収束×集束×終息する世界   作:混沌の魔法使い

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4周目の世界 滅びを求める地球意思 その1

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その1

 

大事な者が手から零れ落ちていく……失いたくないと、忘れたくないと拾い集めようとしても指の間から大事だった物が零れ落ちていく……。

 

意地っ張りで素直じゃなくて、でもとても優しかった少女がいた……もう顔も声も思い出せない。

 

素直で頑張り屋で、ずっと俺の側にいてくれた少女がいた……その輪郭がぼやけて、崩れ落ちていく……。

 

泣き虫で甘えん坊で、俺を信頼してくれていた少女がいた……消しゴムで消されていくように、少しずつ少しずつその少女が消えていく……。

 

嫌だ、忘れたくないと、覚えていたい、置いて行かないで欲しいと喉が裂けるほどに叫んで手を伸ばす。だけど触れた先から壊れて、砕けて行ってしまう……。

 

「うわああああああッ!!!」

 

苦しくて悲しくて、狂ってしまいそうで……大事だった少女(もの)が俺が触れた事で砕けた瞬間に俺は悲鳴を上げながら飛び起きた。

 

「あ……あああ……」

 

狂ってしまいそうな悲しみはもう感じない……だけどその変わりに知らない記憶が脳内に溢れてくる。だが今までの中で今回の痛みは驚くほどに小さい? いや、少ないものだった。古い日本家屋で、巫女服の女性に囲まれ、自由に出歩く事も許されない……まるで籠の中の鳥のような生活を送っていたのが今生の俺だった。

 

「峰津院(ほうついん……)……おじさんの苗字だったかな?」

 

1回か2回会った記憶があるだけだが……父方の親戚の1人の苗字が峰津院だったような気がする。

 

「若様ッ! 若様ッ!! 大丈夫ですかッ!?」

 

「うわっぷッ!?」

 

考え事をしていると澪が俺を呼びながら凄まじい勢いで抱きついて来た。

 

「どこか痛いのですか? それとも気分が悪いのですか!? 大丈夫ですかッ!? 若様、若様ッ!?」

 

「む、むぐう……」

 

大丈夫と返事を返したいのに澪の豊過ぎる胸部に顔が完全に埋もれて喋る事すらできない、肩を叩くが完全にパニックになっている澪はそれに気付かず、ある意味男の夢とも言えるかもしれない胸で窒息する寸前の所で……。

 

「何をしているんですか! 殺すつもりですか!」

 

「あうッ!?」

 

澪の頭を叩いて俺と澪を引き離してくれた女性によって、俺の命は救われた。

 

「全く、心配なのは分かりますが先にナースコールなり、医療班なりを呼んでください。分かりましたか! 澪さん」

 

正座をしている澪に凄い剣幕で説教をしながらも、目の前の女性はてきぱきと俺の手当てをしてくれた。

 

「はい……はい……すみませんでした……」

 

俺を助けてくれた女性はゾイと名乗り、俺の脈や聴診器で心音を調べてくれていた。その様子から女医だと分かるのだが……。

 

(同じ服を着てる……?)

 

澪と全く同じ服を着ている事に気付いた……そう言えば意識を失う寸前に巨大な船のようなものを見たような……。

 

「澪」

 

「は、はい! わ、若様! なんでしょうかッ!」

 

……俺よりもずっと年上の女性なのになんだか子犬のような人だなと思いながら俺は疑問を口にした。

 

「ここは今どこなのかな? 気絶する前に巨大な船を見たような気がするんだけど……」

 

……なんだこの口調は、俺のイメージしている喋り方をしても口から発せられる言葉が全然違うもので正直混乱する。

 

「若様。若様が見られたのはレッドスプライト号と言う次世代型の万能揚陸船です」

 

「次世代万能……? ごめん、良く分からない」

 

澪の言葉の意味が理解出来ない、純粋に幼いから知力が足りていないのか、それとも道睦長久である俺の意識が邪魔をしているのかは定かでは無いが、言われている言葉の意味がまるで理解出来ない。

 

「澪さん。もっと分かりやすく説明しないと駄目ですよ。私達は今とても大きな陸も海も空も飛べる船で南極を目指しているのです」

 

「……南極を?」

 

南極を目指しているということにも驚いたが、陸空海を網羅する船って凄まじすぎないかと驚きに目を見開いた。だがそんな万能船で南極を目指していると言う事にも驚かされた。

 

「もっと詳しく……「ごめんなさい、ちょっと待ってね」……あ、はい。分かりました」

 

もっと詳しく聞かせてくれとゾイさんに頼もうとしたのだが、電話のようなものを片手に少し待ってくれと言われ、ベッドから降りようとすると澪に止められた。

 

「今降ろします。若様、失礼します」

 

「……うん」

 

自分で降りれる高さだと思ったのだが澪に抱き抱えられベッドから降ろされる。峰津院長久の記憶では常に澪が脇に控えていて、世話係のような事をしていた。

 

(……なんなんだ。俺はどんな生活をしていたんだ……?)

 

注連縄で覆われた部屋、自分で物を食う事も許されず、巫女服の女性に全て世話をされる……それは明らかに異常な暮らしである。それに何よりも俺が違和感を抱いたのは……。

 

(これじゃあまるで死装束だ)

 

穢れ1つない白の着物、そして懐にあるずっしりとした重みは恐らく小太刀……まるで死ぬことを望まれて生かされていたように感じる。

 

「長久君、澪さん。ゴア隊長からブリッジに集合するように連絡があったから行きましょうか」

 

「分かりました、若様。失礼しますね」

 

「……いい、自分で歩く。ゾイさん、ブリッジはどちらですか?」

 

「こっちよ、澪さんも呆然としてないで早く行きましょう」

 

当然のように俺を抱き抱えようとする澪の腕を避け、ゾイさんと共に医療室を出たのだが……澪は俺に拒絶されたのがよっぽどショックだったのか腕を広げたまま白目を剥いていたけど……俺はそれを視界に入れないように医療室を出た。

 

「良いの?」

 

「良いのか悪いのかは僕には判りません、でも……今僕は自由なんですよ、ゾイさん」

 

俺の口から零れた言葉……それはきっと峰津院長久の心からの言葉である。俺は……そう思うのだった……死を望まれているかのような生、この監獄のような船の中で得られた初めての自由、その先に待つのは今までと同様避けられない死であったとしても、俺は足掻き続ける。その為には澪に甘え続けている訳には行かないのだから……。

 

 

 

 

 

操舵室、そして司令部でもある、ブリッジに入ってきたゾイに目を向けた司令部に集まっていた調査隊の多くのメンバーはその隣にいる白い着物の少年に目が吸い寄せられたのだった。そしてそれは艦長席の前に立っているシュバルツバース調査隊隊長であるゴアは、白い着物の少年を見て思わず目を目眩を覚え、視線を伏せた……。

 

(あんな、あんな……年端も行かない少年を──?! 日本は本気で派遣したのかッ!?)

 

南極に現れた亜空間……ありとあらゆる物を分子崩壊させながら巨大化しているシュバルツバースの調査は各国のエリート兵士や、医者、整備兵……各分野の専門家ばかりを集めた人類の存続を掛けたこの一大プロジェクトに日本は2人の日本人を送り出してきた。1人は神野澪(かんのみお)女性ではあるが日本の中で最も優秀な兵士であり、シュバルツバースに突入した際の艦外活動と調査を担当する機動班の1人で、調査隊の4つの次世代揚陸艦の旗艦「レッドスプライト号」に配属されるほどのエリートだ。彼女の配属はゴアとしても納得の行くものだ。黒髪の鬼神と言われる澪は各国にも知られる日本のエースだ。未知の亜空間であるシュバルツバースの調査に選ばれるのは当然だが、日本政府が選んだもう1人はゴアが受け入れられる者ではなかった。

 

(峰津院長久……10を超えたばかりの子供だぞ)

 

歳の割には落ち着いた雰囲気をしているが、幼さを強く感じさせるその顔を見て私の心は強く痛んだ。

 

「……諸君、私に注目してくれ! 30分後に我々は目的地であるシュバルツバースへ到着する。発足から短期間で各国から派遣された人員で急造された隊だ。不便・不慣れな点もあるだろう……だが君達は優秀な人員だ。サポートし合い、能力を発揮しミッションを円滑に遂行して貰う。この任務の最終確認とクルー意思統一の為改めてスピーチを行なわせてもらいたい」

 

私の言葉があってもブリッジに集まっているクルーの多くはゾイと澪の隣の長久君にその視線を向けている。その視線の多くは何故子供がこの船に乗っているのかと言う怪訝な物で、誰もが彼について私に問いかけようとしているのが伝わってくる。

 

「んんッ! 彼に関しては後ほど説明する。まずは我々がこれから突入するシュバルツバースについて科学士官である。ゼレーニン中尉から説明をしてもらうとしよう」

 

「どうも皆さん。少年ではなく、こちらに注目をいただけますか?」

 

私の意図を汲んで手を叩いて自分に注目を集めてくれたゼレーニン中尉に感謝し、彼女にシュバルツバースの説明を頼んでいる間に日本政府から渡されていた峰津院長久に対する資料に目を通す。

 

(正体不明の知的生命体に対する専門家……?)

 

日本政府からの資料には峰津院長久は長く続く霊能の家系である峰津院家の中で極めて優秀な子供であり、シュバルツバースの内部に峰津院家と日本が古来から戦い続けた「悪魔」と呼ばれる生命体が存在した場合のアドバイザーとして派遣とある。

 

(悪魔……霊能者? オカルトが過ぎるぞ)

 

シュバルツバースという未知の存在を調査するにしても、余りにも信じがたい話だ。

 

(ありとあらゆる可能性を想定しなければならないとは言え……日本の話は余りにも信じがたい)

 

士官用の資料艦長席の上に乗せ、私は深く溜め息を吐いた。前代未聞であり、何が起こるか分からない絶望的な調査に次世代を担う子供を連れて行くと聞き、私は最後まで反対したのだが……最終的には彼はレッドスプライト号に乗っている。その現実に己の無力さを痛感させられた。

 

「……以上が今私達が知りうる情報です。この情報だけだと何度聞いても悲観的になりそうな気がすると思いますが……事前の調査によって我々は全て有効的な対応策を得ております。そしてこのシュバルツバース調査隊は各国の様々な分野の専門家が集まっています、皆が結束すれば安全で素晴らしい調査が行なえると私は確信しています。では私からの報告は以上です」

 

「分かりやすい報告をありがとう。では任務内容の確認と、アドバイザーである峰津院長久君については諸君らへのミッションの発令を行なうアーサーから説明してもらおう」

 

レッドスプライト号を管制するアーサーの紹介を兼ねて、長久君の説明をアーサーへと頼んだ。

 

『ようこそシュバルツバース調査隊へ、私の名はアーサー。貴女達へのミッションの発令を行い、調査を円滑に行う為の補助プログラムです。ではアドバイザーの峰津院長久についての説明を行ないます。彼は日本の有名な霊能の家系で最も優秀と言われる子供です、シュバルツバースの内部に未知の存在がいた場合のアドバイザーとしてレッドスプライト号へ搭乗して貰っています。自己紹介は出来ますか?』

 

「……峰津院長久と申します。若輩の身ではありますが……貴方方のお手伝いをする為に日本より参りました。どうかよろしくお願いします」

 

霊能者、未知の脅威というオカルト染みた話に調査隊の面子の中に動揺が広がるのを見て、私は手を強く叩いた。

 

「現在の地球では科学では説明出来ない様々な異常事態が多発している。それをオカルトと聞けば君達は笑うだろう、だが君達は見ているはずだ。アーサー、あれを」

 

『了解です』

 

アーサーに頼み近年世界各国で確認されている異常な破壊現象の映像を再生してもらう。突然発生した竜巻に手足を切り飛ばされた親子、ライオンよりも遥かに巨大な生物に噛み千切られたような跡を残し死んでいる兵士、意志を持ったかのように人間をおいまわす火柱……例を挙げれば切りが無いほどに科学では説明できない異常な現象の数々に調査隊の面子は言葉を失った。

 

「我々が失敗すると言う事は人類が滅びると言うことだ。様々な可能性を考慮し、最悪を想定する必要がある。その中にオカルトがあれば、その専門家に同行を依頼するのは当然の事だ。分かったな!」

 

実際の映像を見た事で納得した様子の調査隊の面子と、私を見てうんうんと頷いている澪の姿を見て、全てが受け入れられた訳では無いが、長久君に関してはある程度の理解を得れたようだ。

 

「ではこれより機動隊はシュバルツバース内に突入後のブリーフィングを行う、各員は降車デッキに集まってくれ。長久君、君も同行してくれるか?」

 

「……分かりました。じゃあ、澪。僕は先に行くから」

 

「え、わ、若様……わ、私も同行」

 

「いい。行きましょうゴア隊長」

 

キリッとした表情から捨てられた子犬のような表情をしている澪に驚いたが、シュバルツバースの内部に突入するまで時間が無いので構っている時間は無く、長久君と共に降車デッキへ向かう。

 

「ゴア隊長」

 

「ん? 何かね?」

 

「庇ってくれてありがとうございます。オカルトの話なんて信用されないって思っていたので庇って貰えて嬉しかったです」

 

降車デッキへ向かう道中で感謝の言葉と共に頭を下げてくる長久君の姿になんと礼儀正しいのかと驚かされた。

 

「気にする事はない、君とて幼い身でこんな所に連れて来られて困惑しているだろう。何か困った事があったら頼ってくれ」

 

「……ありがとうございます」

 

ぺこりと再び頭を下げる長久君の姿に国に残してきた自分の子供を思い出し、思わずその頭を撫でてしまった。

 

「あの」

 

「すまない、子供を思い出してな。不快だったかね?」

 

「いえ、そういう訳じゃ……ただ……少し驚いて」

 

その言葉に長久君の資料にあった親の顔を知らず、ほぼ幽閉されて育ち、巫女と澪しか自分以外の人間に出会う機会が無かったと言う一文を思い出し、言葉に詰まっているとビー玉のような長久君の瞳と目があった。

 

「悪魔は怖いですよ、いつでも人を殺せる。どんなに小さい悪魔だって、簡単に人の命を奪えるんですよ」

 

「悪魔……君は悪魔を知っているのかね?」

 

「……ええ、多分今も向こうはこっちを見てますよ。ゴア隊長」

 

こっちを見ているという言葉に何を馬鹿なと思ったが、その真剣な表情に彼が真実を口にしていると分かった。

 

「忠告感謝する」

 

きっと彼の目には私達には見えない何かが見えているのだろう、その険しい表情は我々に待ち受ける険しい戦いを予見しているように私には見えるのだった……。

 

 

 

 

 

目に見えない何かが飛び掛ってくるのを気配を頼りに回避するが、相手の大きさも何もかも分からないので完全に避ける事が出来ず、巨大な質量を持った何かが身体を掠める。

 

「くうっ!?」

 

信じられない激痛に顔を歪めながら何かが掠めた脇腹を押さえて後退する。

 

(デモニカスーツのお蔭で助かっていますが、デモニカスーツの所為で思うように動けないッ……)

 

シュバルツバースという未知の領域を調査する為に作られた最新鋭の装備――「DEMOuntable Next Integrated Capability Armor(着脱拡張型次期能力総合兵装)」……ブルージェット号のヒメネスの話を信じるのならばクレバーで進化する戦闘服だそうだが……私にとっては足を引っ張る何かでしかなかった。

 

(生身ならなんとでもなりますが……今は使えないですしね)

 

デモニカスーツを脱げば、あるいは無知な振りを止めれば……だがそれは出来ない。私はあくまで国連の兵士、そして若様の護衛だ。決して「■■」を捨てた人間ではない、悪魔に関しては無知を装わなければならない。それが途方もない足枷であることは私も自覚している、だが今はまだ「■■澪」に戻る訳には行かないのだ。

 

『敵性反応あり、右……上から来ますッ!!』

 

「どっちからだッ! 良い加減にしろッ! このポンコツAIッ!!!」

 

全くその通りだ、何らかの反応を感知してサポートしてくれているデモニカスーツのAIだが、最適化がすんでいないのかさっきから暴走しっぱなしだ。

 

「厄介だなッ! OFFにする訳にもいかんッ!」

 

「次のアップデートがあったら、生命維持装置とサポート機能とOSは別口にしましょうッ!!」

 

(どうしてこんな事に……)

 

正体不明の謎の敵と戦い……いや謎の敵性存在に翻弄されながら私はどうしてこんなことになったのかを思い返していた……シュバルツバースを蔽っているプラズマ層は無事に突破出来たが、何らかの攻撃を受けた。ブルージェット号、エルプス号、ギガンティック号の3艦はなんらかの攻撃を受け、その上未知の重力場に囚われ艦隊から離れ、旗艦であるレッドスプライト号も激しい攻撃を受けていた。

 

「うわっとと」

 

「若様ッ!!」

 

上下左右から襲ってくる凄まじい衝撃に降車デッキに待機していた同じ機動班のメンバーの悲鳴があちこちから響いて来る。そんな中で私は凄まじい衝撃のあまり宙に浮いた若様を胸の中に抱え込む。

 

「み、澪ッ! 僕は良いからッ!」

 

「いえ、貴方を守る事が私にとっての最優先ですッ! ぐうっ!?」

 

衝撃に耐え切れず皆がバランスが崩し、降車デッキの壁や床に何度も叩きつけられるが胸の中に抱え込んだ若様をレッドスプライト号の床や壁にぶつけないように必死に守る。

 

「あぐっ!?」

 

「澪ッ!!」

 

若様を守る事に必死になりすぎて自分の身を守る事が僅かに疎かになり、頭を強か打ちつけた私は一瞬意識を飛ばし、朦朧とする意識の中真っ白の部屋と私を品定めするかのような視線の3人の老人がなにかをいっていたような気がする。

 

『澪ッ! 澪しっかりッ!!』

 

若様の私の名を呼ぶ声に私の意識は急速に覚醒し、この部屋で見た事は誰にもいうなという老人の言葉急速に浮上した。

 

「よし呼吸が戻ったぞ、これで一安心だ。大丈夫か、澪。お前心肺停止してたんだぞッ!」

 

機動班の仲間の死んでいたと言う言葉にゾッとした。

 

「澪ッ!! ああ、澪ッ! 良かったッ!!」

 

目に涙を浮かべ抱きついてくる若様の小さな身体を抱き締め返す。

 

「馬鹿馬鹿ッ!! 僕を守って澪が死んでどうするのッ!」

 

「すみません……」

 

「違うッ! もうあんな無茶をしないで……澪」

 

目に涙を浮かべる若様の姿に罪悪感が胸を埋め尽くし、その身体を抱き締めながら謝罪の言葉を口にする。

 

「やれやれ……完全に2人の世界だな」

 

「どういう関係なのかしらね……」

 

「余計な詮索はするもんじゃない、それよりも……非常用のランプが点灯してる……こりゃもしかすると動力が停止しているぞ」

 

若様を抱きしめながら立ち上がり、降車デッキを見回すと非常用のライトが降車デッキを紅く染め上げていた。

 

「何が……」

 

『各員に告ぐッ! 当艦はシュバルツバース突入中、原因不明のシステムダウンに遭遇ッ! コントロール不能状態で不時着した。艦内の動力は全停止している! 指令コマンド・アーサーも停止しているッ! 恐らく生命維持装置などのインフラもだッ! 指令はアーサーが復旧するまで通信システムで発令するッ! シュバルツバースの有毒な外気に晒される可能性があるッ! 各員は至急デモニカスーツを起動し、司令室に集合せよッ!』

 

「「「「なッ!?」」」」

 

ゴア隊長からの緊急連絡に私達は言葉を失った。動力が停止している可能性は整備班から伝えられていたが、指令コマンドのアーサーだけではなく生命維持装置や水の浄化装置、空気の洗浄システムまで停止していると聞いて、抱き抱えている若様に視線を向ける。当然ながらまだ10歳にも満たない若様に装着できるデモニカスーツは無いので着物姿のままだ。

 

「大丈夫ですか、どこか苦しくはありませんか!」

 

「今は大丈夫……「おい! 澪! 坊主にこれを! 非常用の酸素マスクと生命維持装置だ! 早くその坊主に!」 ありがとうございます! 若様失礼します!」

 

投げ渡された緊急用の酸素マスクとゴーグル、そして酸素ボンベを若様に身に付けさせる。

 

「ありがとう。澪」

 

「いえ、それよりも重くはありませんか?」

 

「うん……大丈夫」

 

若様の命を守るためとは言え、幼い御身にこの重い装備を身につけさせなければならない事に申し訳なさが込み上げてくる。

 

「澪、坊主に生命維持装置は身に付けさせたか?」

 

「今装備してもらいました。ありがとうございます」

 

「かまいやしねえさ、その坊主だってこの作戦に選ばれた専門家だ。それに……俺の婆ちゃんに雰囲気が似てる」

 

婆ちゃんに似ているという整備班に首を傾げると、その整備班は首から下げていたナニカの獣の牙のペンダントを見せてきた。

 

「婆ちゃんがシャーマンでな。今の科学の時代にって思うかもしれねえけど、俺自身訳のわからねぇ経験を山ほどしてるわけよ」

 

「あんたそんな事言ったことなかったじゃない?」

 

「今の時代にそんな話をしたら気狂いって思われるだろうが……ま、とにかくだ。人智を越えた何かを俺は信じてて、俺にそれを信じさせたのは婆ちゃんで、そんな婆ちゃんに似てる坊主は絶対俺達の助けになるって俺は信じてるわけだ。それよりゴア隊長が呼んでるぜ、司令室へ急ごう」

 

降車デッキの出口を顎で示す整備クルーに頷き、私達は周囲を警戒しながら降車デッキを出る。

 

「若様? どうかなさいましたか?」

 

「……ううん。なんでもない」

 

抱き抱えている若様が降車デッキの出口を警戒するように見つめているので、私も其方に視線を向けるが何の気配もない。

 

「大丈夫ですよ若様。御身は私がお守りします」

 

ついさっき死んでいて何を言うと言われるかもしれないが、それでも私の役目はシュバルツバースの調査と若様を守りぬくことだ。若様を安心させるべく笑みを浮かべながら言うと小さく信じてると言う若様にもう1度大丈夫と声を掛け、私と同じく降車デッキにいた整備班、機動班クルー達と共に司令室に向かって走り出すのだった……。

 

 

4周目の世界 滅びを求める地球意思 その2へ続く

 

 




大分長くなりましたが、これでもまだプロローグなんですよね。しかもまだチュートリアルまで進んでないんですよね……ただここからチュートリアルに入るとかなり文字数が増えるので此処で話を切らせていただきます。それと今生の長久はHPと腕力・体力・素早さに-補正、知力と魔力に+補正が入ってますがショタなので当然戦えないので基本的にはクルーや要所のイベントのみをピックアップする予定です。そのかわりにシナリオとしてはウロボロスのセクターエリダヌスまではやって見たいと思っております。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。

PS

澪はFGOのライトニングママでイメージしているのでとにかくでかくて重い人だと思っていただければ幸いです。
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