収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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5週目の世界 偽りの千年王国 その31

5週目の世界 偽りの千年王国 その31

 

不満はありましたし、認めたくないという気持ちはありましたがダレスに悪魔召喚プログラムが譲渡される事となりました。

 

「……ここら辺の悪魔は多分まだ従わない」

 

「だろうな。あの悪魔がこの区画を支配している。あいつを倒さなければ仲魔にはなってくれないだろうな」

 

「……そう。だからちょっと戻って悪魔を仲魔にする」

 

「タルカジャ、スクカジャ、ラクカジャ……スクカジャは最低限欲しいな、戦闘力はなくても構わんが補助魔法は必要だ」

 

必要な悪魔、必要な魔法を話し合い仲魔集めを始めるリーナさんとダレスを見つめる。

 

「思うことはあるが、今は我慢しろ」

 

「……言える立場にはないですしね」

 

「そういうことだ」

 

直接支援が出来ないとはいえ長久さんがなにも言わないという事は長久さんもダレスに悪魔召喚プログラムを渡すことを認めているということ……なら私達には何もいえない。

 

【仲魔か! それなら近くに頼れる妖精がいるぞ】

 

「……変態は必要ない」

 

【はっはっは! 違う違う。ヒーローの仲魔だった妖精だ、君達が従えるには難しいが……力は貸してくれる筈だ。ただかなり気難しい

子なので出来れば長久君無しでは会いたく無かったがそうも言ってられん】

 

ヒーローの仲魔だった妖精……パスカルもいない、長久さんもいない今の私達にはその妖精は必要な戦力だった。

 

「……とりあえず会いに行く?」

 

「だな」

 

交渉や物資で仲魔を作るよりも早く仲魔に出来るならそれも良いと思いゴトウに案内され、ヒーローの仲間だった妖精の元へと向かう。

 

【あれ? ゴトウだ。何してるの?】

 

【力を貸して欲しいんだナジャ。長久君の仲間に】

 

褐色の肌をした民族衣装を着込んだ妖精の眉が小さく動いた。

 

【長久は?】

 

【……】

 

【応えて】

 

【死に掛けてヴァルハラエリアにいる】

 

その言葉にナジャは一瞬でゴトウとの距離を詰めてその首を掴んだ。

 

【話が違う。貴方が長久の助けをする……そういう約束で私は嫌だけどあちこちを見て回っていたはず。なんで死に掛けてる? 何があったの】

 

【すまない。私もそこまで自由に動けるわけではないのだ。ただイレギュラーが多すぎた。天使による襲撃が始まっている】

 

天使の襲撃が始まってると聞いてナジャと呼ばれた妖精はゴトウの首から手を離した。

 

【ここに来たって事は目的地は収容所だね】

 

【そうだ。元々我々レジスタンスの基地だった収容所だ】

 

レジスタンスの基地という新しい情報に私達の視線がゴトウに向けられる。

 

【どこにスパイがいるか分からないから隠しておいたんだ。あそこには貴重な素材と物資を隠してある。私の目的は君達をそこまで案内する事だ】

 

「……状況は打破できる?」

 

【0では無くなるとだけ言おう。ナジャ、我々には時間がない】

 

【分かってる。黒いテンプルナイトが何人も来てたしね。とりあえずあの娘との約束もあるから手伝うよ】

 

そしてナジャはダレスと契約する事になったのだがナジャ一体で6体契約出来るはずのCOMPが一杯になった。

 

【まぁ当然か、彼女はヒーローがこの地を去るまで一緒にいた仲魔だからね】

 

【私は凄く強いよ】

 

ナジャ レベル88

 

HP650 MP999

 

力17 知30 魔30 体21 速27 運30

 

ランダマイザ ラスタキャンデイ メディラマ ジオダイン アムリタ サマリカーム マリンカリン ハピルマ ドルミナー

 

規格外の悪魔……可憐な見た目のこの妖精は私達の理解の範疇を超えていた。

 

【だがそれでも足りないのだよ。我々には法則がある】

 

【その法則を壊さないと私達は次のステージには進めない。私達の物語は終わった……手伝ってはあげるよ、だけどこれは貴女達の物語だよ。役目を終えたキャストは舞台には立てないんだよ……いや、舞台を降りてしまった役者に再び舞台に上がる資格はないんだ。絶望、後悔もこれから何度も貴女達に降り注ぐ、だけど私のように諦めて舞台から下りないで欲しい】

 

何を言っているか分からない、だけど彼女の言葉は酷く胸を打ち、殆ど無意識に諦めないと返事を返し、幼い容姿のナジャは満足そうに笑った。私はその時ナジャの後にもう1人大人の女性の姿を見たような気がしたのだった……。

 

 

 

 

収容所へ続く門を守っていた悪魔若者と老人の顔を持つ杖と剣、鏡と鍵を4本の腕に持つ悪魔ヤヌス――その姿はテンプルナイトにも幾重にも交戦記録を持つ悪魔だった。だが私達が戦うヤヌスは同じ姿をしただけの全くの別物だった。

 

【どうしましたか? 遅いですよ】

 

【どうしたんだ!? 遅いぞ】

 

【スクンダ】【スクンダ】【タルンダ】【ラクンダ】

 

幾重にも掛けられるスクンダ、それを打ち消すデクンダを使える者はおらず。ナジャがラスタキャンディとランダマイザを連続して使ってくれていることで辛うじて戦況を維持できている状況だった。

 

(ほぼこれは負け戦か)

 

戦況を維持出来ているだけで好転も悪化もしていない、だがナジャの魔力か私達の体力が尽きればすべてが終わる。詰み一歩手前が私達の今の状況だった。

 

【通ろうとする子は 好きにしていいって】

 

【通ろうとするヤツは 好きにしていいと】

 

【言われてるのよぉ オォーッホッホッホッ!】

 

【言われてんだよぉ ヒィーッヒッヒッヒッ!】

 

【タルカジャ】【ラクカジャ】【スクカジャ】【ヒートウェイブ】

 

剣から放たれた熱波が凄まじい勢いで私達に襲いかかり、その衝撃に私達は成す術も無く吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

 

【はぁぁッ!】

 

【ヒッヒヒッ! 無駄だよよぉ!】

 

【ヒャハハハハッ! 無駄だアア!!】

 

【テトラカーン】

 

ヤヌスの前に展開された魔力の壁がゴトウの攻撃を弾き、自らの攻撃を受けたゴトウも大きく吹き飛ばされる。

 

【今治すよ!】

 

【メディラマ】

 

ナジャが唱えてくれたメディラマのおかげで何とか立て直す事が出来たが、ヤヌスの突破口はまだ見えていなかった。

 

「何か考えはあるか?」

 

「……ない。まだ突破口が思いつかないよ」

 

「私もです……」

 

4回連続……いや4つの行動を同時に行ないつつ、テトラカーンとマカラカーンで常に防壁を張り続ける。それを突破する術が私達には無かった。

 

「攻撃は苛烈では無いが、蓄積すれば不味いな」

 

「ああ。なんとか反撃の糸口を見出したい所だ」

 

テトラカーンとマカラカーンは1度だけ、反射が発動し再び展開される前に攻撃出来れば良いが補助と妨害魔法の重ねがけがそれを拒む。

 

【私とナジャならこのていど掠り傷にもならないが……】

 

【貴女達は不味いよね】

 

ゴトウの強力な物理やナジャの魔法が反射されればその瞬間に私達は絶命する。

 

【そらそら! どんどん行くぞぉッ!】

 

【苦しみ悶えろぉ】

 

【タルカジャ】【ラクンダ】【スクカジャ】【ヒートウェイブ】

 

逃げ回り、身を固める私達を見て嗜虐的な下卑た笑い声を上げるヤヌスに心底腹が立つ。だがここまで防戦一方に追い込まれている自分たちにも腹が立つ。

 

「……リーナ。長久から聞いてないか? 葛葉の奥義を」

 

「……聞いてるけど出来るかどうかは分からない」

 

「不完全でも良い。2人でやればなんとか出来るかもしれない、そうは思わないか?」

 

葛葉は悪魔討伐において最強でなければならない、カーン系の呪文や反射や吸収といった能力を持つ悪魔でも討伐する術がある。

 

「天命滅門……それを私とお前でやるぞ」

 

「……分った」

 

博打も博打、下手をすれば死ぬかもしれない。それでもヤヌスを突破するにはこれしかないと確信していた。

 

「時間稼ぎを頼む。上手く行けばあいつを倒せる」

 

「失敗したら全滅か?」

 

「ああ。だがこのままならどうせ全滅だ。それでも嫌か?」

 

私の問いかけにダレスは不機嫌そうに鼻を鳴らし、それで良いと言って剣を構えた。

 

「分かりました。なんとかしてみます」

 

「……ごめん、よろしく」

 

「なんとか成功させて見せる」

 

ナジャとゴトウがいるから私とリーナがいなくても何とかなる筈と信じ、私とリーナは長久にこういうものがあると言って触りだけ見せられた葛葉の最終奥義である天命滅門を再現する為に動き出すのだった……。

 

 

 

 

 

天命滅門という技はメギドと呼ばれる万能に分類される魔法をベースにした葛葉の最奥義になる。本来は高位の悪魔との協力技であり、長久も実は完成させれていない技だと聞かされている。

 

「私とリーナの血を刀身に塗れば最低限の条件は揃うだろう」

 

「……うん。長久と同じ」

 

長久は悪魔を使役出来ないので自分の血液で代用していた。だから私達刀身で僅かに指を切り刀身で魔法陣を描く。

 

「……血液のMAGと私達のMAGを同調させる。ミズキ」

 

「助かる」

 

どれくらいMAGを持って行かれるか分からないのでチャクラドロップを頬張り、MAGを回復させてから刀身と私達のMAGを同調させる。

 

「こ……これは……ッ!?」

 

「……ちょっとやばい……ッ!」

 

想定以上にMAGが吸われて行く、立っているのも、剣を持っているのもやっとでミズキと2人でなんとか刀を持って立ち上がる。

 

「維持するのは命に関わる。極めるぞ」

 

「……分かった」

 

チャクラドロップの回復量なんて微々たる物だ。触れるのは1回……そして2回目はない。

 

【ぬおおおおおッ!!!】

 

「弾ける物なら弾いてみなさいッ!」

 

ゴトウがヤヌスへと突撃し、ベスが四天王との戦いで習得した下級魔法を連射し、ゴトウの支援を行う。

 

「はぁッ!」

 

【ぬうっ!?】

 

そして連携はしていないがダレスの一閃がヤヌスの剣を弾いたのと同時に私とミズキは1本の刀を2人で持ち駆け出した。

 

「いっけええええッ!!」

 

「やぁあああああああッ!」

 

【偽・天命滅門】

 

【効かぬわアアッ!!】

 

【テトラカーン】

 

ヤヌスは鏡を掲げテトラカーンによる物理反射鏡を展開するが、虹色の輝きを宿した私とミズキが持つ刀はテトラカーンごとヤヌスを両断する。

 

【ば、馬鹿なぁ……】

 

【な、なぁ、なぁぜええ……】

 

テトラカーンで反射出来ないことに困惑しながら消滅していくヤヌスを横目に、私とミズキは不完全とはいえど天命滅門を発動させた事で消費した莫大MAGに耐え切れず駆け寄ってくるベスの悲鳴を聞きながら意識を失うのだった……。

 

 

 

元来ヤヌスという悪魔はそれほど強力な悪魔ではない。元々はローマの神ではあるが、メルクリウスと同様にメシア教に歪められ、貶められ、門番として何度も利用できるように改造された悪魔だった。1度改造された悪魔だからこそいくらでもアップデート出来る、誰にも突破出来ない無敵の門番として作られたのがこのヤヌスだった。

 

「大佐。押されているようですがどうしますか?」

 

『もう少し様子見で良いですよ。どうしても駄目そうなら割り込んでください』

 

「イエッサー」

 

ジャック部隊の1人がリーナ達の戦いを見ていた。ジャック達にとっては長久を王として迎えるのが最優先、そしてその妃になる可能性を持っている少女達を見殺しにするという選択肢は無かった。

 

(善戦はしている。だがそこまでだ)

 

テトラブレイクやマカラブレイクが使えない以上ヤヌスの突破口はないようにこの隊員には見えていた。

 

「これならッ!」

 

【アギラオ」

 

【ヒヒ、バーかッ!】

 

【魔法は効かないぞおッ!】

 

1人の女が放ったアギラオがマカラカーンで反射され跳ね返ってくる。硬直し避けれない姿勢のあの女が業火に飲まれると思った瞬間信じられない物をその隊員は見た。

 

「はぁッ!!」

 

【ギャアアッ!?】

 

【ウゴガアアアッ!】

 

跳ね返ったアギラオを剣で打ち返す。その信じられない技に男は目を見開いた。

 

「なるほど、確かに我らの王の妻になりえる女だ」

 

ダレスはともかく、あの女については元・テンプルナイトのベスという事を知っていた。類稀なる魔法の使い手と聞いていたが、マカラカーンで反射された魔法を弾き返すことを戦略に入れる事は考えてなかった。

 

「まずはその腕を貰う!」

 

【がッ!? 己ッ!】

 

そしてダレスが切り込み補助魔法を使っていた杖を握っていた腕を切り飛ばした。その姿を見てダレスは一体何を学んでいたのかと男は舌打ちした。

 

「馬鹿が……」

 

補助魔法を使っているのは厄介だが、ヤヌスを突破する上で最大の難関はその鏡だ。鏡を破壊すればヤヌスはカーン系の呪文を使えなくなる。この場合の正解は鏡を破壊すること、それなのに杖を破壊したダレスを見て馬鹿がと吐き捨てた男は次の瞬間に驚きに目を見開いた。

 

「あれは、あの輝きはッ!」

 

リーナとミズキが2人で1本の刀を手にし、その刀身に虹色の輝きが宿っていた。それはかつての王が見せた命の輝きそのもの……。

 

「美しい……ああ、なんと美しく素晴らしい物か」

 

マカラカーンもテトラカーンも何の障害にもならないと言わんばかりに振るわれた虹の刃がヤヌスを両断するのを見届けた工作員は闇の中へと消える。ここで見るべきものは見たならば後は報告するだけだ。

 

「馬鹿鳥は失敗する。傲慢な愚か者の末路など所詮はこんなものか」

 

王を敵に回したその時に天使の失敗は確定していた。疲れ果ててへたり込むリーナとミズキの2人に最後に一度だけ視線を向け今度こそ音も無く闇の中へと消えていくのだった……。

 

 

 

 

両断されたヤヌスから視線を逸らした私は闇の中へと視線を向けた。

 

(逃げられた……いや、見逃されたか)

 

何者かに監視されているのは分かっていた。それもかなりの凄腕であり、真っ向から戦えば時間制限のある今の私では勝てないと断言出来るほどの強者がいた。

 

【少し休むと良いよ】

 

【ドルミナー】

 

ナジャの唱えた睡眠魔法がリーナ君達を眠らせる。

 

【1人じゃこの子達は駄目だね】

 

【うむ。少々脆い所があるからな、翔子君とは違う】

 

強さで言えばリーナ君達の方が上だが、メンタルの強さに雲泥の差がある。

 

【でもまぁヤヌスを倒したことは評価するよ】

 

【うむ、メギド系を剣術でやるとは驚きだ】

 

万能系のメギド。それと同じ効果を持つ剣術はさすがの私も想定外だ。だがこの想定外によってリーナ君達の評価を改めたのも事実だ。

 

【地下に行けるだけの能力はあるね。後は間に合うかどうか……】

 

【間に合わせる。それしかない】

 

既に賽は投げられているのだ。そしてこの偽りの楽園で出来る事もほぼ全てが終わった。後は地下……天使によって追いやられた者、騙され封じられた者……そして。

 

【再会を夢見た彼女達の遺産を持ち出す時が来た】

 

長久君と再会する為にこの世界を旅立った3人の勇敢な子供達の遺産。自分達がいない時に長久君がこの世界に帰って来る事を考えて事情を知る私達に残した願いの欠片……それを本来の持ち主に帰す時が来たのだ。

 

【上手く行くかな】

 

【分からない。だがやれるだけはやろう……まだ長久君の旅は終わらないのだから……】

 

まだ長久君の旅は終わらない、私達に出来るのは彼が彼らしくあれるように、そして彼の旅路に力添えをすることだけなのだから……。

 

 

 

 

 

 

5週目の世界 偽りの千年王国 その32へ続く

 

 




ナジャめちゃくちゃ強いルートなので大分残ってくれる仲魔ルートです。次回でヒロコ救出をしたらオリジナルシナリオで長久の章となります。ここからは大分話を動かして行こうと思いますのでどうなっていくのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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