3周目の世界 3人の救世主 その8
荒廃した東京とは思えないほどに清潔なホテルの一室のベッドに腰掛けて深く深く溜め息を吐いた。翔子達も同様で酷く疲れた様子でベッドに座ったり、ベッドの上に寝転がったりしている。
「あんたの言う通りだったよ。同行してくれて助かった」
鞄から悪魔との交渉用に持っていた酒瓶を取り出して案内役を買って出てくれた導師服の男へ投げ渡す。
「なに君達が小澤を倒してくれたから俺も解放されたんだ。恩人を騙すような恥知らずのような真似はしないよ」
酒瓶の蓋を開けて美味そうに酒を飲む導師服の男は小澤に捕らえられていたサイコダイバーと言う特殊能力の持ち主で、人の精神に入り込む能力を有していただけではなく、元は渋谷にいたと聞いて同行を依頼したのだ。
「いたっ!? 翔子何するんだ!?」
ベッドの上に座り込んでこれからどうするかと考えていると背中を翔子に叩かれて何するんだと思わず声を上げる。
「長にい鼻の下伸びてた」
むっすうっとした顔で俺を責めて来る翔子の姿に思わずホテルの天井を仰ぎ見た。武は我関せずで武器を整備してるし、俊樹は苦笑いしてるし、サイコダイバーは酒のつまみを自分の鞄から出してるし、余りにも皆が自由すぎる。
「伸びてねえよ!?」
「絶対伸びてたもんッ! 葵が言ってたッ! 男は助兵衛だってッ!!」
「違うわッ!! あんな明らかさまなハニートラップに引っかかる馬鹿が「うーッ! うーッ!!」だから痛いってッ!?」
このホテルにチェックインするまでに精神的に疲弊しているのに、むくれている翔子を宥めるのに俺があれやこれやとし、それを見て笑っている武達に更に精神的に消耗する事になった。
「さてと……ここまで来るのに分かっていると思うが、渋谷は相当不味い。出来る事ならばこのまま出て行きたいが……そうも行かない理由がある」
そもそも俺は五島に警告されたのもあって渋谷ではなく、六本木を目的地と考えていたのだが翔子が夢で葵が助けてと、渋谷に居ると言っていたから渋谷に行きたいと言い出し、俺達はそれに折れる形で目的地を渋谷へと変更していた。俺達の幼馴染の葵なのか、それとも救世主を名乗っていた葵なのかは判らないが……葵と言う名前が出てきた以上無視する訳にも行かなかった。
「これで夢落ちなら俺達はとんだ間抜けだな」
武の言葉に翔子がうーっと唸るが、本音を言えば俺も武よりの考えだ。だが翔子は悪魔使いとしての才能が極めて高い、俺がゾロアスター神話の悪魔にしか適正が無いのに対して、翔子はオールラウンダーだ。ゲイリン様のようにロウもカオスの悪魔も使役出来る事を考えると悪魔からの影響を受けての予知夢や、未来予知とも言い切れないのだ。
「俺も彼女に向けて飛ばされている思念を確認してる。彼女は間違いなく葵と言う少女から助けを求められている」
人の思念に対して深い知識を持つサイコダイバーも間違いないと断言した事で武は舌打ちし、胡坐をかいて窓の外に視線を向ける。
「こんなクソみたいな街を調べるのは骨だぞ、何が秩序と法の街だ。小澤よりクソだぞ? 街を調べるにしても翔子は外に出せねぇし、護衛で誰か残る必要があるだろ。それによあのクソみたいな警官はなんだ、小澤の私設警官よりひでえぞ」
全く持ってその通りである。翔子はその時の事を思い出したのか怒り顔だし、俊樹も仏頂面だ。
「んだよ、良い女を連れてる罪と、男を誘惑した売女の罪ってなんだよ。ありえねえだろ」
その時の事を思い出し俺は冗談抜きで頭痛が痛くなった。
~1時間前~
「そこのお前達ッ! 良い女を連れている罪で通報があったッ! 抵抗すればこの場で死刑だッ! 大人しく逮捕されろッ!!」
「そこの女は男を淫らな服装で誘惑した罪で逮捕するッ!!」
渋谷に入ってすぐ走ってきた警官が俺達を逮捕すると言い出した。良い女と連れている罪と淫らな服装で男を誘惑した罪ってなんだよ……いちゃもんともいえない、言いがかりに等しい罪状に、サイコダイバーの言っていた事は事実だったと理解すると共に出発前に五島に頼んで預かった物を早速使う事になるなと無意識にコートのボタンに触れていた。
「あん? んだとてめえ」
「武落ち着け、俊樹。武を止めておいてくれ」
瞬間湯沸かし器の武が武器を構えようとするのを俊樹に止める様に頼んで俺は1歩前に出た。
「抵抗するのか!」
「射殺するッ!!」
言い分も聞かずに銃を構えようとした警官との距離を一歩で詰めて、銃を掴んで軽く捻る。それだけで引き金に指が掛かっている警官は痛いと騒ぎだし、回りの警官や住民がなんだなんだと俺達に視線を向けてくる。
(……悪魔憑きの気配は無し……か。世も末だな、いや、崩壊した世界なら当たり前か?)
ラスタキャンディで強化された俺の聴力が聞きたくもない下卑た言葉を広ってくる。
『良い女だな、胸は小さいが尻がいい』
『マッカを出せば抱けるからなあ、壊れる前に抱きにいかねえとなぁ』
『あの男は良いわね、ああいう男を奴隷にしてこそ私も輝くという物よ』
『細身だけど悪くないわね、今の時代にあんな優男はそうはいないわ、コレクションしておきたいわねぇ』
人を人とも思っていない、どす黒い欲望だけがあちこちから聞こえて来る。これで秩序と法の街を謳っているんだから信じられねぇなと思いながら羽織っていたマントを開いて自衛隊の制服と襟に着けていたバッジを見せる。
「五島一等陸佐から渋谷の視察に来るように命じられた道睦長久少尉だ。確認するがこれがこの街の警察としての対応で良いのだな? 丁度新宿に五島一等陸佐がいる。すぐに連絡を入れるとしよう、秩序と法の街渋谷は見るに耐えない悪徳の街であった。早急に自治権の剥奪を検討されたしとな」
口をパクパクとさせ信じられないと言う顔をしている警官を見ながら、出発前に作った出鱈目な役職とその任命証に感謝していた。
(あーくそ、こうなると分かってやがったな、畜生め)
善良ではあるが善人ではない五島にまた貸しを作ってしまったと内心頭をか抱えていると、銃声が2発響き、俺達を逮捕すると言っていた警官が頭から血を流して倒れこんだ。
「警官を語るとは許されない罪だ。よって死刑とする、そこの2人は偽警官と共謀した罪で逮捕するッ! 連れて行けッ!!」
「「「はっ!!」」」
「は……は!? 俺はマッカをあれだけ寄付したぞッ!」
「放しなさいよッ!! 私を、私を誰だと思ってるのッ!!」
警官に連れて行かれる俺達を通報した男女を横目に号令を出した警官に視線を向ける。
「失礼致しました。事前に来られると聞いていればお出迎えを用意したのですが……連絡がなかったのであのような偽警官に横暴を許してしまい申し訳ありません」
「構わない、俺達も五島一等陸佐から急に命令を受けて渋谷に立ち寄っただけだからな。では今のやり取りは偽警官の嘘と言う事で良いのか?」
「勿論ですとも、ここは秩序と法の街渋谷ですよ。あのような警官は存在しませんとも」
どの口が言ってると内心吐き捨てる。あの警官だって本物だっただろう……死人にくちなし、余計な事を言う前に処理したその手際を見てこのような対応に慣れていると俺は確信した。
「宿舎へご案内します。その後に渋谷の視察を「いや、自分達の目で見て回る。泊まる所も自分達で決めるから気にしなくて良い、自然な渋谷を見て回りたい」
苦虫を噛み潰したような顔をして居る警官をその場に残し、翔子達を呼び寄せてホテルを探して歩き出したのだが……まぁ出るわ出るわ、娼婦らしき女が裸同然の姿で誘ってくるのを見て本当に勘弁してくれと言わざるを得なかった。
「……香水くせえ、鼻が曲がりそうだ」
「武。飲んどけ、魅了されるぞ」
「……チッ、めんどくせえな」
悪魔と合体した武は感覚が何倍も優れているので娼婦が身に付けている媚薬入りの香水に魅了されかねないとディスチャームを飲むように言って手渡し、続けて俊樹にも忠告する。
「俊樹は目を合わせるな、悪魔も混じってるぞ」
「……了解です」
あの中にはサキュバスやリリムも混じってる。俊樹ほどにストイックな性格ならば問題は無いが、マリンカリンなどで正気を失いかねないので目を合わせるなと警告しながら周囲に視線を向ける。
(……いや、マジで勘弁してくれ)
俺が自分を見ていると勘違いしている娼婦と女悪魔が胸を自分で揉みしだいたり、スカートをたくし上げる姿に本当に勘弁して欲しいと心から思った。
「……」
視線が物理的に刺さっていると思うほどの鋭い翔子の視線を背中に感じながら俺は悪魔のMAGの気配が無いホテルを探し、娼婦達が屯している区画を早く通り過ぎようと思って早足で歩き出した、言うまでもないが武と俊樹も足を早めたのは言うまでも無い。
「とりあえず俺が見て回ってくる。お前達はホテルで待っててくれ、言っておくが気を緩めるなよ? 死人に口なし、俺達を処理しようと動かないとは言い切れないからな」
単独行動は出来れば取りたくないのだが……武は直情的で魅了耐性が低い、そして正義感の強い俊樹は黙ってられず騒動を起こしかねない、翔子は渋谷入りした段階で目を付けられているのでかなり危険だ。
「俺も待機してるけど良いよな?」
「あんたが連れ去られても全滅だ、頼むから大人しく酒でも飲んでてくれ」
サイコダイバーである彼が連れ去られた段階で俺達は詰みかねないのでおとなしくしていてくれと言って装備を整える、
「長にい、えっちいのは駄目だよ」
「俺をなんだと思ってる!?」
ジト目でそういう翔子にそう叫び返し、部屋の外から結界札を貼り付けてホテルを出て空を見上げる。他の人間ではどうかは分からないが、俺の目にはしっかりとMAGがどこかへ流れ込んでいく様をしっかりと映していた。
「……最上級悪魔とか勘弁してくれよ」
今の戦力で戦えないような悪魔だけは出現しないでくれよと呟き、俺は渋谷の街の散策へと向かった。だが秩序と法を街を名乗るだけあり、隠蔽対策は完璧であり、それらしい痕跡はあるが仲間を偽警官と言い切って処理するような連中だ。証拠を隠すのはお手の物で途中までは追えるが、ある程度進むとそれすらも困難になる。
「数日前に葵って言う女の子を見たわね、警官を叩き伏せて追われたみたいだけど掴まってないと良いんだけど」
「何が秩序と法の番人だよ。上山め……」
結局MAGの後で追跡するのは諦めBAR等で情報収集を行うとやはり葵と名乗る少女が渋谷に訪れて裁判官達に捕まったという話とこの街を実質支配している裁判官の名前が上山と言う話を聞く事が出来た。
(裁判官が手掛かりか、警備は厳重らしいが……そっちに向かうしかないか)
街中で葵に繋がる手掛かりとMAGの集束場所が無いのならばそちらの方にアプローチを掛けてみるかと考え、1度ホテルに戻ると翔子も武もサイコダイバーも眠っており、俊樹だけの姿が無く机の上に親を見つけたとだけ書かれた置手紙があり、俺は慌てて翔子達を起す為に声を上げた。考えられる最悪の展開だった……何故ならばこの秩序と法の街の裁判官の名は「上山」そう俊樹の親族がこの街の悪辣な法を制定していたのだ。この街を作り上げた黒幕、そして恐らくこの街のMAGを全て吸い上げている悪魔もそこに居る。そんな場所に俊樹が1人で乗り込んだ……翔子達を巻き込まないようにドルミナーで眠らせてまで1人で追いかけて行った俊樹に早まった真似をしやがってと悪態を付ながらペンパトラや睡眠を回復させるアイテムも手持ちが無い俺は武と翔子に声を掛けながら身体を揺する事しか出来ないのだった……。
ホテルから窓の外を見ていた僕は死んだと思っていた親が街を歩いているのを見て思わず椅子を引っくり返しながら立ち上がった。
「ど、どうしたの、俊樹」
「長久が追われて……おいッ! 勝手に外に出るなッ!」
何があったと尋ねてくる翔子さんと武には悪いと思ったが振り返り様にドルミナーをかけて眠らせる。
「すいません……」
机の上に置手紙と長久さんから預かっていた結界札を部屋の外から張りなおし、僕は父さんを追いかけてホテルを後にした。
「父さんッ!!」
車に乗ろうとしていた父さんを慌てて呼び止める。警官が集まってくるが、それを振り払って再び父さんと叫んだ。
「私を呼ぶのは……俊樹、俊樹かッ! 生きていたのかッ!! 止めろ、私の息子に何をするッ!」
僕を拘束しようとしていた警官を父さんは止め、涙を浮かべて僕に駆け寄ってくる。
「生きていたのだな、良かったぞ。お前の事を心配しない日は無かった……だが何故お前は歳を取っていないのだ?」
「ICBMが落ちた時に魔界に迷い込んでしまったんです」
「そうか、そういうこともあるだろうな。母さんも生きている、さぁお前も車に乗るんだ。私の屋敷で食事でもしながら話をしよう」
その言葉に30年の月日が経っても父さんは僕の尊敬する父のままで居てくれた……そう思っていた。だがそれは幻想であり、父さんの家で待っていた光景に僕は言葉を失う事になった。
「「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」」
「うむ」
「なっ……」
僕と父を出迎えたのはほぼ全裸と言っても良い姿の見目麗しい少女達だった。その光景に絶句している僕に目もくれず父は並んでいた少女を品定めするように視線を向ける。
「お前とお前は俊樹に奉仕するが良い、俊樹お前はこの2人を好きにして良いからな。後でまた話をしよう」
そう言うと少女の1人に完全に裸になるように命じチャックを下ろす父さんの姿に僕は思わず目を逸らした。
(嘘だ、こんなの嘘だ……)
父さんは弁護士で困っている人の為に働いていた。目の前の光景が現実だと分かっていても、それを現実と僕は受け入れる事が出来なかった。
「俊樹様、こちらです」
「こちらへ」
半裸のメイドが僕を先導して歩き出すが、歩く度に下着も付けていない少女の秘所がスカートの裾から見えそうになってしまい、それを見ないように目を逸らして歩いていると背後から懐かしい声が聞こえて来た。
「俊樹。俊樹じゃないの、生きていたのね、良かったわ」
「母……さん?」
懐かしい母の声に顔を上げた僕は母の後ろの光景に言葉を失った。何故ならば僕と同年代のくらいの青年の死体を運んでいる執事の姿があったからだ……。
「ああ。あれね、壊れてしまったのよ。折角可愛がってあげたんだけどね」
「何を……言っているんですか?」
「何をって、だって私の男娼だもの、あの人も娼婦を連れていたでしょ? それに貴方にだって宛がってあげたじゃない。好きにして良いけど殺しては駄目よ。あんまり悪魔に食わせると言う事を聞かなくなるからね。はぁ、これでまた男娼を買わないと駄目ね。活きの良い男は高いから困るわ」
「明日の夜に奴隷のオークションがあるのでそちらを見に行くのはどうでしょうか?」
「そうね、でも前みたいにすぐ壊れるような軟弱な奴隷は駄目よ? 私は痛めつけないと楽しめないから」
「分かっておりますよ、奥様。ちゃんと手筈を整えておきます」
「ふふ、楽しみにしているわ」
当たり前のように言う母さんの言葉が信じられなかった。嘘だ、嘘だと言う言葉ばかりが脳裏を過ぎる。父さんと母さんの信じられない行動に呆然としたままメイドに案内され部屋にはいるなり2人のメイドは跪き僕のズボンに手を伸ばしてきたので止めてくれと叫んでドルミナーを掛けていた。
「嘘だ、嘘だ……こんなの嘘だ……」
父さんと母さんが生きていた。武や翔子さんには悪いと思ったが嬉しかった……父さんと母さんに協力してもらえばこの街の悪の権化を見つけることも、葵を見つける事も出来ると思ったのに……尊敬していた両親が行なっている非道に僕は目の前が真っ暗になった。ドルミナーで眠らせたメイドの裸を見ないようにシーツを巻きつけベッドの上に寝かせる。
「……まさか父さん達が……」
この街の悪政を行なっているのはまさか父さん達なのかと、いや、そんな筈はないと思いたいが部屋に来るまでの父さんと母さんの姿を見て、信じたい気持ちがドンドン萎えていく……。
(話を、話をしないと)
父さんと話をしないといけないと思ったが、何を話せば良いんだと僕は頭の中が真っ白になった。何を問いかけても父さんと母さんが悪びれる姿が想像出来なかったのだ。むしろそれ所か今まで尊敬していた2人の姿でさえも思い出せなくなっていた。
「ふむ、お前も十分に楽しんだようで何よりだ」
「父……さん」
「ああ、私だ。それにしても生きていてくれて良かったよ、これからはお前も上山家の人間として渋谷の発展と支配に協力するが良い。何、何も心配することはない、この街では私達が法だ。全てが私達の思い通りになる。地位も名誉も金も女もどんな贅沢も私達の思うがままだ」
その言葉に僅かに残っていた両親を信じたいという気持ちは消え去った。自分の両親が渋谷の人を苦しめているのだと理解してしまったのだ。
「父さん、葵を知りませんか?」
「葵? ああ、そう言えばそんな女が居たな。見た目もかなり良く気に入っていたんだが、余りにもうるさいので悪魔に預けたが……それがどうかしたのか?」
「……僕の彼女なんですよ。会わせてください」
「流石私の息子だ。良い女を見抜く眼力がある。だがあの女に会うのは止めておけ、もっと良い女を宛がってやるからあの女は諦めろ」
「何故ですか……」
「あの女は救世主らしくてな。従順な奴隷にする為に悪魔が精神を貪っている。そう遠くないうちに人形になるから性処理程度にしか使えんぞ」
人を人とも思わない父さんの言葉に僕は椅子を引っくり返しながら立ち上がり、ジャケットの内側のグロッグを抜き放った。
「今すぐに葵に会わせてください。これは脅しじゃありません、従がわないのならば撃ちます」
なんとか手と声を震わせずに言う事が出来た。だが父さんはそんな僕を見て今まで見たことの無いような悪辣な笑みを浮かべた。
「お前は自身の父を撃つと言うのか? とんだ親不孝者だ。お前の身を案じていた私に銃を向けるとは」
その言葉に思わず動きを止めた僕の肩を父さんの撃った拳銃の弾が抉った。
「う、ううう……」
「お前は私達の息子で優秀だったよ。だがそのくだらない正義感はどこから生まれたんだろうな、全く」
肩を撃たれた痛みで動けない僕の顔を踏みつける父さんの目はまるで虫を見るような冷たい目をしていて……その残虐な顔を見て僕の信じていた、尊敬していた父と母はもう居ないのだと悟り目から涙が零れ落ちた。
「お前は躾けなおしてやる。全く親に刃向かうとはとんだ出来損ないだなッ!!」
「がっ!?」
勢い良く革靴で顔を蹴り飛ばされて、壁に叩き付けられた。銃で肩を撃たれた痛みも、顔を踏みつけられた事も痛かったが……何よりも自分の知る両親がもうどこにもいないと言う現実の痛みに耐え切れず僕の意識は闇の中へと沈んでいくのだった……。
3周目の世界 3人の救世主 その9へ続く
今回の話はカオスヒーローとの対比で書いております。カオスヒーローの父親は決して褒められたものではなかったかもしれないですが、確かにカオスヒーローへの確かな愛がありました。ですがロウヒーローの両親にそんな物は無く、自分達にはむかった出来そこないとしてロウヒーローを罵倒しました。ここらは原作にはない点ですが、私なりの解釈とオリジナル設定と言う事でよろしくお願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。