上げる。

 

「やぁ、元気そうだね。ダレス」

 

「ジャックさんでしたか、どうも」

 

私に力を与えて、そして私が何故あんな暗い場所で苦しんでいたのか、その理由を教えてくれた恩人であるジャックさんがそこにはいた。

 

「君に朗報だ。リーナと君の戦いに長久は参加しない、君は頑張ってリーナを倒せば良い。大丈夫だとも、君がいつも通りのパフォーマンスを発揮できれば負けるわけがないとも」

 

「勿論です。私が負ける訳がありません」

 

長久に守られて己を磨く事をしなかった相手にこの私が負けるわけがない。

 

「勿論だとも、君はメシア、そして長久の妻になり、この世に平和を齎すメシアであり、イブとなり新たな人類の租となるのだからね」

 

私は理不尽に奪われたすべてを奪い返すのだ。そして奪われて苦しんだ分幸せになるのだと拳を強く握る。

 

「だから勝てないと思ったら逃げるんだ」

 

「勝てない? 私が勝てないというのですか?」

 

逃げろといったジャックさんに思わず顔を上げ、腰に手を伸ばすがその手はジャックさんに抑えられた。

 

「早合点はするものじゃないよ。今はさ、今勝たなくても良い。次勝てば良いそうだろう? リーナは君の知らない術を持っているだから

先ずはその術を見て学べば良い。決着をつけるのはその後でも遅くはない違うかね?」

 

「……それは……はい、その通りです」

 

「分れば良いのだよ。私は君が勝つことを信じている。全力で戦い、そして自分の場所を奪い返すと良い」

 

幸運を祈るよと微笑んで現れた時と同じ様に何時の間にか消えているジャックさん。だがそれもいつもの事と思い再び装備の点検を始める。

「……勝つ、勝つんだ。私は勝つ、私は全部手に入れる。欲しい者すべてを……私は手に入れる」

 

私が持つべき物だったものを全部奪ったリーナを倒す、そして私は手に入れる。それが今の私に考える事が出来る全てだ。

 

「さてさて、今のところは7-3でリーナの勝ちですが、情念と執念が勝るか実に楽しみですね」

 

そしてそんなダレスを見下しながらジャックは邪悪な笑みを浮かべているのだった……。

 

 

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その27へ続く

 

 




今回はインターミッションということで繋偽の短い話となりました。ダレスは依存と執着マシマシのドロドロ系となっておりますのでクソデカ感情(調整)で殴りつけてくる系ヒロインとなり、そんなダレスを見て、困っている長久を見てにやにや嗤っているジャックもジャックで気持ち悪い男となっております。
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